至らない妃になれとのご相談でしたよね

cyaru

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第10話♠  不在に気が付く

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「殿下、それは出来ません」

「何故だ?妃の家族が困っているんだぞ」

「殿下…ご存じないのですか?」

「私が何を知らないというのだ。不敬だぞ?」


ルシェル達を連れて宮に戻ると父上の元から遣わされている執事が渋い顔をして3人を留め置くことは出来ないという。

言い合いになってしまい、仕方なく数日は庭にあるゲストハウスを利用してもらう事になってしまった。

「ここ、使って良いんですか?」

「あぁ、すまない。ルシェル達の好きにしていいから」

「嬉しい!殿下ありがとう!!」

ルシェルが満面の笑みで私に抱き着いてきてくれる。
嬉しいのだが使用人の目が気になってしまった。


ルシェルが近くに居ると思うと3年後を想像してしまい気持ちが高ぶってしまう。
かと言って宮は使用人も多く、2人きりの場所など無い。

私とルシェルは真夜中に庭で愛を何度も交わした。
月と私だけがルシェルの美しい裸体を知っている。

食事にも毎回誘いをして、家族団らんの食事も楽しんだ。
そこに邪魔者はいなかったのだ。


だが、ゲストハウスを貸して1か月。
私は従者からビックリするような言葉を聞いた。

「殿下、調度品が市井に流れております」

「は?どういうことだ?」

「言葉の通りで御座います。発見した物は買い戻しておりますが全ては無理かと」

何と言うことだ。
使用人の誰かが持ち出し、買取店に売りさばいている。由々しき事態である。
この宮にある全ての調度品には私の紋が焼き付けられている。

下賜品であればまだしも、買取店と言う事は金銭目当てに盗み出しているという事になる。

王族は身の回りにある物など全てが血税が原資となっているため、茶器が破損をしても申請する必要があるのだ。それを金目当てに売りさばく、いや、それ以前にこの宮から易々と持ち出されている事も問題になる。

それだけ防犯が緩いとなり、機密に該当するものは無いにしても誰にも気づかれず持ち出されているのは大問題なのだ。

「全ての使用人の私物を改めよ!」

「それが…出所は解っているんです」

「解っている?なら何故ここにそやつを連れてこない!私が首を刎ねてくれる!」

「よろしいのですか?」

「なんだ。その含みのある言い方は」

「含みを持たせているのではありません。殿下がお連れになったあの3人ですので我々も扱いに困っているのです」

「なんだと?!」


ルシェル達3人は私が執事の反対を押し切ってゲストハウスに招いている。使用人達にしてみれば賓客なので殺人などであれば取り押さえるが現行犯と言えど対応に苦慮していたのだ。


そして私の元ににわかには信じられない報告書が齎された。

「これは事実なのか?」

黙る従者。黙して語らぬことが事実なのだと物語る。
その書類にはルシェルだけでなくイサミア氏などの状況が記載されていた。


本人に確認をする前に、私は先ず妃であるファリティに聞こうと考えた。
事実を明確にするのにファリティ抜きでは成り立たないと考えたからである。

「ファリティはどこだ。ファリティに確認をするッ」



そこで気が付いた。
ファリティの姿を一切見ないのだ。
いや、見たいわけではないし妃のくせに遊びまわっていると周囲が思ってくれればこちらも万々歳だったが、いつから見ていないのだ?

そうだ。正教会に言ったあの日、結婚の翌日からだ。

もう1か月も経っている。幾ら役に立たない妃、至らない妃だとしても行き過ぎている。

私はファリティの部屋でもある夫人の部屋の扉を勢い良く開けた。

部屋の中には3人の掃除メイドが窓を拭いていて、驚いた顔で私を見ている。

が、驚くのはそこじゃないだろう。
夫人の部屋、王子妃の部屋でもあるのにこの部屋には何もない。

造り付けの鏡台、1人用の寝台は寝具はなく枠だけ。執務机もほとんどの引き出しが空っぽで紙とペンは纏めて1つの引き出しに入れられていた。

着替えも伽藍洞のクローゼットにはハンガーをかけるパイプしかないし、メイドたちも何時ドレスを運び入れても良いように窓を開けて昼間に風通しをするだけ。

洗濯でもするのか窓のカーテンを取り外したメイドはカーテンを腕に引っかけていた。


「今日もファリティは出かけているのか?」

「妃殿下ですか?はい。出かけられておりますよ?」

「何時戻るんだ?」

「お戻りは11日後の予定とお聞きしておりますが?」

「は?11日?そんなに宮を空けて何をしているんだ」

「宮を空けると申しますか…殿下も承知の事だとお聞きしています」

「そ、それは…うむ。判った。仕事を続けてくれ」

干渉はしない。
そう言う約束ではあるが、まさか宮を空ける以前にこの宮を使用したのは結婚の日と、翌日の朝だけとはこの時、私は露ほども思わなかった。
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