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消えたセレスタン
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王妃の宮は基本的に女性のみとされている。
今日もきゃっきゃウフフと花が飛び交うような笑い声に包まれていた。
医者からはあと3カ月はかかりそうだと言われた抜糸。医学という分野がまだまだ民間療法に頼る時代。ジクジクとした患部から抜糸の日はまた先に延びてしまったが、起き上がれるようになったシルヴェーヌは歩行訓練も兼ねて部屋を中心として疲れない範囲で歩く練習を開始していた。
今日はサロンに隣接しているテラスで廃妃となったディオンの母も交えての茶会。
無礼講で侍女やメイドも用意したテーブルで菓子を抓んでいた。
「ねぇ。シルヴェーヌ」
「はい、王妃様」
「静養も兼ねて離宮に行ってみない?敷地の中には湖もあるのよ」
「まぁ…湖が?広いんですね」
「そうね。でも貴女が育った公爵領によく似ているかも知れないわ。少しこっちではゴタゴタしそうな様相になってきたから、安全な所にいて欲しいの」
「妃殿下、この宮が一番安全なのでは?」
「ベラ、そうも言ってられなくなったの。また側妃を迎えるそうよ。貴女が抜けたからって18歳の男爵令嬢だそうよ。男って幾つになったら腐って落ちるのかしら」
側妃が廃妃となるのは比較的簡単である。それまでの使用人を他の側妃などに振り分ければいい。しかし新しい側妃となれば王妃の宮でその使用人を一定期間指導せねばならない。
側妃となる者が連れてきた使用人全員を綿密に調べながら並行で行なわれる作業。そこにシルヴェーヌを狙う間者が紛れ込んでもおかしくない。通常ならば警戒はしないが、王妃は一連の動きに国王が関与しているのではと疑っていた。
王妃が思うよりも国王がセレスタンとディオンに対しての処罰が軽いのだ。
血を分けた我が子だからと言う言い訳を加味しても、王妃は我が子であるセレスタンを婚約解消の騒ぎを起こした責任を取らせるべく、毒杯を進言した。
他国に王家の恥部を見せた罪は重い。それを払拭するのにどれほどの時間と費用、不要な働きをせねばならない有能な人間が犠牲になるかを甘く考えていると強い処分を進言したのだ。
だが、国王は公爵家の金の流れを把握しろと甘い裁定を出した。
ディオンについてはほぼお咎めなしと言っていい。立太子など到底出来る器ではなかったにも関わらずアデライドを引き合いに王子に据え置いた。
シルヴェーヌが斬りつけられた時、王妃はディオンを塔への幽閉と進言したが、国王はディオンについては、頃合いを見計らってシルヴェーヌと離縁させバイエ侯爵家に臣籍降下するとした。
【使えない2人の王子】を起用するのではないかと言う思いが捨てきれない。
王妃にとって、我が子であろうと愚鈍な王子は不要なのだ。
子の母としての倫理観を疑われても、国の母としての矜持が勝る。
調べてはいるが、どうしても限界があった。
王妃は、一旦シルヴェーヌを王都から離れた離宮に移し、その間に掃除をしようと目論んでいた。場合によっては摂政を立て、間もなく3歳になるマクスウェルの即位も持さない構えだった。
「わかりました。離宮に行きます」
「決して追い出すわけじゃないの。向こうは空気も良いしきっと良い事がある筈よ」
「わたくしも行きたいですわぁ」
「ベラはまだよ。手伝って欲しい事があるから」
「はぁい。王妃殿下の御心のままに~」
「ふざけないで頂戴」
娘が生まれていればこんな感情になったのだろうか。ふと王妃にそんな感情が沸いた。セレスタンの育て方さえ間違わなかったら…そう考えて首を小さく横に振った。
〇●〇●〇
「なんですって?所在は掴めないの?」
「申し訳ございません。なんせクディエ公爵が一切なにも‥」
「あの蛇男が出すのは舌と股間くらいよ。待っていても無駄。兎に角探しなさい」
シルヴェーヌがまもなく抜糸になる。隣国から医師もこちらに向けて出立をしたと言う知らせと同時に飛び込んできたのはクディエ公爵家の籍に入ったはずのセレスタンの所在がつかめないというものだった。
