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第11話 家訓(書くん)じゃなかった
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箱には既視感があるルシファー。
宮で野菜などを持ち運びする時に使っている大中小の箱の小サイズだ。
中を見ると底に小さな布袋が入っていた。中を開くと対になったイヤリング。
明らかな安物でこれを布袋に入れて持ってくるマジョリカの行動の意味が全く読めない。
「これはなんだ?」
「お代です。モンテスト様は要らないと仰ったのですが、お野菜も新鮮なものを持ってきて頂きまして数日は食べるにも困らないと思います。現金の方が良いのでしょうけど生憎…現金は持ってきていなくて。買取店に買い取ってもらおうと思ったのですがお店の場所もまだ伺ってなくて。こういうのは早ければ早いほど第3王子ルシファー殿下も安心すると思いますので」
――私が安心する?どういう事だ?――
マジョリカから金銭を出させるつもりは全くなかったが、どこかで考え方の相違、情報の行き違いがあったのかとルシファーは考えたが、解らなかった。
モンテストは断ったと言う。その事だけが救いに思える。
金銭の問題はマジョリカが何を心配しているのかは知らないが、金と恩は借りれば早めに返すのは鉄則だ。決して間違いではない。
――しかし、その代金がこのイヤリング?――
買値が付くかどうかも判らないクズ石のついたイヤリングにルシファーは「何の冗談だろう」と思うが、マジョリカは真面目な顔。おそらくこの宝飾品には価値があるとしか思っていない様子だ。
価格は別として生活費は要らないから受け取ってくれという行動に益々訳が判らなくなってくる。
「第3王子ルシファー殿下に生活費まで出して頂くつもりはないのです。雨を凌げるこんな立派な家屋も貸して頂いておりますし、全然足らないとは思いますが今日の食費も含めてお納めいただければと。この後は出来るだけ早く文字を覚えて働いて、ここを出るつもりですので」
「ここを出る?!なんでまた?」
「宮にお勤めの方でしたらご存じかと思いましたが…書面上の夫婦ですし、ここだけの話。私の事をご存じの方はほとんどいらっしゃいませんので、市井で暮らしても書面上の夫婦と言わねばバレることはないと思うのです。何時までも御厄介になる事は出来ませんので」
マジョリカがここを出ていく事を考えているとは思いもよらず、ルシファーは引き留めるためについ嘘を吐いてしまった。
「それは困ります。私の仕事が無くなりますから」
「そうなのですか?それは困りますわね」
「えぇ。私は貴女の手伝いをするようにと言い使っていますので」
ここで嘘を吐かねばならなくなるとは思いもしなかった。
ルシファーの背中はもう汗でぐっしょりだし、手汗も凄い。
「困りましたね。第3王子ルシファー殿下に貴方のお給金まで出させてしまう事になります。お断りをすると貴方の仕事が無くなってしまうのですよね」
「そうなります」
ここを出ていく事もだが先ほどから ”第3王子ルシファー殿下” と使用人よりも遠い呼び方。それでいいのだけれどただの他人行儀ではない含みを持っていそうな呼び方にルシファーは暫く近くで使用人になりすまして様子を見ようと思ったのだった。
しかし気になる事がある。
椅子に座って周囲を見ると、すぐ横の壁にモンテストに「彼女に渡してくれ」と預けた手紙が何故か額に入って飾られているのだ。
ハッキリ言って趣味が悪い。
書いた本人が言うのもなんだが自分がこれを貰ったら激怒すること間違いない。
――何故、飾っているんだ?――
判らない事は聞くに限る。ついでだとルシファーはマジョリカに問うた。
「あぁ。第3王子ルシファー殿下からのお手紙なのですが、何やら家訓のような事を書かれているので、文字が読めるようになれば毎朝、読みあげようと思っております」
「よ、読みあげる?」
「はい。ノースレスト王国にいた時にお使いで商会に行くことがあったんですが朝礼で皆さん大きな声で社訓を読み上げておられまして、私も真似をしてみようかなと」
にこにこと笑顔で答えるマジョリカにルシファーは顎が外れたかのように口をあんぐりと開けた。
