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第28話♠ 杓子定規にも程がある
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私は非常に不味い状況に置かれてしまった。
騎士団からルシェルが妊娠をしていると連絡を受けたあと、気絶をしてしまったが意識を飛ばしている暇すらなかったのだ。
「殿下、妃殿下より返事が届きました」
「やっとか。すまないな」
私はファリティからの返事を待ち侘びていた。
嬉しい返事に気絶をしている暇もない。
ペーパーナイフで丁寧に封を切り、中の紙を取り出した…までは良かった。
「え…嘘だろう?」
紙には【現在面会の予約は5年4か月23日待ちとなっております。それでもよろしければご予約を】と書かれていた。
いやいや、妻だぞ?妃だぞ?私が呼んでいるんだぞ?
何故夫が妻に会うのに予約が必要なんだ??
そんなに待つなら正教会の金庫で会う日の方が早いじゃないか!
でもそれじゃ遅いんだよ!!離縁になる前に会わなきゃ意味がないんだよ!
待て、追記がある。なんだ…例外も認めてくれるんだろう?と思ったが…。
【お返事を頂き精査の結果、面会をお断りする場合もあります】
と書かれていた。
「なんだこれはぁぁぁ!!」
「妃殿下からの返事ですね」
「そんな事は解っているッ!!何故会えないんだ!」
「会えない訳じゃないでしょう?書いてあるじゃないですか。要予約と」
そういえば5年先まで予約がいっぱいって言ってた気がする。
だとしても、夫なんだから会ってくれたって良いじゃないか。
なんでこうも杓子定規なんだよ。
そんな事を思っていると、遅れること5分。
騎士団は王宮の父上、母上にも同じ報告をしていて王宮からも「来い」と連絡を受けてしまった。
行きたくないと駄々を捏ねても問題が解決する筈がない。
正直言って、ルシェルが妊娠していなければいいのにと思うのだが、罪人は簡単な診察を受け、その診察で病気であったり妊娠が疑われると複数の医師の診察を受ける。
妊娠しているのは確定なのだろう。最悪だ。
僅かな望みとして、ルシェルもどこかに出かけたりしていたので他の男の子供じゃないかと思ってはみたが、私の元に連絡が来たという事は、私の子供だと言う事だ。
それはそうだろう。今になって考えれば私には常に「影」とも呼ばれる諜報部隊の人間がつけられていたのだろうから行為の回数なども全て報告をされていて、行為に及べば妊娠の可能性もあるのだからルシェルも監視をされていたという事だ。
こんな事でルシェルが男遊びをしていなかったと証明をされてもちっとも嬉しくない。
むしろ他で股を開きまくり、遊んでいて欲しかった。
なら私に似た子が産まれても突っぱねることが出来たのに。
病気の場合は収監中に他の囚人に感染させないために必要であれば隔離であったり即日の刑執行がなされるが、妊娠の場合は母親は妊娠中に刑が確定し、出産すれば同日中に刑が執行される。
ただ子供については罪がないので極悪人でも出産までは生かしておいてもらえる。
だからこそ…父上と母上からの呼び出し。
重い足を引きずり王宮に出向くと想定外の事が起きた。
叱責されるだろうなぁ…と思ったら父上も母上も怖くなるくらい静かで穏やかだったのだ。
「レアンドロ殿下、到着されました」
「うむ」
案内された部屋の扉は空いたまま。
ゆっくりと部屋に入って父上と母上の顔を恐る恐る視界に入れた。
――あれ?そんなに怒ってない?――
笑顔ではないものの、明らかに怒ってるな、そんな表情でもない。
何故だ?
そうか!母親はどうしようもない女でも私の子なのだ。
孫は目の中に入れても痛くないというし、父上たちにしてみれば初孫だ。
笑顔にならない、いやなれないのは臣下の手前、妃であるファリティではなく間女のルシェルの子なので手放しに喜べないだけなんだ!
なんだ。びくびくして損した気分だよ。
結局父上も母上も人の子、人の親だという事だ。
「あの…父上、母上。お呼びと伺いましたが…」
「あら、来ていたの。存在を忘れていたわ」
母上、何気に傷つきます。さっき従者から到着の事を聞いていたでしょうに。
まさか?!50を過ぎたから呆けたのか?
父上が従者から何か手紙を受け取る。
おかしいな。騎士団からの報告を受けたからここに呼ばれたんじゃないのか?
