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第46話 思いがけない出来事
ピーマンの着ぐるみがジンジャーだと解った瞬間に一目散に駆けだし、自分の子供をピーマンになったジンジャーから何人もの人が引き剝がし始めた。
「何にもないのに。迷信信じてバッカじゃないの?」
1人の主婦が吐き捨てた。
――え?もしかしてちゃんと理解してくれている人もいるの?――
そう思い、周囲に残った人を見ると自分の子供が着ぐるみを着たジンジャーの手が出ている部分から小さな手を突っ込んで中のジンジャーを触りまくっているのをただ見ているだけ。
「アタシの夫、背中に産み痣あるんでなんとも思いませんよ」
「俺も生まれた時、蒙古斑で真っ青だったって母から聞きました。気にしませんけどね」
ホリーは嬉しくなって彼らの手を順番に握った。
「ありがとう…ありがとう」
屋敷の使用人でも概念を取り払うのに時間がかかったのに、何をせずとも理解してくれている人がこんなにいた。
ただ彼らも痣がある事や蒙古斑があった事を人に話すことは出来なかった。
偏見の眼で家族が見られてしまうので言えなかったのである。
「最初はね、ルドルフさん、侯爵家で働いているじゃないですか。だから彼女の家も地区から追い出そうってする人もいたんですよ。会いに来るから2次感染、3次感染するって言いだして」
「でも何年経ってもソイツらが言うような症状は出ないし、大人しくなったんです。間違いや偏見であった事は頑として認めないですけど、それならこっちも付き合い方を考えればいいだけなので」
「僕も子供が出来て思ったんです。元気で生まれてくれればそれでいいのにって。変える事の出来ない容姿で虐げるってのはどうなんだろう、そこで働いてるだけで色眼鏡で見るっておかしいんじゃないかって」
「私は兄がブレッドマン侯爵家で働いている事…昔は恥ずかしかったけど今はちゃんと言えるようになったんです。だって…何も悪い事はしてないんですから。兄は本当の弟妹でもない私達を本当の弟妹と分け隔てなく接してくれて…。今だって生きていける、子供が産めたのは兄が援助してくれたからなんです。自慢の兄なんです。そんな兄を恥ずかしいと思っていた自分が恥ずかしいです」
「奥様、ここは埃っぽいでしょう?」
ルドルフがそう言って赤い目をしながらホリーにハンカチを差し出してきた。
きっと妹がそんな風に思ってくれていたのを初めて聞いたのだろう。
――埃じゃないわ。誇りね――
ホリーはハンカチを目尻にあてて涙を吸わせた。
「あの奥様、服の感想は勿論なんですけど…聞けばお針子‥募集してるんですよね。私達じゃダメですか?」
思いもよらない申し出。ホリーは嬉しすぎてまた涙が出て来た。
「ダメだなんて!!嬉しいわ!一緒にやってくれる?」
「勿論です。事業してるのは侯爵様ですし、私ら平民だとダメだろうなって。ルドルフさんが時々来てたので頼もうかと思ったんですけど、流石に図々しいかなって思ってたんです」
「図々しいだなんて!!是非!こちらからお願いするわ。お給料とか勤務日とか希望はあると思うし…持ち帰りでも出来るから。やってくれるなら本当に嬉しい!規定もあるから全部は叶えられないと思うけど善処するわ」
「持ち帰りも出来るなら助かる!子供が熱出して休んだらクビになったの!安心して仕事出来るわ」
「そうそう。子供の具合が悪いって休むと周りに迷惑だからやめてくれって圧が凄いのよね」
「あのっ!割り込んですんません!侯爵家からここに材料を運ぶのって仕事になりますか?小口の運送業してたんですけど大手に仕事取られて。ずっと営業はしてるんですけど門前払いだったんです。荷物は責任もって運びます!お願いできませんか」
「お願いするのはこちらのほうよ。お針子さんも荷運びもこんな‥一度に決まるなんて…思ってもみなかったです」
彼らは別の地区でも同じように偏見も持っておらず、仕事を探している者がいるので声を掛けてみるとも言ってくれた。
帰りの馬車、ホリーは嬉しくて大泣きしてしまった。
