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第38話 ホワイトノイズで生クリームマシマシ
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リュシアンがまだ朝食を口に詰め込んでいる頃、部屋に案内をされるなりアルベルティナは「大事な話なので」と先代辺境伯夫妻に断りを入れて部屋で魔法を展開した。
「この魔法は?」
「ホワイトノイズです。色々な音を大きさ、音色、音程を変えて均等に重ねているんですが、その他に周波数の違う音を混ぜているんです。目の前の人の声は聞こえるけれど距離が離れると何を話しているか聞こえなく出来るんです。防音とか消音、遮音になると周囲の気配も消しちゃうのでタイムアップの時間が判らなくなっちゃうから自分なりに使いやすく改良をした魔法です」
えへっと笑い、簡単に言うが先代辺境伯夫妻もタイタンも口が開いたままになった。
「耳を澄ませてしまうと重なり合った音で眠くなるんです。話を聞かせないってだけなくて、不眠で悩んだり、眠りが浅いなってのにも効果があったんですよ。かなり熟睡できるって庭師さんとかには好評だったんです。副作用ってやつでしょうか。えへへ」
――どこでそんな技を?!――
タイタンの目がクワっと見開いた。
「へへっ。図書館で1点集中して内容を記憶しないといけなかったから、周囲の音が邪魔だったんです。スナップエンドウの育て方の本を記憶している隣でパンケーキの生クリームマシマシなんて声が聞こえたら…心が揺れたんです」
――女の子あるあるなんだろうか――
「生クリームって何?!って興味が出るじゃないですか」
「もしかして生クリームを知らないのか?」
「クリームであることはわかってます。とろとろなんですよね?でも生?って事は液体クリームとか熱クリームとかもあるのかなとか。声が聞こえちゃうと想像しちゃうんです」
タイタンはズッ。鼻を啜った。
そしてアルベルティナの肩をポンと叩いた。
「今日の帰りにパフェを食べさせてやる。生クリームもマシマシだ」
「ホントに?!」
「もう俺の給料全部で生クリームもトッピングしてやるよ」
目を輝かせてアルベルティナは喜ぶが、タイタンは18歳の女の子が生クリームを知らない事に「なんてことだ!」「もう俺が全部教えてやるよ」胸の中がいっぱいになった。
胸いっぱいになるタイタンを横目に先代辺境伯夫妻は別の意味で度肝を抜かれていた。
アルベルティナが言うように、他国との会談や機密になる事を話しする時は防音や遮音など音を外に漏らさない魔法の膜を張るのは一般的な事だが、一般的であるだけあって破られる魔法でもある。
何とか聞こうとする側も膜の向こう側の音が全く聞こえないのだから魔力展開をしている事を察知して部分的に魔力で穴をあけて話を盗み聞きする。
が!画期的だったのだ。
音をさせて音で聞こえなくする。目から鱗で青天の霹靂。
誰も考えつかなかった。
これならこの魔法がある事を知らない者は、音は通常時で聞こえるものと大差がない。
そこに魔法が展開されている事ですら気が付かないのだ。
気が付くとすれば余程繊細に魔力を感じ取れる者か、魔法を展開している者の魔力を軽く上回る魔力のある者に限られる。この魔力量となるとこの国に片手の数いるかどうかだ。
ホワイトノイズは展開しても各々が好きな事を喋り極断片的に聞き取れる音もあるけれど繋がらないので会話として認識できず雑音と思ってしまうだろうし、防音魔法などを使っていないので聞き取ろうと穴をあけるとそれが周囲にはキキキキーっと黒板を爪で引っ掻いたような音がしてしま、そこに盗み聞きしようとする人間がいる事がモロバレになってしまう。諜報ですらうっかり魔法を使えないという事だ。
「これは、トンデモナイ逸材では御座いませんの?」
「まことに…。魔法を操る者は多く見てきたが次元が違うな」
