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第04話 寝台の上で白兵戦
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哀しい事と辛い事、悔しい事が一気に押し寄せて来る。
エトガーが手を差し伸べてくれるけれど、その手はフライアをすり抜けてアメリアを抱き寄せる。
そこで目が覚めた。
「うぅ・・・頭痛い・・・」
明らかな二日酔いだなと解るのだが、フライアは自分の置かれた状況に混乱してしまった。
兄の結婚式の時に奮発した両親が予約をしてくれた時以来、いやそれよりもフカフカな寝具に寝ている事もだが、問題は添い寝をされている事である。
上半身はがっちりと抱かれている上に、足も絡めるようにされていて身動きが取れない。
何より不味いのは、今、見えているのは筋肉隆々な男性の双璧で、太ももに触れているのは人生初、男性の「アレ」だと思われる。
そして更なる大問題があった。
――なんで、私、裸なの?――
ふと、顔をあげてみれば息が止まるかと思った。
――超絶美丈夫・・・誰?この人誰?――
エトガーもかなりの美丈夫と言われるけれど、比ではない。
例えるならエトガーが町内で一番の美丈夫なら、がっちりと抱きしめて静かな寝息を立てるこの美丈夫は全大陸レベル。
同じ空気を吸わせて頂きありがとうございます!と最敬礼で拝むレベルだ。
散々に飲んでしまった昨夜が悔やまれる。
記憶にあるのは先ずバーの扉を開いたら場違いだなと思うくらいの高級店だったこと。
しかし、「えぇい!どうにでもなれ!」と入店したのは泊り覚悟でエトガーとの待ち合わせに向かったので、それなりに多めの現金もバッグに入っていたからだ。
飲めるだけ飲め!とカウンター席に座り「おすすめを」なんて気取ってしまった。
6杯目、7杯目だったか。そこまでは覚えている。
そのあと、バーテンに「度数が高いので止めた方がいい」と言われた気もするがグイっと飲んだような気もする。
その時点で記憶はもう曖昧。
で、どうしてこうなっているのか全く判らない。
――いままでお酒を飲んで記憶が飛んだ事なんてないのに――
「うーん…うーん…」悩んでいると頭の上から背筋にゾクゾクッとする声が聞こえてきた。
「目が覚めた?朝をこうやって一緒に迎えられて幸せだよ。寝顔も可愛かったが、その瞳に僕が映っていると思うと堪らないな」
「フェッェェーッ?‥‥ウニャッ?」
超絶美丈夫の手が背中を撫で、絡めた足も益々角度が際どくなっていく。
「おはよう。ナディ愛してるよ(ちゅっちゅっちゅっ)」
先ずは瞼、そして頬、次に耳、そんでもって首筋となったところで超絶美丈夫は体をグイっと動かしてフライアを完全にマウントを取った形になり、「てへっ」と小さくはにかんで笑ったかと思うと鎖骨にもキスをし始めた。
「まぁーっ!待って!待って!」
ピタリと動きが止まる。
――カァーッ!美丈夫のワンコ上目遣いッ?!――
お見せできるものではない辛うじて高さがある双璧に顔を埋めてからの~上目遣い。
至近距離で見上げてくる超絶美丈夫は非常に心拍数を上げる効果がある。
「ナディって何?なんなの?!」
「何って。僕はヴォーダンだからオーディン、フライアはヴァナディースだよね」
――だよね?って言われてもぉ~――
ただ、名前には覚えがある。メーゼブルッグ大陸に古くから伝わるゲルーマン神話にある「メーゼブルッグの呪文」というかつて魔法使いが多くいた頃に唱えた呪文を書き記した古文書に出てくる名前だ。
「え?それってゲルーマン神話の?!」
「そう。豊饒の女神フライア、で僕は戦の神。同じ神話に出てくる名前と同じってナディが教えてくれたんだよ?」
――そ、そんな事もあったかしら。記憶にないわ――
と、言う事は以前に何処かで会っている?そう考えてみるもフライアの記憶にはこんな美丈夫がいた記憶は何処にもない。
「昨夜はあんなに激しかったのに、朝はダメとは頂けないな」
「だっダメとかそう言うのじゃなくて!こ、これは・・・待て!そう、待て!なの」
「愛しいナディが待てというなら少しだけ待ってもいいかな」
「少しじゃなくてですね、あのっこれは一体・・・」
美丈夫に抱きかかえられながら、のそりと上体を起こすとシーツもはだける。
「っっ!!」
見えてはいけない部分が見えている上に非常に緊迫した白兵戦状態だった。
★~★文末の独り言★~★
メルゼブルクの呪文
古いドイツ語で書かれた2編から成るリアルに実在する魔法の呪文です。
9世紀(10世紀)に写本した書物が発見されていて、回復とか治癒と言った呪文が有名。
1842年、グリム兄弟に「こんなのあるよー!」と発表されて有名になりましたが、聖職者によって書き写しを書き写し・・・と繰り返されてきたことでキリスト教の影響を受けているので内容は都合よく改編されているとも言われております(*^-^*)
オリジナルな原本が何処かで見つかって解読されたら皆が魔法使い?!
本当に昔の人も「呪文」を唱えてたんだなぁっと思うとプリリンパーも案外イケんじゃね?と思ったりしちゃいませんか??え?ワシだけ??
エトガーが手を差し伸べてくれるけれど、その手はフライアをすり抜けてアメリアを抱き寄せる。
そこで目が覚めた。
「うぅ・・・頭痛い・・・」
明らかな二日酔いだなと解るのだが、フライアは自分の置かれた状況に混乱してしまった。
兄の結婚式の時に奮発した両親が予約をしてくれた時以来、いやそれよりもフカフカな寝具に寝ている事もだが、問題は添い寝をされている事である。
上半身はがっちりと抱かれている上に、足も絡めるようにされていて身動きが取れない。
何より不味いのは、今、見えているのは筋肉隆々な男性の双璧で、太ももに触れているのは人生初、男性の「アレ」だと思われる。
そして更なる大問題があった。
――なんで、私、裸なの?――
ふと、顔をあげてみれば息が止まるかと思った。
――超絶美丈夫・・・誰?この人誰?――
エトガーもかなりの美丈夫と言われるけれど、比ではない。
例えるならエトガーが町内で一番の美丈夫なら、がっちりと抱きしめて静かな寝息を立てるこの美丈夫は全大陸レベル。
同じ空気を吸わせて頂きありがとうございます!と最敬礼で拝むレベルだ。
散々に飲んでしまった昨夜が悔やまれる。
記憶にあるのは先ずバーの扉を開いたら場違いだなと思うくらいの高級店だったこと。
しかし、「えぇい!どうにでもなれ!」と入店したのは泊り覚悟でエトガーとの待ち合わせに向かったので、それなりに多めの現金もバッグに入っていたからだ。
飲めるだけ飲め!とカウンター席に座り「おすすめを」なんて気取ってしまった。
6杯目、7杯目だったか。そこまでは覚えている。
そのあと、バーテンに「度数が高いので止めた方がいい」と言われた気もするがグイっと飲んだような気もする。
その時点で記憶はもう曖昧。
で、どうしてこうなっているのか全く判らない。
――いままでお酒を飲んで記憶が飛んだ事なんてないのに――
「うーん…うーん…」悩んでいると頭の上から背筋にゾクゾクッとする声が聞こえてきた。
「目が覚めた?朝をこうやって一緒に迎えられて幸せだよ。寝顔も可愛かったが、その瞳に僕が映っていると思うと堪らないな」
「フェッェェーッ?‥‥ウニャッ?」
超絶美丈夫の手が背中を撫で、絡めた足も益々角度が際どくなっていく。
「おはよう。ナディ愛してるよ(ちゅっちゅっちゅっ)」
先ずは瞼、そして頬、次に耳、そんでもって首筋となったところで超絶美丈夫は体をグイっと動かしてフライアを完全にマウントを取った形になり、「てへっ」と小さくはにかんで笑ったかと思うと鎖骨にもキスをし始めた。
「まぁーっ!待って!待って!」
ピタリと動きが止まる。
――カァーッ!美丈夫のワンコ上目遣いッ?!――
お見せできるものではない辛うじて高さがある双璧に顔を埋めてからの~上目遣い。
至近距離で見上げてくる超絶美丈夫は非常に心拍数を上げる効果がある。
「ナディって何?なんなの?!」
「何って。僕はヴォーダンだからオーディン、フライアはヴァナディースだよね」
――だよね?って言われてもぉ~――
ただ、名前には覚えがある。メーゼブルッグ大陸に古くから伝わるゲルーマン神話にある「メーゼブルッグの呪文」というかつて魔法使いが多くいた頃に唱えた呪文を書き記した古文書に出てくる名前だ。
「え?それってゲルーマン神話の?!」
「そう。豊饒の女神フライア、で僕は戦の神。同じ神話に出てくる名前と同じってナディが教えてくれたんだよ?」
――そ、そんな事もあったかしら。記憶にないわ――
と、言う事は以前に何処かで会っている?そう考えてみるもフライアの記憶にはこんな美丈夫がいた記憶は何処にもない。
「昨夜はあんなに激しかったのに、朝はダメとは頂けないな」
「だっダメとかそう言うのじゃなくて!こ、これは・・・待て!そう、待て!なの」
「愛しいナディが待てというなら少しだけ待ってもいいかな」
「少しじゃなくてですね、あのっこれは一体・・・」
美丈夫に抱きかかえられながら、のそりと上体を起こすとシーツもはだける。
「っっ!!」
見えてはいけない部分が見えている上に非常に緊迫した白兵戦状態だった。
★~★文末の独り言★~★
メルゼブルクの呪文
古いドイツ語で書かれた2編から成るリアルに実在する魔法の呪文です。
9世紀(10世紀)に写本した書物が発見されていて、回復とか治癒と言った呪文が有名。
1842年、グリム兄弟に「こんなのあるよー!」と発表されて有名になりましたが、聖職者によって書き写しを書き写し・・・と繰り返されてきたことでキリスト教の影響を受けているので内容は都合よく改編されているとも言われております(*^-^*)
オリジナルな原本が何処かで見つかって解読されたら皆が魔法使い?!
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