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第02話 これが最善の策
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驚きという物は時に波状攻撃となるとダメージが大きい。
さらに全員が驚いたのはロミオスの隣に突っ伏した女性がいた事だ。
「ロミーは悪くないんです!私が愛してしまったからっ!ロミーを責めないでくださいっ!」
声は出なかったが、全員が全員を顔を見た。
部屋の空気は重く冷たく沈み込んだ。
何がどうなっているのか。解っているのはロミオスと並んで突っ伏す女性だけ。
「とっ…隣にいるのはジュエリットと言います。僕たちは5年前から付き合っていて…子供が出来たんです!言わなきゃと思っていたけどどうしても言い出せなくて…本当に申し訳ございませんっ!」
「ロミーは悪くないんです!あたしが!あたしがロミーを諦めきれなかったんです。婚約をしたのも知ってました。別れようと思ったんです!でもっ!あたしが諦めなかったのがいけないんです!」
女性の名はジュエリット。
父親は魚河岸の仲買人、母親はその魚河岸にある食堂で給仕をしている。
所謂平民という階層である。
誰も2人の言葉に言葉を返す事はしなかったが、何を言いたいかは読み込めた。
マリアナと婚約をする前から付き合っていた女性、ジュエリットがいたロミオス。
婚約をした後も2人の仲は続き、遂には子供が腹に宿ってしまった。
だからマリアナとはまだ結婚もしていない事だし、ジュエリットとの結婚を認めて欲しい。
そう言う事だな。とその場にいる者は考えた。
頭の痛い話だ。
せめてあと半年早く言い出してくれていれば参列者に招待状も送らずに済んだのに。
重苦しい空気の中オーストン子爵はようよう声を絞り出し、
「つまり…お前はトレンチ侯爵令嬢ではなく、その女性と結婚したい。そう言う事だな?」
誰もがそう考えるだろう。
しかし、ロミオスとジュエリットの言葉は想定の斜め上を行くものだった。
「違います!マリアナとは結婚します。でもジュエリットを側に置き、腹の子を嫡子とする事を許して欲しいんです!」
ロミオスは「これが最善の策」だと雄弁を振るう。
結婚式にはトレンチ侯爵家は王家にも長兄が婿入りをしていて参列者の中には王太子夫妻も国王の名代でやって来る。その上、隣国の筆頭公爵家の令嬢が次兄に嫁ぎトレンチ侯爵家に入るため、隣国からも要人が参列をする。当然この国の高位貴族もずらりと顔を揃える。
今更結婚式は中止は出来ないし、何よりロミオスはオーストン子爵は継がないのでマリアナと結婚をしなければ住む場所も失ってしまう。これから子供も生まれるのだから結婚をしなければ困るのだと言う。
マリアナとは予定通り結婚し、愛人とその子供も一緒に住まう事を許可して欲しいという物だった。
オーストン子爵は目頭を強く指で抓み、オーストン子爵夫人はこめかみを親指で強く押す。しばしの沈黙のあと、オーストン子爵の出した答えは至極まともなものだった。
「トレンチ伯。申し訳ない。このご縁、オーストン家の全面的な有責で破棄としてくれないか」
ロミオスの言葉を聞いたオーストン子爵は深々と頭を下げて婚約破棄を申し出た。
婚約中の不貞行為だけでも許される行為ではないが、子供まで作ってしまったとなればもうどんな言い訳も通じない。それだけではない。ロミオスの自分の都合だけを考えた言い訳を黙らせるのに口の中に杭を打ち込みたいくらいだ。
「結婚式に関しての費用も勿論だが、出来る限りの償いは大半が金銭となるがさせてもらう。本当に申し訳なかった」
「オーストン殿。お気遣いありがとう。では・・・残念だが破棄に関してはそのように」
両家の父親はその場で婚約破棄とする旨の合意をしたのだが、ロミオスは「そうじゃない!」と声を荒げる。
立ち上がるとマリアナの前に跪いて「結婚してくれるだろう?」と縋るような目でマリアナを見上げると、ジュエリッタまでやって来て「貴女が頷いてくれれば皆が幸せになるの!」と言い出す始末。
「お前達!いい加減にしないか!」
オーストン子爵の怒声などまるで聞こえていないのか、ロミオスもジュエリットもマリアナに向かって「お願い!」と祈りまで捧げて来た。
両家の親も揃ったこの場で狂っているとしか思えないが、花畑の住人である2人にはそれしか道はない。
トレンチ侯爵家は次兄が継ぐためマリアナは他に家を興すのだが、その権利を持っているのはマリアナの母親。休眠中の子爵家をマリアナが継ぎ、女当主となる。
事業はと言えばこれもトレンチ侯爵家の領を1つ貰うので遊んで暮らせるわけではないが生活には困らない。つまりはマリアナに養ってもらわねば、辛い肉体労働をして僅かな稼ぎで生活をせねばならなくなる。
必死に縋るロミオスを見てマリアナは心が冷えていった。
――まぁ、必死にもなるわよね――
