5 / 33
第05話 嫁に~こないかと大募集も撃沈
しおりを挟む
トラフ伯爵領は国内でも領地の狭さで有名…かと思えば哀しいほどに無名。
そう、なんでもNO.1、ワースト1は有名。2番目はなんとか知っている人もいるくらい。
一番高い山はと聞かれてフゥジマウンティンは誰もが答えられる。
2番目と聞かれてノゥス岳は4割。しかし!!3番目になるとたった3mしかノゥス岳と高さは変わらないのに「奥ホダッカ岳」と答えられる人は1割に満たない。
湖でもそうだ。ビーワ湖は断トツ、ぶっちぎりな大きな湖だが、2番目のカシュミヶ浦になると4割。3番目はシャロマ湖と答える前にクシャーロ湖?いやいやフゥジマウンティン周辺の5湖のうちどれかだ!と迷われてしまうのだ。
トラフ伯爵領の領地の狭さは国内で第4位。もう地元民以外誰も知らないし、地元民も「微妙~」とどうせなら隣の領地に幾分わけてNO.1になってくれた方がまだ「一番小さな領地産」として農作物も売れそうな気がする。
だがこれでも切り売りをしたのだ。決して自慢ではない。
と、言うのも12年前。当主のケルマデックが13歳の時である。父親が高利回りをうたったポンジ・スキームに引っ掛かってしまった。
王都にあった屋敷も土地ごと抵当にいれて金を借りたものだから、当然追い出される。4つあった領地も3つを担保に入れて金を借りていたものだから、こちらも没収。
残った領地は猫の額ほどの広さしかないのに領界となっている小麦畑も王都から領地への引っ越し費用の為に切り売りして、さらに狭い領地になった。
ちなみに一番狭いのはビオトーヴィ子爵領。領民の数がここ数年で倍増したが領地の広さは変わっていない。
貧乏ゆえに薬も買えず、10年前に先代は流行り病で天に召されてしまった。
「あぁ…トラフ領でもムキャンが採れればなぁ」
ムキャン。
エグ味と渋み、苦みしかなく皮も実も食べられない柑橘類。ただ掃除には最適でムキャンに落とせない物はない!と最近では掃除用品としてではなく、ぽわキャラのムーキャンという着ぐるみ人形を作り、「意中のあの子をロックオン!」と本命を落とすためのゲン担ぎとしてもグッズを売り出している。
が、トラフ領には特にこれと言った農作物が取れる訳でもなく、取れたとしても収穫量は少ない。
トラフ領、そしてトラフ伯爵家の唯一の売り込みポイントは「借金がない」であるが、これも裏を返すと貸してくれる所がないので借金をしたくでも出来ないだけである。
まるで破産宣告後の満期明けを待つ元債務者のような心境になりそうだが、当主のケルマデックを筆頭に使用人、領民一丸となって今日もあくせくと汗を流して農作業。
「ご当主様にもお嫁さんがきたらなぁ」
「無理無理。教会くじを連番で3枚買ったら1等前後賞くらいの確率だよ」
25歳になるケルマデックだが、女っ気は全くない。
女性と話をした事がないわけではない。領民のご婦人方には「デックさん」と呼ばれて屋根の修理や壁に空いた穴、逃げたヤギの捜索に引っ張りだこだし、農作業の帰り道には体を90度に曲げてあるく元レディには「乗ってくかい?先着1名様まで無料だぜ」と背中を提供するナンパ師でもある。
農作業で忙しく王都への書類提出も執事が行う事もあるが、正装の衣装がないし招待状も届いた事がない。夜会に出る事もないため肝心な出会いがないのだ。
「奥様になってくれる方を募集はしてるんですけど応募がないんです」
執事は野良作業で頬に泥をつけ、首に回したタオルで汗を拭きながら愚痴る。
「出す場所が悪いんじゃないか?」
「そうだよ。何処に出したんだ?まさか王女様に出したとかじゃないだろうな」
「ち、違いますよヘロゥワークに出してますよ」
「それ…正社員とかバイトとかパートになるじゃねぇか」
「もう掴む藁もないんですよ。この際短期でも…」
「お貴族様のご令嬢は貧乏は嫌うからなぁ」
手を止めて、鍬の柄に手のひらを乗せ、その上に顎もIN。
領民たちと執事は離れた場所でトウモロコシを植えるための畝を手作業で作るケルマデックを見た。
美丈夫か?!と言われれば首を傾げる。
10人いれば良くて5番目、せいぜい6、7番目。パッとしない目鼻立ち。
高身長か?!と言えば平均の172cmを少し上回る176cm。
その辺の「そう言えば見た事あるかも?」というその他大勢に分類されるのがこの領地の主であり、トラフ伯爵家の当主ケルマデックなのだ。
「来月王都に行くので、もしかするとヘロゥワークに応募があるかも知れません」
<< ないない >>
お嫁さん募集の広告を王宮前の掲示板、裁判院の掲示板、町内会でOKが出た掲示板…etc。貼りまくって応募があったのは1件。
