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最終話☆王子妃だった記憶はもう消えました
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乾いた音が部屋に響くとセレスタンの咆哮は止まった。
「私は貴方に感謝していると。皸になる事もなくなったのは今でも貴方のおかげだと思っております。狭い貴族社会から市井という広い大海もほんの少し知る事も出来ました」
「えっ?…まさか記憶が…」
セレスタンは、まさかと目を見開いてシルヴェーヌを見た。
「だからどうしたというのだ。知ったところで何が変わった?嘘を吐く者、誰かに取り入る者、媚びる者!何一つ変わらない腐った国だ!それを私が変えるのだ!全てを壊し!焼き尽くして清廉潔白な真っ白な世界を作る!私は神となるんだ」
「貴方は神になどならないし、なれません。貴方こそ嘘を吐き、誰かに寄生する欺瞞の塊。そんなものが神になど成れる筈がありません」
「私は許されるのだ!私こそ!それが赦される唯一無二の人間なのだ」
「唯一無二は全ての人間です。貴方に限った事ではありません」
「いいや、私は神だ!幼き頃からそうやって育ってきた。あと少し…もう少しなんだ」
「そのために他人の部屋を勝手に漁っても良いと?」
「あぁ。俗世間では必要悪と言うやつだ。だが私は世界を作るために行った。その崇高な精神を誰が咎める事が出来る?咎める事が出来るのは神である私だけだ。クロヴィス!死んでいくお前に側近の証など不要!今すぐ戻せ!」
セレスタンに名を呼ばれたクロヴィスは小さな声で「ない」と答えた。
医療隊の隊員の隙間から伸ばした手をシルヴェーヌは駆け寄るとしゃがんで掴んだ。
クロヴィスの顔がセレスタンに見えるように隊員は少し移動すると、クロヴィスは微笑んだ。
「殿下…あれはもうありません…貴方が…ハンカチ代わりに尻に敷いた…隊服‥はもう‥捨てましたから‥あなたにとっては取るに足らないもの…捨ててよかったと思います」
「なんだって!何処に!いつ!信じられない…あの金が無かったら‥」
「金を…欲しがる神様なんて…クソくらえの邪神…ですよ」
「嘘だろう…嘘だと言ってくれ…あの金が無かったら‥どうやって世界を作れというんだ?!誰も手を貸してくれないじゃないか!うわぁぁぁっ!!」
自身の行いでブローチがもう存在しない事をしったセレスタンは天を仰いだ。
シルヴェーヌは戸棚に置いた子供たちが作った本をセレスタンの目の前に差し出した。
セレスタンは「ハハッ」っと鼻で笑った。
「安い本を読んでいるんだな。王子妃ともあろうものが」
「これは文字を知らなかった子供たちがこの言葉はこう書くのだと理解をして書いたもの。決して安い本などいう言葉で片付けられるものでも値段がつけられるものでもありません」
「セレスタン様、貴方は、かの日4年後国が終わると言った。でも貴方が望んだ世界は違う世界となり子供たちが未来を築いていくのです。いい加減に夢物語から目を覚ましてくださいませ」
「夢物語だと?!私が!この私が描く世界が夢物語だとぅ!!」
「そうです。理想論、空想論。大変結構ですが現実を見てください。自分だけが赦される必要悪や嘘が赦されるなら全てが嘘や欺瞞の世界になります。貴方1人が赦される世界などあって良いはずがないでしょう!