愛しているかと問われれば首を傾げたくなるが、それなりに夫婦としてうまくやっていけるだろうと考えてもいただけに、目の前の現実にマリアナの心は海溝の最深部まで冷え込んだ。
さらに全員が驚いたのはロミオスの隣に突っ伏した女性がいた事だ。
「ロミーは悪くないんです!私が愛してしまったからっ!ロミーを責めないでくださいっ!」
声は出なかったが、全員が全員を顔を見た。
部屋の空気は重く冷たく沈み込んだ。
何がどうなっているのか。解っているのはロミオスと並んで突っ伏す女性だけ。
「とっ…隣にいるのはジュエリットと言います。僕たちは5年前から付き合っていて…子供が出来たんです!言わなきゃと思っていたけどどうしても言い出せなくて…本当に申し訳ございませんっ!」
「ロミーは悪くないんです!あたしが!あたしがロミーを諦めきれなかったんです。婚約をしたのも知ってました。別れようと思ったんです!でもっ!あたしが諦めなかったのがいけないんです!」
女性の名はジュエリット。
父親は魚河岸の仲買人、母親はその魚河岸にある食堂で給仕をしている。
所謂平民という階層である。
誰も2人の言葉に言葉を返す事はしなかったが、何を言いたいかは読み込めた。
マリアナと婚約をする前から付き合っていた女性、ジュエリットがいたロミオス。
婚約をした後も2人の仲は続き、遂には子供が腹に宿ってしまった。
だからマリアナとはまだ結婚もしていない事だし、ジュエリットとの結婚を認めて欲しい。
そう言う事だな。とその場にいる者は考えた。
頭の痛い話だ。
せめてあと半年早く言い出してくれていれば参列者に招待状も送らずに済んだのに。
重苦しい空気の中オーストン子爵はようよう声を絞り出し、
「つまり…お前はトレンチ侯爵令嬢ではなく、その女性と結婚したい。そう言う事だな?」
誰もがそう考えるだろう。
しかし、ロミオスとジュエリットの言葉は想定の斜め上を行くものだった。
「違います!マリアナとは結婚します。でもジュエリットを側に置き、腹の子を嫡子とする事を許して欲しいんです!」
ロミオスは「これが最善の策」だと雄弁を振るう。
結婚式にはトレンチ侯爵家は王家にも長兄が婿入りをしていて参列者の中には王太子夫妻も国王の名代でやって来る。その上、隣国の筆頭公爵家の令嬢が次兄に嫁ぎトレンチ侯爵家に入るため、隣国からも要人が参列をする。当然この国の高位貴族もずらりと顔を揃える。
今更結婚式は中止は出来ないし、何よりロミオスはオーストン子爵は継がないのでマリアナと結婚をしなければ住む場所も失ってしまう。これから子供も生まれるのだから結婚をしなければ困るのだと言う。
マリアナとは予定通り結婚し、愛人とその子供も一緒に住まう事を許可して欲しいという物だった。
オーストン子爵は目頭を強く指で抓み、オーストン子爵夫人はこめかみを親指で強く押す。しばしの沈黙のあと、オーストン子爵の出した答えは至極まともなものだった。
「トレンチ伯。申し訳ない。このご縁、オーストン家の全面的な有責で破棄としてくれないか」
ロミオスの言葉を聞いたオーストン子爵は深々と頭を下げて婚約破棄を申し出た。
婚約中の不貞行為だけでも許される行為ではないが、子供まで作ってしまったとなればもうどんな言い訳も通じない。それだけではない。ロミオスの自分の都合だけを考えた言い訳を黙らせるのに口の中に杭を打ち込みたいくらいだ。
「結婚式に関しての費用も勿論だが、出来る限りの償いは大半が金銭となるがさせてもらう。本当に申し訳なかった」
「オーストン殿。お気遣いありがとう。では・・・残念だが破棄に関してはそのように」
両家の父親はその場で婚約破棄とする旨の合意をしたのだが、ロミオスは「そうじゃない!」と声を荒げる。
立ち上がるとマリアナの前に跪いて「結婚してくれるだろう?」と縋るような目でマリアナを見上げると、ジュエリッタまでやって来て「貴女が頷いてくれれば皆が幸せになるの!」と言い出す始末。
「お前達!いい加減にしないか!」
オーストン子爵の怒声などまるで聞こえていないのか、ロミオスもジュエリットもマリアナに向かって「お願い!」と祈りまで捧げて来た。
両家の親も揃ったこの場で狂っているとしか思えないが、花畑の住人である2人にはそれしか道はない。
トレンチ侯爵家は次兄が継ぐためマリアナは他に家を興すのだが、その権利を持っているのはマリアナの母親。休眠中の子爵家をマリアナが継ぎ、女当主となる。
事業はと言えばこれもトレンチ侯爵家の領を1つ貰うので遊んで暮らせるわけではないが生活には困らない。つまりはマリアナに養ってもらわねば、辛い肉体労働をして僅かな稼ぎで生活をせねばならなくなる。
必死に縋るロミオスを見てマリアナは心が冷えていった。
――まぁ、必死にもなるわよね――
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