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第27話 店主からのリーク
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翌日、雑貨店に出向いたアルベルティナは店で無料配布している魔石を貰うだけでなく、店主にゴミとなった魔石をどこで仕入れるのかを問うために店を訪れていた。
「ねぇおじさん。この木箱の魔石なんですけど」
「全部欲しいならあげるよ?でも何に使うんだ?家の外壁でもデコるのかい?」
「それも楽しそうなんですけど、この魔石ってどこで仕入れるのか教えて欲しいんです?」
雑貨店に毎日出向くよりも、雑貨店がこの魔石をどこで仕入れているのかを聞きだしたほうが複数の店舗を回らなくていいので効率化になる。
「あぁ、これかい?登録所だよ」
「登録所?」
「スケーターやスケットに魔石を嵌め込んで使うんだが、その魔石に年に1回魔力を充填したり3年に1度交換したりってのは登録所じゃないと出来ないんだ」
「登録所に行けばタダでもっと沢山の量が貰えるってことですか?」
「お嬢さん。そう思うのは仕方がないが…一般の人は貰えないよ」
魔石は使い切って空っぽになってしまうと潤いを失ってしまうのと同じで壊れやすくなってしまう。安全のために完全に枯渇する前に充填をするが、タイタンが説明をしたように充填は3回が限界。
1回目は初回、2回目、3回目は1年ごとだ。なので満3年が経過した時は交換をする。無理やり充填も出来なくはないが、充填中に破裂したり運よく充填出来ても走行中に破損してしまう。4年目に突入した時には外皮の耐力が残っていないためでもある。
クズとなった魔石は指で抓んだだけで弾けてしまう脆さになるよう登録所にある魔石は魔導師によって完全に空っぽにしてから引き渡されるようになった。
石に魔力がないので弾けるだけで済むけれど、以前は違法に魔力を充填させる店もあった。
スケーターやスケットに乗っていたり、充填中だと距離も近いので爆発の中心部に近くなり手足が吹き飛ぶだけで済めばいいほう。大半は肉塊となり命を落とす事故が相次ぎ、今は登録所だけと徹底されている。
あの少年のスケットが動かなくなったのは単に魔力切れ。
もしも無断で充填でもしていて魔石の破損で止まったのなら周囲にいた人も大けがをしていた事になる。
以前は登録所が処分をしていたが、小売店が引き取るようになったのは過去のブームがきっかけ。
当時はデコレート用に売り出したクズ魔石でどの店舗もしこたま儲けた。
その時に小売販売業の継続とクズ魔石の引き取りはセットにされてしまったのだ。
ブームが去って儲けにならないからと引き取りを拒否する事はできるが、その時は小売業も出来なくなるので雑貨店の店主たちは魔石を引き受けねばならなくなっていた。
「そういう事情があったんですね」
「個人が登録所から引き取る事は出来ないが、小売りをしている店を回ればどこもタダで譲ってくれるよ。ウチだって店の前に置いてるのは木箱に5つだが、倉庫に行けばまだあるよ。その辺に捨てる事も出来ない倉庫の肥やしだけどね」
やれやれと店主は軽く手を胸の辺りでプラプラさせた。
アルベルティナも小売店を経営すれば登録所で強制的に引き取りをさせられるだろうが、残念な事に辺境の地にいるのは短くて3か月。長くても半年もいないのだから店をオープンさせる意味がない。
――開業資金もないしね――
「どうしても欲しいなら…ビガー商会に行ってみたらどうだ?あそこは大きな商会だからウチみたいな雑貨屋を幾つも回るより、1度でかなりの量を分けてくれるさ」
「ビガー商会…どっかで聞いたような…」
「今は息子が店を継いだけど、爺さんもまだまだ元気だ。儲け話には目がない爺さんだから抱えているクズ魔石の使い道があるのなら話を聞いてくれて資金も出してくれるかもな」
「聞いてくれるんですか?!資金まで?!」
「え?…あ。あぁ…多分」
うっかりと調子に乗ってしまった店主はアルベルティナが本気で食いついてしまったことに後悔をしてしまった。大店過ぎていきなり年若い女の子が「儲け話があります」なんて店に行ったって話なんか聞いてくれるわけもない。
「私、行ってきます。あ、その魔石、明日には取りに来るので譲ってください。倉庫の分も!!」
「え?あ、ちょ、ちょっと?!おいっ!」