褒めている先代辺境伯夫妻だが、知らない事がある。
アルベルティナは誰に師事したわけでもなく、欲望のために魔法を改良し磨き上げたオリジナルだという事を。
「この魔法は?」
「ホワイトノイズです。色々な音を大きさ、音色、音程を変えて均等に重ねているんですが、その他に周波数の違う音を混ぜているんです。目の前の人の声は聞こえるけれど距離が離れると何を話しているか聞こえなく出来るんです。防音とか消音、遮音になると周囲の気配も消しちゃうのでタイムアップの時間が判らなくなっちゃうから自分なりに使いやすく改良をした魔法です」
えへっと笑い、簡単に言うが先代辺境伯夫妻もタイタンも口が開いたままになった。
「耳を澄ませてしまうと重なり合った音で眠くなるんです。話を聞かせないってだけなくて、不眠で悩んだり、眠りが浅いなってのにも効果があったんですよ。かなり熟睡できるって庭師さんとかには好評だったんです。副作用ってやつでしょうか。えへへ」
――どこでそんな技を?!――
タイタンの目がクワっと見開いた。
「へへっ。図書館で1点集中して内容を記憶しないといけなかったから、周囲の音が邪魔だったんです。スナップエンドウの育て方の本を記憶している隣でパンケーキの生クリームマシマシなんて声が聞こえたら…心が揺れたんです」
――女の子あるあるなんだろうか――
「生クリームって何?!って興味が出るじゃないですか」
「もしかして生クリームを知らないのか?」
「クリームであることはわかってます。とろとろなんですよね?でも生?って事は液体クリームとか熱クリームとかもあるのかなとか。声が聞こえちゃうと想像しちゃうんです」
タイタンはズッ。鼻を啜った。
そしてアルベルティナの肩をポンと叩いた。
「今日の帰りにパフェを食べさせてやる。生クリームもマシマシだ」
「ホントに?!」
「もう俺の給料全部で生クリームもトッピングしてやるよ」
目を輝かせてアルベルティナは喜ぶが、タイタンは18歳の女の子が生クリームを知らない事に「なんてことだ!」「もう俺が全部教えてやるよ」胸の中がいっぱいになった。
胸いっぱいになるタイタンを横目に先代辺境伯夫妻は別の意味で度肝を抜かれていた。
アルベルティナが言うように、他国との会談や機密になる事を話しする時は防音や遮音など音を外に漏らさない魔法の膜を張るのは一般的な事だが、一般的であるだけあって破られる魔法でもある。
何とか聞こうとする側も膜の向こう側の音が全く聞こえないのだから魔力展開をしている事を察知して部分的に魔力で穴をあけて話を盗み聞きする。
が!画期的だったのだ。
音をさせて音で聞こえなくする。目から鱗で青天の霹靂。
誰も考えつかなかった。
これならこの魔法がある事を知らない者は、音は通常時で聞こえるものと大差がない。
そこに魔法が展開されている事ですら気が付かないのだ。
気が付くとすれば余程繊細に魔力を感じ取れる者か、魔法を展開している者の魔力を軽く上回る魔力のある者に限られる。この魔力量となるとこの国に片手の数いるかどうかだ。
ホワイトノイズは展開しても各々が好きな事を喋り極断片的に聞き取れる音もあるけれど繋がらないので会話として認識できず雑音と思ってしまうだろうし、防音魔法などを使っていないので聞き取ろうと穴をあけるとそれが周囲にはキキキキーっと黒板を爪で引っ掻いたような音がしてしま、そこに盗み聞きしようとする人間がいる事がモロバレになってしまう。諜報ですらうっかり魔法を使えないという事だ。
「これは、トンデモナイ逸材では御座いませんの?」
「まことに…。魔法を操る者は多く見てきたが次元が違うな」
褒めている先代辺境伯夫妻だが、知らない事がある。
アルベルティナは誰に師事したわけでもなく、欲望のために魔法を改良し磨き上げたオリジナルだという事を。
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