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20:見切った癖、初見の癖
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「うーん。どうしたらいいんだ?」
「いつも通りでよろしいですわよ。腹を括りましょう」
「でもなぁ。うーん」
規模は大きくはないのですが、4家ある公爵家が持ち回りで行なっている茶会。出席者はその公爵家なのですが、ファミリーパーティのようなものに出席をせねばならないのです。
敷居が高いと思っていらっしゃるのは、先日一触即発となったご子息の家がクレーベ公爵家でもあるからで御座います。あの件があってからは連絡も取り合っていないようなのです。
物言いに腹が立ったとは言え、胸ぐらを掴みあげた事はアーカンソー公爵ご夫妻にも報告し、わたくしとバルタザール様は並んで「今後は注意するように」と少しお叱りも受けてしまいました。
バルタザール様としても「あわや」となってしまった事に時間が経つにつれ、申し訳ない事をしたと思うところがあるのでしょう。
世代的にはバルタザール様やそのご子息が当主となって国王陛下を支える柱となる時代もありますので、仲違いをしたままも宜しくない。公爵家同士の仲が良くないというのは払拭したいのです。
クレーベ公爵家側の内情は判りませんが、遺恨を残さないためとは考えているはず。そうでなければこのタイミングで日頃は先代と現当主夫妻、それに続く長子夫妻が参加なのに、さらにその子女となれば言わずもがな。
「わたくしにも至らない点はございました。ご友人には先ず謝罪を致しましょう」
「謝るのは謝る。でも俺から先なのが嫌なんだ。俺は悪くない」
「えぇ。バルタザール様はわたくしを庇ってくださっただけ。それは満点ですが手が出てしまった事は事実ですもの」
「ロティは腹が立たないのか…。大人だな…あっ!!違う。変な意味ではない」
「判っておりますよ。わたくしも腹が立つこと沢山御座います。ですが自分の意見や言葉、知識が正解だとは限りません。それぞれに正解があるんです」
「そんなに沢山正解があったら困るじゃないか」
「困りますね。だから話し合うのでは?話し合って折り合いをつける点を見つける。わたくし、それをバルタザール様から教えてもらいましたのよ?」
「俺が?教えた覚えはないんだが」
それはそうで御座いましょう。教鞭をとって教えて貰ったわけではありません。
わたくしは過去の婚約で家長である父に、年上である婚約者に従う事で生きてきたのです。言われる事に従っていれば責任は問われませんし、何より楽ですもの。
フレデリック様もバルタザール様も強引なところは御座いますがその性質が違います。
若さもあるでしょうか。
フレデリック様の年齢41歳ともなれば、立場を鑑みない言動は眉を顰める者はあれど苦言を呈する者はそうそういません。バルタザール様はまだ若さで許されるところもありますし、言動について正そうと周りが動くのです。
フレデリック様は次男と言う事もあり自由が利く立場に胡坐をかき、甘えてしまった。3度の離縁でも何も学ばないとなれば仏の顔も三度撫でれば腹立てると言うこと。
お父様も仰っておりました。
「後取りはオリバーの子でも問題はない。ただ当主となるのに婚姻は必須条件。多少の女遊びは仕方がないと目を瞑ればバーレ伯爵家からは返済なしの支援が見込める。バカは扱いやすいと思っての婚約だったが予想を上回るバカは扱えないといい経験になった。ワハハ」
ワハハでは御座いません。わたくし大きな迷惑でした。
ただ、貴族としてはお父様は当然のことをしたまで。家を傾かせず潰さず次代に繋ぐのが当主の役目。過去にはそれで実子と言えど本気の放逐をされる子女も多かったと聞きます。
愛や恋を軸にすれば困るのは領民。
貴族は領民がいるからこそ食べる物、着る物、住む場所に困る事もないのです。その対価として貴族の生き方がある。好き勝手する貴族は御多分に洩れず没落しております。
バルタザール様は重いほどの愛情を容赦なくかけてくださいます。
以前ならバルタザール様の考えは受け入れられなかったかも知れません。父の考えが貴族としての在り方だ、正解だと、他の考えに気が付く事もなかったのですから。
立場だけでなく住む場所も年齢も違えばその数だけ正解があって当たり前。
わたくし、今は父の考えもバルタザール様の気持ちも両方正解だと思っているのです。
そう思えるようになったのは年齢という垣根を思い切り取り払ってくれたバルタザール様のおかげです。
バルタザール様とご友人の仲違いの原因は紛れもなくわたくし。
紐解けば、バルタザール様はわたくしを慮っただけ。
ご友人は結婚すれば自由の無くなる婚約者に今を謳歌してもらいたかっただけ。
そう考えれば、誰かを思っての事なので選んだ言葉と行動は間違いですが根っこを見れば間違いとも言い切れません。
「わたくし、バルタザール様の事を尊敬しておりますのよ?」
「尊敬?出来れば…そっちじゃなく…愛しテルトカ…」
鼻の頭を指でポリポリと掻く仕草のバルタザール様。
その仕草は照れもありますが、前向きな思考をされる際の指標でも御座います。
「ご友人ですもの。大丈夫ですわ」
「そうかなぁ…アイツ、意地っ張りなんだよなぁ」
――バルタザール様もね~――
「お揃いの石で作った宝飾品も付けていきましょう」
「あのペリドット?」
「そうです。ネックレスとイヤリング…王宮の塔から飛び降りる気持ちで完全装着してまいりますわ」
「あれで良かったのか?」
――聞き捨てなりませんわね?アレ?――
「バルタザール様とお揃いですもの。良いに決まっているではありませんか」
「お揃いか!そうだな!」
「えぇ!プライスレスですわ」
「そうだな!金では買えない価値があるんだ!」
――やっぱりマスターカード派なのかしら――
すっかりご機嫌も良くなったバルタザール様で御座いますが、何をモジモジされおられるのかしら?
