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しおりを挟む密室に卑猥な音が響く。
再び始まったキスに酔っている隙に下着ごとズボンを奪われ、気付けばソファの上で足を開き、御薙にその中心を咥えられているというとんでもない状況になっていた。
冬耶にはあまりにも過ぎる刺激で、声が出ないよう手で口を押えても、己の殺した吐息にすら煽られてしまいどうにもならない。
「んん、は、ぅ……っ、…だ、だめ、です…っ」
少しでも口を開けば大きな声が出てしまいそうだ。それでもなんとか駄目だと訴えたのに、御薙は止めるどころか、そそり立ち震えるそこをより強くすすり上げた。
「ひ、っ……ぁ、ん!……ぁ……っ」
「…ん、…どうした、外に聞こえちまうぞ」
「ぅ…、ゃぁ…、む、無理…っ、」
涙目で懇願しても、御薙は目を細めるばかりだ。
「お前は真面目で可愛いな」
「や、まとさ……、っぁ、」
尖った舌で先端を抉られ、そのまま熱い口の中に迎え入れられると、冬耶は限界を迎えた。
「あ、だ、め…っ、~~~~ッ」
「おっと……」
のけぞり、ソファからずり落ちそうになった身体を引き戻された。
座面の上で呆然と天井を見上げながら、絶頂の瞬間のことを反芻する。
声を出すのはなんとか耐えた……はずだ。たぶん。恐らく。
息を整えていると、御薙の手が後ろを探りはじめてギョッとした。
「ちょ、……、これ以上は、ほんとに、無理です……っ」
「でも、こっちもわりと準備万端だぞ」
汗や色々な水分でしっとりと濡れたそこは、戸惑う冬耶の心に反して御薙の指に吸い付くような動きをする。
もちろん好きな人に求められて嬉しくないはずがないし、冬耶にも欲望はあるのだが、これ以上声を抑える自信はない。
断らなくては。
冬耶は決意を固め、弱々しく御薙を押し戻した。
「ちょ、『ちょっとだけ』はどこに行ったんですか…っ」
上手い反撃をしたつもりだったが、御薙はしれっとしたものだ。
「二回目は遠慮するくらいのイメージだな」
「イメージの齟齬が大き、ぁっ…」
ぐっと、御薙の太い指が挿入ってくる。
御薙に日々愛されているお陰か、潤滑剤などがなくても比較的スムーズに受け入れてしまった。
「(いや、だからこそ、駄目なんだって…っ)」
このままでは、本当に場所を忘れて耽ってしまいそうだ。
「そんなに気になるなら、あいつらにも話しとくか?」
指の動きは止めず、御薙が提案してくるが、そういう問題ではないと思う。
「そ、それは、ちょっと…、というか、知られてても声を聞かれるのは」
「ただなあ、お前が俺の大事な存在だってのが内外に広まると、お前が危険な目に遭う可能性も増えるし、何より、他の奴らにもお前がそういう対象として意識されるようになるかもしれないのが気になって」
「そ、そんな奇特な人はいないと思…っ、…あ、んっ……、っ、~~」
感じてしまう場所をぐりぐりといじられて、冬耶は会話どころではなくなった。
「そろそろいいか……、」
冬耶がただ与えられる刺激に耐えるだけになった頃、ようやくずるりと指が抜かれる。
腕をとられ御薙の首に回すように促されて、もはや息も絶え絶えになっていた冬耶は、ぼんやりしたまま素直に従った。
背中に手が差し入れられて、身体が起き上がる。
「ぇ、わ……」
そしてそのまま御薙の膝に座る形になった。
二人の身体の間には、いつの間に解放されていたのか、御薙の屹立が無視できないほどに存在を主張していて、流石の冬耶もこれはもう逃げられないやつだと悟ったが、念の為、再度確認することにする。
「ほ、……本当に……するんですか?」
「この状態で何もせずに解散になったら、それはそれでおかしいだろ」
「……変な噂になっても知りませんよ」
こんなこと、吹聴されて困るのは御薙の方だ。
居づらくなった場合、冬耶は必ずしも事務所に来る必要はないので、来ないという選択肢がある。
しかし、組が解散するまでは、ここは御薙の職場なのだ。
御薙は不敵に笑った。
「お前との噂なら望むところだ」
その力強さに思わず見惚れていると、太い先端が狭い場所に潜り込んでくる。
「っ……!……、ぁ、……っ」
「力入ってんな」
緩めろと言われても、力を抜いたら声が出てしまいそうなので、無理だ。
「い…から、このまま、」
むしろ快感がより深くなる前に済ませて欲しいと思ったのに、しかし御薙は動きを止めたまま、冬耶を見ている。
やけにじっと見つめられて、恥ずかしくなって目をそらした。
「な、なんですか……?」
「いや…、兄貴分でよかったって思って」
「え……?」
「俺が普通のサラリーマンだったら、流石にオフィスでこんなことしようとは思わなかっただろうからな。ヤクザになってよかったって、今初めて思ったぜ」
「そ、それは全然必要のなかった感動で、……っあ!」
ぐっと腰を突き上げられて、高い声が出てしまい、慌てて口を覆った。
本当にこれ以上は無理だ、と眉を下げて見つめても、御薙はただ悪戯っぽく笑っているばかりで。
「もう諦めて、溺れちまえ」
「や、あっ、む、無理……っだめ、……っ」
御薙に一切協力する気がない以上、冬耶が声を抑えることなどできるはずがないのだった…。
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