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第07話 淑女は辞めたの
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翌朝は寝坊してしまった。セレナが目覚めた時にはすっかり部屋の中に太陽光が差し込んでいるが、めちゃめちゃ嬉しそうな顔でリーンが洗面の桶を、マーガが町娘風のワンピースを手に立っていた。
「おはようございます。どうですか?ぐっすり眠れましたか?」
「はい、寝すぎてしまいましたわ」
「いえいえ。寝顔を見られる日が来るなんて!今日は夜まで神に感謝しっぱなしです」
――ハッ!寝顔を見たの?!――
羞恥を感じ顔を赤くすると「ご褒美です!」リーンが洗面桶を差し出してくれる。勿論ご褒美と言うのは顔を洗えることではなく、寝顔を見られた喜びという意味だ。
「今日はウィッグもつけて頂きますからね」
「コスプレするセレたん‥すみません。鼻血でそうです」
「出さなくていいわ。でもどうしてウィッグ?」
用意されたウィッグはピンク色の髪。これまでエクステは付けた事があるがすっぽりと髪を覆うウィッグは付けた事が無かった。
「セレたんは身バレしてますからね。セレたん推しは結構多いんですよ。演習場で騒ぎになっても困るので変装です」
「そうなの?」
そんなに自分に「推し」がいるとも思えないが、そのままだったら顔を知っている者は居るかも知れないし、騎士団長などはセレナを見ればすぐに解ってしまうだろう。
騒ぎを起こしたい訳ではなく、「推し活」の最前線を実際にこの目で見て、雰囲気を感じるのが目的である。
セレナは言われるがままに町娘風のワンピースに袖を通したのだが…。
「だっだめだぁ!オーラが駄々洩れですっ!くぅっ!尊いっ!」
「大丈夫よ。ほら、ピンクのウィッグをつければ…あ、ダメかも」
自分の顔は一番見慣れた顔だからか髪色をピンクにしただけでは「セレナ」が隠しきれていない。
「姿勢も良いですし…即バレしますね」
「いっそのこと‥髪を切ったらどうかしら」
<< 髪を切るっ?! >>
声がハモり、後ろに仰け反るマーガとリーンは「とんでもない!」とまた声を重ねて否定した。
「だけど、髪の色を変えても顔立ちは変えられないでしょう?だったら髪を切る筈がない!っていう思い込みを利用した方がいいと思うの。社交をする必要もないし、お客様を迎える事もないから長い髪でいる必要がないわ。何より‥」
「何より‥なんです?」
「淑女は辞めたの。彼だって好きにすればいいと言ってたでしょう?隣国でね、ヘアドネーションって言って病気の子供用にウィッグをって取り組みも聞いたことがあるわ。この長さなら使えそうでしょう?無駄にならないわ」
「だとしても髪を切るなんて!」
「そうですよ。無茶が過ぎます!」
「無茶じゃないわ。長いと冬場は乾かすのも大変だし、髪を結うのも面倒よ」
「それは私たちの楽しみでもありますから!!」
「ふふっ。楽しみを奪って悪いんだけど、決めたわ。切る。そうね、肩に当たらないくらいまでで揃えてくれる?」
<< そんなぁ >>
別の髪色のウィッグを持ってくるから早まってくれるなとマーガとリーンが急いでクローゼットに飛び込んでいった隙にセレナは「そういえば」と執務机の引き出しに鋏があった事を思い出し、耳を隠していた髪をひと房握ると‥。
ジョキッ!
「あーっ!!セレたんっ!!」
急いでクローゼットから持てるだけのウィッグを抱えて出てきたマーガが叫んだ。ぼとぼとと持っていたウィッグが床に散らばった。
「にゃーんてことを!!御髪が!御髪がぁぁ!!」
「いいのよ。こっちも――」
「待ってくださぁい!!やります!切りますから!ぬぉぉーっ!耳の上までバッサリ行っちゃってるぅ!耳が見えるの嬉しいけど悲しいーっ!」
涙目になるマーガとリーンだが丁寧に揃えてくれたおかげで耳に風があたる爽快感を感じる。何より軽い。髪の毛がショートボブになり、バッサリやってしまった耳の当たりには髪を流すようになったが兎に角頭が軽い。
鏡に映る自分を見てセレナは百面相をする。
後ろで「ハゥハゥ」と悶えている2人を他所に変顔をしたり、鼻の穴を「ぶひっ」と指で突き上げたりで今までやろうとしても出来なかった自分の顔遊びを楽しんだ。
自分は何も変わっていないのに部屋を出た時、男性使用人の1人が話しかけてきた。
「マーガ、リーン。新人か?聞いてないぞ?」
「初めまして。ナーデと申します。お見知りおきを」
「は、はぁ‥。よろしく??」
キツネに抓まれたような顔をした男性使用人はセレナだと全く気が付かない。
「やった!」と心でグッとガッツポーズのセレナはマーガとリーン、3人で廊下を歩いた。
「あの、セレたん?」
「なぁに?」
「どうしてナーデなんです?」
「私の名前。お婆様がセレナーデから取ったと聞いたの。だからナーデ」
「なぁるぅ~」
「さぁ!参りましょう」
「あの、馬車は?!」
マーガが呼び止めたが、セレナはくるっと振り向いて指先を鼻先でチッチッチ。
