貴方の妻にはなれなくて

cyaru

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(๑>؂<๑) ハーシア15歳♡

38:親子喧嘩

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一方セシル伯爵家ではユリアを送り出した後、険悪な空気が屋敷の中を漂っていた。

1、2日なら仕方がないと思えても3日目、4日目となると笑ってばかりはいられない。

「ファクター。話が違うじゃないか!」
「知るかよ!父上がいきなり執務をさせようとするから臍を曲げたんじゃないのか?」
「ならやり方を変えればいいだろう。ユリアにやらせろ!」

ユリアにやらせろと言ったセシル伯爵もユリアが出来るとは思っていないが、早く執務を行わないと期日が迫っているものだってある。
提出できなければ事業から外されてしまって収益が見込めなくなってしまう。

セシル伯爵夫妻は焦っていた。
ハーシアが取り込めると思って今まで長く務めてきた執事を解雇してしまっていたのだ。正確には解雇を匂わせたら「じゃ、辞めます」と教育の始まる前日に辞めてしまった。


人件費は経費の中でも一番支払額が多くなる。家令や執事になると1人に払う額も相当なので5人いた執事のうちファクターに家督を譲った時に年齢が近しいものが良いだろうと雇い入れた若い執事を除いた4人は解雇し酔うとしたら匂わせただけで引継ぎも無しに、紹介状も不要だと辞められてしまった。

残った執事にやらせようとしたが「他の事で手一杯」と断られてしまっていた。

まさか執事を解雇していたとは知らなかったファクターは「勝手な事をするな!」怒鳴った。

――執事は新しく雇うしかないな。手間をかけさせやがって――


済んだことに憤っても仕方がない。
さてどうするかと頭を抱えている所に唯一の執事が声を掛けてきた。

「どうしたんだ?」
「騎士団から急ぎの書簡が届きました」

セシル伯爵に渡すのかと思えば、執事はファクターに届いた書簡を渡してきた。
変だなと思ったが、宛名はファクターになっている。裏面には騎士団の団長の名前が連名で書かれていた。

騎士団への出仕はここ数日、休暇の届を出していて認められてるので欠勤であると咎められる謂れはない。何の気なしに開封し入っていた書類を見てファクターは「は?」目を丸くした。


そこには第3王子派の団員に退役をするか、残るのなら忠誠を誓う王子を選べとあった。

延長線上に国と言う母体はあるが、各々の役割を果たす3人の王子それぞれに騎士は忠誠を誓う。

過去には第3王子に傾倒したファクターも今回は極力第3王子には接触をしなかった。第3王子の隊に名を連ねたのはセシル伯爵家が派閥に属していたからに過ぎず、ファクターの意思ではなかった。

前回のようにもっと密な連絡を取り合っていればもっと早くに状況を知れただろうが、前回の人生でファクターが頭角を現したのはまだ先の事。今はその他大勢に過ぎなかった。

使途不明金の問題で第3王子が諮問委員会の調査対象になった事は知っていたが、悪知恵だけはよく働く王子だったので、有耶無耶に出来るとファクターは過信していたし、どの道ハーシアとの未来では騎士は退役するのだからどうでも良いと放っておいたのだ。

文字にされていないが第3王子が完全に失脚したことを示す手紙。

騎士団からこんな通知を受け取る前に派閥に属している家にはもっと早く他家から今後の身の振り方をどうするかと相談があったはずだ。

他の王子の派閥に移るにも利害関係があるので、より利のある家とセットで受け入れてもらった方が待遇は良くなる。

「父上、派閥についての手紙や‥‥相談は受けていないのか!?」
「派閥?…あぁそう言えば何通か書簡が届いていたな」

暢気な声をだしたセシル伯爵は「あれを持ってこい」と執事に言うが「あれ、それ、これ、どれ」で話が通じるほど執事は務めていない。

「あれだ!あれ、あれ!」

何度言っても話が通じず、業を煮やしてセシル伯爵が部屋に届いた書簡を取りに行き「これだ」と無造作にテーブルに置いた。

ファクターは1通を開封し、文字に目を走らせると2通目、3通目と開封していく。

「嘘だろ…」

第3王子の派閥に属していた家は、他の王子の派閥に鞍替えをするために話し合おうと書簡を送ってきていたが、開封すらされていない。

どれもこれも、この日に集まろうじゃないかと指定をした日は過ぎていた。

「なんで読んでないんだよ!」
「お前こそ騎士団からの手紙はなんだったんだ!」
「話を逸らすな!なんで読んでないのかと聞いてるんだよ!」

書簡をバサバサ音をさせてセシル伯爵にファクターは詰め寄ったが、書簡を奪い取ったセシル伯爵は文面を見て「くだらない」と床に投げ捨てた。

「ハーシアを取り込んで稼がせれば派閥など何処に属さずとも問題ない」
「何言ってんだよ!」
「あの娘は金の卵だ。お前は知らんだろうが私は知っているんだッ」

開き直ったのか勝ち誇ってファクターに告げたセシル伯爵は「やり方が生ぬるい」と言い出した。
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