25 / 36
郭公の反転
しおりを挟む
この国だけでなく、国境を接する隣国、隣国の向こう側にある国、鳥以外は移動手段が船である国。国王と王妃は八方手を尽くし、人を送り調べたが見立てた侍医の言葉と同じ結果しか得られなかった。
何をきっかけにしてそれまでを思い出すのか判らないとなれば、話を聞きつけた貴族たちが手を揉みながら眉唾物の情報をさも効果があるように誇張しつつ王妃に擦り寄ってきた。
霊峰と言われている山の湧き水を飲むと良い。
夜明け前にしか咲かないメモリルの花の蜜を紅茶に入れると良い。
下弦の月の日に祈祷をすれば良い。
果ては毎日瀉血をし、その血だけを吸わせた蚊を矢で射れば良いという無理無体な物まであった。
困った事に会話は出来るものの、失ったのは人に対する記憶だけでなく、文字も読めなかったしマナーや所作、それまでに履修していた座学による学問も綺麗さっぱり覚えていない事だった。
幼児が学ぶ基本的な学問など寝台の上で行なえるものを講師を呼んで学んでいく。
持って生まれた才能なのだろうか。
記号にしか見えなかった文字の規則性が理解できるとどんどん吸収していく。
まるで文字に飢えているかのようにシルヴェーヌは夜中に見回りに来た侍女が何度本を取り上げた事だろうかと苦笑するほど寝台わきに置いたランプの油が切れる明け方まで薄暗い中で本に魅了されていた。
「また夜遅くまで本を読まれていたのですね」
「夜遅くまでではないですわよ?早朝までです」
「あのですね?シルヴェーヌ様。夜と言うのは眠るものです」
「クロヴィス様は寝ていらっしゃらないでしょう?昨夜も扉の前に立っていたと侍女から聞きました」
「私はそれが仕事――いえ、したいからしているだけです」
「なら私も同じです。クロヴィス様が眠る日は寝ます」
「わかりました。約束ですよ?私は今日、昼寝をしますからシルヴェーヌ様もその時間は昼寝をしてください」
月灯りが無ければ漆黒の闇。一晩中扉の前で警護をしていたクロヴィスはシルヴェーヌが夜中に起きて本を読んでいた事は解っていた。しかし夜中に女性の部屋の扉を開けると言う事は緊急事態以外はあり得ない。
クロヴィス的には毎日がいろいろと緊急事態であるが、扉の足元から薄く漏れる小さな光に耳を澄ませば、紙を捲る音が聞こえるような気がして、シルヴェーヌらしいと苦笑いをした夜だったのだ。
「妃殿下、診察のお時間です」
侍女が声をかける。
背中の傷の場合はクロヴィスも席を外すが今日は頭部の傷の診察である。
頭部に受けた傷は隣国では縫合という方法で塞ぐと聞いた王妃があの日夜会に出席していた隣国の医師に頼んで処置をしてもらっていた。
従者が出たり入ったりしていたのは、騒ぎを聞いて自国の招待客でないものは先に安全確保として避難をしてもらっていたからで、秘匿をしてもらう事と予定のない医療行為に道具を揃える時間がかかったためだ。
「そろそろ抜糸をしてもいいでしょう。抜糸をすれば髪も洗えますよ。ただ強くガシガシと洗うのはダメですけどね」
「はい…あの先生?」
「なんですか?」
「鏡で見ると、何と言いますか…髪がない?ように見えるのですが…」
「ハハハ。大丈夫です。傷口の周りは処置のために剃らせて頂きましたがちゃんと生えてきます。傷口そのものは時間が経ってみないと解りません。毛母細胞というのですがどの程度ダメージを受けているかは外観からは解りませんので。ですがもし生えて来なくてもこの大きさなら周りの髪で十分に隠す事は出来ますよ」
クロヴィスは胸に手を置いた。
処置で剃った髪は小袋に入れてお守りのように持ち歩いている。