何の手紙だろうか、いや報告書?そんな事を思っていると父上が口を開いた。
騎士団からルシェルが妊娠をしていると連絡を受けたあと、気絶をしてしまったが意識を飛ばしている暇すらなかったのだ。
「殿下、妃殿下より返事が届きました」
「やっとか。すまないな」
私はファリティからの返事を待ち侘びていた。
嬉しい返事に気絶をしている暇もない。
ペーパーナイフで丁寧に封を切り、中の紙を取り出した…までは良かった。
「え…嘘だろう?」
紙には【現在面会の予約は5年4か月23日待ちとなっております。それでもよろしければご予約を】と書かれていた。
いやいや、妻だぞ?妃だぞ?私が呼んでいるんだぞ?
何故夫が妻に会うのに予約が必要なんだ??
そんなに待つなら正教会の金庫で会う日の方が早いじゃないか!
でもそれじゃ遅いんだよ!!離縁になる前に会わなきゃ意味がないんだよ!
待て、追記がある。なんだ…例外も認めてくれるんだろう?と思ったが…。
【お返事を頂き精査の結果、面会をお断りする場合もあります】
と書かれていた。
「なんだこれはぁぁぁ!!」
「妃殿下からの返事ですね」
「そんな事は解っているッ!!何故会えないんだ!」
「会えない訳じゃないでしょう?書いてあるじゃないですか。要予約と」
そういえば5年先まで予約がいっぱいって言ってた気がする。
だとしても、夫なんだから会ってくれたって良いじゃないか。
なんでこうも杓子定規なんだよ。
そんな事を思っていると、遅れること5分。
騎士団は王宮の父上、母上にも同じ報告をしていて王宮からも「来い」と連絡を受けてしまった。
行きたくないと駄々を捏ねても問題が解決する筈がない。
正直言って、ルシェルが妊娠していなければいいのにと思うのだが、罪人は簡単な診察を受け、その診察で病気であったり妊娠が疑われると複数の医師の診察を受ける。
妊娠しているのは確定なのだろう。最悪だ。
僅かな望みとして、ルシェルもどこかに出かけたりしていたので他の男の子供じゃないかと思ってはみたが、私の元に連絡が来たという事は、私の子供だと言う事だ。
それはそうだろう。今になって考えれば私には常に「影」とも呼ばれる諜報部隊の人間がつけられていたのだろうから行為の回数なども全て報告をされていて、行為に及べば妊娠の可能性もあるのだからルシェルも監視をされていたという事だ。
こんな事でルシェルが男遊びをしていなかったと証明をされてもちっとも嬉しくない。
むしろ他で股を開きまくり、遊んでいて欲しかった。
なら私に似た子が産まれても突っぱねることが出来たのに。
病気の場合は収監中に他の囚人に感染させないために必要であれば隔離であったり即日の刑執行がなされるが、妊娠の場合は母親は妊娠中に刑が確定し、出産すれば同日中に刑が執行される。
ただ子供については罪がないので極悪人でも出産までは生かしておいてもらえる。
だからこそ…父上と母上からの呼び出し。
重い足を引きずり王宮に出向くと想定外の事が起きた。
叱責されるだろうなぁ…と思ったら父上も母上も怖くなるくらい静かで穏やかだったのだ。
「レアンドロ殿下、到着されました」
「うむ」
案内された部屋の扉は空いたまま。
ゆっくりと部屋に入って父上と母上の顔を恐る恐る視界に入れた。
――あれ?そんなに怒ってない?――
笑顔ではないものの、明らかに怒ってるな、そんな表情でもない。
何故だ?
そうか!母親はどうしようもない女でも私の子なのだ。
孫は目の中に入れても痛くないというし、父上たちにしてみれば初孫だ。
笑顔にならない、いやなれないのは臣下の手前、妃であるファリティではなく間女のルシェルの子なので手放しに喜べないだけなんだ!
なんだ。びくびくして損した気分だよ。
結局父上も母上も人の子、人の親だという事だ。
「あの…父上、母上。お呼びと伺いましたが…」
「あら、来ていたの。存在を忘れていたわ」
母上、何気に傷つきます。さっき従者から到着の事を聞いていたでしょうに。
まさか?!50を過ぎたから呆けたのか?
父上が従者から何か手紙を受け取る。
おかしいな。騎士団からの報告を受けたからここに呼ばれたんじゃないのか?
何の手紙だろうか、いや報告書?そんな事を思っていると父上が口を開いた。
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