かつて貴方に問うた事を覚えていますか?不治の病に侵されても尚、治癒を信じて生きる者に【治る】と希望を告げる嘘吐きと、飢えた子供たちの前でスープを不味いからと捨てる正直者、どちらの言動を正しいと考えますか?と。
貴方は双方を粛清すると言った。違います。粛清、反省すべきはそうなった世を作った者です。治癒が望める世界にする事を怠った罪、飢えた子を作った罪を上に立つ者が背負うのです。どちらの言動も正しく、どちらも間違っている。その責任を負うのが上に立つ者です」
シルヴェーヌはもう一度子供たちが作った本をセレスタンに見せた。
過呼吸を起こしたあのページを開き、目の前に突きつけた。
「文字を覚えた子供はこんな事さえ、書けたと喜ぶのです。この子が意味を知った時の絶望を貴方は考えなかったのですか!この子は嘘は書いていません。純真な心を利用した貴方は神じゃない!卑劣漢です」
「なんでっ!なんで…嘘を吐かなかったことで…嘘を吐いていい‥いや‥うわぁぁぁ!!」
叫びながら首を上下左右に振り続けたセレスタンは、突然意識を飛ばし全身から力が抜けた。
●〇●〇●
「ごめんなさいね。貴女にこんな役目をさせて」
「いいえ。おかげでスッキリ致しました」
セレスタンは言葉を発さずに一点を見つめて対岸に渡る舟に拘束されたまま乗せられた。
「この子には意味が判るのであれば毒杯を与えましょう」
「王妃様、それなのですが…理解してもらえるまで教会の懺悔室に預けてみてはどうでしょう。罪を悔いる方々が神に懺悔をする。そこでしか吐き出せない悩み。おそらくは心が負に偏る事ばかりでしょうけども、知ってからどうすべきか決めても良いと思うのです」
「貴女という娘は…もうっ」
王妃はシルヴェーヌをギュッと抱きしめた。
母親の温もりは知らないけれど、きっとこんな感じなのだろうとシルヴェーヌは思った。
「ディオンとの婚姻はもうすぐ解消に出来るから待っていてね。その後もここにずっといて良いのよ」
「いいえ。王妃様。わたくし公爵領に帰ろうと思うんです。記憶を無くしたり…色々とありましたから気忙しくて。王都と違って可愛いお店とか何もない所ですけど人の繋がりだけはあるんですよ?」
「わかったわ。でも1つだけお願いを聞いてくれる?」
「なんでございましょう」
「全てを許せる人と幸せな結婚をして家庭を築いてくれる?わたくしがいえた義理ではないけれど」
「はい。ご希望に添える事が出来るようやってみます」
何もかも乗せて舟が湖面に幾つも航跡を残して去っていく。
ハリスと数名の従者たちと見送ったシルヴェーヌは離宮に戻った。
「悪運は強いですね。直ぐ剣を振るようになりますよ」
「良かった…」
「きっと厄災は隊服のブローチと一緒に捨てたんでしょうね」
「ふふふ。クロヴィス様はあまり物を持っていませんものね」
「そりゃ…それ以上の事を望んではいけないくらいの望みが叶ったからでしょう」
「あら?そんな大きな野望をお持ちでしたのね」
目を閉じているクロヴィスだったが、こめかみがヒクヒクと動くのを見てハリスは「先に休みます」と退室していった。残されたシルヴェーヌがもう一度クロヴィスを見るとぱっちり目が開いていた。
「傷みませんか?」
「えぇっと…痛いです」
「まぁ!大変。ハリスさんを呼んで――」
「痛くないです。全然痛くないです」
ハリスを呼びに行こうと振り向きかけたシルヴェーヌの手を握ったクロヴィスは必死に行くなとくい止めた。
「ズルいですよ。本当の事を言ったら行っちゃいそうになるって」
「日頃からやせ我慢ばかりするからです」
「しなくていいですか?やせ我慢…」
「してほしくありません。我慢は良くないですもの」
「なら、我慢しません。聞いてください。いや願いを叶えてください」
「わたくし、神様じゃないので叶えられないかも知れませんわ」
「貴女じゃないと叶えられない!愛しています。結婚してください」
「え・・・あの…一応まだ結婚はしているので‥それはちょっと」
「痛っ‥‥痛タタタ…」
「大丈夫?何処が痛いのです?傷口??うわっ!!」
ちゅっ♡
心配して覗き込んだシルヴェーヌを抱き寄せてクロヴィスはキスをした。
クロヴィスは目を閉じているが、シルヴェーヌはぱちくりとしていた。
●〇●〇●
3カ月後、正式に離縁が整うとシルヴェーヌは王妃に手紙を送り公爵領に出立した。
その数日前、王都では側妃だったダリアの弔いの鐘が響いた。
国王が性格を読めず側妃にしてしまった責任の一端を担い表向き病死の毒杯を賜る事になった。
ディオンは離縁と同時に教会預かりとなり、見習い神官と同様に夜が明ける前から礼拝堂の清掃から始まり、日々の業務を終えた後、月が真上になる頃まで聖書を書き写した。
書き写した本はシルヴェーヌが立ち上げた事業の平民が無償で学問が学べる場に寄付されていく。自身が写本した本を子供たちが音読し、また紙に何度も失敗しながら書き写す姿を見てディオンは男泣きに泣いた。
生涯を独身で過ごし、教会預かりのままだったが街の美観についての事業を始めディオンが62歳で亡くなる頃には汚物や残飯がどこかしこに捨てられる事も無くなった。
セレスタンとリーネは王宮の一画にある塔に幽閉をされた。
