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第10話 小さな家の使用人④-③ チョアン編
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クーリンが出勤するよりも1時間早く出勤をしてきたチョアンは目に映る光景に先ずは周囲を見渡し、次に自分の頬を思い切り抓った。
「オリャーッ!」 パーン!!
「テェェーイッ」 パーン!!
掛け声とともに聞こえてくる小気味よい音が庭に響き渡る。
何をしているかと言えばミネルヴァーナが薪割りをしているのだ。
薪割り用の薪は家屋の裏手に積み重ねられていて、単に薪を割ればいいのではない。
先ずは樹皮を鉈で剥いで、樹皮は樹皮で竈に火を入れる時に使ったり、湯殿の湯船を張る湯の温度調整の時にくべたりもするので割る前にひと手間かかる。
面倒なのは薪割り用の薪には色々な虫が巣を作ってしまうので男でも「うげぇ」と思うゲジゲジを始め見た目の悪い虫が沢山いて、出来れば省きたい雑用。
なのに薪をスパーン!と割っているミネルヴァーナの周りで割られる順番を待つ薪は既に樹皮が剥いだ痕がある。
「ひ、姫さんっ!そう言うのは俺の仕事です!危険ですから!」
「ん?…あぁチョアンさん。おはようございます」
「おはようござい…って!だから!危ないですから!」
「危なくないわ。あと少しだからやっておくわ。ここは片づけて置くから厨房の竈の周りの板がかなり煤けているの。危ないと思うから板を外して新しい板を打ち付けてくださる?」
チョアンは驚いた。
確かに竈の周囲の壁に使っている板は煤けていて部分的には炭、炭化をしている箇所もある。普通ならその上に板を打ち付けて隠してしまうのだが、正しい補修や修繕は炭化した板は取り外す。
そうしないと火事の原因になってしまうからだが、チョアンがその事を師匠と呼んでいる男性から教えてもらって理解をするまで15年はかかった。
竈の火が直接板を炙る訳でもなし、夜は竈に火は入っておらず火事になるイメージが出来なかった。
――何で知ってるんだ?――
いやそれよりも他国とは言え王女が薪を割っている光景が信じられない。
目の前「ウォリャー!」掛け声もとても王女様とは思えない。
――確かに掛け声があると気合は入るんだが――
違う違う!!首をブンブンと振って「気にするのそっちじゃない」と考えを否定しもう一度ミネルヴァーナに「自分がやる」と申し出たのだが、割らねばならない薪はあと2、3本。
「チョアンさん。危ないから」
言われずとも判っているが、チョアンにしてみれば薪割り用の斧を振り下ろす行為の方が危険に見えて仕方がない。
チョアンが戸惑っている間に薪割りを終えたミネルヴァーナが次に始めたのは厨房にいるマーナイタが下処理を終えて出た野菜の残滓に小麦を挽いた後の殻の残骸などを入れるための穴掘り。
しかも道具を使わずに完全手掘り。手掘りと言ってもスコップなどを使う人力ではなく素手だ。
「なっ!何をしてるんですか?」
「何って…穴を掘ってるの」
「汚れますから!そういうの言ってくれれば俺がします」
「大丈夫。手が汚れても洗えばいいの。それより板を早く。マーナイタさん、今水洗いとか下処理してるから調理を始める前に外すと手間も省けるでしょう?」
チョアンは噂で聞く王女様は目の前の人なのか?首を傾げた。
王女様で無くても土に触れて「洗えばいい」なんて言い出す令嬢など聞いた事もない。
「どうしよう!」頭を抱えて嘆くチョアンを見て、ミネルヴァーナは言った。
「チョアンさん。後でちょっとお話しましょう」
「へ?いえ、話って…まさか‥」
「まぁまぁ。今ならマーナイタさんは昼食の仕込みをしてますしクーリンさんも拭き掃除していると思いますから。お茶の時間に少し。ね?」
――ね?って…まさか早々にクビ?――
疑問符が飛び交うチョアンは背筋に冷や汗を流しながら、「もうクビなの?」そう思いつつくぎ抜きとバールを手に取り厨房の板を外しに向かった。
「オリャーッ!」 パーン!!
