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第05話 思考追いつかず、目のやり場に困る
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よく見ても見なくても超絶美丈夫である事はよく判る。
ついでに鍛え上げられた体は現在部分的にシーツで覆って頂いてはいるものの片膝を立て、そこに肘を乗せて髪をかき上げたりするものだから色気が半端ない。
目尻に小さく、これまた色気満載の泣き黒子まであるではないか。
――平凡に生まれてごめんなさい!――
おそらくは指の1本から垂れ流しの色気の方が25歳フライアの全裸より色気がある。
「あのぅ…この状況と申しましょうか…そのぅ…貴方様はそもそもでドナタ?」
相手はフライアの事を知っているから「フライアはヴァナディース」なんて言うけれど、ヴォーダンと言われても知り合いにそんな人はいない。
「ふふっ。ジョークを言うナディも可愛いな。でも僕の名前が解らないなんて言われちゃうと今夜は優しく出来ないかも知れないよ?」
「ヒャッ?!」
美丈夫の指先がフライアの頬から髪をかき上げて耳に引っかける。
やることなす事全てが色っぽい。自分でないのが悔しい限り。
「ヴォーダン・ジャン・エスティバス。言ってごらん?」
「は、はぁ…ヴォ・・・」
「違うよね?僕のことはディーンと呼ぶ。そう約束しただろう?この可愛い唇が(ちゅっ)」
――いや、さっきさ、フルネームを言ってみろと言ったじゃない!――
「キスの時も僕を見たいから目を開けてるなんて・・・ナディはもうッ♡」
――1人で悶えるな!!何があったのか教えてぇぇ――
しかし、ヴォーダンの顔を至近距離で見ていると既視感があるのは否めない。
いや、こんな超絶美丈夫が身の回りに居たら大騒ぎになるのは間違いないのだが、どこかで見たことがある気がするのだ。
「一緒に湯でも浴びる?昨夜は意識がなかったし酔ってたから体を拭くだけにしておいたんだ」
「拭いた?!体を?」
「大変だったんだよ?ナディは激しくてさ、自分で服もビリリーって裂いて脱いじゃうしさ」
――全く覚えがない・・・えぇ?!裂いたっ?!――
驚いて寝台の周りに散らばる衣類に駆け寄ってみると確かに。背中のファスナーはちゃんと降ろさず途中で布に引っ掛かったからか裂けていた。
「どうしよう…妃殿下に貰ったのに…不敬?!処刑されちゃう?」
「気にしなくていいよ。僕からも言っておくから」
「言っておく?‥‥アァーッ!!寝台から出ないで!!」
「どうして?ナディは出たのに僕はダメなんだい?」
「え‥‥」
咄嗟だったので忘れていた。自分だって全裸だった。
同じく全裸で近づいて来たヴォーダンは軽々とフライアをお姫様抱っこすると湯殿に向かう。
状況に思考が全く追い付かず、成されるがまま。
湯殿では丁寧にヴォーダンが体も髪も洗ってくれるのだが、「先に温まろうね」と湯船に浸けられるとヴォーダンは自身の体を洗い始める。
堂々とし過ぎているので、いろいろと目のやり場が無い。
流されるままに添い寝に湯殿。混乱するばかりだ。
――いったいどうなっているの?――
ザバーっと最後に湯を頭から浴びたヴォーダンが手櫛で髪を額から後ろに流しながらフライアの浸かる湯船に入ってくる。
後ろから抱かれてヴォーダンの顎が肩に乗り、耳元で囁く。
「ナディ。愛してる。はぁ♡可愛い」
そう言いながらもヴォーダンの手がフライアの双璧を「寄せて~寄せてあげるぅ~」な状態にぺちり!と手を叩いた。
湯殿から出たフライアは思う。
――服を着ろ!服を!――
美丈夫ヴォーダンは裸族なのか。
湯殿から出て水気を拭き取ると生まれたままの姿で部屋を歩き回る。
せめてガウンでも羽織ってはくれないだろうか。
見てはいけないと思いつつも ”好奇心は猫を殺す” の言葉通り揺れる一部分をつい・・・目で追ってしまう。
この状況だと、幾ら美丈夫とは言え変態としか思えない。