王妃は「一つ間違えば変態」と笑ったが、二度とこんな事がないようにとの戒めと言い張った。
医師が帰った後、王妃の宮には来訪者があった。
「クディエ公爵様?えぇっと…公爵というと…公侯伯子男だから…一番上?」
「はい、如何いたしましょう。王妃殿下は本日陛下と謁見が御座いまして」
ショック療法というものもあるようで、記憶を失う前に嫌な思い出がある人物にあったり、場所に行く事で思い出すきっかけとなる事があると言う。
王妃は大反対をしたのだが、物理的に距離を取って遠くからと国王が提案をしたのだ。
実はそれ以来王妃と国王は冷戦状態とも言える。
「明日ではダメなのか」
「それが、明日は陛下との会合があるとかで都合がつくのが本日のみと」
「シルヴェーヌ様。絶対に近づけさせません。不適切な事を口にしたら直ぐに叩きだします。陛下の許可が無ければ宮にも入れぬものを…口惜しい」
「クロヴィス様、国王陛下が折角考えて下さった治療法ですから。会ってみます」
部屋に入室はしたものの寝台からは出られないシルヴェーヌを見てクディエ公爵家当主ランヴェルとリベイラは大袈裟に胸に手を組んで合わせ、奇声にも似た声をあげた。
「おぉ!シルヴェーヌ。なんと労しい事だ」
「なんてこと!わたくしの可愛いシルヴェーヌッ!あぁこの手で抱きしめてあげたいっ」
周りを見ると、侍女やメイド、従者の目は射抜くかのように厳しい視線が2人に向けられている。両手を広げ「お父様だよ」と一歩踏み込んだランヴェルをクロヴィスは手を広げて制した。
「お近づきになりませんよう。この位置でもこちらは譲歩しているのですから」
「なっ!何を言うか!娘を抱きしめたいというこの親心を踏み躙る気か!」
「そうよ!乳飲み子の時から大事に大事に育ててきた我が子同然の娘よ!」
2人の言葉に侍女頭が前に出てきた。姿勢よく直立しギロリと2人を睨む。
侍女頭の言葉に2人の言動が早くも一変した。
「虚偽は認められていない筈です。両陛下に報告を致します」
「何を証拠に!」
「そうよ!わたくしたちはあの子の親なのよ」
なにやら必死の様子の2人をつい他人ごとのように見てしまう。
「私の両親?」と寝台わきにいた侍女に問えば小さく首を横に振る。
「郭公の反転のようなものです」
先日読んだ本に郭公という鳥は他の鳥の巣に自分の卵を育てさせると書いてあった。
反転と言う事は【私が育てた?】シルヴェーヌの頭には疑問符が飛んだ。
「おいっ!こいつらを止めろ!育てた恩を忘れたのか!」
「何するの!お離しッ!シルヴェーヌっ!何をしてるのっこいつらをやめさせなさい!」
「面会は終わりだ。退室して頂く」
「離せっ!オイコラ!穀潰しのお前をここまで育てたのは俺なんだぞっ!」
従者たちに退室をさせられた2人は廊下に出ても悪態を吐き喚いていた。
「見苦しいものをお見せしました。全く…王妃様が怒るはずだわ。陛下は何を考えてるのかしら」
プンプンと怒りを隠さない侍女だが、シルヴェーヌはチクリとこめかみが傷んだ。
「私は…誰の子なのかしら。彼らの実子ではないのでしょう?」
侍女の言った【郭公の反転】と彼らが言う【育てた恩】。
養父母なのだとすれば本当の親は何故来てくれないのだろう。
面会に制限を設けられる彼ら以上に何か会えない事情があるのだろうか。
考え込むシルヴェーヌの顔をクロヴィスが覗き込んだ。
「何も考えなくていいんですよ。彼らを見て何も思う事がないのが一番です」
「そうなの?」
「えぇ。下心しかない人間は貴女には不要です」
<< へぇ~? >>
