31 / 36
元王太子は執事になった
しおりを挟む
王都にある王宮は現在混沌としていた。国王、王妃、そして廃妃となったと言っても側妃だったベラが毒を盛られてしまった。本来なら毒味役がいて然るべきだったが、毒を盛られた食事会は国王が指示したもの。国王は敢えて毒味役を置かなかった。
食材も十分にチェックされたものを使用していた。
毒の濃度はかなり濃く、もはや毒だけで作ったデザートだったと言ってよいほどだったが、ディオンと側妃が食べなかったデザートに数日すると蟻が寄ってきた。
表面に触れた蟻は山になって死骸となっていたが、生物の生存本能なのか、それとも蟻の習性なのか。内部に到達した蟻は列を成して小さな粒となった【品】を巣に持ち帰っていた。
毒はラズベリーに似た【デスキラー】という実のソースだと判った。
デスキラーは時折市場でも間違って売られる事があるが、小指の先よりも小さな実一つで成獣の熊が即死する猛毒を持っていた。
だが、厨房に残されていたソースはシェフが大さじにすくってそのまま飲み込んでも何もなかった。そしてシェフと料理補佐が証言をした。
「ソースが多いです」
デザートは隣国で最近売り出されたバニラアイスでこれを作るために氷室から大量の氷を使用したものだった。本来なら半分ほどにかかっているソースが満遍なくかけられていた。
「配膳の時に上からさらにソースをかけたのか」
国王だけ、両陛下だけ、若しくは特定の誰か、はたまた全員を狙ったのかもわからない。
給仕に関わった全員が調べられた。
だが、誰にも怪しいところはなく、金に困っている者もいなかった。
「あのぅ…」
1人のメイドが恐る恐る手をあげた。食事の給仕係となってもうすぐ1年になる子爵家からきた行儀見習いだった。
「どうした」
「関係ないかも知れないんですけど、前菜を準備していた時に側妃様が来られたんです。マクスウェル殿下は朝食にもバニラアイスを食べたので別のにして欲しいと仰られて」
「だが、前菜を準備という事は食事会の前だろう」
「そうなんですけど…だから関係ないかもって」
「ならば関係ないな」
結果給仕、調理関係者は全員1つの棟に集められ、嫌疑が晴れるまでは拘束されることになった。
一向に犯人の目星がつかないままでも時間は流れていく。
両陛下とベラを蝕む強い毒性は手足の麻痺と声を出す事が全く出来ない状態と侍医から伝えられ、命の危機は脱したが公務などを行う事は到底無理な話だった。
「陛下の名代を立ててはどうか」
「立てると言っても‥‥ディラン殿下は不在だぞ」
ディランはその時、王妃の離宮のある地に出向いていたため王宮にはいなかった。
その時、声が上がった。
「非常時なのだ。マクスウェル殿下を一時的に王位につけ、その補佐を議会で行なえば良いのではないか?殿下はまだ3歳にもなられていない。決済なども出来ないのは判っているが、いつまでも玉座が空席というのは他国にも攻め込まれる隙を見せるだけだ」
声をあげたのはアレンス侯爵家のカールストンだった。
今は辞しているが、過去に第二王子ディオンの側近だった男で侯爵家を継いで当主になっていた。
「我がアレンス侯爵家としては何れは即位されるマクスウェル殿下の生母ダリア様と共にお支えする事を誓う。勿論現陛下のご健康が回復次第マクスウェル殿下には立太子をして頂く事となる。他国に対する暫定的な王位とお考え頂きたい」
「だが、王妃殿下のご名代となるものがいない。それはどうする」
「簡単な事。側妃ダリア様に代行頂ければよい。マクスウェル殿下はまだ幼い。母であるダリア様とご一緒なら謁見なども顔を見せる程度は泣かずに堪える事も出来よう」
こうして、王都では非常時の応急措置だと暫定的に幼いマクスウェルが即位し、それを支えるのが議会。王妃の代行は側妃のダリアと決定がされた。
国民に、国王自らが主宰した食事会で国王、王妃が毒に倒れたなど公表も出来なかった事もある。議会も【暫定的で一時的なもの】として、戴冠式なども行わず他国との謁見のみという事で折り合いがついた。
〇●〇●〇
「何故貴方がここに…」クロヴィスは絶句した。
離宮に来て2か月。忌わしいクディエ公爵夫妻、ディオンとアデライドが姿を見せなくなって、やっとシルヴェーヌも余程でなければ就寝と昼寝以外で寝台に横になる事も無くなった時だった。
王宮から王妃の離宮を管理するハリスが高齢で代わりの者がいつかは赴任してくるとは判ってはいたが、「王妃の命令書」を持参し、現れたのは【元王太子】のセレスタンだった。
未だ記憶が回復する兆しが見えないシルヴェーヌの前に立ち、王族ではなく臣下としての礼をセレスタンは取った。シルヴェーヌはセレスタンの顔を見ても何の反応も無かった。
それに安堵したのかはセレスタンのみぞ知る。
