幼なじみは絶対人質の許嫁

青香

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 「いやぁ!さすがカレラさんですね?実は」

 ここまで聞いて、カイルはようやく動き出す。
 このまま何も対策せずに、話を進めてはマズイと思ったからだ。

 「父さん!」

 急に父を背後から呼びかけ、会話へ強引に割って入る。
 ベイルは振り向き息子を見た。

 『カイル、どうした?何かあったのか?』の表情をする父に、カイルは声に出していうと感づかれてしまう可能性がある為、今まで使った事はないが、無言で伝えるアイコンタクトを使用した。
 『いずれ広がる話だが、まだ今日は発表しないでいいだろ?ほら、今から色々あるわけだし』と、俺の気持ちを察してくれと必死に訴える息子の目に、ベイルはハッとする。
 『あぁ、なるほど。フフッ。任せておけ、息子よ』と言わんばかりに口元を緩ませて微笑すると、再びカレラに視線を戻す。
 そんな父の背中を見て、カイルは安堵と共に尊敬の念を抱いた。

 みなまで言わずとも、俺の気持ちを察してくれた。
 初めて使った連絡手段だが、フフッ。
 真の親子が成せる技、という事だな!
 これが他人同士なら、決して通じる事はないだろう。
 そして任せておけと見せる頼もしい背中。
 この格好良さは、なかなか真似出来るものではない。
 さすが俺の父だ。
 父さん。
 俺も、そんな格好良い男になるよ。

 全てを父に託し、カイルは背後から見守る。
 どんな感じで難敵『カレラさん』を撃破するのか、大人の対応というやつを学ぶためにも。

 ベイルはニコッと笑い、カレラに話し出す。

 「実はウチの息子がですね、お隣のティナちゃんの、許嫁と言いますか婚約者と言いますか」
 「うぉぉぉい!!」

 予想外過ぎて咆哮するカイル。
 その声量に驚きながら振り向くベイルは、『どうしたんだ一体!?』の表情をするので、カイルは思わず口にする。

 「父さん違うだろ!それを話してどうするんだ!」
 「えっ、なんで?違うのか?さっきお前、『良い機会だからカレラさんに広めてもらおうじゃないか。良い事だからな』みたいな目つきしてたじゃないか!?」
 「してねぇぇよ!!」

 全然通じてないじゃないか!
 おまけに真逆過ぎだろ!
 あぁ、もうダメだ。
 一時間後には、村中に話が広がってしまう。

 なぜそう思ったのは、『婚約』という言葉に、カレラさんが目を輝かせていたからだ。

 俺のミスだ!
 こんな事になるなら、ハッキリと言葉にして言えば良かった!
 アイコンタクトなんて慣れないことをしたから。

 クッ!

 今更後悔しても仕方ないが、それが一番の原因。
 大失敗だ。
 あぁ、こんな事になるなら、父と正確に意思疎通できるレベルで、アイコンタクトを鍛えておけばよかった。

 頼もしい背中からの期待外れの大外れ。
 あまりの衝撃に、『アイコンタクトのレベルを最高までに極めなければ』と、変な思考に誘われるカイル。
 そんな彼をほっといて、カレラはテンションを上げる。

 「ついに二人の関係性が発展するんですね!?」

 出来立てほやほや。
 おまけに待ちに焦がれた情報に、彼女の興奮はグングンと加速した。

 「ティナちゃんを甲斐甲斐しく守るカイルくんだから、いずれその時が来るとは思っていましたが!幼なじみ同士が夫婦になっていくなんて、最高の特ダネじゃないですかぁ!」

 情報が無常の喜びである彼女にとって、最高の瞬間だった。
 無邪気に喜ぶカレラの姿を見て、カイルは思う。

 あ、俺とティナって、他の人からそんな風に見られてたんだなと。
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