何故か部屋にいた使用人全員がクロヴィスを細~い目で見た。
何をきっかけにしてそれまでを思い出すのか判らないとなれば、話を聞きつけた貴族たちが手を揉みながら眉唾物の情報をさも効果があるように誇張しつつ王妃に擦り寄ってきた。
霊峰と言われている山の湧き水を飲むと良い。
夜明け前にしか咲かないメモリルの花の蜜を紅茶に入れると良い。
下弦の月の日に祈祷をすれば良い。
果ては毎日瀉血をし、その血だけを吸わせた蚊を矢で射れば良いという無理無体な物まであった。
困った事に会話は出来るものの、失ったのは人に対する記憶だけでなく、文字も読めなかったしマナーや所作、それまでに履修していた座学による学問も綺麗さっぱり覚えていない事だった。
幼児が学ぶ基本的な学問など寝台の上で行なえるものを講師を呼んで学んでいく。
持って生まれた才能なのだろうか。
記号にしか見えなかった文字の規則性が理解できるとどんどん吸収していく。
まるで文字に飢えているかのようにシルヴェーヌは夜中に見回りに来た侍女が何度本を取り上げた事だろうかと苦笑するほど寝台わきに置いたランプの油が切れる明け方まで薄暗い中で本に魅了されていた。
「また夜遅くまで本を読まれていたのですね」
「夜遅くまでではないですわよ?早朝までです」
「あのですね?シルヴェーヌ様。夜と言うのは眠るものです」
「クロヴィス様は寝ていらっしゃらないでしょう?昨夜も扉の前に立っていたと侍女から聞きました」
「私はそれが仕事――いえ、したいからしているだけです」
「なら私も同じです。クロヴィス様が眠る日は寝ます」
「わかりました。約束ですよ?私は今日、昼寝をしますからシルヴェーヌ様もその時間は昼寝をしてください」
月灯りが無ければ漆黒の闇。一晩中扉の前で警護をしていたクロヴィスはシルヴェーヌが夜中に起きて本を読んでいた事は解っていた。しかし夜中に女性の部屋の扉を開けると言う事は緊急事態以外はあり得ない。
クロヴィス的には毎日がいろいろと緊急事態であるが、扉の足元から薄く漏れる小さな光に耳を澄ませば、紙を捲る音が聞こえるような気がして、シルヴェーヌらしいと苦笑いをした夜だったのだ。
「妃殿下、診察のお時間です」
侍女が声をかける。
背中の傷の場合はクロヴィスも席を外すが今日は頭部の傷の診察である。
頭部に受けた傷は隣国では縫合という方法で塞ぐと聞いた王妃があの日夜会に出席していた隣国の医師に頼んで処置をしてもらっていた。
従者が出たり入ったりしていたのは、騒ぎを聞いて自国の招待客でないものは先に安全確保として避難をしてもらっていたからで、秘匿をしてもらう事と予定のない医療行為に道具を揃える時間がかかったためだ。
「そろそろ抜糸をしてもいいでしょう。抜糸をすれば髪も洗えますよ。ただ強くガシガシと洗うのはダメですけどね」
「はい…あの先生?」
「なんですか?」
「鏡で見ると、何と言いますか…髪がない?ように見えるのですが…」
「ハハハ。大丈夫です。傷口の周りは処置のために剃らせて頂きましたがちゃんと生えてきます。傷口そのものは時間が経ってみないと解りません。毛母細胞というのですがどの程度ダメージを受けているかは外観からは解りませんので。ですがもし生えて来なくてもこの大きさなら周りの髪で十分に隠す事は出来ますよ」
クロヴィスは胸に手を置いた。
処置で剃った髪は小袋に入れてお守りのように持ち歩いている。
王妃は「一つ間違えば変態」と笑ったが、二度とこんな事がないようにとの戒めと言い張った。
医師が帰った後、王妃の宮には来訪者があった。
