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第20話 そこで狙うは他力本願
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コンココーン!!
軽快なリズムで扉をノックしたヴォーダンは「はぁい。どうぞ」と部屋の中から返って来た声に勢いよく扉を開けた。
「ナディ!!会いたかったよ!あぁこんなに痩せて!僕がいなかったから食事も喉を通らなかった?」
「いいえ。毎日3食にプラスして午後のお茶に寝る前の危険を承知な夜食まできっちりと。3kgほど重くなりました」
「そうだと思ったよ!あぁ可愛い!この悪戯なほっぺにキスをしても?(ちゅっちゅっ)」
「断りを入れると同時、返事を聞く前にキスはどうなんでしょう?」
「だって目の前に美味しそうなナディがいるんだよ?これ以上僕に待てと言うのかい?」
「待て!」
キツツキでもこんなに激しくクチバシを木に打ち付ける事はないだろうに。そんなスピードでチュッチュとキスをしてくるので、直立不動で無表情にもなってしまう。
しかし、「待て」と言えば動きを止めてくれる。
そう言えば幼い時も「ダメ!」と言えば動きを止めていたなと思い出す。
が、大人になると違う行動をし始めるという技も身に付いていた。
「ナディを見ると体の内側が燃えるように熱くなるんだ。きっと僕の淡い恋心だね」
――随分と燃焼の激しい淡さなのね――
そう言って上着を脱ぐだけならいい。
ばさりと椅子の背凭れに上着が掛けられた。
暑いならシャツのボタンを上から1、2つ外すのも仕方がない。
背凭れに掛けられた上着の上にシャツがパサリと乗った。
続いてカチャカチャと音がすると思えばベルトを外していて、ファサっと足元にボトムスが落ちる。そのまま奇妙な動きで歩き回られるよりはマシ…とシャツの上にボトムスが乗るのも限界を超えているが目を瞑る。
「はぁ~暑っ。ハートが燃えるってこの事だな」
「お待ちなさい!何故燃えるのはハートなのに下着まで脱ぐんです?」
「そりゃナディに隠し事をしたくないからだよ」
「隠しなさい!!」
「いやだ!ナディに隠し事はしたくないんだ」
――私は全力で隠して欲しい――
遊んでいる風にも見えるが、服を脱ぐさまがどうも板についている。
きっと脱ぎ慣れている、いや裸で過ごすのが通常運転なのだろう。
「心の隠し事は外からは見えません。先ずは体を隠しなさいってば!」
「体?どっちを?前?後ろ?」
「取り敢えずは前!!後ろを向いたら後ろ!!」
「もう♡ナディって照れ屋なんだな」
そう言ってヴォーダンは自身の双璧に手を当てて双璧の先端を隠す。
「位置が高い!!もっと下を隠しなさい!部屋に誰か来たらどうするの!」
「大丈夫。見られても相手が目を覆い隠すからさ」
確かにそうだ。
部屋に入ってみたら全裸男、となれば間違いなく見た方が目を覆い隠す。
でも違う。そこでもう色々と間違っている。
「そこで他力本願をしちゃダメ!」
「ナディはダメダメって。そんな事を言ってると拗ねるよ?」
――勝手に拗ねろ!――
が、この絵面は何なのだろうとフライアは考える。
ちゃんと服を着ている自分が全裸男に後ろから抱きしめられている。
そしてそのままの姿勢で椅子に座り、何故か膝の上に座らされている。
――慣れるしかないの?コレに?!――
フライアは思い切って聞いてみた。
「ねぇ?ディーンはいつも部屋では裸なの?戦地でもそうなの?」
「え?服着てるよ?どうしてそんな事を聞くんだ?」
「じゃぁ!今も服を着てください!お腹も冷えてしまうし部屋に誰か入って来てこんな姿見られたら恥ずかしいでしょう?」
