貴方の妻にはなれなくて

cyaru

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(๑>؂<๑) ハーシア15歳♡

48:貴方の妻にはなれなくて

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ファクターとユリアから出立の前日になってハーシアにどうしても会いたいと連絡が来た。

「どうする?」
「そうね。面倒だけどバイソン子爵家の領地にまで呼び出しが来ても面倒だから会うわ」
「引導渡す事になるぞ?」
「それでもいいわよ。それくらいの覚悟はしてるでしょ」

ハーシアはどうせ夢だし、この際だから「ざまぁみろ!」とでも言ってやろうと思った。
現実の世界の2人には終ぞ言えなかった恨み節。

どうせ自分の夢だし、ユリアが見ている夢でもないのだから言い逃げしちゃえ!とフンフン!鼻息を荒くした。


★~★

ファクターは外傷はほとんど癒えて、綺麗な顔をしていた。

「来てくれてありがとう。今日は気分が良いんだ。ハーシアに会えると思ったからかな」

ファクターは寝台に横たわり震えながら手を伸ばしてきたがハーシアはその手を取ることはなかった。


傍に付き添うユリアはたった数日会わなかっただけなのに頬はこけて、目の下には化粧もしていないのに真っ黒いクマ。

肌もカサカサを通り過ぎてバサバサで皮膚が鱗のように逆立っていた。

「ハーシア…お願いよ。手伝って。昼も夜も休めないの」
「そう。大変ね」

――判るぅ。私もそうだったの。でも呪いじゃないからファイト♡――

ユリアが疲れているのはハーシアにも経験があるので「うんうん。辛いよね」気持ちに寄り添う事が出来る。

でも、ユリアはまだ楽でもある。
何と言っても今のファクターは呪われていないのだから。

大変だったのだ。
呪いは体の深層部に浸潤していくので食い止めるには常に魔力を壁のようにして食い止めねばならない。自分の魔力に呪いがあたるとハーシアの命もカリカリと削られていたのだ。

今は命が削られないより程度は軽い。確かに疲労は極限でそれもまた命を削ると言うけれど呪いがない分、まだ楽なのだ。

「大丈夫。慣れれば寝る時間も5分、10分と確保できる!うんっ!」
「そんな…もっと寝たいのよ!5分なんて寝た内に入らないじゃない!」
「解るぅ~。でもそんな事思うのは最初だけ。3年、4年と介護が続くと2分の睡眠もご褒美に思えるわ!」

――それに私が夢から覚めたら介護も終わりよ?楽ッ勝!――

ファクターが「この状態が楽」と言えばユリアは魔力をファクターに向けて発動する。
2人は離れないように手枷をしているのだが、ハーシアには「仲良しさん♡」としか思えなかった。

元気出して!とユリアの肩をポンと叩くと手を振り払われた。

「勝手な事言わないで!こんなの絶対に嫌っ!」
「大丈夫だって。だって、これは夢だもの」
「は?何言ってるの?これが夢?何処をどう見たらそう見えるのよ!現実よ!紛れもない現実ッ!」
「うんうん。解るわ。だって私の夢だもの。そうだ。この際だから言っちゃっていい?」
「何を言うのよ!」


ハーシアは息を吸い込む。
ファクターに向かって思いの丈をぶちまけた。

「こぉんの不貞野郎!何が次の世はずっと傍に居たいよ!こっちから願い下げ!知らないと思ったら大間違いよ!ユリアとの不貞に二重生活!子供はこっちに押し付けて贅沢三昧ッ!地獄の底でも呪われろッ!!」

そしてユリアを見てビシっとファクターを指さした。

「こんなドクズがいいなんて目がおかしいんじゃないの?今度は独り占めできるんだから後生大事に首に縄でもつけて傍に置いとけるように、リードを結婚祝いに贈ってあげる。義両親も一緒に伯爵夫人だなんて人生どどめ色!ざまぁみろよ!」


最後に2人に向けて肺に残った息に言葉を乗せて吐き出した。

「今度はサーシスだけじゃなく子供作るなら最後まで責任見やがれッ!生活から育児まで押し付けてんじゃないわよ!いい?面倒見てくれって連れて来てもお断りよ!お・こ・と・わ・りッ!」


言い切ってハァハァと息をするハーシアにプレデータが肩に手を回して抱きしめてくれた。

「し、知ってたのか…」

ファクターはこの世の終わり。そんな表情でハーシアに近づこうと横たえた体を起こそうとしたが、腕に力が入らず少し体が浮いただけでまた寝台に沈んだ。今度は体を捩じりよろよろと上体を起こした。

「すまなかった。心からハーシアには詫びたいんだ。今度こそ、今度こそは良き夫でありたいと思うし、ハーシアとの子供をこの手に抱きたい。もう一度俺と…俺の妻になってくれ。ハーシアしかいないんだ。俺の全てがハーシアを望んでいるんだ」

「お断りよ」

「許せないのは解る。酷い裏切りだ。でも、もう間違わない。ハーシアだけを愛すると誓う。どうか…この手を」

ファクターが手を伸ばしてきたが、ハーシアは手枷のないユリアの手を掴んでファクターの手に重ねた。

「貴女の妻にはごめんなさいね?相思相愛を邪魔する気なんて微塵もないから、試さなくてもいいのよ?末永くお幸せにね!プレデータさん。帰りましょう。帰りにあの公園で果実水が飲みたいわ」

「ばいばい!」ハーシアは笑顔をファクターとユリアに向けるとプレデータの腕を掴んで部屋を出て行った。

2人のいる部屋からはユリアがファクターを罵る声が聞こえて来る。

「いいのか?」

プレデータが問うとハーシアはプレデータの腕に頬をあてて答えた。

「いいの、いいの。でも夢の中でも思いっきり声を出せるのね。私ね、夢の中ではいつも叫びたいのに声が出ない夢しか見たことなかったのよ。はぁ~言いたい事言えてスッキリぃ~」

その後、公園でハーシアはレモンの果実水、プレデータはレモンの皮で涼を取った。

「ちょっと齧ってもいい?」
「いいぞ」

プレデータが美味しそうにレモンの皮を齧るので少し果実の実がついた皮を齧ってハーシアが硬直したのは言うまでもない。
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