「クディエ公爵様?えぇっと…公爵というと…公侯伯子男だから…一番上?」
「はい、如何いたしましょう。王妃殿下は本日陛下と謁見が御座いまして」
ショック療法というものもあるようで、記憶を失う前に嫌な思い出がある人物にあったり、場所に行く事で思い出すきっかけとなる事があると言う。
王妃は大反対をしたのだが、物理的に距離を取って遠くからと国王が提案をしたのだ。
実はそれ以来王妃と国王は冷戦状態とも言える。
「明日ではダメなのか」
「それが、明日は陛下との会合があるとかで都合がつくのが本日のみと」
「シルヴェーヌ様。絶対に近づけさせません。不適切な事を口にしたら直ぐに叩きだします。陛下の許可が無ければ宮にも入れぬものを…口惜しい」
「クロヴィス様、国王陛下が折角考えて下さった治療法ですから。会ってみます」
部屋に入室はしたものの寝台からは出られないシルヴェーヌを見てクディエ公爵家当主ランヴェルとリベイラは大袈裟に胸に手を組んで合わせ、奇声にも似た声をあげた。
「おぉ!シルヴェーヌ。なんと労しい事だ」
「なんてこと!わたくしの可愛いシルヴェーヌッ!あぁこの手で抱きしめてあげたいっ」
周りを見ると、侍女やメイド、従者の目は射抜くかのように厳しい視線が2人に向けられている。両手を広げ「お父様だよ」と一歩踏み込んだランヴェルをクロヴィスは手を広げて制した。
「お近づきになりませんよう。この位置でもこちらは譲歩しているのですから」
「なっ!何を言うか!娘を抱きしめたいというこの親心を踏み躙る気か!」
「そうよ!乳飲み子の時から大事に大事に育ててきた我が子同然の娘よ!」
2人の言葉に侍女頭が前に出てきた。姿勢よく直立しギロリと2人を睨む。
侍女頭の言葉に2人の言動が早くも一変した。
「虚偽は認められていない筈です。両陛下に報告を致します」
「何を証拠に!」
「そうよ!わたくしたちはあの子の親なのよ」
なにやら必死の様子の2人をつい他人ごとのように見てしまう。
「私の両親?」と寝台わきにいた侍女に問えば小さく首を横に振る。
「郭公の反転のようなものです」
先日読んだ本に郭公という鳥は他の鳥の巣に自分の卵を育てさせると書いてあった。
反転と言う事は【私が育てた?】シルヴェーヌの頭には疑問符が飛んだ。
「おいっ!こいつらを止めろ!育てた恩を忘れたのか!」
「何するの!お離しッ!シルヴェーヌっ!何をしてるのっこいつらをやめさせなさい!」
「面会は終わりだ。退室して頂く」
「離せっ!オイコラ!穀潰しのお前をここまで育てたのは俺なんだぞっ!」
従者たちに退室をさせられた2人は廊下に出ても悪態を吐き喚いていた。
「見苦しいものをお見せしました。全く…王妃様が怒るはずだわ。陛下は何を考えてるのかしら」
プンプンと怒りを隠さない侍女だが、シルヴェーヌはチクリとこめかみが傷んだ。
「私は…誰の子なのかしら。彼らの実子ではないのでしょう?」
侍女の言った【郭公の反転】と彼らが言う【育てた恩】。
養父母なのだとすれば本当の親は何故来てくれないのだろう。
面会に制限を設けられる彼ら以上に何か会えない事情があるのだろうか。
考え込むシルヴェーヌの顔をクロヴィスが覗き込んだ。
「何も考えなくていいんですよ。彼らを見て何も思う事がないのが一番です」
「そうなの?」
「えぇ。下心しかない人間は貴女には不要です」
<< へぇ~? >>
何故か部屋にいた使用人全員がクロヴィスを細~い目で見た。
109
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる