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第04話 不安で押し潰されそう
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ロミオスとジュエリットはトレンチ家を出ると別行動となった。
「え?あたしは?あたしは乗せてくれないの?」
「当たり前だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ロミー!この御者に言ってやってよ!」
「悪い。平民は乗せられないんだ」
「乗せられないってどういうことよ!お腹にはロミーの子もいるのよ?貴族の子を産むんだもの。あたしだって貴族でしょう?」
ロミオスは感情を露わにして今にも噛みつきそうなジュエリットを見たが、直ぐに目を逸らし馬車に乗り込むとジュエリットの存在も無かったかのように御者に向かって「出してくれ」と声をかけた。
「どういうこと!待ちなさいよ!」
動き出した馬車の扉をドンドンと叩いて叫ぶジュエリットだったが、10mも馬車が走ると転んでしまい追いかける事が出来なくなった。
「待てゴラァーッ!!」とても女性の発する言葉とは思えないが去っていく馬車に向かってジュエリットは叫び続けた。ロミオスは浅く腰かけ、両足の間に頭を突っ込むように俯いて手で耳を塞いだ。
半開きになった口からは糸を引いて涎が靴のつま先部分を汚していく。
その上にもっと水気のある涙がポタリポタリと落ちた。
ジュエリットから妊娠を告げられたのは3カ月の前の事だ。
ロミオスの率直な感想は「しくじった」だった。
決して遊びではなかったけれど、子供が出来るとは思っていなかった。
避妊具は使った事はないが、ロミオスは自身の避妊には自信があったからである。
だからジュエリットが妊娠をしたと聞いた時、しくじったと思うと同時に自分の子供なのだろうかと疑問もあった。
「避妊具を使っても100%じゃないんだぜ」
遊び仲間の言葉に「そんなものなのか」と思った程度。
しかし、そこからロミオスは悩んだ。
マリアナは侯爵家の令嬢で隠し子がいることがばれたら大変な事になる。
ここでも遊び仲間の言葉がロミオスを導いた。
「やべぇって事は、正直に言った方が許してもらえ易い」
なるほど!と思ったのだが言い出すタイミングがなかった。
ロミオスは同じ事を二度、三度と聞かされるのは嫌いだったので全員が揃っている時に言えば一度で済むと考えた。しかしチャンスはなかなか訪れない。
双方の両親とマリアナが揃っていないとダメなのだが、どちらかの母親が居なかったり関係のないロミオスの弟がいたり、マリアナの兄がいたり。
やっとそろう時が来たと思えばジュエリットが悪阻で気分が悪いと寝込んでしまった。
結婚式までにはなんとかしなければならないと最後のチャンスを待った。
ロミオスの計画なら、扉を開けて床に額を付けたところで誰かが「そこまでしなくていい」と声を掛けてくれるはずだったのだ。
婿入りとは言え、侯爵令嬢と結婚をして新たな子爵家を興す。女性の当主はそれなりの数がいるがやはり他家とのつながりを持つなら入り婿とは言えロミオスの出番になる。
蔑ろにされるはずがない。
その上マリアナにしてみれば妊娠で体形が崩れたり、腹に妊娠線が出来たり、出産で痛い思いをせずとも夫の血を引く子供は授かれるのだ。
世の妻は毎晩夫の閨の相手をするのも疲れると聞く。
妻が実質2人なのだからゆっくり寝られる日もあるのだからマリアナにしてみれば得しかない。
ジュエリットとはたまたま失敗をしてしまったが、今まで妊娠させたのはこの1度のみ。
使用人も住み込みはいるのだからジュエリットに1部屋あてがっても問題ないと考えた。
食事だってトレンチ家は客人がいない時は使用人も一緒に食事をする。そこにジュエリットが居たって何の問題もない。
ロミオスの計画が全てが万全で最善だったはず。
なのに‥‥。
「婚約破棄ってどういうことだ?慰謝料って…もらえる訳じゃないよな。ウチが有責っていうなら払う側だよな」
またもや遊び仲間の言葉が頭の中でグルグルと回る。
「失敗すると放逐されるぞ。気を付けろよ」
――父上は放逐なんかしないよな――
馬車に乗り込む替えからロミオスは頭の中が混乱してジュエリットどころではなかった。それは今も続く。生まれてから何度もくぐった子爵家の外門を馬車が抜けて玄関までの門道を走り出してもロミオスの不安は消えるどころか、どんどんと大きくなっていった。
――どこで間違った?いや、間違ってないはずだ――
