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第14話♠ 華麗なるヒラメキ
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ルシェルへの対応をどうするか。
私としてはイサミアとエマリアは不要な人間だ。
使用人として使ってやろうと思ったが、空きがない。
私費で雇う事は出来るものの身分が足枷となってしまっている。
私は第2王子。つまり王族だ。
ほんのさっきまで侯爵と思っていたイサミアはただの平民。
本来なら宮で面倒をみている事が異常事態なのだ。
「どうして止めてくれなかったんだ!」
従者に声を荒げるが、その従者は3人を連れて来た日、「引き受けられない」と私に反論した従者だ。
ハッとした。
その従者は父上が遣わせた人間。
――まさか、この事はもう父上の耳に入っているのか?――
もし、父上も知っているのだとすれば私の頼みの綱はもうファリティしかいない。
あのイサミアの素っ頓狂な返しで悟らない者はいないだろう。
ホートベル侯爵家が資産家であり実業家であったのはイサミアの手腕ではない。
初夜の日から回りくどい手で私に伝えて来ていたファリティが切り盛りをしていたに違いないのだ。
しかし…私は考えた。
ファリティは現在22歳だ。婚約をしたのは3年前で19歳の時。
――そんな若い年齢で侯爵家を切り盛り出来るものなのか?――
だとすればやはりイサミアは出来る男なんじゃないか。
だってそうだろう。
ファリティの母親はかなり早くに亡くなっていて、イサミアは10年近く寡夫だったのだ。
ルシェルはイサミアの事を「本当のパパ」と言っていたが、あり得ない。
ルシェルの年齢から考えて本当にイサミアの子であれば正妻が生きていた時からイサミアは入り婿の分際で不貞行為をしていたことになる。
自身の懲役や追放では済まないことくらいイサミアも理解はしているだろう。
イサミアの両親はもう他界しているが兄と妹は生きている。
侯爵家乗っ取りの計画だったとしてその兄と妹の家族も罪に問われるのだ。
――判らなくなったな。整理しよう――
私は紙とペンを用意し、イサミアと文字を書いた。
そしてエマリア、その名前の隣に「A」と書き2つの名を線で結んだ先にルシェルと書く。
そう、これで良いんだ。ルシェルの父はどこかの馬の骨。
その後エマリアがイサミアと知り合い、結婚をしたとすれば何の問題もない。
「なんだ。ちゃんとここは解決するじゃないか」
1つが解決するとやはりイサミアは出来る男で、幼いファリティを抱えてホートベル侯爵家の経営をしっかりしていたのと思えてくるから不思議だ。
宮に来て1か月も遊び惚けてしまったから訳の分からない事を言っただけだ。
「はぁ…悩んで損した。何の問題もない」
私は目の前で静かに呼ばれるまで立っている従者に声を掛けた。
「イサミアに私の仕事を手伝ってもらう事にする」
「それはどういう意味でしょう?」
「お前は父上の元に戻れ。イサミアを私の専属執事とする」
「そうすればゲストハウスに住まう事も問題ないからでしょうか?」
「そうだ。元々ホートベル侯爵家を回していた男なんだ。片腕となって貰う事に何の問題もない。むしろ…」
この3年間でファリティ、そしてホートベル侯爵家を見限ったところで何の問題ない、むしろファリティ、そしてホートベル侯爵家はお荷物なのだと周囲に見せつければいいだけ。
今のイサミアはホートベル侯爵家は何の関係もない平民。
つまり何もないところからたった3年で私の片腕として手腕を振るうのだからファリティと離縁をしてその娘であるルシェルと再婚となれば、更に評価も上がるし業績も上がる。
――いい事尽くめじゃないか!?――
ついでに住み込みで父のイサミアがこの宮で働いている。
留守がち、そして愚鈍で何の役にも立たないファリティの代わりを健気にこなすルシェル。
誰もが私の妃に相応しいと思う筈だ。
幸いにも再婚については身分の制限を受けない。
道が開けた!!
