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24:犯罪か防犯か。全てが問題です。
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努めて笑顔をつくり、バルタザール様にもう一度問いかけます。
「何か御座いましたの?」
「あぁ…お爺様と父上、母上、そしてロティにも聞いて欲しい事がある」
いつもは破顔されて、重苦しいほどの愛情をぶつけてくださいますが今日は違います。わたくしの心臓は不規則に嫌な拍動を打ち始め、手には滴るほどの汗を感じます。
「どうしたんだ?」
バルタザール様のお爺様。アーカンソー公爵がバルタザール様に問われました。
「ジュリアス殿下が…第一王子殿下を…殺められた」
「なっ!なんだって?!」
「それでジュリアス殿下は?陛下はどのような?!」
「トルデリーゼ妃殿下を連れて…今は捜索隊が出ている」
「はぁ…何という事だ」
詳細は語られませんが、第三王子ジュリアス殿下が第一王子殿下を手に掛けられ、お妃様であるトルデリーゼ様を連れて何処かに逃亡したと言うのです。
第一王子殿下には良くない噂が御座いました。
成婚をされた後も毎夜娼婦のような女性を連れ込み、トルデリーゼ様を冷遇していると。
御子が出来ないのはトルデリーゼ様が原因と言われておりましたが、第一王子殿下も浮名を流されているのに御子が出来たとは聞いた事も御座いません。
王家のお種なのでどなたかが懐妊されても箝口令が布かれていたのか、本当に御子はいないのか噂の域は出ませんが、トルデリーゼ様がこの頃は執務も滞るようになられたのは事実。
それは懐妊ではなく過労という話も聞こえておりました。
「すまない。ロティ。ジュリアス殿下が見つかるまで捜索をせねばならないんだ。何時ものようには会えなくなってしまうんだ」
――なんだ。良かった――
不謹慎だとは思っております。
ジュリアス殿下とトルデリーゼ様が早くに、お怪我もなく見つかるのが一番だとは思っております。ただ良かったと思うのはわたくしの醜い心。独占欲で御座います。
別れを告げられるのではない。
そう確信した瞬間に良かったと思ってしまったのです。
「お役目ですから。お怪我をされませんよう」
「いいのか?」
「そうですね…では、これをお持ちくださいませ」
わたくしは「今日、ちゃんと言うわ!」と腹を括って参りましたので、お揃いで買ったペリドットがついたイヤリングをつけて参りました。片方の耳から外しバルタザール様の手に握らせたのです。
「ロティ。片方しかなくなるじゃないか」
「大丈夫です。バルタザール様がお戻りになれば揃いますから」
「判った。ロティありがとう」
バルタザール様は襟元を緩めるとペンダントチェーンを手繰り寄せます。
ペンダントトップについたカラビナにイヤリングの装飾で輪になった部分を引っかけるのですが、何をそんなにじゃらじゃらと付けられているのでしょう?
「バルタザール様?何を沢山つけておられるのです?」
「防犯グッズだ」
「防犯?見せて頂い―――えぇっ?!」
――なぜこんなに鍵を持っていらっしゃるの?――
「あの、これはどちらの鍵ですの?」
「これか。全てを説明をすると長くなるがロティが一度でも出入りした扉の鍵だ」
――平然と仰いますが、他家のものでは?――
「いつ何時ロティが閉じ込められても救出するために合鍵を作ったんだ」
「合鍵…」
「これはマクベル伯爵家の裏門の鍵だろ、これは王立美術館の貴族限定資料庫で、これがオリバー上官のクローゼットの鍵だ。閉じ込められたロティが助けを呼ぶ前に助けるのが俺の役目だ」
――えぇっと何故わたくしが閉じ込められる事に?――
「あの…バルタザール様」
「どうした。鍵は間違っていないぞ」
――どうしてさもありなんとの返しをされるのです?――
「どこも内鍵で開けられますが…必要ですの?」
「なんだって?!…いつの間に内鍵を…」
「新築時からだと思いますが」
「えぇっ!?」
――こちらが えぇっ?!ですわ――
「これは没収致します。犯罪の匂いがしますわ」
「犯罪じゃない!防犯のためだ!事件になる前に解決できるんだ」
「いいえ、そもそも!この時点で犯罪です!」
「そんな…じゃぁロティが閉じ込められ――」
「ません!内鍵があると申しましたでしょう」
何故か渋々とチェーンを外されて、膨れっ面になっておられますが譲れません。
何と言っても御不浄の鍵、しかも女性用がある時点でアウトです。
バルタザール様が再度ご出仕された後、アーカンソー公爵家の御用達である刀鍛冶の炉で溶かす事に致します。
「孫がすまないねぇ…誰に似たんだが」
わたくし以外の全員。えぇ。使用人さんも含めて全員が「誰に似た」と発したアーカンソー公爵を凝視しております。背筋にゾクリと悪寒が走りました。
――隔世遺伝だったのね――
暫くはまともに帰宅もできそうにないバルタザール様。