年内いっぱいもつかどうかまで傾いたクディエ公爵家。
使用人はもうほとんどを解雇し、残ったものは少ない。ランヴィルもリベイラも無い袖は振れない状態まで来ているのだろう。紳士サロンにも茶会にも顔を出さず、先日マクスウェルの母、側妃が開いた詩の朗読会にも参加がなかった。
クディエ公爵家に従者を潜り込ませていたが、過日クディエ公爵家で火事騒ぎがあった。本宅には外壁を焦がしたくらいで主だった延焼も無かったが隣接する薪を備蓄している小屋と厩舎が全焼した。
数少ない使用人として潜り込ませた従者が何もしない訳にもいかず、馬を逃がしていた。消火してみればセレスタンの姿がなかった。
当主の状況は把握していた。当主が使用するべき部屋はセレスタンが使っておりランヴェルとリベイラは客間を使っていた。セレスタンは贅沢をしている風でもなかったがクディエ公爵家はこの1年で一気に傾いた。
借金こそない状態のため査察に入る大義名分がなく調べる事は出来なかった。使用人を全て解雇しようと家の事情。泣きついてこない限り王宮は手が打てないのだ。
もしやと思いディオンの宮にも捜索が入ったが、セレスタンはいなかった。
「勘弁してくれ。正妃と子作りも出来ないんだぞ?何が嬉しくて異母兄上を匿わなきゃならないんだ?こっちは異母兄上のおかげでいい迷惑だ」
都合よくセレスタンに利用されただけのディオンは腹を立てていた。
側近のヘルベルトは口は割らなかったが終身刑となり先月懲役の場に送られた。終身刑とは言っても懲役の場で1年と生きた者はいない過酷な地である。
半年ほど窮屈な思いをしたディオンは気が付けば母親は廃妃となり、王妃によって自室に謹慎と言う名の監禁が続いたのだ。
当初ヘルベルトに襲わせる予定はなかった。
襲撃犯をクロヴィスにさせる予定だったからだ。
シルヴェーヌに思慕を寄せるクロヴィスが叶わぬ思いを拗らせてシルヴェーヌを亡き者にしようとしたが誤ってアデライドを斬ってしまう、ヘルベルトにはそのクロヴィスを片付ける役目をさせるだけだった。
アデライドは儚くなるが、ヘルベルトは功績をあげる事が出来て、クロヴィスが片付く。少なからずシルヴェーヌがクロヴィスとよく行動を共にしていた事から混乱したシルヴェーヌをディオンが慰め、王妃も認めざるを得なくなるという流れの筈だった。
セレスタンが廃嫡されている以上、第三王子のマクスウェルが子をもうけるとしても15年以上先の事になる。王妃がどう囲おうとシルヴェーヌと子を作るしかないとセレスタンはディオンに吹き込んだ。
アデライドが襲われて儚くなれば、教育は当然無くなるのだからマクスウェルが成人するまではシルヴェーヌとの間に子を作ったディオンが即位するしかないとセレスタンは言った。
「襲撃すると言えばクロヴィスは騎士団に垂れ込む可能性がある。襲撃はその場で一発勝負だから他の貴族たちにも負傷者が出ると考え、警護を固めるようにマイクあたりに連絡を取るだろう。だが誘拐となればターゲットは一人に絞られる。クロヴィスは単独で動こうとするはずだ。話に乗ってノコノコやってくれば田舎の親や弟妹を出しに使えばいい。家族愛に溢れた哀れな男に踊ってもらうだけだ」
セレスタンの計画はクロヴィスが首を縦に振らなかった時に中止するべきだったとディオンは悔いていた。ヘルベルトが口を割らなかったからいいようなものの薄氷を踏む思いの半年だったのだ。
「探したいなら天井板も全部外して探していけ!いなかった時はそれなりに責任を取ってもらうからな!」
激昂するディオンの言う通り、セレスタンはいなかった。
悪戯に時間だけが過ぎていく。
元王太子セレスタンの所在は一向に掴めなかった。
王妃の宮に来て10カ月目、負傷して7カ月目。
シルヴェーヌは背中の抜糸を済ませた。
〇●〇●〇
「元気でね。掃除が終われば連絡をするわ」
「はい。王妃様も、ベラ様もお元気で」
シルヴェーヌと抱き合ったあと、王妃はクロヴィスを跪かせた。
「クロヴィス、頼みましたよ」
「御意」
馬車で1週間ほど。治療中である事も加味して10日の旅に耐えられるよう2か月間リハビリに励み、シルヴェーヌは王妃の宮に来て1年、負傷して9カ月目の日、離宮に向けて出発をした。