「ナディ。無茶を言うなよ」
――無茶??え?私、無茶ぶりしたの?違うわよね?――
ヴォーダンはさも!当然かのようにフライアに言い切った。
その時のドヤ顔をフライアは生涯忘れる事はないだろう。
「腹が冷えないようにナディを抱っこしてるんだ。それに…自分の体を見られて恥ずかしいと思った事がないから問題ないよ」
ヴォーダンは超絶美丈夫の上に体も引き締まっている。無駄がないのだ。
整い過ぎた顔に体躯。だからこその絶対的な自信なのか。
――1度でいい。恥ずかしいと思ったことが無いと言ってみたい――
恥ずかしいとしか思ったことが無いと言っていいフライアは真逆の思考が出来るヴォーダンを素直に「凄いな」と思ってしまった。
「で、でもほら…普通は人に見せない部分も揺れてるでしょ!」
「あぁ。コレ?用を足す時に部下が見るけど顔を背けてくれるよ?」
こればかりは父親のも、兄のも見たことが無いので比べようがない。
ヴォーダンと話をしていると、あまりにも堂々としているので、もしかすると友人と双璧の豊かさで「いいなぁ」とか言っている自分の方が間違っているのでは?とさえ思ってしまう。
そしてふと思った。
ヴォーダンは魔法が使える。だから内燃が激しいのかも知れないと。こればかりは魔法が使えないフライアなので全力疾走した後で体が熱くなる感覚に似ているんだろうか?と想像するしかない。
「魔法が使えるから火照りがあるのかしら?」
「そんな事ない。だって熱くなるのは可愛いナディのせいだよ」
――私のせい?!――
ちょっとでも心配してしまったことが大きな敗北感を生む。
フライアはもう気を使ってやる事なんかないんだからね!!とヴォーダンをキっと睨むが微笑を返されるだけ。
「ナディが僕を見てる…ますます熱くなっちゃいそうだ。これでも抑えてるんだ。煽らないでくれよ」
フライアはヴォーダンの瞳の奥に見てはいけない禁断の炎が見えた気がして体をズラした。すると、もっと危険で熱い部分、寝た子を起こしてしまった事に気が付いたのだった。
軽快なリズムで扉をノックしたヴォーダンは「はぁい。どうぞ」と部屋の中から返って来た声に勢いよく扉を開けた。
「ナディ!!会いたかったよ!あぁこんなに痩せて!僕がいなかったから食事も喉を通らなかった?」
「いいえ。毎日3食にプラスして午後のお茶に寝る前の危険を承知な夜食まできっちりと。3kgほど重くなりました」
「そうだと思ったよ!あぁ可愛い!この悪戯なほっぺにキスをしても?(ちゅっちゅっ)」
「断りを入れると同時、返事を聞く前にキスはどうなんでしょう?」
「だって目の前に美味しそうなナディがいるんだよ?これ以上僕に待てと言うのかい?」
「待て!」
キツツキでもこんなに激しくクチバシを木に打ち付ける事はないだろうに。そんなスピードでチュッチュとキスをしてくるので、直立不動で無表情にもなってしまう。
しかし、「待て」と言えば動きを止めてくれる。
そう言えば幼い時も「ダメ!」と言えば動きを止めていたなと思い出す。
が、大人になると違う行動をし始めるという技も身に付いていた。
「ナディを見ると体の内側が燃えるように熱くなるんだ。きっと僕の淡い恋心だね」
――随分と燃焼の激しい淡さなのね――
そう言って上着を脱ぐだけならいい。
ばさりと椅子の背凭れに上着が掛けられた。
暑いならシャツのボタンを上から1、2つ外すのも仕方がない。
背凭れに掛けられた上着の上にシャツがパサリと乗った。
続いてカチャカチャと音がすると思えばベルトを外していて、ファサっと足元にボトムスが落ちる。そのまま奇妙な動きで歩き回られるよりはマシ…とシャツの上にボトムスが乗るのも限界を超えているが目を瞑る。