セレスタンは礼をして頭を垂れながらも口角を上げた。
「私は、貴女様が憂いなく過ごせるようにするのが課せられた務めにて」
そしてもう1人、身の回りの世話をしてくれるリーネという侍女も赴任してきた。
こちらも「王妃の命令書」を提示した。
「リーネと申します。よろしくお願いいたします」
静かな声でリーネが挨拶をして頭を下げる。
クロヴィスは何も言わず2人をただ射抜くように見つめていた。
「私達は夫婦ですので、使用人用の部屋は1つで結構です」
多くない荷物を2人で使用人用の棟にある粗末な部屋に運び入れていく。
すっかりその背が見えなくなった頃、クロヴィスはハリスに問うた。
「彼を誰だが知っていますか」
「勿論。妃殿下のお子様ですから幼少期より存じ上げております」
「どう思います」
「危険…でしょうね。何を企んでいるかは現時点ではわかりませんが注意するに越した事はないでしょう」
クロヴィスとハリスは同意見だった。
暫定とは言え、書面には王妃の名として「ダリア」の署名があった。
書類上は何の問題も無いが人間に問題がある。
クロヴィスはシルヴェーヌと過ごす時間が増えた。
執事と言えど何を考えているのかわからないセレスタンが入り込んだ以上、シルヴェーヌから目を離す事は出来なくなったのだ。
いつも夜遅くまで書庫で書類に目を通すセレスタンにクロヴィスは話し掛けた。
「殿下、ここに来た目的はなんですか」
「クロヴィス殿、私の事はセレスタンと。王子、王太子であったのは過去の事。今、私の事を殿下と呼ぶ者など一人として存在しません」
「では、セレスタン殿。ここに来た目的はなんですか」
「目的?そんなものは御座いません。私は命令に従いこちらに赴いたまで。理由や目的がおありなら側妃殿下、いえ暫定王妃殿下のダリア様にお伺い頂ければと」
「彼女…リーネ殿とはいつから?」
「これは野暮な事を聞かれるのですね?彼女とは結婚したばかりです。彼女は私にとってはなくてはならない存在なのです。結ばれるのは当然でしょう」
しかし、そんな心配は杞憂なのか。セレスタンとリーネの働きぶりはいたって真面目で申し分なかった。セレスタンはクロヴィスに対しても紳士的で側近であった時には見た事も無いほど穏やかだった。
3カ月、半年経っても仕事ぶりに特に変わった様子は見受けられなかった。
しかし、クロヴィスはセレスタンの言葉を文面通りには受け取らなかった、
セレスタンが【何かを探している】気配を感じ取っていたからだ。
食材も十分にチェックされたものを使用していた。
毒の濃度はかなり濃く、もはや毒だけで作ったデザートだったと言ってよいほどだったが、ディオンと側妃が食べなかったデザートに数日すると蟻が寄ってきた。
表面に触れた蟻は山になって死骸となっていたが、生物の生存本能なのか、それとも蟻の習性なのか。内部に到達した蟻は列を成して小さな粒となった【品】を巣に持ち帰っていた。
毒はラズベリーに似た【デスキラー】という実のソースだと判った。
デスキラーは時折市場でも間違って売られる事があるが、小指の先よりも小さな実一つで成獣の熊が即死する猛毒を持っていた。
だが、厨房に残されていたソースはシェフが大さじにすくってそのまま飲み込んでも何もなかった。そしてシェフと料理補佐が証言をした。
「ソースが多いです」
デザートは隣国で最近売り出されたバニラアイスでこれを作るために氷室から大量の氷を使用したものだった。本来なら半分ほどにかかっているソースが満遍なくかけられていた。
「配膳の時に上からさらにソースをかけたのか」
国王だけ、両陛下だけ、若しくは特定の誰か、はたまた全員を狙ったのかもわからない。
給仕に関わった全員が調べられた。
だが、誰にも怪しいところはなく、金に困っている者もいなかった。
「あのぅ…」
1人のメイドが恐る恐る手をあげた。食事の給仕係となってもうすぐ1年になる子爵家からきた行儀見習いだった。
「どうした」
「関係ないかも知れないんですけど、前菜を準備していた時に側妃様が来られたんです。マクスウェル殿下は朝食にもバニラアイスを食べたので別のにして欲しいと仰られて」
「だが、前菜を準備という事は食事会の前だろう」
「そうなんですけど…だから関係ないかもって」
「ならば関係ないな」
結果給仕、調理関係者は全員1つの棟に集められ、嫌疑が晴れるまでは拘束されることになった。
一向に犯人の目星がつかないままでも時間は流れていく。
両陛下とベラを蝕む強い毒性は手足の麻痺と声を出す事が全く出来ない状態と侍医から伝えられ、命の危機は脱したが公務などを行う事は到底無理な話だった。
「陛下の名代を立ててはどうか」
「立てると言っても‥‥ディラン殿下は不在だぞ」
ディランはその時、王妃の離宮のある地に出向いていたため王宮にはいなかった。