鼻の頭ポリポリは見切ったと思うのですが、指先を合わせて脳トレは初見ですわ。
「あの…ロティ」
「なんで御座いましょう」
「殿下から聞いたんだが、やる気の出るまじないをしてもいいか?」
「やる気の出るまじない?ジュリアス殿下からお聞きになったのですか?」
「あぁ、効果は高いらしい」
初耳ですわね。おまじないとか占いは女性の方が敏感ですのに聞いた事が御座いません。
「やってもいいか?」
「2人でする事ですの?」
「2人じゃないと出来ない」
「はぁ?良いですが、わたくしは何をすれば?」
「じっとしていてくれればいい」
「こうですか?」
隣に腰を掛けた状態でおりますと、上半身だけを向けてくれと仰います。
少し体を捩じってバルタザール様のほうを向きました。
「ロティ♡」(ぎゅっ)
えっ?えぇっ?どうして抱きしめておられるのです?!
あ‥‥でも何となくわかります。
ぎゅっとされると嬉しくなりますし、気持ちが和らぎますわね。
そっとバルタザール様の背に手を回しました。
「ロティ―ッ♡」(ギュゥゥゥ!)
「グェッ!!」
背に回した手が、タップに変わるのに時間はかかりませんでした。
「いつも通りでよろしいですわよ。腹を括りましょう」
「でもなぁ。うーん」
規模は大きくはないのですが、4家ある公爵家が持ち回りで行なっている茶会。出席者はその公爵家なのですが、ファミリーパーティのようなものに出席をせねばならないのです。
敷居が高いと思っていらっしゃるのは、先日一触即発となったご子息の家がクレーベ公爵家でもあるからで御座います。あの件があってからは連絡も取り合っていないようなのです。
物言いに腹が立ったとは言え、胸ぐらを掴みあげた事はアーカンソー公爵ご夫妻にも報告し、わたくしとバルタザール様は並んで「今後は注意するように」と少しお叱りも受けてしまいました。
バルタザール様としても「あわや」となってしまった事に時間が経つにつれ、申し訳ない事をしたと思うところがあるのでしょう。
世代的にはバルタザール様やそのご子息が当主となって国王陛下を支える柱となる時代もありますので、仲違いをしたままも宜しくない。公爵家同士の仲が良くないというのは払拭したいのです。
クレーベ公爵家側の内情は判りませんが、遺恨を残さないためとは考えているはず。そうでなければこのタイミングで日頃は先代と現当主夫妻、それに続く長子夫妻が参加なのに、さらにその子女となれば言わずもがな。
「わたくしにも至らない点はございました。ご友人には先ず謝罪を致しましょう」
「謝るのは謝る。でも俺から先なのが嫌なんだ。俺は悪くない」
「えぇ。バルタザール様はわたくしを庇ってくださっただけ。それは満点ですが手が出てしまった事は事実ですもの」
「ロティは腹が立たないのか…。大人だな…あっ!!違う。変な意味ではない」
「判っておりますよ。わたくしも腹が立つこと沢山御座います。ですが自分の意見や言葉、知識が正解だとは限りません。それぞれに正解があるんです」
「そんなに沢山正解があったら困るじゃないか」
「困りますね。だから話し合うのでは?話し合って折り合いをつける点を見つける。わたくし、それをバルタザール様から教えてもらいましたのよ?」
「俺が?教えた覚えはないんだが」
それはそうで御座いましょう。教鞭をとって教えて貰ったわけではありません。
わたくしは過去の婚約で家長である父に、年上である婚約者に従う事で生きてきたのです。言われる事に従っていれば責任は問われませんし、何より楽ですもの。
フレデリック様もバルタザール様も強引なところは御座いますがその性質が違います。
若さもあるでしょうか。
フレデリック様の年齢41歳ともなれば、立場を鑑みない言動は眉を顰める者はあれど苦言を呈する者はそうそういません。バルタザール様はまだ若さで許されるところもありますし、言動について正そうと周りが動くのです。
フレデリック様は次男と言う事もあり自由が利く立場に胡坐をかき、甘えてしまった。3度の離縁でも何も学ばないとなれば仏の顔も三度撫でれば腹立てると言うこと。
お父様も仰っておりました。
「後取りはオリバーの子でも問題はない。ただ当主となるのに婚姻は必須条件。多少の女遊びは仕方がないと目を瞑ればバーレ伯爵家からは返済なしの支援が見込める。バカは扱いやすいと思っての婚約だったが予想を上回るバカは扱えないといい経験になった。ワハハ」
ワハハでは御座いません。わたくし大きな迷惑でした。
ただ、貴族としてはお父様は当然のことをしたまで。家を傾かせず潰さず次代に繋ぐのが当主の役目。過去にはそれで実子と言えど本気の放逐をされる子女も多かったと聞きます。
愛や恋を軸にすれば困るのは領民。
貴族は領民がいるからこそ食べる物、着る物、住む場所に困る事もないのです。その対価として貴族の生き方がある。好き勝手する貴族は御多分に洩れず没落しております。
バルタザール様は重いほどの愛情を容赦なくかけてくださいます。
以前ならバルタザール様の考えは受け入れられなかったかも知れません。父の考えが貴族としての在り方だ、正解だと、他の考えに気が付く事もなかったのですから。
立場だけでなく住む場所も年齢も違えばその数だけ正解があって当たり前。
わたくし、今は父の考えもバルタザール様の気持ちも両方正解だと思っているのです。
そう思えるようになったのは年齢という垣根を思い切り取り払ってくれたバルタザール様のおかげです。
バルタザール様とご友人の仲違いの原因は紛れもなくわたくし。
紐解けば、バルタザール様はわたくしを慮っただけ。
ご友人は結婚すれば自由の無くなる婚約者に今を謳歌してもらいたかっただけ。
そう考えれば、誰かを思っての事なので選んだ言葉と行動は間違いですが根っこを見れば間違いとも言い切れません。
「わたくし、バルタザール様の事を尊敬しておりますのよ?」
「尊敬?出来れば…そっちじゃなく…愛しテルトカ…」
鼻の頭を指でポリポリと掻く仕草のバルタザール様。
その仕草は照れもありますが、前向きな思考をされる際の指標でも御座います。
「ご友人ですもの。大丈夫ですわ」
「そうかなぁ…アイツ、意地っ張りなんだよなぁ」
――バルタザール様もね~――
「お揃いの石で作った宝飾品も付けていきましょう」
「あのペリドット?」
「そうです。ネックレスとイヤリング…王宮の塔から飛び降りる気持ちで完全装着してまいりますわ」
「あれで良かったのか?」
――聞き捨てなりませんわね?アレ?――
「バルタザール様とお揃いですもの。良いに決まっているではありませんか」
「お揃いか!そうだな!」
「えぇ!プライスレスですわ」
「そうだな!金では買えない価値があるんだ!」
――やっぱりマスターカード派なのかしら――
すっかりご機嫌も良くなったバルタザール様で御座いますが、何をモジモジされおられるのかしら?
鼻の頭ポリポリは見切ったと思うのですが、指先を合わせて脳トレは初見ですわ。
「あの…ロティ」
「なんで御座いましょう」
「殿下から聞いたんだが、やる気の出るまじないをしてもいいか?」
「やる気の出るまじない?ジュリアス殿下からお聞きになったのですか?」
「あぁ、効果は高いらしい」
初耳ですわね。おまじないとか占いは女性の方が敏感ですのに聞いた事が御座いません。
「やってもいいか?」
「2人でする事ですの?」
「2人じゃないと出来ない」
「はぁ?良いですが、わたくしは何をすれば?」
「じっとしていてくれればいい」
「こうですか?」
隣に腰を掛けた状態でおりますと、上半身だけを向けてくれと仰います。
少し体を捩じってバルタザール様のほうを向きました。
「ロティ♡」(ぎゅっ)
えっ?えぇっ?どうして抱きしめておられるのです?!
あ‥‥でも何となくわかります。
ぎゅっとされると嬉しくなりますし、気持ちが和らぎますわね。
そっとバルタザール様の背に手を回しました。
「ロティ―ッ♡」(ギュゥゥゥ!)
「グェッ!!」
背に回した手が、タップに変わるのに時間はかかりませんでした。
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