それが現在一応屋敷と呼ぶ小さな家屋で経理の仕事をしているプエールという執事。性別は男性。隣のケースにあった募集と間違って応募してしまいわざわざトラフ領まで面接に来てくれた。トリコ男爵家の6男で住む場所もないというので住み込みで雇っただけである。
「来月、王都に行くならラビットマークの本を買ってきてくれよ」
男性ならお楽しみ満載のラビットマークの本。
執事は代金を受け取り、「本屋にも寄らなきゃな」とまた鍬を振り始めたのだった。
そう、なんでもNO.1、ワースト1は有名。2番目はなんとか知っている人もいるくらい。
一番高い山はと聞かれてフゥジマウンティンは誰もが答えられる。
2番目と聞かれてノゥス岳は4割。しかし!!3番目になるとたった3mしかノゥス岳と高さは変わらないのに「奥ホダッカ岳」と答えられる人は1割に満たない。
湖でもそうだ。ビーワ湖は断トツ、ぶっちぎりな大きな湖だが、2番目のカシュミヶ浦になると4割。3番目はシャロマ湖と答える前にクシャーロ湖?いやいやフゥジマウンティン周辺の5湖のうちどれかだ!と迷われてしまうのだ。
トラフ伯爵領の領地の狭さは国内で第4位。もう地元民以外誰も知らないし、地元民も「微妙~」とどうせなら隣の領地に幾分わけてNO.1になってくれた方がまだ「一番小さな領地産」として農作物も売れそうな気がする。
だがこれでも切り売りをしたのだ。決して自慢ではない。
と、言うのも12年前。当主のケルマデックが13歳の時である。父親が高利回りをうたったポンジ・スキームに引っ掛かってしまった。
王都にあった屋敷も土地ごと抵当にいれて金を借りたものだから、当然追い出される。4つあった領地も3つを担保に入れて金を借りていたものだから、こちらも没収。
残った領地は猫の額ほどの広さしかないのに領界となっている小麦畑も王都から領地への引っ越し費用の為に切り売りして、さらに狭い領地になった。
ちなみに一番狭いのはビオトーヴィ子爵領。領民の数がここ数年で倍増したが領地の広さは変わっていない。
貧乏ゆえに薬も買えず、10年前に先代は流行り病で天に召されてしまった。
「あぁ…トラフ領でもムキャンが採れればなぁ」
ムキャン。
エグ味と渋み、苦みしかなく皮も実も食べられない柑橘類。ただ掃除には最適でムキャンに落とせない物はない!と最近では掃除用品としてではなく、ぽわキャラのムーキャンという着ぐるみ人形を作り、「意中のあの子をロックオン!」と本命を落とすためのゲン担ぎとしてもグッズを売り出している。
が、トラフ領には特にこれと言った農作物が取れる訳でもなく、取れたとしても収穫量は少ない。
トラフ領、そしてトラフ伯爵家の唯一の売り込みポイントは「借金がない」であるが、これも裏を返すと貸してくれる所がないので借金をしたくでも出来ないだけである。
まるで破産宣告後の満期明けを待つ元債務者のような心境になりそうだが、当主のケルマデックを筆頭に使用人、領民一丸となって今日もあくせくと汗を流して農作業。
「ご当主様にもお嫁さんがきたらなぁ」
「無理無理。教会くじを連番で3枚買ったら1等前後賞くらいの確率だよ」
25歳になるケルマデックだが、女っ気は全くない。
女性と話をした事がないわけではない。領民のご婦人方には「デックさん」と呼ばれて屋根の修理や壁に空いた穴、逃げたヤギの捜索に引っ張りだこだし、農作業の帰り道には体を90度に曲げてあるく元レディには「乗ってくかい?先着1名様まで無料だぜ」と背中を提供するナンパ師でもある。
農作業で忙しく王都への書類提出も執事が行う事もあるが、正装の衣装がないし招待状も届いた事がない。夜会に出る事もないため肝心な出会いがないのだ。
「奥様になってくれる方を募集はしてるんですけど応募がないんです」
執事は野良作業で頬に泥をつけ、首に回したタオルで汗を拭きながら愚痴る。
「出す場所が悪いんじゃないか?」
「そうだよ。何処に出したんだ?まさか王女様に出したとかじゃないだろうな」
「ち、違いますよヘロゥワークに出してますよ」
「それ…正社員とかバイトとかパートになるじゃねぇか」
「もう掴む藁もないんですよ。この際短期でも…」
「お貴族様のご令嬢は貧乏は嫌うからなぁ」
手を止めて、鍬の柄に手のひらを乗せ、その上に顎もIN。
領民たちと執事は離れた場所でトウモロコシを植えるための畝を手作業で作るケルマデックを見た。
美丈夫か?!と言われれば首を傾げる。
10人いれば良くて5番目、せいぜい6、7番目。パッとしない目鼻立ち。
