うっかり喚びだしたのはスーツの邪神でした。

イワキヒロチカ

文字の大きさ
4 / 15

しおりを挟む

 邪神だとか異次元から出てきたとか、物語の中の話だ。あり得なさすぎる。
 だが、この男がただの妄想癖のある不審人物だったら、この状況はなんだ?
 ただの人間にこんなことができるとは思えない。

「っな、に……熱ッ……!?」

 考えているうちに手足を拘束している触手が不意に熱くなったかと思うと滑りを帯びて、その分泌液が服を溶かしていくのを見てギョッとする。
「な、なんだこれ…っ」
「安心しろ、身体を傷つけるものではない」
 ホッとしかけて、しかし安心している場合ではないと我に返った。
 みるみるうちに溶けていく洋服。
 拘束されている場所からじわじわと、肌色が露わになっていく。
「やっ…嫌だ…っ」

「戦いとも労働とも無縁の、貧相な体だ」

 評価に、唇を噛んだ。
 まどかは同年代の友達の中では平均的な体格だ。スタイルは悪くない方だし、顔も、かわいいと言われてしまうことはあるが、つまり不細工ではない。
 だが、デスクの前に置かれたキャスター付きの椅子に座り、長い足を組んでゆったりとこちらを眺めている男は不審者でもなんでもない、経済誌でインタビューを受ける社会的成功者のようにも見えて、明らかに自分よりもビジュアル偏差値の高い相手にじろじろと検分されると、いたたまれなかった。
「伯父にも、こっ…こんなことを?」
「いや、お前の伯父は用心深かったからな。私を顕現させる隙は作らなかった」

 伯父さん…そんな用心深さがあったなら、遺言書に「メモを読み上げるな」とかくらい書いておいてくれてもよかったのに…!

「と、とにかくもういいだろ、離せよ…っ」
 辱めならもう十分ではないかと訴えたが、男は肩を竦め首を横に振る。
「まさか。お楽しみはこれからだろう?」
「ヒ……ッ」
 影から更に、身体を拘束しているものよりも細い触手が勢いよく伸びてきて、まどかに絡みついた。
 絶妙な力加減で巻き付くと、様々な場所を這い回る。
「や…っそん、なところ…っ」
 乳首を、脇を、足の指の間を、臍を、竦んでいる性器と、そしてその更に奥の蕾を同時に刺激され、鳥肌が立つ。
「隷属させても大した役にはたちそうもないが…その危機感の足りなさは悪くないな。絶望させてみたくなる」
 恐ろしい呟きにゾッとしたが、抗議の声はざわりとした体感に打ち消された。

 細い触手が這った場所が、熱い。
 先程の熱さとは違う、ゾクゾクして、力が抜けていくような――――――

「な……に、これ……っ」
「催淫効果のある分泌液だ。楽しめ」
「うそ……あッ」
 そんな馬鹿な、と思ったが、呼吸が荒くなり全身にじっとりと汗をかきはじめてまどかは目の前が暗くなる思いがした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま
BL
オメガ男子の小島史(ふみ)は、ネットを中心に展開している中小広告代理店の経理部に勤めている。会社が国の補助金が入る婚活アプリ開発に関わる事になった。テスト版には、自社の未婚で番のいないアルファとオメガはもちろん未婚のベータも必ず登録して動作確認をするようにと業務命令が下された。史が仕方なく登録すると社長の辰巳皇成(こうせい)からマッチング希望が…

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

処理中です...