「町娘が馬車だとおかしいわ。歩くわよ!Here we go!!」
<< 貴重なシチュ!あざまぁす! >>
仲良く歩いていく3人。
楽し気な声にサロンへの廊下を歩いていたフェルナンドはその背を見て「はて?」首を傾げた。
「おはようございます。どうですか?ぐっすり眠れましたか?」
「はい、寝すぎてしまいましたわ」
「いえいえ。寝顔を見られる日が来るなんて!今日は夜まで神に感謝しっぱなしです」
――ハッ!寝顔を見たの?!――
羞恥を感じ顔を赤くすると「ご褒美です!」リーンが洗面桶を差し出してくれる。勿論ご褒美と言うのは顔を洗えることではなく、寝顔を見られた喜びという意味だ。
「今日はウィッグもつけて頂きますからね」
「コスプレするセレたん‥すみません。鼻血でそうです」
「出さなくていいわ。でもどうしてウィッグ?」
用意されたウィッグはピンク色の髪。これまでエクステは付けた事があるがすっぽりと髪を覆うウィッグは付けた事が無かった。
「セレたんは身バレしてますからね。セレたん推しは結構多いんですよ。演習場で騒ぎになっても困るので変装です」
「そうなの?」
そんなに自分に「推し」がいるとも思えないが、そのままだったら顔を知っている者は居るかも知れないし、騎士団長などはセレナを見ればすぐに解ってしまうだろう。
騒ぎを起こしたい訳ではなく、「推し活」の最前線を実際にこの目で見て、雰囲気を感じるのが目的である。
セレナは言われるがままに町娘風のワンピースに袖を通したのだが…。
「だっだめだぁ!オーラが駄々洩れですっ!くぅっ!尊いっ!」
「大丈夫よ。ほら、ピンクのウィッグをつければ…あ、ダメかも」
自分の顔は一番見慣れた顔だからか髪色をピンクにしただけでは「セレナ」が隠しきれていない。
「姿勢も良いですし…即バレしますね」
「いっそのこと‥髪を切ったらどうかしら」
<< 髪を切るっ?! >>
声がハモり、後ろに仰け反るマーガとリーンは「とんでもない!」とまた声を重ねて否定した。
「だけど、髪の色を変えても顔立ちは変えられないでしょう?だったら髪を切る筈がない!っていう思い込みを利用した方がいいと思うの。社交をする必要もないし、お客様を迎える事もないから長い髪でいる必要がないわ。何より‥」
「何より‥なんです?」
「淑女は辞めたの。彼だって好きにすればいいと言ってたでしょう?隣国でね、ヘアドネーションって言って病気の子供用にウィッグをって取り組みも聞いたことがあるわ。この長さなら使えそうでしょう?無駄にならないわ」
「だとしても髪を切るなんて!」
「そうですよ。無茶が過ぎます!」
「無茶じゃないわ。長いと冬場は乾かすのも大変だし、髪を結うのも面倒よ」
「それは私たちの楽しみでもありますから!!」
「ふふっ。楽しみを奪って悪いんだけど、決めたわ。切る。そうね、肩に当たらないくらいまでで揃えてくれる?」
<< そんなぁ >>
別の髪色のウィッグを持ってくるから早まってくれるなとマーガとリーンが急いでクローゼットに飛び込んでいった隙にセレナは「そういえば」と執務机の引き出しに鋏があった事を思い出し、耳を隠していた髪をひと房握ると‥。
ジョキッ!
「あーっ!!セレたんっ!!」
急いでクローゼットから持てるだけのウィッグを抱えて出てきたマーガが叫んだ。ぼとぼとと持っていたウィッグが床に散らばった。
「にゃーんてことを!!御髪が!御髪がぁぁ!!」
「いいのよ。こっちも――」
「待ってくださぁい!!やります!切りますから!ぬぉぉーっ!耳の上までバッサリ行っちゃってるぅ!耳が見えるの嬉しいけど悲しいーっ!」
涙目になるマーガとリーンだが丁寧に揃えてくれたおかげで耳に風があたる爽快感を感じる。何より軽い。髪の毛がショートボブになり、バッサリやってしまった耳の当たりには髪を流すようになったが兎に角頭が軽い。
鏡に映る自分を見てセレナは百面相をする。
後ろで「ハゥハゥ」と悶えている2人を他所に変顔をしたり、鼻の穴を「ぶひっ」と指で突き上げたりで今までやろうとしても出来なかった自分の顔遊びを楽しんだ。
自分は何も変わっていないのに部屋を出た時、男性使用人の1人が話しかけてきた。
「マーガ、リーン。新人か?聞いてないぞ?」
「初めまして。ナーデと申します。お見知りおきを」
「は、はぁ‥。よろしく??」
キツネに抓まれたような顔をした男性使用人はセレナだと全く気が付かない。
「やった!」と心でグッとガッツポーズのセレナはマーガとリーン、3人で廊下を歩いた。
「あの、セレたん?」
「なぁに?」
「どうしてナーデなんです?」
「私の名前。お婆様がセレナーデから取ったと聞いたの。だからナーデ」
「なぁるぅ~」
「さぁ!参りましょう」
「あの、馬車は?!」
マーガが呼び止めたが、セレナはくるっと振り向いて指先を鼻先でチッチッチ。
「町娘が馬車だとおかしいわ。歩くわよ!Here we go!!」
<< 貴重なシチュ!あざまぁす! >>
仲良く歩いていく3人。
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