「テェェーイッ」 パーン!!
掛け声とともに聞こえてくる小気味よい音が庭に響き渡る。
何をしているかと言えばミネルヴァーナが薪割りをしているのだ。
薪割り用の薪は家屋の裏手に積み重ねられていて、単に薪を割ればいいのではない。
先ずは樹皮を鉈で剥いで、樹皮は樹皮で竈に火を入れる時に使ったり、湯殿の湯船を張る湯の温度調整の時にくべたりもするので割る前にひと手間かかる。
面倒なのは薪割り用の薪には色々な虫が巣を作ってしまうので男でも「うげぇ」と思うゲジゲジを始め見た目の悪い虫が沢山いて、出来れば省きたい雑用。
なのに薪をスパーン!と割っているミネルヴァーナの周りで割られる順番を待つ薪は既に樹皮が剥いだ痕がある。
「ひ、姫さんっ!そう言うのは俺の仕事です!危険ですから!」
「ん?…あぁチョアンさん。おはようございます」
「おはようござい…って!だから!危ないですから!」
「危なくないわ。あと少しだからやっておくわ。ここは片づけて置くから厨房の竈の周りの板がかなり煤けているの。危ないと思うから板を外して新しい板を打ち付けてくださる?」
チョアンは驚いた。
確かに竈の周囲の壁に使っている板は煤けていて部分的には炭、炭化をしている箇所もある。普通ならその上に板を打ち付けて隠してしまうのだが、正しい補修や修繕は炭化した板は取り外す。
そうしないと火事の原因になってしまうからだが、チョアンがその事を師匠と呼んでいる男性から教えてもらって理解をするまで15年はかかった。
竈の火が直接板を炙る訳でもなし、夜は竈に火は入っておらず火事になるイメージが出来なかった。
――何で知ってるんだ?――
いやそれよりも他国とは言え王女が薪を割っている光景が信じられない。
目の前「ウォリャー!」掛け声もとても王女様とは思えない。
――確かに掛け声があると気合は入るんだが――
違う違う!!首をブンブンと振って「気にするのそっちじゃない」と考えを否定しもう一度ミネルヴァーナに「自分がやる」と申し出たのだが、割らねばならない薪はあと2、3本。
「チョアンさん。危ないから」
言われずとも判っているが、チョアンにしてみれば薪割り用の斧を振り下ろす行為の方が危険に見えて仕方がない。
チョアンが戸惑っている間に薪割りを終えたミネルヴァーナが次に始めたのは厨房にいるマーナイタが下処理を終えて出た野菜の残滓に小麦を挽いた後の殻の残骸などを入れるための穴掘り。
しかも道具を使わずに完全手掘り。手掘りと言ってもスコップなどを使う人力ではなく素手だ。
「なっ!何をしてるんですか?」
「何って…穴を掘ってるの」
「汚れますから!そういうの言ってくれれば俺がします」
「大丈夫。手が汚れても洗えばいいの。それより板を早く。マーナイタさん、今水洗いとか下処理してるから調理を始める前に外すと手間も省けるでしょう?」
チョアンは噂で聞く王女様は目の前の人なのか?首を傾げた。
王女様で無くても土に触れて「洗えばいい」なんて言い出す令嬢など聞いた事もない。
「どうしよう!」頭を抱えて嘆くチョアンを見て、ミネルヴァーナは言った。
「チョアンさん。後でちょっとお話しましょう」
「へ?いえ、話って…まさか‥」
「まぁまぁ。今ならマーナイタさんは昼食の仕込みをしてますしクーリンさんも拭き掃除していると思いますから。お茶の時間に少し。ね?」
――ね?って…まさか早々にクビ?――
疑問符が飛び交うチョアンは背筋に冷や汗を流しながら、「もうクビなの?」そう思いつつくぎ抜きとバールを手に取り厨房の板を外しに向かった。
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