「はぁ~暑っ。ハートが燃えるってこの事だな」
「お待ちなさい!何故燃えるのはハートなのに下着まで脱ぐんです?」
「そりゃナディに隠し事をしたくないからだよ」
「隠しなさい!!」
「いやだ!ナディに隠し事はしたくないんだ」
――私は全力で隠して欲しい――
遊んでいる風にも見えるが、服を脱ぐさまがどうも板についている。
きっと脱ぎ慣れている、いや裸で過ごすのが通常運転なのだろう。
「心の隠し事は外からは見えません。先ずは体を隠しなさいってば!」
「体?どっちを?前?後ろ?」
「取り敢えずは前!!後ろを向いたら後ろ!!」
「もう♡ナディって照れ屋なんだな」
そう言ってヴォーダンは自身の双璧に手を当てて双璧の先端を隠す。
「位置が高い!!もっと下を隠しなさい!部屋に誰か来たらどうするの!」
「大丈夫。見られても相手が目を覆い隠すからさ」
確かにそうだ。
部屋に入ってみたら全裸男、となれば間違いなく見た方が目を覆い隠す。
でも違う。そこでもう色々と間違っている。
「そこで他力本願をしちゃダメ!」
「ナディはダメダメって。そんな事を言ってると拗ねるよ?」
――勝手に拗ねろ!――
が、この絵面は何なのだろうとフライアは考える。
ちゃんと服を着ている自分が全裸男に後ろから抱きしめられている。
そしてそのままの姿勢で椅子に座り、何故か膝の上に座らされている。
――慣れるしかないの?コレに?!――
フライアは思い切って聞いてみた。
「ねぇ?ディーンはいつも部屋では裸なの?戦地でもそうなの?」
「え?服着てるよ?どうしてそんな事を聞くんだ?」
「じゃぁ!今も服を着てください!お腹も冷えてしまうし部屋に誰か入って来てこんな姿見られたら恥ずかしいでしょう?」
「ナディ。無茶を言うなよ」
――無茶??え?私、無茶ぶりしたの?違うわよね?――
ヴォーダンはさも!当然かのようにフライアに言い切った。
その時のドヤ顔をフライアは生涯忘れる事はないだろう。
「腹が冷えないようにナディを抱っこしてるんだ。それに…自分の体を見られて恥ずかしいと思った事がないから問題ないよ」
ヴォーダンは超絶美丈夫の上に体も引き締まっている。無駄がないのだ。
整い過ぎた顔に体躯。だからこその絶対的な自信なのか。
――1度でいい。恥ずかしいと思ったことが無いと言ってみたい――
恥ずかしいとしか思ったことが無いと言っていいフライアは真逆の思考が出来るヴォーダンを素直に「凄いな」と思ってしまった。
「で、でもほら…普通は人に見せない部分も揺れてるでしょ!」
「あぁ。コレ?用を足す時に部下が見るけど顔を背けてくれるよ?」
こればかりは父親のも、兄のも見たことが無いので比べようがない。
ヴォーダンと話をしていると、あまりにも堂々としているので、もしかすると友人と双璧の豊かさで「いいなぁ」とか言っている自分の方が間違っているのでは?とさえ思ってしまう。
そしてふと思った。
ヴォーダンは魔法が使える。だから内燃が激しいのかも知れないと。こればかりは魔法が使えないフライアなので全力疾走した後で体が熱くなる感覚に似ているんだろうか?と想像するしかない。
「魔法が使えるから火照りがあるのかしら?」
「そんな事ない。だって熱くなるのは可愛いナディのせいだよ」
――私のせい?!――
ちょっとでも心配してしまったことが大きな敗北感を生む。
フライアはもう気を使ってやる事なんかないんだからね!!とヴォーダンをキっと睨むが微笑を返されるだけ。
「ナディが僕を見てる…ますます熱くなっちゃいそうだ。これでも抑えてるんだ。煽らないでくれよ」
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