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4.TR上平線 大衛(おおえ)駅
しおりを挟む最終列車。
都心から郊外に向かう最終列車は得てして混雑しているが、終点が車庫のあるだけの駅への最終は誰もいないか居てもひと車両に1人か2人、15両繋いでいるのに全体で10人も乗ってないだろう。
言ってしまえば、今彼が乗っている上平線最終大宝井(おだかい)行きは、付近で大規模なニュータウンが形成されている途中の大川駅をすぎると、終点大宝井までは回送列車についでに車庫近辺にポツポツある民家へ帰る人のために人を乗せてるだけの列車という雰囲気である。
彼は大川から二つ先の小衛原駅に帰宅するため、この列車によく乗っていた。
大川までは混雑していた車内も、急にひっそりとし、次の北大川で残りの人もほとんどが降りる。
同じ車両に乗っていて北大川から先に行くのは2人だけだった。
そこでもう一人の同じ車両の少し先に乗っているサラリーマンを横目でちらりと見た。
何度かこの最終列車に乗っているのをみたことがある、若そうなサラリーマンで、いつも俺と同じように小衛原で降りているのだった。
北大川を発車し、列車は少し坂を登り始める。
いつもはそのまま坂を登り切ると小衛原になるが、その日は坂の途中で減速を始めた。
なんかおかしい。
普段なら坂の勾配を感じて数分走るのだが、なぜか2分もせずに列車は減速し、坂の勾配がふと緩んだ気がした。
ふとスマホから目を離し、外を見るが、真っ暗の中で外に林が見えるだけの車窓である。
そしてガクンっと勾配が緩くなってスピードが落ちる。
明らかに坂の途中にある駅に止まる動きだ。
そして、列車は駅に止まる。
ドアが開き、誰も乗っていなかったような電車のどこから出てきたのか10人ほど駅に降りて行った。
ふと駅名表を見ると「大衛」駅とあった…隣の駅が消えて見えないのはなぜだろうか。
そのほとんどが生気がないように見えたのは気のせいだろうか。
そんな中、件のサラリーマンが不思議そうな顔で降りていくのが見えた。
おいここ小衛原じゃないぞ…。
内心思いながら、彼を目の端で追っていると、ドアが閉まった。
「あ!」
絶対そう叫んだ顔だった。
その後彼を残して列車は動き出し、そのまま坂を上がり切っていつも通り小衛原のホームに滑り込んだ。
俺はそのまま小衛原で降り家路へと急いだ。
名前も知らない彼の叫んだ顔が頭に浮かんで、ベッドに入ってからもしばらく寝られなかったのは気のせいということにした。
ここからは後日談である。
インターネットの掲示板のオカルトスレに、「間違えて変な駅で降りたけど、外の様子が変」という書き込みがあったらしい。
何回か、同一人物とみられる書き込みが繰り広げられ、最後には何とか小衛原にたどり着いたとの書き込みがありスレを見ていた面々が安堵した。
しかしその人物の最後の書き込みが物議を読んでいるらしい。
最後の書き込みは以下のようなものである。
「何とかいつも通りの道に出たので、家にたどり着きました!
もうこんな時間…明日も早いのですぐに寝ます!
お付き合いありがとう!
20XX / XX / XX 14:39 ID:kNoEZak」
なぜか「こんな時間」「早く寝る」と書き込んだ時間が、昼の2時台という不可思議な書き込み…。
しかもこの後、例の最終列車に彼を見かけることは一度もない…。
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