見ている自分だって変態だ。禁断の扉を開けることはないと思っていたのにあっさり全開放とは。
あまりにも突き抜けて度が過ぎていると思考を纏めるので精一杯。
名は聞いた。ならば、次に大事な事を確認せねばならない。
「あの…シタ・・・んでしょうか?」
不敵に笑うヴォーダン。
「意識のないナディを抱いたりはしないよ」
――ガッツリ抱いてた気がするけど?!――
「だけど物音にそろそろリタが来ると思うし、可愛いナディのお腹が冷えちゃうからね。これを着ようか」
――ガウンあるんじゃないのよ!!――
差し出されたガウンに裸でいた意味は!?と問いたくなる。
手渡されたガウンは「これで体を包んだらマシュマロになった気分?」そう思うくらいにフワフワで柔らかく手触りも最高。
――ダメよ!この肌触りに流されちゃダメ!――
ヴォーダンが言った通り、ほどなくしてノック音が聞こえた。
部屋に入って来たのは年配の男女。1人は侍女頭のリタ。男性はヴォーダンの専属執事アルドフ。
アルドフは腋に挟んでいた封筒から書類を取り出すとヴォーダンに手渡した。封筒から中身を抜き取ったヴォーダンはにっこりと笑うと書面を指で抓むようにしてフライアにヒラリと見せた。
「け、結婚?!」
「もう逃がさないよ。ナディの言葉通り頑張って成果を上げたのに他の男となんて。嫉妬で地図に ”荒野” の表記を5つも増やしてしまったよ」
そこに執事のアルドフが少し訂正を付け加える。
「旦那様。 ”荒野” は2つです。3つは現在植林を終えておりますので ”荒野” では御座いません。それから王太子殿下が目が覚められたら伺いたいとの事です」
――王太子殿下?!どういうこと?!――
執事アルドフの言葉は右耳から入って左耳から突き抜けていく。
何故ならフライアの脳はもう情報処理をするのを止めてしまった。
見せられた書類は「婚姻許可証」で国王と王太子殿下の署名もバッチリと記載されていたし、部屋の調度品をよく見ると至る所に王家を示す紋があるからである。
――ワタシ、結婚シテタ。シカモ、ココ王宮――
お付き合いも婚約もすっ飛ばして俗にいう「0日婚」となっていた事に考えることを放棄した。
ついでに鍛え上げられた体は現在部分的にシーツで覆って頂いてはいるものの片膝を立て、そこに肘を乗せて髪をかき上げたりするものだから色気が半端ない。
目尻に小さく、これまた色気満載の泣き黒子まであるではないか。
――平凡に生まれてごめんなさい!――
おそらくは指の1本から垂れ流しの色気の方が25歳フライアの全裸より色気がある。
「あのぅ…この状況と申しましょうか…そのぅ…貴方様はそもそもでドナタ?」
相手はフライアの事を知っているから「フライアはヴァナディース」なんて言うけれど、ヴォーダンと言われても知り合いにそんな人はいない。
「ふふっ。ジョークを言うナディも可愛いな。でも僕の名前が解らないなんて言われちゃうと今夜は優しく出来ないかも知れないよ?」
「ヒャッ?!」
美丈夫の指先がフライアの頬から髪をかき上げて耳に引っかける。
やることなす事全てが色っぽい。自分でないのが悔しい限り。
「ヴォーダン・ジャン・エスティバス。言ってごらん?」
「は、はぁ…ヴォ・・・」
「違うよね?僕のことはディーンと呼ぶ。そう約束しただろう?この可愛い唇が(ちゅっ)」
――いや、さっきさ、フルネームを言ってみろと言ったじゃない!――
「キスの時も僕を見たいから目を開けてるなんて・・・ナディはもうッ♡」
――1人で悶えるな!!何があったのか教えてぇぇ――
しかし、ヴォーダンの顔を至近距離で見ていると既視感があるのは否めない。
いや、こんな超絶美丈夫が身の回りに居たら大騒ぎになるのは間違いないのだが、どこかで見たことがある気がするのだ。
「一緒に湯でも浴びる?昨夜は意識がなかったし酔ってたから体を拭くだけにしておいたんだ」
「拭いた?!体を?」
「大変だったんだよ?ナディは激しくてさ、自分で服もビリリーって裂いて脱いじゃうしさ」