――それは家訓じゃない、あんなもの書くんじゃなかった――
宮で野菜などを持ち運びする時に使っている大中小の箱の小サイズだ。
中を見ると底に小さな布袋が入っていた。中を開くと対になったイヤリング。
明らかな安物でこれを布袋に入れて持ってくるマジョリカの行動の意味が全く読めない。
「これはなんだ?」
「お代です。モンテスト様は要らないと仰ったのですが、お野菜も新鮮なものを持ってきて頂きまして数日は食べるにも困らないと思います。現金の方が良いのでしょうけど生憎…現金は持ってきていなくて。買取店に買い取ってもらおうと思ったのですがお店の場所もまだ伺ってなくて。こういうのは早ければ早いほど第3王子ルシファー殿下も安心すると思いますので」
――私が安心する?どういう事だ?――
マジョリカから金銭を出させるつもりは全くなかったが、どこかで考え方の相違、情報の行き違いがあったのかとルシファーは考えたが、解らなかった。
モンテストは断ったと言う。その事だけが救いに思える。
金銭の問題はマジョリカが何を心配しているのかは知らないが、金と恩は借りれば早めに返すのは鉄則だ。決して間違いではない。
――しかし、その代金がこのイヤリング?――
買値が付くかどうかも判らないクズ石のついたイヤリングにルシファーは「何の冗談だろう」と思うが、マジョリカは真面目な顔。おそらくこの宝飾品には価値があるとしか思っていない様子だ。
価格は別として生活費は要らないから受け取ってくれという行動に益々訳が判らなくなってくる。
「第3王子ルシファー殿下に生活費まで出して頂くつもりはないのです。雨を凌げるこんな立派な家屋も貸して頂いておりますし、全然足らないとは思いますが今日の食費も含めてお納めいただければと。この後は出来るだけ早く文字を覚えて働いて、ここを出るつもりですので」
「ここを出る?!なんでまた?」
「宮にお勤めの方でしたらご存じかと思いましたが…書面上の夫婦ですし、ここだけの話。私の事をご存じの方はほとんどいらっしゃいませんので、市井で暮らしても書面上の夫婦と言わねばバレることはないと思うのです。何時までも御厄介になる事は出来ませんので」
マジョリカがここを出ていく事を考えているとは思いもよらず、ルシファーは引き留めるためについ嘘を吐いてしまった。
「それは困ります。私の仕事が無くなりますから」
「そうなのですか?それは困りますわね」
「えぇ。私は貴女の手伝いをするようにと言い使っていますので」
ここで嘘を吐かねばならなくなるとは思いもしなかった。
ルシファーの背中はもう汗でぐっしょりだし、手汗も凄い。
「困りましたね。第3王子ルシファー殿下に貴方のお給金まで出させてしまう事になります。お断りをすると貴方の仕事が無くなってしまうのですよね」
「そうなります」
ここを出ていく事もだが先ほどから ”第3王子ルシファー殿下” と使用人よりも遠い呼び方。それでいいのだけれどただの他人行儀ではない含みを持っていそうな呼び方にルシファーは暫く近くで使用人になりすまして様子を見ようと思ったのだった。
しかし気になる事がある。
椅子に座って周囲を見ると、すぐ横の壁にモンテストに「彼女に渡してくれ」と預けた手紙が何故か額に入って飾られているのだ。
ハッキリ言って趣味が悪い。
書いた本人が言うのもなんだが自分がこれを貰ったら激怒すること間違いない。
――何故、飾っているんだ?――
判らない事は聞くに限る。ついでだとルシファーはマジョリカに問うた。
「あぁ。第3王子ルシファー殿下からのお手紙なのですが、何やら家訓のような事を書かれているので、文字が読めるようになれば毎朝、読みあげようと思っております」
「よ、読みあげる?」
「はい。ノースレスト王国にいた時にお使いで商会に行くことがあったんですが朝礼で皆さん大きな声で社訓を読み上げておられまして、私も真似をしてみようかなと」
にこにこと笑顔で答えるマジョリカにルシファーは顎が外れたかのように口をあんぐりと開けた。
――それは家訓じゃない、あんなもの書くんじゃなかった――
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