リーネが甲斐甲斐しく世話をする間だけ【人】でいられたセレスタンは「死んで神の御許に逝く時に自分が神ならどこに逝くのか」と自分の出した問いに【行き場所がない】と錯乱を起こしてしまった。
マクスウェルは過去の過ちを犯さぬよう、厳しいだけの教育ではなく物心ついた時期からは市井の子供たちと無償の学び舎で机を並べ、同じ物を食べて選民感情もなく情緒豊かに成長した。
18歳で即位した後、24歳で平民の女性を妃に迎えた。シルヴェーヌが提案した医療学院で学び、心に傷を負った者に深く長く寄り添う事業を立ち上げた女性だった。
マクスウェルの即位を見届けた国王、王妃、そしてベラは毒杯を賜った。
奇しくもその翌朝、セレスタンの心臓も拍動を止めていた。リーネはその亡骸を抱いて数日後儚くなっていた。
そしてシルヴェーヌは小さな馬車でクロヴィスと2人ゆっくりと公爵領に戻った。
屋敷とは呼べない小さな家だったが、クロヴィスはそれまでの稼ぎで購入をした。
「小さい家になっちゃったけど…いいかな」
「どこが小さいんです?部屋は居間と食事室と寝室ともう1つありますし十分では?」
「そうなんだけど、ほら…今まではお屋敷だったし」
「何の事です?」
「えっ?いや、ほら王子妃だった時は王妃様の宮とか離宮とかだったし」
「何を言ってますの。記憶が一度飛んでしまったのです。王子妃だった記憶はもう消えました。そんな記憶は持ち合わせておりませんわ」
「え?じゃぁ出会いも忘れちゃった?」
「覚えていますよ?だって王子妃じゃなかった頃でしょう?」
「ファァァ♡もう何様だよぅ!!」
「勿論、貴方の奥様ですわ♡」
ちゅっ♡
お幸せに~(^_^)/~
☆★☆秘密の話☆★☆
深夜、シルヴェーヌが寝静まったのを見計らって庭に穴を掘るクロヴィス。
「アブねぇ…こんなもの持ってたのバレたら離縁されちゃうよ」
ポンと穴に投げ込んだブローチ。
「よし!これで俺も記憶から抹消だ!」
Fin
☆彡☆彡☆彡
長い話にお付き合い頂きありがとうございました。<(_ _)>
ざまぁが足らねぇ!って方もいらっしゃると思いますがご容赦を(;^ω^)
日曜にかけてコメントの返信を致します。まだかなぁ~( ̄ー ̄) っと思われるかもですが少々お待ちくださいませ
「私は貴方に感謝していると。皸になる事もなくなったのは今でも貴方のおかげだと思っております。狭い貴族社会から市井という広い大海もほんの少し知る事も出来ました」
「えっ?…まさか記憶が…」
セレスタンは、まさかと目を見開いてシルヴェーヌを見た。
「だからどうしたというのだ。知ったところで何が変わった?嘘を吐く者、誰かに取り入る者、媚びる者!何一つ変わらない腐った国だ!それを私が変えるのだ!全てを壊し!焼き尽くして清廉潔白な真っ白な世界を作る!私は神となるんだ」
「貴方は神になどならないし、なれません。貴方こそ嘘を吐き、誰かに寄生する欺瞞の塊。そんなものが神になど成れる筈がありません」
「私は許されるのだ!私こそ!それが赦される唯一無二の人間なのだ」
「唯一無二は全ての人間です。貴方に限った事ではありません」
「いいや、私は神だ!幼き頃からそうやって育ってきた。あと少し…もう少しなんだ」
「そのために他人の部屋を勝手に漁っても良いと?」
「あぁ。俗世間では必要悪と言うやつだ。だが私は世界を作るために行った。その崇高な精神を誰が咎める事が出来る?咎める事が出来るのは神である私だけだ。クロヴィス!死んでいくお前に側近の証など不要!今すぐ戻せ!」
セレスタンに名を呼ばれたクロヴィスは小さな声で「ない」と答えた。
医療隊の隊員の隙間から伸ばした手をシルヴェーヌは駆け寄るとしゃがんで掴んだ。
クロヴィスの顔がセレスタンに見えるように隊員は少し移動すると、クロヴィスは微笑んだ。
「殿下…あれはもうありません…貴方が…ハンカチ代わりに尻に敷いた…隊服‥はもう‥捨てましたから‥あなたにとっては取るに足らないもの…捨ててよかったと思います」
「なんだって!何処に!いつ!信じられない…あの金が無かったら‥」
「金を…欲しがる神様なんて…クソくらえの邪神…ですよ」
「嘘だろう…嘘だと言ってくれ…あの金が無かったら‥どうやって世界を作れというんだ?!誰も手を貸してくれないじゃないか!うわぁぁぁっ!!」
自身の行いでブローチがもう存在しない事をしったセレスタンは天を仰いだ。
シルヴェーヌは戸棚に置いた子供たちが作った本をセレスタンの目の前に差し出した。
セレスタンは「ハハッ」っと鼻で笑った。
「安い本を読んでいるんだな。王子妃ともあろうものが」
「これは文字を知らなかった子供たちがこの言葉はこう書くのだと理解をして書いたもの。決して安い本などいう言葉で片付けられるものでも値段がつけられるものでもありません」
「セレスタン様、貴方は、かの日4年後国が終わると言った。でも貴方が望んだ世界は違う世界となり子供たちが未来を築いていくのです。いい加減に夢物語から目を覚ましてくださいませ」
「夢物語だと?!私が!この私が描く世界が夢物語だとぅ!!」
「そうです。理想論、空想論。大変結構ですが現実を見てください。自分だけが赦される必要悪や嘘が赦されるなら全てが嘘や欺瞞の世界になります。貴方1人が赦される世界などあって良いはずがないでしょう!