なら、わたくしはお留守を待つだけです。
えぇ。とっておきのサプライズをご用意して。
「何か御座いましたの?」
「あぁ…お爺様と父上、母上、そしてロティにも聞いて欲しい事がある」
いつもは破顔されて、重苦しいほどの愛情をぶつけてくださいますが今日は違います。わたくしの心臓は不規則に嫌な拍動を打ち始め、手には滴るほどの汗を感じます。
「どうしたんだ?」
バルタザール様のお爺様。アーカンソー公爵がバルタザール様に問われました。
「ジュリアス殿下が…第一王子殿下を…殺められた」
「なっ!なんだって?!」
「それでジュリアス殿下は?陛下はどのような?!」
「トルデリーゼ妃殿下を連れて…今は捜索隊が出ている」
「はぁ…何という事だ」
詳細は語られませんが、第三王子ジュリアス殿下が第一王子殿下を手に掛けられ、お妃様であるトルデリーゼ様を連れて何処かに逃亡したと言うのです。
第一王子殿下には良くない噂が御座いました。
成婚をされた後も毎夜娼婦のような女性を連れ込み、トルデリーゼ様を冷遇していると。
御子が出来ないのはトルデリーゼ様が原因と言われておりましたが、第一王子殿下も浮名を流されているのに御子が出来たとは聞いた事も御座いません。
王家のお種なのでどなたかが懐妊されても箝口令が布かれていたのか、本当に御子はいないのか噂の域は出ませんが、トルデリーゼ様がこの頃は執務も滞るようになられたのは事実。
それは懐妊ではなく過労という話も聞こえておりました。
「すまない。ロティ。ジュリアス殿下が見つかるまで捜索をせねばならないんだ。何時ものようには会えなくなってしまうんだ」
――なんだ。良かった――
不謹慎だとは思っております。
ジュリアス殿下とトルデリーゼ様が早くに、お怪我もなく見つかるのが一番だとは思っております。ただ良かったと思うのはわたくしの醜い心。独占欲で御座います。
別れを告げられるのではない。
そう確信した瞬間に良かったと思ってしまったのです。
「お役目ですから。お怪我をされませんよう」
「いいのか?」
「そうですね…では、これをお持ちくださいませ」
わたくしは「今日、ちゃんと言うわ!」と腹を括って参りましたので、お揃いで買ったペリドットがついたイヤリングをつけて参りました。片方の耳から外しバルタザール様の手に握らせたのです。
「ロティ。片方しかなくなるじゃないか」
「大丈夫です。バルタザール様がお戻りになれば揃いますから」
「判った。ロティありがとう」
バルタザール様は襟元を緩めるとペンダントチェーンを手繰り寄せます。
ペンダントトップについたカラビナにイヤリングの装飾で輪になった部分を引っかけるのですが、何をそんなにじゃらじゃらと付けられているのでしょう?
「バルタザール様?何を沢山つけておられるのです?」
「防犯グッズだ」
「防犯?見せて頂い―――えぇっ?!」
――なぜこんなに鍵を持っていらっしゃるの?――
「あの、これはどちらの鍵ですの?」
「これか。全てを説明をすると長くなるがロティが一度でも出入りした扉の鍵だ」
――平然と仰いますが、他家のものでは?――
「いつ何時ロティが閉じ込められても救出するために合鍵を作ったんだ」
「合鍵…」
「これはマクベル伯爵家の裏門の鍵だろ、これは王立美術館の貴族限定資料庫で、これがオリバー上官のクローゼットの鍵だ。閉じ込められたロティが助けを呼ぶ前に助けるのが俺の役目だ」
――えぇっと何故わたくしが閉じ込められる事に?――
「あの…バルタザール様」
「どうした。鍵は間違っていないぞ」
――どうしてさもありなんとの返しをされるのです?――
「どこも内鍵で開けられますが…必要ですの?」
「なんだって?!…いつの間に内鍵を…」
「新築時からだと思いますが」
「えぇっ!?」
――こちらが えぇっ?!ですわ――
「これは没収致します。犯罪の匂いがしますわ」
「犯罪じゃない!防犯のためだ!事件になる前に解決できるんだ」
「いいえ、そもそも!この時点で犯罪です!」
「そんな…じゃぁロティが閉じ込められ――」
「ません!内鍵があると申しましたでしょう」
何故か渋々とチェーンを外されて、膨れっ面になっておられますが譲れません。
何と言っても御不浄の鍵、しかも女性用がある時点でアウトです。
バルタザール様が再度ご出仕された後、アーカンソー公爵家の御用達である刀鍛冶の炉で溶かす事に致します。
「孫がすまないねぇ…誰に似たんだが」
わたくし以外の全員。えぇ。使用人さんも含めて全員が「誰に似た」と発したアーカンソー公爵を凝視しております。背筋にゾクリと悪寒が走りました。
――隔世遺伝だったのね――
暫くはまともに帰宅もできそうにないバルタザール様。
なら、わたくしはお留守を待つだけです。
えぇ。とっておきのサプライズをご用意して。
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