高身長か?!と言えば平均の172cmを少し上回る176cm。
その辺の「そう言えば見た事あるかも?」というその他大勢に分類されるのがこの領地の主であり、トラフ伯爵家の当主ケルマデックなのだ。
「来月王都に行くので、もしかするとヘロゥワークに応募があるかも知れません」
<< ないない >>
お嫁さん募集の広告を王宮前の掲示板、裁判院の掲示板、町内会でOKが出た掲示板…etc。貼りまくって応募があったのは1件。
それが現在一応屋敷と呼ぶ小さな家屋で経理の仕事をしているプエールという執事。性別は男性。隣のケースにあった募集と間違って応募してしまいわざわざトラフ領まで面接に来てくれた。トリコ男爵家の6男で住む場所もないというので住み込みで雇っただけである。
「来月、王都に行くならラビットマークの本を買ってきてくれよ」
男性ならお楽しみ満載のラビットマークの本。
執事は代金を受け取り、「本屋にも寄らなきゃな」とまた鍬を振り始めたのだった。
1,009
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
婚約破棄をしておけば
あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。
私は……何も知らなかった……それだけなのに……
#Daki-Makura
ファンタジー
第2王子が獣人の婚約者へ婚約破棄を叩きつけた。
しかし、彼女の婚約者は、4歳年下の弟だった。
そう。第2王子は……何も知らなかった……知ろうとしなかっただけだった……
※ゆるい設定です。ゆるく読んでください。
※AI校正を使わせてもらっています。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
【完】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした
迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」
結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。
彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。
見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。
けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。
筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。
人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。
彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。
たとえ彼に好かれなくてもいい。
私は彼が好きだから!
大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。
ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。
と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)
殿下、もう何もかも手遅れです
魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。
葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。
全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。
アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。
自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。
勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。
これはひとつの国の終わりの物語。
★他のサイトにも掲載しております
★13000字程度でサクッとお読み頂けます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる