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第27話♡ ささやかな幸せ
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「お嬢様。不幸の手紙です」
ルルが差し出してきたのは見た目はごく普通のありふれた封筒。
パロンシン領への出立を明日に控えた日の朝で御座いました。
「誰かしら」
「ですから不幸の手紙です。弔事のお知らせじゃないですよ?ついでにこの不幸を連鎖させるために読んだら一言一句間違えることなく書き写し、5人に出しなさい!なぁんてものでもないですよ?」
「それは不幸になるわね。それ以上だというの?」
ルルから封筒を受け取ると差出人は蒼の宮使用人一同となっておりました。
――ご祝儀?――
弔事はここ暫くなかったのでご祝儀にしては遅いご祝儀だなぁと中身を見てびっくりですわ。
中身を書いたのはこの達筆具合から見てレアンドロ殿下。
本当にいつ見ても字は綺麗なのよね。反動でやる事が汚いわ。
レアンドロ殿下の名前が差出人だと私が開封しない事を見越して使用人の名を使うとはこの卑怯者!!
えいえい!!と中に入っていた便せんを踏みつけてしまいました。
「お嬢様、ユルカク殿下はなんと?」
「ユルカク?何それ。新語?」
「いい夢みなよ!アバヨ!」
「ルル…それは新語はシンゴでもちょっと違うわ」
「解っています。お嬢様を試したのです。警邏隊24時の歌劇が間もなく公開なので。で、ユルカクってのはユルフワ女子とかユルカワ女子と言いますので、ヤルことなす事ユルユルでカクカク動くのでユルカクです」
「まさにチョメチョメな世界ね。内容は…宮に一度戻って欲しいそうよ」
「無理ですね」
「じゃぁ返事お願いできる?」
「イェッサー・アラサー・アイアイサー」
「ルル…何か良いことでもあったの?」
「なんで解るんです?!朝食の目玉焼きが双子でした」
――ささやかな幸せ。素敵よ。ルル――
ルルは良いことがあると親父ギャグのノリで受け答えをするのですぐ判るのです。
そして私のスケジュール管理をしてくれているのでですけども、極端にリスケを嫌っております。ほぼ5年先まで予定は埋まっておりますので、過日の視察旅行のように業務を交代できる要員がいればなんとかやりくりをしてくれるのですが「本人限定」となると替えが利きませんので元々の予定をドタキャンになってしまいます。
突然のキャンセルは相手も困りますものね。
婚約中の3年間と結婚式。ルルは「えぇ加減にせぇ!」と夜中に遠吠えしておりましたわ。
「明日の出立は9時なのよね」
「はい。9時出立で幌馬車は途中乗り換え11回。全て自由席で予約済みです」
「流石だわ。指定席だと少しの遅れで買い直しになっちゃうものね」
「はい。でも出来れば乗り換えは10回までが良かったです。回数券が10枚綴りなので」
「抜け目ないわね。経費削減ありがとう」
ライオネル様が「一緒に行くかい?」と声を掛けてはくださいましたが、同乗させて頂ければ確かに旅費は浮くのですが、王族の馬車ですからね。
周囲を警護する騎士を見た民衆から、第1王子と第2王子妃として扱われてしまうので避けたかったのです。
この事業は発案ではありますが、ホートベル侯爵家として仕事をする訳ではなく、バリファン伯爵家に依頼を受けたホートベル侯爵家の抱える商会として参入するのです。
国の事業では御座いますが、施主としては「国&バリファン伯爵家」ですので、施主指名となれば請け負うのも簡単ですから。
えぇ。妃としての仕事は一切致しません。
商売をする上で一度結んだ契約は満了の日までは守るのが当たり前です。
私はルルと、3人の事業長と一緒に明日、バリファン伯爵家のパロンシン領に向かう。
決定で御座います。
これで終わりかと思っておりましたら。
「お嬢様…今なら不幸の手紙、ダブル!!」
「やめて。全然嬉しくない。今ならもう1箱付いてお値段そのまま、送料無料!って訳じゃないでしょう?」
「そうなんですけど、こっちはお嬢様の返事が必要です。従者の方が返事を持って帰るのに待ってます」
はい、と差し出された手紙。こちらは国王陛下からで御座いました。
封を切り、中の書類を取り出して淑女らしくない声がつい、出てしまいました。
「にゃぁにぃ?!」
「やっちまいましたか?!」
そうね。だからこその結果だわ。
正教会の事もあるから3年は大人しくしとけと初夜に言ったのに全く解ってなかったって事よね。
宮にイサミア達も引き込んだとは聞いたけど、宮だから誰にもバレないとか思ったのかしら。
「どうするんです?まぁお嬢様の子供にしろとは陛下も言わないでしょうけど」
「そうじゃないわね。ただ子供は正教会も黙っていない筈だから3年を待たずに離縁となってもいいかって事みたい。国王でも側妃となれば議会が揉めるのに立太子もしていない王子だもの。愛妾も無理でしょうね」
「万々歳じゃないですか!不貞するヤカラは後先考えませんからね」
「私の返事は一択。これ以外にないわ」
私は、紙とペンを用意して頂いて1つしかない返事を認めたのでした。
★~★
今日は3日目~\(^▽^)/
ニャン爆走ではありませんが、この次は12時10分、14時10分と続きます(*^_^*)
2日目は♡と♠が交互だったんですが、3日目はランダムなので続いている話回もあります。
楽しんで頂けると嬉しいです(=^・^=)
ルルが差し出してきたのは見た目はごく普通のありふれた封筒。
パロンシン領への出立を明日に控えた日の朝で御座いました。
「誰かしら」
「ですから不幸の手紙です。弔事のお知らせじゃないですよ?ついでにこの不幸を連鎖させるために読んだら一言一句間違えることなく書き写し、5人に出しなさい!なぁんてものでもないですよ?」
「それは不幸になるわね。それ以上だというの?」
ルルから封筒を受け取ると差出人は蒼の宮使用人一同となっておりました。
――ご祝儀?――
弔事はここ暫くなかったのでご祝儀にしては遅いご祝儀だなぁと中身を見てびっくりですわ。
中身を書いたのはこの達筆具合から見てレアンドロ殿下。
本当にいつ見ても字は綺麗なのよね。反動でやる事が汚いわ。
レアンドロ殿下の名前が差出人だと私が開封しない事を見越して使用人の名を使うとはこの卑怯者!!
