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しおりを挟む門を少しだけ開け、中に消えて行った女神。
僕は彼女をどう扱えば良かったのか。
なにがベストエンドで、今の現実がナチュラルエンドなのか、バッドエンドなのか、それともこれがベストだったのか、分からなかった。いつかは分かる時が来るだろうか。
夜の道を自転車で疾走しながら、様々な考えが頭をよぎった。
あのまま抱きしめて思いを打ち明ければ、もしかしたら。
可能性があったんじゃないだろうか。
頑固な彼女のことだ、最初は頑なに拒絶するだろうけど、いつか心を開いてくれたかもしれない。
それはもしかしたら、この限られた時間の中だけで有効な魔法だったのかもしれない。
女神はなんと言っていた?
いいえ、私の片想いなんです、死ぬまで追いかけますから、と。
あのセリフは店のおじさんに対する、単なるジョークだったのだろうか。
もしかしたら、彼女にできる、最後で最大限の告白だったんじゃないだろうか。
僕はそれをぼーっと聞いていただけだった。聞き流していた。それを見て、女神はどう思っただろう。精一杯の告白を受け流された、と傷ついただろうか。
いや待て、と電車の中の思考が蘇る。
あれはただの漫才、そう、軽口のひとつだ。鵜呑みにするなんて、非モテはこれだから。
冷静になって考えろ。お前が釣り合う女性だと、本気で思うのか?気安くつけこんで、弱った心の端にうまく触れただけだ。
女性はある日突然、誰かに心の中を吐き出したくなるのかもしれない。
それが初めての行為なら、それを告げた相手を信頼できる人、などと思い込んでしまうだろう。それは言わば、ハシカのようなものだ。
彼女はこの数日、ハシカにかかっただけだ。すぐに治る。
治ったら現実に戻る。つまらない男を相手にしてしまった事を、後悔されるのは嫌だ。
だが、また心の中の誰かが反論する。
女神は16年間生きてきて、初めて家族以外の男性に温めてもらった。心が溶かされるよう、と言った。
溶かしてやったのは誰だ?カッコいい先輩か?エースピッチャーか?
違う、僕だ。僕だけができたことだ。彼女は一度、僕の汚い心に触れた。ゲームしよう、そう無邪気に笑った彼女の背後で、僕は不覚にも女神に突起物を押し付けてしまっていた。彼女にもそれが分かっていた。
それでも、彼女は再び二人きりになることを決意した。出会ってまだ2日しかたっていない男の子の部屋に、進んで入った。温めて欲しい、ぎゅっとして欲しい、そう言った。
だが、本当はそれだけだったのか?普通の思考を持っていれば、彼氏でもないオトコの部屋に入るということが、どういう結果になるかは分かっていたはずだ。彼女は子供じゃない。
信頼できるから、そんな台詞は、怒涛のごとく流れる男の性欲の前には無意味だ。それも承知の上で。
抱かれてもいい、そう確かに彼女は言った。自分の汚れた部分を話して、それでも全てを強引に奪ってくれることを、上書きしてくれることを、その後はどうなるかも分からないような男の部屋に。
いや、それはさすがに考えすぎかもしれない。が、あの時、彼女は何度も僕の言う言葉を遮った。それをさらに遮って、抱き寄せて、芯から温めてもらうことを、望んでいたんじゃないか。
バカを言うな。
また誰かが反論する。
お前に抱かれたかったって?こんな薄汚いお前に?ふざけんな、反吐が出るぜ。
お前は一体、彼女を頭の中で何度犯した?今の彼女を、そしてジュニアアイドルの頃の彼女を。
お前の机の奥にある写真集はなんだ?10歳前後の、まだ性的未成熟な頃の彼女を何度オカズにした?
お前はロリコンで、ペドフィリアで、彼女の小さい頃の赤い水玉の水着を、その奥にある隠された身体を見たいだけの変態だ。腐れ外道だ。
それだけじゃない。てめえ、ゲームに熱中している彼女の事を欲情に染まった目で眺めていただろ。ああ。目で犯していた。
視姦していた。いつ襲うか、どうやってシャツを脱がせて、彼女の背後に回って、腐れた分身を________
「やめろ!」
ギュッとブレーキを絞った。キキキッ、と自転車が止まる。
「やめてくれ・・・・・・」
これ以上、女神を穢すのは。
これは一体何だ。なにが起こっている。
僕は多重人格者で、人格破綻者なのか?
倒錯した性的犯罪者、もしくはその予備軍なのか?
女神に対する想いは、敬愛の念ではないのか?単なる性欲か?
もしくは有名な女性を彼女にしたい、みんなに羨ましがられるような思いをしたい、それが本当の気持ちなのか?
抱きしめた温かさは、単なる肉欲のすり替えか?彼女が許してくれたから、大っぴらに抱きしめたかっただけか?
彼女の血を吐くような告白は、どう思った?むしろ都合がいいと思ったか?誰も知らない彼女の過去を知れば、彼女は気を許してくれる、つけ込めるとでも?
いや。
いいや、違う。
そういう想いは、ないわけじゃない。
だが、それが本質じゃない。絶対に。
女神に、会いたかった。
ただ無性に会いたい。会って、今の気持ちを伝えたい。心の底から、そう思った。
暗闇の中、誰も待っていない場所に向かって、自転車を返す。
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