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第22話 上手く行ってる時ほど考える
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小さな家は朝から忙しい。
かの日、3人の使用人に「後でお茶をしましょう」と言った日。
この家では仕事は仕事だけれど、手が空けば手伝う事が決められた。
この家屋に来て半年以上。
ミネルヴァーナが「人妻」になって3カ月も経てば、気が付いた時、目についた時に我先に行うようになり早め早め、その時々で素早く仕事を終わらせるため、公爵家で「この仕事を頼む」と依頼された内容よりも多くの仕事を手際よく片付けるようになった。
10時出勤と言われていても3人の使用人は8時半には顔を出す。
何をするかと言えば内職である。
人は「成果」が形になると俄然やる気を見せるもの。
過日、ゴーヨキキに頼んで試して貰った試供品はあっという間に無くなった。
ずっと無料にも出来ず1袋1人前120パレ。こちらの取りが100パレで20パレは置かせてもらう店側の取り分である。子供の小遣いくらいで売る事にしたが即日完売。
カイネルが嫌がらせに届けてくれた野菜は葉物野菜はなく大根など根野菜がほどんど。日持ちするのでスープ用などの煮物にと売り出したらこちらも作れば作る分だけ売れた。
売り上げは小分けの袋代とゴーヨキキがついでで行なってくれる配送代を差し引いて5等分したのだが、1人あたりの取り分は1か月の給金の額よりも多かった。
ミネルヴァーナだけは家族を養う訳でもなく、必要なものは揃っているので全額を貯めている。
カイネルからの野菜も底を突いたが、庭に植えた野菜はすくすくと育つ。
そして相変わらず公爵家からは幾つも箱に入った野菜が届く。
雨の日には家族や近所用に持ち帰ってもらうが、ミネルヴァーナの仕事は順調だった。
小分けして調理するだけの簡単素材。今日も頑張って袋詰めするぞ!と全員が意気込んだ時来客があった。
とても重宝される品と思ったのだが、ゴーヨキキが「困りました」とやって来たのである。
「どうすればいいかしら」
ミネルヴァーナは問題点を解決しようと知恵を貸して貰おうと皆に手を止めてもらうと1つしかないテーブルに来てもらった。
チョアンは「うーん困りましたね。簡単だからこその問題点ですね」と腕を組む。
マーナイタは「単身者の男性とかにウケそうなんですけどね」と便利さゆえの落とし穴に天井を見上げる。
クーリンは「だいたいが贅沢なんだよ。全く。客が良いって言ってんだしさ」と店主に憤る。
問題になったのは、便利すぎるが故に客が減るという店側の意見だった。
店としても便利なのだ。
野菜も等分に小分けにされているから「あっちの方が肉が多い」「こっちはタマネギだらけ」と言われなくて済むし、バーなど簡単な料理でもカウンターが無人になる時間が少なくて済む。
しかし簡単に調理ができるが故に、それまで夕食を食べるために来店した客が小分け野菜のみを買うためだけに顔を出し帰ってしまう。確かに店側も1つ売れれば20パレの儲けがあるが、店で飲み食いしてもらってナンボ。
顧客が主に小さな個人経営のバーであったり、1日に来店しても10人程度のチョイ飲み屋などだったので、客が1人、足が遠のくだけで大打撃となってしまっていた。
考え込む4人に今日のお茶当番マリーがお茶を淹れながら呟いた。
「専用にすればいいんじゃない?」
<< 何?もう一度! >>
「だ、だから。店に作って貰う専用にすればいいと思って。バーとかチョイ飲み屋ってボトルキープでマイボトルを置いてる客もいるでしょう?」
うんうんと頷くのは使用人の3人。
ミネルヴァーナだけはボトルキープやマイボトルという言葉は理解が出来ない。
戸惑うミネルヴァーナにチョアンから簡単な説明がされた。
「お客が先に金を払ってボトルを買う。次に来た時その酒だけなら無料。席料取る店なら席料だけの支払いで済む制度だ」
なるほど…と言ったもののほぼ理解出来ないのは仕方のない事である。
オホホと笑って「どうぞ」とマリーを促した。
「例えば、火曜と木曜はここで食べるからって客に先に注文をしといてもらうとかすれば、店も余らなくて済むし、その日は少なくとも何人の客が来るって目途も立つでしょう?」
マリーの言葉に男性陣のチョアンとマーナイタは賛同した。
「そうだ。そうだよ。店も予備として2、3袋多く仕入れても予約分ではけるし、調理代を少し乗せてるんだし。それでもレストランで食べるよりも安く済む価格設定にすればいいんだよ」
「いいね。予備が2、3袋なら売り切れでも客は文句を言わない。食いたければ予約をすればいいんだ」
しかし主婦でもあるクーリンはしかめっ面。
「飲み屋の客が予約なんかするもんかい。取り置きならいざ知らず」
「待って。待って。それじゃ最初のコンセプトと違うわ。一般の人に簡単に調理をしてもらうための小分け野菜でしょう?お店が調理するのならレストランと変わらないわ」
小分け野菜にしたのは、単身者や働いている人が調理をする際の負担を軽減するためであって、お店が客に提供するためではないのだ。それなら既にゴーヨキキなどが行っている商売と同じになってしまう。
売り上げになっているのは、ゴーヨキキは何も言わないがゴーヨキキの本来得られる売上分をミネルヴァーナ達が少し頂いているのかも知れない。
チョアンの紹介なので言い出せないだけかも知れないのだ。
ミネルヴァーナもそれでは心苦しい。
「考えていた以上に順調なの。だからこの問題はきちんと整理して考えてみましょう」
儲かっているのは事実だが、ここで一旦整理をしてみようと提案した。
かの日、3人の使用人に「後でお茶をしましょう」と言った日。
この家では仕事は仕事だけれど、手が空けば手伝う事が決められた。
この家屋に来て半年以上。
ミネルヴァーナが「人妻」になって3カ月も経てば、気が付いた時、目についた時に我先に行うようになり早め早め、その時々で素早く仕事を終わらせるため、公爵家で「この仕事を頼む」と依頼された内容よりも多くの仕事を手際よく片付けるようになった。
10時出勤と言われていても3人の使用人は8時半には顔を出す。
何をするかと言えば内職である。
人は「成果」が形になると俄然やる気を見せるもの。
過日、ゴーヨキキに頼んで試して貰った試供品はあっという間に無くなった。
ずっと無料にも出来ず1袋1人前120パレ。こちらの取りが100パレで20パレは置かせてもらう店側の取り分である。子供の小遣いくらいで売る事にしたが即日完売。
カイネルが嫌がらせに届けてくれた野菜は葉物野菜はなく大根など根野菜がほどんど。日持ちするのでスープ用などの煮物にと売り出したらこちらも作れば作る分だけ売れた。
売り上げは小分けの袋代とゴーヨキキがついでで行なってくれる配送代を差し引いて5等分したのだが、1人あたりの取り分は1か月の給金の額よりも多かった。
ミネルヴァーナだけは家族を養う訳でもなく、必要なものは揃っているので全額を貯めている。
カイネルからの野菜も底を突いたが、庭に植えた野菜はすくすくと育つ。
そして相変わらず公爵家からは幾つも箱に入った野菜が届く。
雨の日には家族や近所用に持ち帰ってもらうが、ミネルヴァーナの仕事は順調だった。
小分けして調理するだけの簡単素材。今日も頑張って袋詰めするぞ!と全員が意気込んだ時来客があった。
とても重宝される品と思ったのだが、ゴーヨキキが「困りました」とやって来たのである。
「どうすればいいかしら」
ミネルヴァーナは問題点を解決しようと知恵を貸して貰おうと皆に手を止めてもらうと1つしかないテーブルに来てもらった。
チョアンは「うーん困りましたね。簡単だからこその問題点ですね」と腕を組む。
マーナイタは「単身者の男性とかにウケそうなんですけどね」と便利さゆえの落とし穴に天井を見上げる。
クーリンは「だいたいが贅沢なんだよ。全く。客が良いって言ってんだしさ」と店主に憤る。
問題になったのは、便利すぎるが故に客が減るという店側の意見だった。
店としても便利なのだ。
野菜も等分に小分けにされているから「あっちの方が肉が多い」「こっちはタマネギだらけ」と言われなくて済むし、バーなど簡単な料理でもカウンターが無人になる時間が少なくて済む。
しかし簡単に調理ができるが故に、それまで夕食を食べるために来店した客が小分け野菜のみを買うためだけに顔を出し帰ってしまう。確かに店側も1つ売れれば20パレの儲けがあるが、店で飲み食いしてもらってナンボ。
顧客が主に小さな個人経営のバーであったり、1日に来店しても10人程度のチョイ飲み屋などだったので、客が1人、足が遠のくだけで大打撃となってしまっていた。
考え込む4人に今日のお茶当番マリーがお茶を淹れながら呟いた。
「専用にすればいいんじゃない?」
<< 何?もう一度! >>
「だ、だから。店に作って貰う専用にすればいいと思って。バーとかチョイ飲み屋ってボトルキープでマイボトルを置いてる客もいるでしょう?」
うんうんと頷くのは使用人の3人。
ミネルヴァーナだけはボトルキープやマイボトルという言葉は理解が出来ない。
戸惑うミネルヴァーナにチョアンから簡単な説明がされた。
「お客が先に金を払ってボトルを買う。次に来た時その酒だけなら無料。席料取る店なら席料だけの支払いで済む制度だ」
なるほど…と言ったもののほぼ理解出来ないのは仕方のない事である。
オホホと笑って「どうぞ」とマリーを促した。
「例えば、火曜と木曜はここで食べるからって客に先に注文をしといてもらうとかすれば、店も余らなくて済むし、その日は少なくとも何人の客が来るって目途も立つでしょう?」
マリーの言葉に男性陣のチョアンとマーナイタは賛同した。
「そうだ。そうだよ。店も予備として2、3袋多く仕入れても予約分ではけるし、調理代を少し乗せてるんだし。それでもレストランで食べるよりも安く済む価格設定にすればいいんだよ」
「いいね。予備が2、3袋なら売り切れでも客は文句を言わない。食いたければ予約をすればいいんだ」
しかし主婦でもあるクーリンはしかめっ面。
「飲み屋の客が予約なんかするもんかい。取り置きならいざ知らず」
「待って。待って。それじゃ最初のコンセプトと違うわ。一般の人に簡単に調理をしてもらうための小分け野菜でしょう?お店が調理するのならレストランと変わらないわ」
小分け野菜にしたのは、単身者や働いている人が調理をする際の負担を軽減するためであって、お店が客に提供するためではないのだ。それなら既にゴーヨキキなどが行っている商売と同じになってしまう。
売り上げになっているのは、ゴーヨキキは何も言わないがゴーヨキキの本来得られる売上分をミネルヴァーナ達が少し頂いているのかも知れない。
チョアンの紹介なので言い出せないだけかも知れないのだ。
ミネルヴァーナもそれでは心苦しい。
「考えていた以上に順調なの。だからこの問題はきちんと整理して考えてみましょう」
儲かっているのは事実だが、ここで一旦整理をしてみようと提案した。
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