――全く覚えがない・・・えぇ?!裂いたっ?!――
驚いて寝台の周りに散らばる衣類に駆け寄ってみると確かに。背中のファスナーはちゃんと降ろさず途中で布に引っ掛かったからか裂けていた。
「どうしよう…妃殿下に貰ったのに…不敬?!処刑されちゃう?」
「気にしなくていいよ。僕からも言っておくから」
「言っておく?‥‥アァーッ!!寝台から出ないで!!」
「どうして?ナディは出たのに僕はダメなんだい?」
「え‥‥」
咄嗟だったので忘れていた。自分だって全裸だった。
同じく全裸で近づいて来たヴォーダンは軽々とフライアをお姫様抱っこすると湯殿に向かう。
状況に思考が全く追い付かず、成されるがまま。
湯殿では丁寧にヴォーダンが体も髪も洗ってくれるのだが、「先に温まろうね」と湯船に浸けられるとヴォーダンは自身の体を洗い始める。
堂々とし過ぎているので、いろいろと目のやり場が無い。
流されるままに添い寝に湯殿。混乱するばかりだ。
――いったいどうなっているの?――
ザバーっと最後に湯を頭から浴びたヴォーダンが手櫛で髪を額から後ろに流しながらフライアの浸かる湯船に入ってくる。
後ろから抱かれてヴォーダンの顎が肩に乗り、耳元で囁く。
「ナディ。愛してる。はぁ♡可愛い」
そう言いながらもヴォーダンの手がフライアの双璧を「寄せて~寄せてあげるぅ~」な状態にぺちり!と手を叩いた。
湯殿から出たフライアは思う。
――服を着ろ!服を!――
美丈夫ヴォーダンは裸族なのか。
湯殿から出て水気を拭き取ると生まれたままの姿で部屋を歩き回る。
せめてガウンでも羽織ってはくれないだろうか。
見てはいけないと思いつつも ”好奇心は猫を殺す” の言葉通り揺れる一部分をつい・・・目で追ってしまう。
この状況だと、幾ら美丈夫とは言え変態としか思えない。
見ている自分だって変態だ。禁断の扉を開けることはないと思っていたのにあっさり全開放とは。
あまりにも突き抜けて度が過ぎていると思考を纏めるので精一杯。
名は聞いた。ならば、次に大事な事を確認せねばならない。
「あの…シタ・・・んでしょうか?」
不敵に笑うヴォーダン。
「意識のないナディを抱いたりはしないよ」
――ガッツリ抱いてた気がするけど?!――
「だけど物音にそろそろリタが来ると思うし、可愛いナディのお腹が冷えちゃうからね。これを着ようか」
――ガウンあるんじゃないのよ!!――
差し出されたガウンに裸でいた意味は!?と問いたくなる。
手渡されたガウンは「これで体を包んだらマシュマロになった気分?」そう思うくらいにフワフワで柔らかく手触りも最高。
――ダメよ!この肌触りに流されちゃダメ!――
ヴォーダンが言った通り、ほどなくしてノック音が聞こえた。
部屋に入って来たのは年配の男女。1人は侍女頭のリタ。男性はヴォーダンの専属執事アルドフ。
アルドフは腋に挟んでいた封筒から書類を取り出すとヴォーダンに手渡した。封筒から中身を抜き取ったヴォーダンはにっこりと笑うと書面を指で抓むようにしてフライアにヒラリと見せた。
「け、結婚?!」
「もう逃がさないよ。ナディの言葉通り頑張って成果を上げたのに他の男となんて。嫉妬で地図に ”荒野” の表記を5つも増やしてしまったよ」
そこに執事のアルドフが少し訂正を付け加える。
「旦那様。 ”荒野” は2つです。3つは現在植林を終えておりますので ”荒野” では御座いません。それから王太子殿下が目が覚められたら伺いたいとの事です」
――王太子殿下?!どういうこと?!――
執事アルドフの言葉は右耳から入って左耳から突き抜けていく。
何故ならフライアの脳はもう情報処理をするのを止めてしまった。
見せられた書類は「婚姻許可証」で国王と王太子殿下の署名もバッチリと記載されていたし、部屋の調度品をよく見ると至る所に王家を示す紋があるからである。
――ワタシ、結婚シテタ。シカモ、ココ王宮――
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