ふたりでゲーム

るふぃーあ

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明日は決戦の日、日曜日。



「とまあ、こんな感じでした」

電車の中で彼女がケラケラと笑った。もちろん、性的なツッコミの部分は省略してある。

「本当に、楽しいお母様ね。私も推理小説大好きだから、ぜひ一緒にお話ししたいわ」

いや、そんな自慢できるような母親じゃないんですけど。頭をポリポリとかく。

「センパイみたいな才女に、ちゃんと釣り合うんですかね」
「あら、お母様のほうがよっぽど才女だわ。私のほうが釣り合うかどうか、心配しちゃう」

いつもと同じ、屈託の無い、いい笑顔だ。

どうやら、僕の抱いた懸念は杞憂であったらしい。
彼女は家に着くや否や、姉に捕まっていろいろと白状させられ、そのまま倒れこむように寝入ったとか。そして気がついたのは夕食の時間、18時。

「寝過ぎ、ですね」

あれだけ泣いたしなあ。疲れたんだろうな。

「かのんくんに連絡はしようと思ったんだよ。でも、いざ電話をかけようとすると、泣いちゃったこととか、いろいろと恥ずかしい自分を見せちゃったことを思い出して、メールしようかなーと思ったり、本文打ったのに送信できなかったり、また電話番号見つめたり、とか」

恋する女性みたいですね、とは言えなかった。
そんなセリフ、あと10年もしたら言えるようになるんだろうか。

「で、そうしてる間にお風呂よーとか呼ばれちゃったり、お風呂入って髪の毛乾かしてたらお姉ちゃんに呼ばれて、マリオのお手伝いして、そして」

僕への電話はマリオに負けた、と。
さすが、世界一売れたブラザーズだ。

「明日の服選んでたら、お姉ちゃんがもっといい服選びなさいって、ちょっと試着してたらいい服があったんだけど、その色に合う下着が無かったりして、服を選び直したら夏物のカーディガンがうまく合わなくって、で、もう夜12時になっちゃったの。もう、こんな時間じゃメールも悪いなあって」

いや・・・・・・電車の中で下着の色、とか言いますか、副会長さん。
噂は聞いてたけど、しっかり者の反面、天然ボケも激しいって本当ですね。
下着とか色とか、男と喋っている美少女女子高生を見て、反対側の窓際のお兄さんが凄い目で僕のことを睨んでおられますよ。たぶん何か誤解してる。

しかし、今着ている服は確かにとても可愛らしい。
白をベースにした、水色、ピンク、黄色、赤などの花柄ワンピース。薄手のシースルーな夏用カーディガンを羽織り、左腕には銀色のブレスレットが嵌められている。
いつもは右側をひと束たばねているトレードマークな花の髪飾りはなく、漆黒の髪が自然に背中へ流れていて、小さな頭の上には真っ白なベレー帽がちょこんと載せられている。普段見かけない、控えめなイヤリングも小顔を余計に際立たせている。

元々の顔とあいまって、このまま雑誌の表紙にでもでられそうな雰囲気。原宿あたりを歩けば、怪しげなカメラマンからモデルにどう?などと勧誘されること請け合いだ。

「お母様、お怒りじゃなかったかしら?あんなに夜遅くまで、ご自宅にお邪魔しててしまって」
「先程の会話の通り、なんか喜んでたみたいですよ。あの人、娘が欲しかったんです。美沙のことを昔からネコかわいがりしているのもそのためで」
「美沙さん、本当に愛されてるのね。付き合っちゃえ、って話はなかったの?」
「小学校の頃、いろいろと囃し立てられて、それで絶交することになったんです。それ以来ずっと仲悪いまま、学校だけは同じところに来ちゃったんで。美沙のお母さんは逆に男の子が欲しかったとかで、いっつもあんな風に言うんです。子供同士は仲悪いのに」
「ちらっと見ただけだったけど、そんな感じでもなかったけど?」
「それにあいつ、彼氏いますし。今は」
「えっ、そうなの?」
「ええ。同級生のタカシって奴と。あ、これ秘密ですから。なんか、誰にも内緒ってことみたいで」
「そうなの。じゃあ、まだ私にもチャンス、あるわね」
「え?」

間もなく国際展示場、というアナウンスが響いて、電車は駅に滑るように入っていった。


「えー、こちらが参加受付です。当日参加の方は、二人一組、ふたりひとくみになって受付を行ってください。繰り返します、お一人での参加はできません、必ず二人一組に・・・・・・」

拡声器でアナウンスを流すお兄さんを尻目に、受付を済ませた僕たちは様々なブースを巡って回った。
結構混んでいて、大きな会場も人でいっぱいだ。ナイルー村、というブースでは、『お役立ち』兼たまに『お邪魔』になるネコモンスター、ナイルーのぬいぐるみなんかが展示されていた。いいなあ、あれ、と女神はやや真剣に見つめていた。
朝からいい匂いがして、コロネリアの蒸し焼き、という名前の何か得体の知れない肉がくるくると回りながら焼かれていた。

その隣では・・・・・・

「そこのカップルのお姉さん!お兄さん!次、どうですか!」

大きな声が聞こえて、観衆が一部振り向く。メガホンのメガネお兄さんがこちらを向いている。え?誰?カップル?

「そこのあなた!そう、あなたですよ、ノッポでカッコイイお兄さん!是非いっちょ、彼女にカッコ良いところを見せましょう!」

お兄さんは、コンビニなんかで見かけるカラーボールの、もっと赤いようなものを持って大声を張り上げていた。あれは何だ?

「へーえ、ペインターボール投げだって!かのんくん、いこー!」

女神はパッと顔を輝かせて、そのイベントブースへずんずんと僕を引っ張って行く。
ここで気づいたが、僕の左腕を女神ががっちりとつかんでいる。そりゃ、カップルに見える訳だ。

待て、そうすると左腕の背中側にあるこの柔らかい感触は、まさか・・・・・・女神の・・・・・・

「さーて、新しい挑戦者です!落伍者続出のこのペインターボール投げ、見事パーフェクトの方には、この愛らしいナイルーぬいぐるみをどどーんとプレゼント!さあみなさん、どうぞご参加ください!」

すでに挑戦した人は少なからずいるようだが、まだパーフェクトはでてないらしい、今の言い方では。
・・・・・・ていうか、有料かよ。
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