後悔先に立たず。アルベルティナは店主にぺこりと頭を下げると韋駄天の如く走って行ってしまった。
店主は自分の頬をきゅっと抓って「口は禍の元ってカカァに言われたバッカなのにな」と肩を落とした。
「ねぇおじさん。この木箱の魔石なんですけど」
「全部欲しいならあげるよ?でも何に使うんだ?家の外壁でもデコるのかい?」
「それも楽しそうなんですけど、この魔石ってどこで仕入れるのか教えて欲しいんです?」
雑貨店に毎日出向くよりも、雑貨店がこの魔石をどこで仕入れているのかを聞きだしたほうが複数の店舗を回らなくていいので効率化になる。
「あぁ、これかい?登録所だよ」
「登録所?」
「スケーターやスケットに魔石を嵌め込んで使うんだが、その魔石に年に1回魔力を充填したり3年に1度交換したりってのは登録所じゃないと出来ないんだ」
「登録所に行けばタダでもっと沢山の量が貰えるってことですか?」
「お嬢さん。そう思うのは仕方がないが…一般の人は貰えないよ」
魔石は使い切って空っぽになってしまうと潤いを失ってしまうのと同じで壊れやすくなってしまう。安全のために完全に枯渇する前に充填をするが、タイタンが説明をしたように充填は3回が限界。
1回目は初回、2回目、3回目は1年ごとだ。なので満3年が経過した時は交換をする。無理やり充填も出来なくはないが、充填中に破裂したり運よく充填出来ても走行中に破損してしまう。4年目に突入した時には外皮の耐力が残っていないためでもある。
クズとなった魔石は指で抓んだだけで弾けてしまう脆さになるよう登録所にある魔石は魔導師によって完全に空っぽにしてから引き渡されるようになった。
石に魔力がないので弾けるだけで済むけれど、以前は違法に魔力を充填させる店もあった。
スケーターやスケットに乗っていたり、充填中だと距離も近いので爆発の中心部に近くなり手足が吹き飛ぶだけで済めばいいほう。大半は肉塊となり命を落とす事故が相次ぎ、今は登録所だけと徹底されている。
あの少年のスケットが動かなくなったのは単に魔力切れ。
もしも無断で充填でもしていて魔石の破損で止まったのなら周囲にいた人も大けがをしていた事になる。
以前は登録所が処分をしていたが、小売店が引き取るようになったのは過去のブームがきっかけ。
当時はデコレート用に売り出したクズ魔石でどの店舗もしこたま儲けた。
その時に小売販売業の継続とクズ魔石の引き取りはセットにされてしまったのだ。
ブームが去って儲けにならないからと引き取りを拒否する事はできるが、その時は小売業も出来なくなるので雑貨店の店主たちは魔石を引き受けねばならなくなっていた。
「そういう事情があったんですね」
「個人が登録所から引き取る事は出来ないが、小売りをしている店を回ればどこもタダで譲ってくれるよ。ウチだって店の前に置いてるのは木箱に5つだが、倉庫に行けばまだあるよ。その辺に捨てる事も出来ない倉庫の肥やしだけどね」
やれやれと店主は軽く手を胸の辺りでプラプラさせた。
アルベルティナも小売店を経営すれば登録所で強制的に引き取りをさせられるだろうが、残念な事に辺境の地にいるのは短くて3か月。長くても半年もいないのだから店をオープンさせる意味がない。
――開業資金もないしね――
「どうしても欲しいなら…ビガー商会に行ってみたらどうだ?あそこは大きな商会だからウチみたいな雑貨屋を幾つも回るより、1度でかなりの量を分けてくれるさ」
「ビガー商会…どっかで聞いたような…」
「今は息子が店を継いだけど、爺さんもまだまだ元気だ。儲け話には目がない爺さんだから抱えているクズ魔石の使い道があるのなら話を聞いてくれて資金も出してくれるかもな」
「聞いてくれるんですか?!資金まで?!」
「え?…あ。あぁ…多分」
うっかりと調子に乗ってしまった店主はアルベルティナが本気で食いついてしまったことに後悔をしてしまった。大店過ぎていきなり年若い女の子が「儲け話があります」なんて店に行ったって話なんか聞いてくれるわけもない。
「私、行ってきます。あ、その魔石、明日には取りに来るので譲ってください。倉庫の分も!!」
「え?あ、ちょ、ちょっと?!おいっ!」
後悔先に立たず。アルベルティナは店主にぺこりと頭を下げると韋駄天の如く走って行ってしまった。
店主は自分の頬をきゅっと抓って「口は禍の元ってカカァに言われたバッカなのにな」と肩を落とした。
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