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第16話 プレミアって怖い
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「セレたん。こんな沢山のお金。どうするんです?」
マーガとリーンは1週間の競売で得た収益が入った袋を見て目を丸くした。
1袋に金貨でも銀貨でも1000枚が入る袋。
目の前には金貨の袋が8つ。銀貨の袋が21。そして銅貨の袋だけはちょっと余裕があって1つ。
銅貨は100枚で銀貨1枚になるので手数料などを払った端数の87枚が入っている。
銀貨の袋が21個なのは金貨は支払う時におつりしか出ない硬貨でもある。
支払いの度に金貨を出していたらおつりの量が半端ない。なので敢えて銀貨にしてもらったのだ。
マーガとリーンも金貨だけでパンパン、銀貨だけでパンパンな袋など見たことがない。
セレナも数字は見たことがあるけれど、実物でここまでとなると実は初めてでもある。
金貨50枚で小ぶりな一軒家が買える。
競売に出した品の買値は決算書も処理をしていたのでセレナの記憶にある。
中には銅貨5枚という品もあったが、トータルすれば買ったときの合計価格の約2倍近い金額で売れた。
――プレミアって怖いわね――
ドレスやそのドレスに合わせた小物、輿入れ道具で持ってきた無駄に華美な化粧台や名工の作品シリーズのチェストなど小ぶりな家具。セレナは自分に不要だと思うものはすべて競売で売り捌いた。
幸いなことに「悪女」と言われていたことから売れ残りは無し。僥倖だ。
初日は緊張した。
買い手が付くか、付かなかったら計画を練り直しになる。
一番最初に出品したのは「侯爵家に嫁ぐんだから」と控えめだが買えば思わず息をのむ価格が付いたドレスだった。ダグラスとの婚約が無くなり王家で処分をしてくれと言ったのだが「セレナのために買ったものだから」と国王に持ち帰るように言われた品の1つ。
銅貨1枚からスタートしたが、最初に札をあげた男性はいきなり「金貨150枚!」だった。銅貨の聞き間違いかと思ったが金貨だった。
2日目、3日目は「あのセレナが出品している」と聞いた人が押し寄せて入場者の制限がかかり、4日目には整理券が配られて抽選に当たった者だけが入場できるようになった。
その当選の入場券が転売されてしまったので5日目は当選したらそのまま入場の方式になった。
今思えば国王は慰謝料という現金はきっとカルレア伯爵が懐に入れてしまう事を見越して、婚約者として使用したドレスや宝飾品などをセレナに直接渡したのだろうと思う。
最後の挨拶をする時、王妃はげっそりとしていたが国王は寂しそうな顔をしていた。
ダグラスはエベリーの教育に付き合っているそうで顔は見なかったが、あっさりとした別れだった。
「セレたん?どうしたんです?」
「あ、ううん。なんでもないわ。ちょっと思い出してたの」
「感傷に耽るセレたん。リーンは側付きになれたことが幸せですっ」
「私もリーンとマーガが付いてくれた事に感謝しているわ」
「ハゥゥ♡そんな…萌え死させないでくださいぃぃ」
――死んでないわよね?――
「でも、一体どうするんです?これを全部推しグッズに費やすんですか?」
「違うわ。マーガとリーンが教えてくれたでしょう?推しが笑ってくれたらそれで幸せな気分になるって」
「はい、言いましたけど…」
「鍛錬場に行って思ったの。推し活する子が付いている騎士はごく一部でしょう?メイリーン様のようにかつては推しがいたけど今はいないという騎士もいるし、そもそもで推してくれる人がいない騎士もいるわよね」
「そうですね」
「でも、お金がなくて何かを諦めるって悲しいじゃない。私はメイリーン様にも笑って頂きたいの。先ずは侯爵家に居候になってるわけだから…」
ずりずり‥‥。
セレナは金貨1000枚の入った袋を引っ張り、食費や滞在費としてピエロトロ侯爵家に支払う事にした。
相場はよく判らないけれど、侯爵家なので食事も良いものを使っていると考えれば金貨1000枚で半年分にはなるだろう。
執事は「要りませんよ」と言ったが「受け取ってくれないのなら市井で独り暮らしをする」と言えば渋々納めてくれた。
「これで侯爵家の金を!!とかほざいても無駄よッ!」
セレナはフフンと鼻を鳴らした。
そして市井で平民も使っているシーツなどを購入し、侯爵家で支給されるシーツは全て返却。
基本は寝る、食事は朝食と軽めの夕食だけなので部屋はほとんど汚れない。10日に1回マーガとリーンに手伝ってもらって掃除をすれば問題なし。
シーツや衣類は毎朝カバンに入れて市井にある「洗濯請負所」に持って行けば洗ってくれる。勿論支払いは必要だが、フェルナンドの世話にはならない!と決めた以上徹底しなければならない。
必要最低限を残し、売り切ったセレナは活動を開始した。
「武具屋に行くわ」
「武具屋?あ、あのセレたん?高額な贈り物を推しに贈るのはダメですよ?」
「解ってるわ。推しの迷惑にならないように!鉄則よね」
「え?じゃぁなんで武具屋に?」
「推し活と言ったでしょう?皆を笑顔にする推し活をするために先ずは武具屋に行くのよ。話が纏まれば騎士団でしょう?それから劇団。時間があれば仕立て屋と‥平民向けの化粧品なんか扱ってる小間物店も行きたいわ」
マーガとリーンは顔を見合わせる。
セレナの推し活、どこかで教え間違ったか??
何処を間違ったか解らないので、2人はセレナの後を追うように部屋を出て行った。
マーガとリーンは1週間の競売で得た収益が入った袋を見て目を丸くした。
1袋に金貨でも銀貨でも1000枚が入る袋。
目の前には金貨の袋が8つ。銀貨の袋が21。そして銅貨の袋だけはちょっと余裕があって1つ。
銅貨は100枚で銀貨1枚になるので手数料などを払った端数の87枚が入っている。
銀貨の袋が21個なのは金貨は支払う時におつりしか出ない硬貨でもある。
支払いの度に金貨を出していたらおつりの量が半端ない。なので敢えて銀貨にしてもらったのだ。
マーガとリーンも金貨だけでパンパン、銀貨だけでパンパンな袋など見たことがない。
セレナも数字は見たことがあるけれど、実物でここまでとなると実は初めてでもある。
金貨50枚で小ぶりな一軒家が買える。
競売に出した品の買値は決算書も処理をしていたのでセレナの記憶にある。
中には銅貨5枚という品もあったが、トータルすれば買ったときの合計価格の約2倍近い金額で売れた。
――プレミアって怖いわね――
ドレスやそのドレスに合わせた小物、輿入れ道具で持ってきた無駄に華美な化粧台や名工の作品シリーズのチェストなど小ぶりな家具。セレナは自分に不要だと思うものはすべて競売で売り捌いた。
幸いなことに「悪女」と言われていたことから売れ残りは無し。僥倖だ。
初日は緊張した。
買い手が付くか、付かなかったら計画を練り直しになる。
一番最初に出品したのは「侯爵家に嫁ぐんだから」と控えめだが買えば思わず息をのむ価格が付いたドレスだった。ダグラスとの婚約が無くなり王家で処分をしてくれと言ったのだが「セレナのために買ったものだから」と国王に持ち帰るように言われた品の1つ。
銅貨1枚からスタートしたが、最初に札をあげた男性はいきなり「金貨150枚!」だった。銅貨の聞き間違いかと思ったが金貨だった。
2日目、3日目は「あのセレナが出品している」と聞いた人が押し寄せて入場者の制限がかかり、4日目には整理券が配られて抽選に当たった者だけが入場できるようになった。
その当選の入場券が転売されてしまったので5日目は当選したらそのまま入場の方式になった。
今思えば国王は慰謝料という現金はきっとカルレア伯爵が懐に入れてしまう事を見越して、婚約者として使用したドレスや宝飾品などをセレナに直接渡したのだろうと思う。
最後の挨拶をする時、王妃はげっそりとしていたが国王は寂しそうな顔をしていた。
ダグラスはエベリーの教育に付き合っているそうで顔は見なかったが、あっさりとした別れだった。
「セレたん?どうしたんです?」
「あ、ううん。なんでもないわ。ちょっと思い出してたの」
「感傷に耽るセレたん。リーンは側付きになれたことが幸せですっ」
「私もリーンとマーガが付いてくれた事に感謝しているわ」
「ハゥゥ♡そんな…萌え死させないでくださいぃぃ」
――死んでないわよね?――
「でも、一体どうするんです?これを全部推しグッズに費やすんですか?」
「違うわ。マーガとリーンが教えてくれたでしょう?推しが笑ってくれたらそれで幸せな気分になるって」
「はい、言いましたけど…」
「鍛錬場に行って思ったの。推し活する子が付いている騎士はごく一部でしょう?メイリーン様のようにかつては推しがいたけど今はいないという騎士もいるし、そもそもで推してくれる人がいない騎士もいるわよね」
「そうですね」
「でも、お金がなくて何かを諦めるって悲しいじゃない。私はメイリーン様にも笑って頂きたいの。先ずは侯爵家に居候になってるわけだから…」
ずりずり‥‥。
セレナは金貨1000枚の入った袋を引っ張り、食費や滞在費としてピエロトロ侯爵家に支払う事にした。
相場はよく判らないけれど、侯爵家なので食事も良いものを使っていると考えれば金貨1000枚で半年分にはなるだろう。
執事は「要りませんよ」と言ったが「受け取ってくれないのなら市井で独り暮らしをする」と言えば渋々納めてくれた。
「これで侯爵家の金を!!とかほざいても無駄よッ!」
セレナはフフンと鼻を鳴らした。
そして市井で平民も使っているシーツなどを購入し、侯爵家で支給されるシーツは全て返却。
基本は寝る、食事は朝食と軽めの夕食だけなので部屋はほとんど汚れない。10日に1回マーガとリーンに手伝ってもらって掃除をすれば問題なし。
シーツや衣類は毎朝カバンに入れて市井にある「洗濯請負所」に持って行けば洗ってくれる。勿論支払いは必要だが、フェルナンドの世話にはならない!と決めた以上徹底しなければならない。
必要最低限を残し、売り切ったセレナは活動を開始した。
「武具屋に行くわ」
「武具屋?あ、あのセレたん?高額な贈り物を推しに贈るのはダメですよ?」
「解ってるわ。推しの迷惑にならないように!鉄則よね」
「え?じゃぁなんで武具屋に?」
「推し活と言ったでしょう?皆を笑顔にする推し活をするために先ずは武具屋に行くのよ。話が纏まれば騎士団でしょう?それから劇団。時間があれば仕立て屋と‥平民向けの化粧品なんか扱ってる小間物店も行きたいわ」
マーガとリーンは顔を見合わせる。
セレナの推し活、どこかで教え間違ったか??
何処を間違ったか解らないので、2人はセレナの後を追うように部屋を出て行った。
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