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今更こんなことを告白したところで、心を繋ぎとめるどころか困らせるだけだ。
けれど、もしも終わってしまうのだとしたら、有耶無耶にするのではなく本当のことを知らせた上で拒絶された方が、冬耶も諦めがつく。
自己満足かもしれなくても、至らない自分にずっと優しくしてくれた人への冬耶なりの誠意でもあった。
すぐには御薙からの言葉はなく、彼が何を考えているのか不安になってくる。
だが、音にしてしまった言葉はもう元に戻らないのだ。
冬耶は覚悟を決めて視線を上げた。
「……………………」
御薙は何故か、刮目したまま固まっている。
「み…なぎさん…?」
声をかけても無反応だ。
どうしよう。硬直するほど衝撃的な話だったのだろうか。
おろおろしていると、御薙はぎぎぎと作動音でもしそうなカクカクした動きで口を開いた。
「好きだったって…、本当か?」
「は、…はい」
改めて確認されて申し訳なさに俯いたが、がっと強く肩を掴まれて驚いてまた顔を上げる。
「お前、あの夜のこと…、俺がお前を初めて抱いたときのことは覚えてねえんだよな?」
「す、すみませ」
「あの夜、先に好きだって言ってきたのはお前だった」
「え……、」
「けど、次の日店に行けばやたらよそよそしいし、そもそも覚えてないっつーから、俺も最中の言葉を真に受けて先走って迷惑かけたなって思ってたけどよ」
自分が、そんなことを?
聞いても信じられないが、確かに抱き合う相手に感じた愛しさの残滓は記憶にある。
「あれはつまり、酔って本音が漏れてただけだっつーことだな?」
ぐっと迫られて、己の失態に冬耶は小さくなった。
「…ゃ、あの…、それは…、す、すみません…」
隠していたつもりだったのに、のっけから本当の気持ちを伝えてしまっていたなんて。
お酒の飲み過ぎダメ、ゼッタイ。
過去の自分を呪い倒していると、御薙は「何で謝るんだよ」と笑い、肩から手を離した。
そしてわざとらしく咳払いをする。
「ゴホン。ただまあ、お前が本当の気持ちを話してくれたのは嬉しいが、今そんな告白をされると、俺もちょっと理性を保てる自信がだな」
「こ、告白?」
謝罪をしたつもりだったのだが、どうして理性を失うような話になるのだろう。
怒りで…ということでもなさそうで、なんだか、先ほどから会話が噛み合っていない気がする。
「俺のこと、受け入れられないとかそういう話じゃ……?」
「???何でそんな話になった?」
「さっき…、急に出て行くから、俺といるのが気まずいのかと思って…」
「気まずいっつーか、うるうる見つめられたらうっかり邪念が湧いてきたから、お前の身の安全を考えて席をはずそうとしたんだよ」
「う、うるうる?身の安全って…」
「お前が疲れてるみたいだから事務所じゃなくてこっちに戻ったってのに、より一層負担をかけるようなことをしたら本末転倒だろ」
「そ……、」
そんな理由とは、微塵も思わなかった。
そういえば埠頭での別れ際、ハルにじっと見られたのを不思議に思った気がする。
あれは冬耶の体調を確認してくれていたのか。
……………………。
じわじわと御薙の言葉を理解していくにつれ、冬耶は真っ赤になった。
勝手に勘違いして、半べそで御薙に縋りついてしまった…。
思い詰めて性別まで変わってしまったなんて、恥ずかし過ぎる。
言い訳をするなら、今日は色々と恐い目にも遭っているし、そのせいで陰気が高まっていた可能性が…それで情緒も不安定に……………、ええまあ、言い訳なんですけど。
「…よくわかんねえが、問題は解決したか?」
「いっ…、一応…?」
解決したというか最初からなかったことがわかったというか。
「じゃあ、俺も相談させてもらっていいか」
「相談?も、もちろんです」
何だろう。
自分が役に立てることならいいのだが。
「責任を取るためにこのままお前を寝室に連れ込むべきか、体調を慮って耐えるべきか、お前はどっちがいいと思う?」
「……………………はい?」
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