ふたりでゲーム

るふぃーあ

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「そうだね・・・・・・がんばろ!」


だーめだこりゃ、という嘲笑の声。1戦目終了、討伐時間23分。
JJこと隣の女神は、もはや声を出す元気もなく、クラコンを持ったまま床を見つめている。

方針は悪くなかった。最初の咆哮をガード、JJは回避・・・・・・し損ねたが、すぐ立ち直って頭に攻撃。麻痺弾を打ち込み、麻痺したところで回転斬り。
しかし、両手ボウガン持ちのCanonに攻撃が当たってしまい、火炎弾乱射の最中に吹っ飛ぶCanon。誘爆に吹っ飛ばされるJJ。

何かおかしい。こんなの、普段のJJでもあり得ない。
そう、家でモンバスしている時のJJはもっと活き活きと動いていた。まだお互いの素性も知らない時、Skypeを繋いだばかりの時、女の子だと知って驚きつつも、どうせ中学生だろうと思って命令ばかりしていたあの頃のCanonとJJとは、全く違う。

何か、何かが狂っている。
それはお互いを知ったことからか。センパイと知って、憧れの女神と知ってしまったからか。
もちろん、そうと知った時は自分の強運に感謝したし、Skypeごしにでも会話できることがとても嬉しかった。でも、違う。なんだろう。

そう、自分は女神と、姫神万理沙と知ったから一緒に出場したわけじゃない。大人びた、頼れる生徒会副会長とコンビを組んだわけでもない。心に傷を秘めた、傷つきやすい少女とコンビを組んだわけでもない。
JJと、だ。
誰よりも下手で、男口調で、強がりばかり言っている、あのJJだ。Skypeごしに分からないところ、だめなプレイを諌めて直して、そうやってやっとこさ一人前になってきた、あのJJと出場したはずだ。そうだろ、Canon。

「JJ、2戦目行くぞ。準備しろ」

自分でも自覚することなく、口調が変わってしまっていた。

「かのん、くん?」
「準備だ!いいか、お前は太刀だ、手数で押せ。まず強走薬、すぐに闘技場へ直行。一発目の咆哮は回避しろ」
「は、はい、教官」
「すぐに爆弾を頭側に設置。起爆は俺がやる。あとは開始10秒で麻痺させるから、それまで抜刀回転、移動切り、深追いせず離脱。できるな?」
「はい!」
「一回目のダウン直前に指示する。シビレ罠の準備をしておけ。ダウンしたらすぐ罠設置、1度目の麻痺のあとは赤ゲージ維持。それまでは黄色を維持!」
「了解!」
「では行くぞ!」


「やった!やったよ!教官!すごい、さすがです!」

目標をはるかに上回る討伐タイム。余裕の予選通過だ。

「すみません、突然、あんな口調に」
「ううん、なんだか急に、昔のCanon教官が帰って来た気がして、とっても心強かったです!もう、指が勝手に動いてました。爆弾も罠も教官の言う通りにやってたら、あっと言う間に討伐完了!の画面でした」
「うう、センパイ、もう終わったんですから、元に戻しましょうよ・・・・・・」
「いーえ、お昼から本予選です。それまでは、教官のままでお願いしますねはぁと」
「ううう・・・・・・お願いだから、誰にも聞かれていませんように・・・・・・」
「さあ、お昼はビストロ・モースへ行きましょう!お腹空いちゃいました!」


ゲームを忠実に再現した?というネコ飯ショップ「ビストロ・モース」で、ネコのエプロンをしたウェイトレスさんに運ばれて来た得体の知れない料理を食べ、本予選の時間待ちにまたぶらぶらと歩く。本予選は14時からなので、かなり時間がある。
片手に大きなナイルーを抱いたまま、女神は僕の腕を掴んであちこちに引っ張って行く。顔には満面の笑み。もう完全復活だ。

「さあ教官、あれはどうですか?何だかたくさん本が並んでますよ?」
「いやあれは・・・・・・薄い本、いわゆる同人誌ってやつで、中身は15禁とか18禁とかじゃ」
「そうですか。15禁なら私は大丈夫ですね。教官はまだダメですよ、この私が許しません」
「・・・・・・こんな時だけ、なぜ生徒会の人に」
「何か言いました?」
「いえ、何も。15禁とかやめといたほうがいいですよ、お父さんに見つかったら何て言われるか」
「変ですねえ、教官は15歳で見たことないはずなのに、なぜ中身が分かるんですか?」

ん、15禁って15歳ならOKじゃなかったか。

「いや、それはその、一般常識として」
「あー、さてはえっちぃ本ですね。読んだことあるんですね?これは次に部屋に行った時、ガサ入れですねー」

本気でやめて下さい。あなたの写真集がたくさん出てきますから。

「じゃあ、こっちのショップの方がえっちな教官にはいいですね。Tシャツとか小物のお店みたいです」
「らぶらぶナイルーTシャツ・・・・・・なんでナイルーがこんなにネズミーさんしてるのやら」
「ど○でもいっ○ょに似てるから、とか?」
「さり気なく爆弾発言ですね、それ」

女神がTシャツを広げる。
見事なペアルックだ。
こんなの着て、学校いけません。部活行けません。

「じゃあ、お揃いで買いましょう。私はMサイズで、教官は背が高いからLですか?」
「LLです。・・・・・・あの、本気で?」
「おじさん、このナイルーTシャツ、お揃いで下さい!女性のMサイズと、男性の3Lで!」
「あいよっ!綺麗なお嬢さん、ペアルックかね?お兄さん、羨ましいね~」
「いえいえ違うんですおじさん、私の片想いなんです!」
「なんと、こんな可愛いお嬢さんが片想いだって?罪作りなあんちゃんだねえ~」

もう、なんとでも言って下さい。

「あいよっ、4800万円だ!」

高えなオイ。万を抜いても。
あーいや、彼女はお金持ちなんだった。貯金がたっぷりあるって話を聞いた事がある。

「べっぴんなお嬢さんにオマケしてもう一つ、この首振りナイルー人形もどどーんとプレゼントだ!もってけどろぼー!」
「わあっ、ありがとう、素敵なおじさん!愛してる!」
「わははは!あんちゃんにふられたら、遠慮なくこのおじちゃんがもらってあげるよお嬢さん!また買いに来てな!」
「えへへ、大丈夫、死ぬまで追いかけちゃうんだから!またねーおじさん!」

Tシャツと、ネコの人形が入った袋を受け取る女神。もうね、何と言うか、ニッコニコ。

「持ちますよ。ぬいぐるみも」
「ダメよ、教官に渡したら、せっかくのぬいぐるみが帰って来ないかもしれないもん。絶対だめ」

・・・・・・なんか、幼児化していませんか?姫神センパイ。

「でも、両手が塞がっちゃいますし、ポシェットもありますし」
「う、うー」
「じゃあ、紙袋だけでも」
「うん、じゃあ、お願いします」
「ぬいぐるみも、あとでちゃんと返しますよ」
「・・・・・・本当に?他のヒトにあげちゃったりしませんか?」
「約束します」
「どっかに起き忘れた、とかダメですよ?」
「命に代えても、お守りします」

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