今日もきゃっきゃウフフと花が飛び交うような笑い声に包まれていた。
医者からはあと3カ月はかかりそうだと言われた抜糸。医学という分野がまだまだ民間療法に頼る時代。ジクジクとした患部から抜糸の日はまた先に延びてしまったが、起き上がれるようになったシルヴェーヌは歩行訓練も兼ねて部屋を中心として疲れない範囲で歩く練習を開始していた。
今日はサロンに隣接しているテラスで廃妃となったディオンの母も交えての茶会。
無礼講で侍女やメイドも用意したテーブルで菓子を抓んでいた。
「ねぇ。シルヴェーヌ」
「はい、王妃様」
「静養も兼ねて離宮に行ってみない?敷地の中には湖もあるのよ」
「まぁ…湖が?広いんですね」
「そうね。でも貴女が育った公爵領によく似ているかも知れないわ。少しこっちではゴタゴタしそうな様相になってきたから、安全な所にいて欲しいの」
「妃殿下、この宮が一番安全なのでは?」
「ベラ、そうも言ってられなくなったの。また側妃を迎えるそうよ。貴女が抜けたからって18歳の男爵令嬢だそうよ。男って幾つになったら腐って落ちるのかしら」
側妃が廃妃となるのは比較的簡単である。それまでの使用人を他の側妃などに振り分ければいい。しかし新しい側妃となれば王妃の宮でその使用人を一定期間指導せねばならない。
側妃となる者が連れてきた使用人全員を綿密に調べながら並行で行なわれる作業。そこにシルヴェーヌを狙う間者が紛れ込んでもおかしくない。通常ならば警戒はしないが、王妃は一連の動きに国王が関与しているのではと疑っていた。
王妃が思うよりも国王がセレスタンとディオンに対しての処罰が軽いのだ。
血を分けた我が子だからと言う言い訳を加味しても、王妃は我が子であるセレスタンを婚約解消の騒ぎを起こした責任を取らせるべく、毒杯を進言した。
他国に王家の恥部を見せた罪は重い。それを払拭するのにどれほどの時間と費用、不要な働きをせねばならない有能な人間が犠牲になるかを甘く考えていると強い処分を進言したのだ。
だが、国王は公爵家の金の流れを把握しろと甘い裁定を出した。
ディオンについてはほぼお咎めなしと言っていい。立太子など到底出来る器ではなかったにも関わらずアデライドを引き合いに王子に据え置いた。
シルヴェーヌが斬りつけられた時、王妃はディオンを塔への幽閉と進言したが、国王はディオンについては、頃合いを見計らってシルヴェーヌと離縁させバイエ侯爵家に臣籍降下するとした。
【使えない2人の王子】を起用するのではないかと言う思いが捨てきれない。
王妃にとって、我が子であろうと愚鈍な王子は不要なのだ。
子の母としての倫理観を疑われても、国の母としての矜持が勝る。
調べてはいるが、どうしても限界があった。
王妃は、一旦シルヴェーヌを王都から離れた離宮に移し、その間に掃除をしようと目論んでいた。場合によっては摂政を立て、間もなく3歳になるマクスウェルの即位も持さない構えだった。
「わかりました。離宮に行きます」
「決して追い出すわけじゃないの。向こうは空気も良いしきっと良い事がある筈よ」
「わたくしも行きたいですわぁ」
「ベラはまだよ。手伝って欲しい事があるから」
「はぁい。王妃殿下の御心のままに~」
「ふざけないで頂戴」
娘が生まれていればこんな感情になったのだろうか。ふと王妃にそんな感情が沸いた。セレスタンの育て方さえ間違わなかったら…そう考えて首を小さく横に振った。
〇●〇●〇
「なんですって?所在は掴めないの?」
「申し訳ございません。なんせクディエ公爵が一切なにも‥」
「あの蛇男が出すのは舌と股間くらいよ。待っていても無駄。兎に角探しなさい」
シルヴェーヌがまもなく抜糸になる。隣国から医師もこちらに向けて出立をしたと言う知らせと同時に飛び込んできたのはクディエ公爵家の籍に入ったはずのセレスタンの所在がつかめないというものだった。
年内いっぱいもつかどうかまで傾いたクディエ公爵家。