子供たちに揉みくちゃにされてしまったジンジャーはタイツも破れ、着ぐるみもボロボロになってしまったがホリーを抱きしめて向かいに腰かけるルドルフに目が合うたびにサムズアップ。
ルドルフは思った。
――次の決算での昇給、確定だな――
「何にもないのに。迷信信じてバッカじゃないの?」
1人の主婦が吐き捨てた。
――え?もしかしてちゃんと理解してくれている人もいるの?――
そう思い、周囲に残った人を見ると自分の子供が着ぐるみを着たジンジャーの手が出ている部分から小さな手を突っ込んで中のジンジャーを触りまくっているのをただ見ているだけ。
「アタシの夫、背中に産み痣あるんでなんとも思いませんよ」
「俺も生まれた時、蒙古斑で真っ青だったって母から聞きました。気にしませんけどね」
ホリーは嬉しくなって彼らの手を順番に握った。
「ありがとう…ありがとう」
屋敷の使用人でも概念を取り払うのに時間がかかったのに、何をせずとも理解してくれている人がこんなにいた。
ただ彼らも痣がある事や蒙古斑があった事を人に話すことは出来なかった。
偏見の眼で家族が見られてしまうので言えなかったのである。
「最初はね、ルドルフさん、侯爵家で働いているじゃないですか。だから彼女の家も地区から追い出そうってする人もいたんですよ。会いに来るから2次感染、3次感染するって言いだして」
「でも何年経ってもソイツらが言うような症状は出ないし、大人しくなったんです。間違いや偏見であった事は頑として認めないですけど、それならこっちも付き合い方を考えればいいだけなので」
「僕も子供が出来て思ったんです。元気で生まれてくれればそれでいいのにって。変える事の出来ない容姿で虐げるってのはどうなんだろう、そこで働いてるだけで色眼鏡で見るっておかしいんじゃないかって」
「私は兄がブレッドマン侯爵家で働いている事…昔は恥ずかしかったけど今はちゃんと言えるようになったんです。だって…何も悪い事はしてないんですから。兄は本当の弟妹でもない私達を本当の弟妹と分け隔てなく接してくれて…。今だって生きていける、子供が産めたのは兄が援助してくれたからなんです。自慢の兄なんです。そんな兄を恥ずかしいと思っていた自分が恥ずかしいです」
「奥様、ここは埃っぽいでしょう?」
ルドルフがそう言って赤い目をしながらホリーにハンカチを差し出してきた。
きっと妹がそんな風に思ってくれていたのを初めて聞いたのだろう。
――埃じゃないわ。誇りね――
ホリーはハンカチを目尻にあてて涙を吸わせた。
「あの奥様、服の感想は勿論なんですけど…聞けばお針子‥募集してるんですよね。私達じゃダメですか?」
思いもよらない申し出。ホリーは嬉しすぎてまた涙が出て来た。
「ダメだなんて!!嬉しいわ!一緒にやってくれる?」
「勿論です。事業してるのは侯爵様ですし、私ら平民だとダメだろうなって。ルドルフさんが時々来てたので頼もうかと思ったんですけど、流石に図々しいかなって思ってたんです」
「図々しいだなんて!!是非!こちらからお願いするわ。お給料とか勤務日とか希望はあると思うし…持ち帰りでも出来るから。やってくれるなら本当に嬉しい!規定もあるから全部は叶えられないと思うけど善処するわ」
「持ち帰りも出来るなら助かる!子供が熱出して休んだらクビになったの!安心して仕事出来るわ」
「そうそう。子供の具合が悪いって休むと周りに迷惑だからやめてくれって圧が凄いのよね」
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彼らは別の地区でも同じように偏見も持っておらず、仕事を探している者がいるので声を掛けてみるとも言ってくれた。
帰りの馬車、ホリーは嬉しくて大泣きしてしまった。
子供たちに揉みくちゃにされてしまったジンジャーはタイツも破れ、着ぐるみもボロボロになってしまったがホリーを抱きしめて向かいに腰かけるルドルフに目が合うたびにサムズアップ。
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