えいえい!!と中に入っていた便せんを踏みつけてしまいました。
「お嬢様、ユルカク殿下はなんと?」
「ユルカク?何それ。新語?」
「いい夢みなよ!アバヨ!」
「ルル…それは新語はシンゴでもちょっと違うわ」
「解っています。お嬢様を試したのです。警邏隊24時の歌劇が間もなく公開なので。で、ユルカクってのはユルフワ女子とかユルカワ女子と言いますので、ヤルことなす事ユルユルでカクカク動くのでユルカクです」
「まさにチョメチョメな世界ね。内容は…宮に一度戻って欲しいそうよ」
「無理ですね」
「じゃぁ返事お願いできる?」
「イェッサー・アラサー・アイアイサー」
「ルル…何か良いことでもあったの?」
「なんで解るんです?!朝食の目玉焼きが双子でした」
――ささやかな幸せ。素敵よ。ルル――
ルルは良いことがあると親父ギャグのノリで受け答えをするのですぐ判るのです。
そして私のスケジュール管理をしてくれているのでですけども、極端にリスケを嫌っております。ほぼ5年先まで予定は埋まっておりますので、過日の視察旅行のように業務を交代できる要員がいればなんとかやりくりをしてくれるのですが「本人限定」となると替えが利きませんので元々の予定をドタキャンになってしまいます。
突然のキャンセルは相手も困りますものね。
婚約中の3年間と結婚式。ルルは「えぇ加減にせぇ!」と夜中に遠吠えしておりましたわ。
「明日の出立は9時なのよね」
「はい。9時出立で幌馬車は途中乗り換え11回。全て自由席で予約済みです」
「流石だわ。指定席だと少しの遅れで買い直しになっちゃうものね」
「はい。でも出来れば乗り換えは10回までが良かったです。回数券が10枚綴りなので」
「抜け目ないわね。経費削減ありがとう」
ライオネル様が「一緒に行くかい?」と声を掛けてはくださいましたが、同乗させて頂ければ確かに旅費は浮くのですが、王族の馬車ですからね。
周囲を警護する騎士を見た民衆から、第1王子と第2王子妃として扱われてしまうので避けたかったのです。
この事業は発案ではありますが、ホートベル侯爵家として仕事をする訳ではなく、バリファン伯爵家に依頼を受けたホートベル侯爵家の抱える商会として参入するのです。
国の事業では御座いますが、施主としては「国&バリファン伯爵家」ですので、施主指名となれば請け負うのも簡単ですから。
えぇ。妃としての仕事は一切致しません。
商売をする上で一度結んだ契約は満了の日までは守るのが当たり前です。
私はルルと、3人の事業長と一緒に明日、バリファン伯爵家のパロンシン領に向かう。
決定で御座います。
これで終わりかと思っておりましたら。
「お嬢様…今なら不幸の手紙、ダブル!!」
「やめて。全然嬉しくない。今ならもう1箱付いてお値段そのまま、送料無料!って訳じゃないでしょう?」
「そうなんですけど、こっちはお嬢様の返事が必要です。従者の方が返事を持って帰るのに待ってます」
はい、と差し出された手紙。こちらは国王陛下からで御座いました。
封を切り、中の書類を取り出して淑女らしくない声がつい、出てしまいました。
「にゃぁにぃ?!」
「やっちまいましたか?!」
そうね。だからこその結果だわ。
正教会の事もあるから3年は大人しくしとけと初夜に言ったのに全く解ってなかったって事よね。
宮にイサミア達も引き込んだとは聞いたけど、宮だから誰にもバレないとか思ったのかしら。
「どうするんです?まぁお嬢様の子供にしろとは陛下も言わないでしょうけど」
「そうじゃないわね。ただ子供は正教会も黙っていない筈だから3年を待たずに離縁となってもいいかって事みたい。国王でも側妃となれば議会が揉めるのに立太子もしていない王子だもの。愛妾も無理でしょうね」
「万々歳じゃないですか!不貞するヤカラは後先考えませんからね」
「私の返事は一択。これ以外にないわ」
私は、紙とペンを用意して頂いて1つしかない返事を認めたのでした。
★~★
今日は3日目~\(^▽^)/
ニャン爆走ではありませんが、この次は12時10分、14時10分と続きます(*^_^*)
2日目は♡と♠が交互だったんですが、3日目はランダムなので続いている話回もあります。
楽しんで頂けると嬉しいです(=^・^=)
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