不安で押し潰されそうなロミオスを乗せた馬車はオーストン子爵家の玄関前で停車した。
「え?あたしは?あたしは乗せてくれないの?」
「当たり前だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ロミー!この御者に言ってやってよ!」
「悪い。平民は乗せられないんだ」
「乗せられないってどういうことよ!お腹にはロミーの子もいるのよ?貴族の子を産むんだもの。あたしだって貴族でしょう?」
ロミオスは感情を露わにして今にも噛みつきそうなジュエリットを見たが、直ぐに目を逸らし馬車に乗り込むとジュエリットの存在も無かったかのように御者に向かって「出してくれ」と声をかけた。
「どういうこと!待ちなさいよ!」
動き出した馬車の扉をドンドンと叩いて叫ぶジュエリットだったが、10mも馬車が走ると転んでしまい追いかける事が出来なくなった。
「待てゴラァーッ!!」とても女性の発する言葉とは思えないが去っていく馬車に向かってジュエリットは叫び続けた。ロミオスは浅く腰かけ、両足の間に頭を突っ込むように俯いて手で耳を塞いだ。
半開きになった口からは糸を引いて涎が靴のつま先部分を汚していく。
その上にもっと水気のある涙がポタリポタリと落ちた。
ジュエリットから妊娠を告げられたのは3カ月の前の事だ。
ロミオスの率直な感想は「しくじった」だった。
決して遊びではなかったけれど、子供が出来るとは思っていなかった。
避妊具は使った事はないが、ロミオスは自身の避妊には自信があったからである。
だからジュエリットが妊娠をしたと聞いた時、しくじったと思うと同時に自分の子供なのだろうかと疑問もあった。
「避妊具を使っても100%じゃないんだぜ」
遊び仲間の言葉に「そんなものなのか」と思った程度。
しかし、そこからロミオスは悩んだ。
マリアナは侯爵家の令嬢で隠し子がいることがばれたら大変な事になる。
ここでも遊び仲間の言葉がロミオスを導いた。
「やべぇって事は、正直に言った方が許してもらえ易い」
なるほど!と思ったのだが言い出すタイミングがなかった。
ロミオスは同じ事を二度、三度と聞かされるのは嫌いだったので全員が揃っている時に言えば一度で済むと考えた。しかしチャンスはなかなか訪れない。
双方の両親とマリアナが揃っていないとダメなのだが、どちらかの母親が居なかったり関係のないロミオスの弟がいたり、マリアナの兄がいたり。
やっとそろう時が来たと思えばジュエリットが悪阻で気分が悪いと寝込んでしまった。
結婚式までにはなんとかしなければならないと最後のチャンスを待った。
ロミオスの計画なら、扉を開けて床に額を付けたところで誰かが「そこまでしなくていい」と声を掛けてくれるはずだったのだ。
婿入りとは言え、侯爵令嬢と結婚をして新たな子爵家を興す。女性の当主はそれなりの数がいるがやはり他家とのつながりを持つなら入り婿とは言えロミオスの出番になる。
蔑ろにされるはずがない。
その上マリアナにしてみれば妊娠で体形が崩れたり、腹に妊娠線が出来たり、出産で痛い思いをせずとも夫の血を引く子供は授かれるのだ。
世の妻は毎晩夫の閨の相手をするのも疲れると聞く。
妻が実質2人なのだからゆっくり寝られる日もあるのだからマリアナにしてみれば得しかない。
ジュエリットとはたまたま失敗をしてしまったが、今まで妊娠させたのはこの1度のみ。
使用人も住み込みはいるのだからジュエリットに1部屋あてがっても問題ないと考えた。
食事だってトレンチ家は客人がいない時は使用人も一緒に食事をする。そこにジュエリットが居たって何の問題もない。
ロミオスの計画が全てが万全で最善だったはず。
なのに‥‥。
「婚約破棄ってどういうことだ?慰謝料って…もらえる訳じゃないよな。ウチが有責っていうなら払う側だよな」
またもや遊び仲間の言葉が頭の中でグルグルと回る。
「失敗すると放逐されるぞ。気を付けろよ」
――父上は放逐なんかしないよな――
馬車に乗り込む替えからロミオスは頭の中が混乱してジュエリットどころではなかった。それは今も続く。生まれてから何度もくぐった子爵家の外門を馬車が抜けて玄関までの門道を走り出してもロミオスの不安は消えるどころか、どんどんと大きくなっていった。
――どこで間違った?いや、間違ってないはずだ――
不安で押し潰されそうなロミオスを乗せた馬車はオーストン子爵家の玄関前で停車した。
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