私は自分の素晴らしい考えに笑いが止まらなくなった。
数日後、ファリティ用に回されていたメイドたちと共に父上から遣わされていた執事も任を解いた。任を解いたと言っても父上の第5執事だったのだから元の場所に戻るだけだ。
「では、私はこれにて」
「あぁ、父上にもよろしくな」
私の隣には執事の装いに着替えたイサミアが立っている。
その隣にはドレスで着飾ったエマリア、そして庭の花よりも可憐なルシェル。
私は自身のヒラメキがこんなに冴えているとは思わなかった。
自分に褒美を上げたいくらいだ。
私はにこやかに手を振り、数人の使用人を父の元に送り返した。
私としてはイサミアとエマリアは不要な人間だ。
使用人として使ってやろうと思ったが、空きがない。
私費で雇う事は出来るものの身分が足枷となってしまっている。
私は第2王子。つまり王族だ。
ほんのさっきまで侯爵と思っていたイサミアはただの平民。
本来なら宮で面倒をみている事が異常事態なのだ。
「どうして止めてくれなかったんだ!」
従者に声を荒げるが、その従者は3人を連れて来た日、「引き受けられない」と私に反論した従者だ。
ハッとした。
その従者は父上が遣わせた人間。
――まさか、この事はもう父上の耳に入っているのか?――
もし、父上も知っているのだとすれば私の頼みの綱はもうファリティしかいない。
あのイサミアの素っ頓狂な返しで悟らない者はいないだろう。
ホートベル侯爵家が資産家であり実業家であったのはイサミアの手腕ではない。
初夜の日から回りくどい手で私に伝えて来ていたファリティが切り盛りをしていたに違いないのだ。
しかし…私は考えた。
ファリティは現在22歳だ。婚約をしたのは3年前で19歳の時。
――そんな若い年齢で侯爵家を切り盛り出来るものなのか?――
だとすればやはりイサミアは出来る男なんじゃないか。
だってそうだろう。
ファリティの母親はかなり早くに亡くなっていて、イサミアは10年近く寡夫だったのだ。
ルシェルはイサミアの事を「本当のパパ」と言っていたが、あり得ない。
ルシェルの年齢から考えて本当にイサミアの子であれば正妻が生きていた時からイサミアは入り婿の分際で不貞行為をしていたことになる。
自身の懲役や追放では済まないことくらいイサミアも理解はしているだろう。
イサミアの両親はもう他界しているが兄と妹は生きている。
侯爵家乗っ取りの計画だったとしてその兄と妹の家族も罪に問われるのだ。
――判らなくなったな。整理しよう――
私は紙とペンを用意し、イサミアと文字を書いた。
そしてエマリア、その名前の隣に「A」と書き2つの名を線で結んだ先にルシェルと書く。
そう、これで良いんだ。ルシェルの父はどこかの馬の骨。
その後エマリアがイサミアと知り合い、結婚をしたとすれば何の問題もない。
「なんだ。ちゃんとここは解決するじゃないか」
1つが解決するとやはりイサミアは出来る男で、幼いファリティを抱えてホートベル侯爵家の経営をしっかりしていたのと思えてくるから不思議だ。
宮に来て1か月も遊び惚けてしまったから訳の分からない事を言っただけだ。
「はぁ…悩んで損した。何の問題もない」
私は目の前で静かに呼ばれるまで立っている従者に声を掛けた。
「イサミアに私の仕事を手伝ってもらう事にする」
「それはどういう意味でしょう?」
「お前は父上の元に戻れ。イサミアを私の専属執事とする」
「そうすればゲストハウスに住まう事も問題ないからでしょうか?」
「そうだ。元々ホートベル侯爵家を回していた男なんだ。片腕となって貰う事に何の問題もない。むしろ…」
この3年間でファリティ、そしてホートベル侯爵家を見限ったところで何の問題ない、むしろファリティ、そしてホートベル侯爵家はお荷物なのだと周囲に見せつければいいだけ。
今のイサミアはホートベル侯爵家は何の関係もない平民。
つまり何もないところからたった3年で私の片腕として手腕を振るうのだからファリティと離縁をしてその娘であるルシェルと再婚となれば、更に評価も上がるし業績も上がる。
――いい事尽くめじゃないか!?――
ついでに住み込みで父のイサミアがこの宮で働いている。
留守がち、そして愚鈍で何の役にも立たないファリティの代わりを健気にこなすルシェル。
誰もが私の妃に相応しいと思う筈だ。
幸いにも再婚については身分の制限を受けない。
道が開けた!!
私は自分の素晴らしい考えに笑いが止まらなくなった。
数日後、ファリティ用に回されていたメイドたちと共に父上から遣わされていた執事も任を解いた。任を解いたと言っても父上の第5執事だったのだから元の場所に戻るだけだ。
「では、私はこれにて」
「あぁ、父上にもよろしくな」
私の隣には執事の装いに着替えたイサミアが立っている。
その隣にはドレスで着飾ったエマリア、そして庭の花よりも可憐なルシェル。
私は自身のヒラメキがこんなに冴えているとは思わなかった。
自分に褒美を上げたいくらいだ。
私はにこやかに手を振り、数人の使用人を父の元に送り返した。
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