使用人はもうほとんどを解雇し、残ったものは少ない。ランヴィルもリベイラも無い袖は振れない状態まで来ているのだろう。紳士サロンにも茶会にも顔を出さず、先日マクスウェルの母、側妃が開いた詩の朗読会にも参加がなかった。
クディエ公爵家に従者を潜り込ませていたが、過日クディエ公爵家で火事騒ぎがあった。本宅には外壁を焦がしたくらいで主だった延焼も無かったが隣接する薪を備蓄している小屋と厩舎が全焼した。
数少ない使用人として潜り込ませた従者が何もしない訳にもいかず、馬を逃がしていた。消火してみればセレスタンの姿がなかった。
当主の状況は把握していた。当主が使用するべき部屋はセレスタンが使っておりランヴェルとリベイラは客間を使っていた。セレスタンは贅沢をしている風でもなかったがクディエ公爵家はこの1年で一気に傾いた。
借金こそない状態のため査察に入る大義名分がなく調べる事は出来なかった。使用人を全て解雇しようと家の事情。泣きついてこない限り王宮は手が打てないのだ。
もしやと思いディオンの宮にも捜索が入ったが、セレスタンはいなかった。
「勘弁してくれ。正妃と子作りも出来ないんだぞ?何が嬉しくて異母兄上を匿わなきゃならないんだ?こっちは異母兄上のおかげでいい迷惑だ」
都合よくセレスタンに利用されただけのディオンは腹を立てていた。
側近のヘルベルトは口は割らなかったが終身刑となり先月懲役の場に送られた。終身刑とは言っても懲役の場で1年と生きた者はいない過酷な地である。
半年ほど窮屈な思いをしたディオンは気が付けば母親は廃妃となり、王妃によって自室に謹慎と言う名の監禁が続いたのだ。
当初ヘルベルトに襲わせる予定はなかった。
襲撃犯をクロヴィスにさせる予定だったからだ。
シルヴェーヌに思慕を寄せるクロヴィスが叶わぬ思いを拗らせてシルヴェーヌを亡き者にしようとしたが誤ってアデライドを斬ってしまう、ヘルベルトにはそのクロヴィスを片付ける役目をさせるだけだった。
アデライドは儚くなるが、ヘルベルトは功績をあげる事が出来て、クロヴィスが片付く。少なからずシルヴェーヌがクロヴィスとよく行動を共にしていた事から混乱したシルヴェーヌをディオンが慰め、王妃も認めざるを得なくなるという流れの筈だった。
セレスタンが廃嫡されている以上、第三王子のマクスウェルが子をもうけるとしても15年以上先の事になる。王妃がどう囲おうとシルヴェーヌと子を作るしかないとセレスタンはディオンに吹き込んだ。
アデライドが襲われて儚くなれば、教育は当然無くなるのだからマクスウェルが成人するまではシルヴェーヌとの間に子を作ったディオンが即位するしかないとセレスタンは言った。
「襲撃すると言えばクロヴィスは騎士団に垂れ込む可能性がある。襲撃はその場で一発勝負だから他の貴族たちにも負傷者が出ると考え、警護を固めるようにマイクあたりに連絡を取るだろう。だが誘拐となればターゲットは一人に絞られる。クロヴィスは単独で動こうとするはずだ。話に乗ってノコノコやってくれば田舎の親や弟妹を出しに使えばいい。家族愛に溢れた哀れな男に踊ってもらうだけだ」
セレスタンの計画はクロヴィスが首を縦に振らなかった時に中止するべきだったとディオンは悔いていた。ヘルベルトが口を割らなかったからいいようなものの薄氷を踏む思いの半年だったのだ。
「探したいなら天井板も全部外して探していけ!いなかった時はそれなりに責任を取ってもらうからな!」
激昂するディオンの言う通り、セレスタンはいなかった。
悪戯に時間だけが過ぎていく。
元王太子セレスタンの所在は一向に掴めなかった。
王妃の宮に来て10カ月目、負傷して7カ月目。
シルヴェーヌは背中の抜糸を済ませた。
〇●〇●〇
「元気でね。掃除が終われば連絡をするわ」
「はい。王妃様も、ベラ様もお元気で」
シルヴェーヌと抱き合ったあと、王妃はクロヴィスを跪かせた。
「クロヴィス、頼みましたよ」
「御意」
馬車で1週間ほど。治療中である事も加味して10日の旅に耐えられるよう2か月間リハビリに励み、シルヴェーヌは王妃の宮に来て1年、負傷して9カ月目の日、離宮に向けて出発をした。
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