その時、声が上がった。
「非常時なのだ。マクスウェル殿下を一時的に王位につけ、その補佐を議会で行なえば良いのではないか?殿下はまだ3歳にもなられていない。決済なども出来ないのは判っているが、いつまでも玉座が空席というのは他国にも攻め込まれる隙を見せるだけだ」
声をあげたのはアレンス侯爵家のカールストンだった。
今は辞しているが、過去に第二王子ディオンの側近だった男で侯爵家を継いで当主になっていた。
「我がアレンス侯爵家としては何れは即位されるマクスウェル殿下の生母ダリア様と共にお支えする事を誓う。勿論現陛下のご健康が回復次第マクスウェル殿下には立太子をして頂く事となる。他国に対する暫定的な王位とお考え頂きたい」
「だが、王妃殿下のご名代となるものがいない。それはどうする」
「簡単な事。側妃ダリア様に代行頂ければよい。マクスウェル殿下はまだ幼い。母であるダリア様とご一緒なら謁見なども顔を見せる程度は泣かずに堪える事も出来よう」
こうして、王都では非常時の応急措置だと暫定的に幼いマクスウェルが即位し、それを支えるのが議会。王妃の代行は側妃のダリアと決定がされた。
国民に、国王自らが主宰した食事会で国王、王妃が毒に倒れたなど公表も出来なかった事もある。議会も【暫定的で一時的なもの】として、戴冠式なども行わず他国との謁見のみという事で折り合いがついた。
〇●〇●〇
「何故貴方がここに…」クロヴィスは絶句した。
離宮に来て2か月。忌わしいクディエ公爵夫妻、ディオンとアデライドが姿を見せなくなって、やっとシルヴェーヌも余程でなければ就寝と昼寝以外で寝台に横になる事も無くなった時だった。
王宮から王妃の離宮を管理するハリスが高齢で代わりの者がいつかは赴任してくるとは判ってはいたが、「王妃の命令書」を持参し、現れたのは【元王太子】のセレスタンだった。
未だ記憶が回復する兆しが見えないシルヴェーヌの前に立ち、王族ではなく臣下としての礼をセレスタンは取った。シルヴェーヌはセレスタンの顔を見ても何の反応も無かった。
それに安堵したのかはセレスタンのみぞ知る。
セレスタンは礼をして頭を垂れながらも口角を上げた。
「私は、貴女様が憂いなく過ごせるようにするのが課せられた務めにて」
そしてもう1人、身の回りの世話をしてくれるリーネという侍女も赴任してきた。
こちらも「王妃の命令書」を提示した。
「リーネと申します。よろしくお願いいたします」
静かな声でリーネが挨拶をして頭を下げる。
クロヴィスは何も言わず2人をただ射抜くように見つめていた。
「私達は夫婦ですので、使用人用の部屋は1つで結構です」
多くない荷物を2人で使用人用の棟にある粗末な部屋に運び入れていく。
すっかりその背が見えなくなった頃、クロヴィスはハリスに問うた。
「彼を誰だが知っていますか」
「勿論。妃殿下のお子様ですから幼少期より存じ上げております」
「どう思います」
「危険…でしょうね。何を企んでいるかは現時点ではわかりませんが注意するに越した事はないでしょう」
クロヴィスとハリスは同意見だった。
暫定とは言え、書面には王妃の名として「ダリア」の署名があった。
書類上は何の問題も無いが人間に問題がある。
クロヴィスはシルヴェーヌと過ごす時間が増えた。
執事と言えど何を考えているのかわからないセレスタンが入り込んだ以上、シルヴェーヌから目を離す事は出来なくなったのだ。
いつも夜遅くまで書庫で書類に目を通すセレスタンにクロヴィスは話し掛けた。
「殿下、ここに来た目的はなんですか」
「クロヴィス殿、私の事はセレスタンと。王子、王太子であったのは過去の事。今、私の事を殿下と呼ぶ者など一人として存在しません」
「では、セレスタン殿。ここに来た目的はなんですか」
「目的?そんなものは御座いません。私は命令に従いこちらに赴いたまで。理由や目的がおありなら側妃殿下、いえ暫定王妃殿下のダリア様にお伺い頂ければと」
「彼女…リーネ殿とはいつから?」
「これは野暮な事を聞かれるのですね?彼女とは結婚したばかりです。彼女は私にとってはなくてはならない存在なのです。結ばれるのは当然でしょう」
しかし、そんな心配は杞憂なのか。セレスタンとリーネの働きぶりはいたって真面目で申し分なかった。セレスタンはクロヴィスに対しても紳士的で側近であった時には見た事も無いほど穏やかだった。
3カ月、半年経っても仕事ぶりに特に変わった様子は見受けられなかった。
しかし、クロヴィスはセレスタンの言葉を文面通りには受け取らなかった、
セレスタンが【何かを探している】気配を感じ取っていたからだ。
98
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる