どうせ離縁できないしとキレた奥様は推し活をすることにした

cyaru

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第17話  推し活仲介業

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1週間前。
セレナはくしゃくしゃになったメイリーンの絵姿を見て考えた。

メイリーンは騎士団には所属をしているけれど実家の借金で剣を振る騎士ではなく後方支援の配属になった。借金はどうにもしてやれないが、騎士の夢があるのなら応援できるのではないかと。

他にも配属係など貧困故に武具が揃えられずにいる者だっている。

騎士になったからには誰しもが武具を装着し剣を振りたいのだ。
先輩騎士の世話係をしている少年兵が騎士団の所有する武具をつけて鍛錬場に出て来た時、慣れない武具によろよろする者もいたけれど、誰もが嬉しそうだった。

誰だって、誰かの推しになれる。
推しの夢を叶えるのも推し活の醍醐味ではないか。

そこには問題がある。
お金を持っているのは富裕層と言われる豪商や貴族。
平民にはあまり自由になるお金はない。

だが、ないと言っても囁かな楽しみを少額で出来るとなればどうだろうか。
きっと平民の間にも広く普及するはず。


ならば自分には何が出来るか。

先ずはお金。
金に汚いと言われようが先立つものがないと動くに動けない。

だから競売で金を作ったのである。

★~★

街に出た3人。セレナは5本の指には入らないけれど腕のいい鍛冶を抱えている武具屋はないかとマーガとリーンに問う。

「ありますけど…。セレたん。大きな武具屋じゃなくていいんですか?」

「大きな武具屋はダメよ。放っておいても売れるから」

「は、はぁ?」

「何をするんです?」

セレナは腰に手を当ててフフン!

「仲介業よ。斡旋とかするの」

「斡旋?なんでまた?!」

「簡単よ。お金は沢山手に入ったけど売る物はもうないの。だからこれを元手にして事業をしないと直ぐに無くなっちゃうわ。推し活をするのに絵姿を描いてもらうのも1つの方法だけど、それって目立たたないと絵姿を頼んでくれる人も少ないって事よね」

「それは、まぁ、そうですけど」

「手っ取り早いのは見学客を増やす事だけど、単に来てくださいと呼びかけても誰も来てくれないわ。騎士はカッコいいと先ずは周知をするの。同時にリタイア組と呼ばれている騎士の中から先ずはメイリーン様をスカウトするわ」

「ス、スカウトッ?」


驚くマーガとリーンにセレナは説明をした。

ダグラスの婚約者である時に学んだことがある。
力のある商会はサンプル品として顔の広い貴族に先ずは使ってもらう。それを茶会や夜会で広めるのだ。

しかし、それではすそ野が一番広い平民には浸透しない。
何故か、品物の価格帯が平民の手の出る域にないからである。

広告塔を使うとそれなりに支払いが生じる。それは織り込み済み。
高位貴族などは引き受けてくれるはずもないし、引き受けてくれたとしても一番周知したい平民の層にはそっぽを向かれる。

そこでだ。

先ずは騎士団で配送係などをしているリタイア組を使う。
使うと言ってもこき使う訳ではなく、メイリーンのように体幹がしっかりとした人に武具をつけて裏方から復帰をしてもらうのだ。

姿勢が良いとそれだけで人は立派に見える。
おどおどした性格でも胸を張れば自信に満ちて見えるのと同じ。

武具を扱う商会にも協力はしてもらわねばならないが、強そうに見える、頑丈そうに見える、何より騎士だ。かっこよく見える。これは大事。

無名なのだからキャスティング料も安いし、月に2、3個売れればいい武具が5,6個になるだけで大違い。
武具は色んな職人の手を経て完成品となるので、手が空く職人も少なくなり収入も増える。モデルになる騎士は無料で武具が着用できる。

「なるほど。武具屋は武具を貸し出すんですね」

「貸し出すと言うよりも提供する。かな。一番最初は武具屋も怖いと思うのよ。だから私が武具一式を買い取るの。それをメイリーン様や配送係からこれは!と思う人に着てもらうの。オーダー品だからその人に合うものを作って貰えばよりかっこよく見えるはずよ」

「それもそうですね。この前の鍛錬場。ぶかぶかだったりサイズが明らかに合ってないって剣とか振り難そうでしたし」

「カッコよくなれば、推してくれるファンも増えて絵姿だって爆売れよ!10人が1枚買ってくれればその10人の内半分はまた買ってくれるかも知れないでしょう?売り上げは騎士に渡されるんだから先ずは買ってくれる人、見学に来てくれる人を増やさなきゃ。その為には…一番効果的な広告をするの」

「広告?どんな?」

「口コミよ。口コミって噂と一緒。広がるのは早いし何よりタダ!人ってね、良い事は広めないけど悪い事と、自慢したいことはついつい広げちゃうの。カッコいい騎士がいる、自分が一番最初に目をつけたんだ!そうなると誰かにカッコいい人を推しているって自慢をしたくなるのよ」

「うっ…セレたんが言うと解りみしかない…確かに私、セレたんの側付きになったって近所に自慢しちゃった」

「ふふっ。でも上手くいけば武具屋とかの新製品を装備するに相応しい騎士をこちらで選んで仲介料を貰うの。そうね。競売と同じで1%でいいわ。品物が売れるんだからきっとノってくれる筈よ」


武具に限った事でもない。売れない役者でもいいのだ。
だからこの後は劇団と中小か零細の仕立て屋を回る。

少人数だが、定期的に20~30人の規模の観客を集めて公演をしている劇団が望ましい。

仕立て屋とタイアップし既製品で良いので、仕立て屋の服を着て街を歩いてもらう。
こちらも最初の数回はセレナが服を買い取って提供をする。

人の目を自分に向けさせるのが役者なのだから街全体が舞台にもなる。

真似をして「あの服を買おう」と思ってくれる人が1人でも2人でも居れば仕立て屋は儲かる。
末端のお針子も仕事が増えるわけだ。


「そっか。お針子とか仕事が増えれば…タニア騎士を推してる子ってお針子なんです。お給金が増えればまたグッズが売れる?!」

「そういう事。物が売れて、お給金も増えて、推しはマージンも手に入る。私も仲介料が入る!経済まわして皆がWINWINよ!」

「セレたん‥一生ついて行ってもいいですか?」

「やだ…マーガとリーンは私の推し活師匠よ。逃がさないんだから♡」

「逃げませぇん。推しの鎖で私を留め置いてぇ~」

「ふふふ。縛っちゃうわよ?」

「セレたんになら、亀甲縛りでもなんでも受けます!」

――それは無理。あれは熟練が行う至高の技よ――
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