かつて貴方に問うた事を覚えていますか?不治の病に侵されても尚、治癒を信じて生きる者に【治る】と希望を告げる嘘吐きと、飢えた子供たちの前でスープを不味いからと捨てる正直者、どちらの言動を正しいと考えますか?と。
貴方は双方を粛清すると言った。違います。粛清、反省すべきはそうなった世を作った者です。治癒が望める世界にする事を怠った罪、飢えた子を作った罪を上に立つ者が背負うのです。どちらの言動も正しく、どちらも間違っている。その責任を負うのが上に立つ者です」
シルヴェーヌはもう一度子供たちが作った本をセレスタンに見せた。
過呼吸を起こしたあのページを開き、目の前に突きつけた。
「文字を覚えた子供はこんな事さえ、書けたと喜ぶのです。この子が意味を知った時の絶望を貴方は考えなかったのですか!この子は嘘は書いていません。純真な心を利用した貴方は神じゃない!卑劣漢です」
「なんでっ!なんで…嘘を吐かなかったことで…嘘を吐いていい‥いや‥うわぁぁぁ!!」
叫びながら首を上下左右に振り続けたセレスタンは、突然意識を飛ばし全身から力が抜けた。
●〇●〇●
「ごめんなさいね。貴女にこんな役目をさせて」
「いいえ。おかげでスッキリ致しました」
セレスタンは言葉を発さずに一点を見つめて対岸に渡る舟に拘束されたまま乗せられた。
「この子には意味が判るのであれば毒杯を与えましょう」
「王妃様、それなのですが…理解してもらえるまで教会の懺悔室に預けてみてはどうでしょう。罪を悔いる方々が神に懺悔をする。そこでしか吐き出せない悩み。おそらくは心が負に偏る事ばかりでしょうけども、知ってからどうすべきか決めても良いと思うのです」
「貴女という娘は…もうっ」
王妃はシルヴェーヌをギュッと抱きしめた。
母親の温もりは知らないけれど、きっとこんな感じなのだろうとシルヴェーヌは思った。
「ディオンとの婚姻はもうすぐ解消に出来るから待っていてね。その後もここにずっといて良いのよ」
「いいえ。王妃様。わたくし公爵領に帰ろうと思うんです。記憶を無くしたり…色々とありましたから気忙しくて。王都と違って可愛いお店とか何もない所ですけど人の繋がりだけはあるんですよ?」
「わかったわ。でも1つだけお願いを聞いてくれる?」
「なんでございましょう」
「全てを許せる人と幸せな結婚をして家庭を築いてくれる?わたくしがいえた義理ではないけれど」
「はい。ご希望に添える事が出来るようやってみます」
何もかも乗せて舟が湖面に幾つも航跡を残して去っていく。
ハリスと数名の従者たちと見送ったシルヴェーヌは離宮に戻った。
「悪運は強いですね。直ぐ剣を振るようになりますよ」
「良かった…」
「きっと厄災は隊服のブローチと一緒に捨てたんでしょうね」
「ふふふ。クロヴィス様はあまり物を持っていませんものね」
「そりゃ…それ以上の事を望んではいけないくらいの望みが叶ったからでしょう」
「あら?そんな大きな野望をお持ちでしたのね」
目を閉じているクロヴィスだったが、こめかみがヒクヒクと動くのを見てハリスは「先に休みます」と退室していった。残されたシルヴェーヌがもう一度クロヴィスを見るとぱっちり目が開いていた。
「傷みませんか?」
「えぇっと…痛いです」
「まぁ!大変。ハリスさんを呼んで――」
「痛くないです。全然痛くないです」
ハリスを呼びに行こうと振り向きかけたシルヴェーヌの手を握ったクロヴィスは必死に行くなとくい止めた。
「ズルいですよ。本当の事を言ったら行っちゃいそうになるって」
「日頃からやせ我慢ばかりするからです」
「しなくていいですか?やせ我慢…」
「してほしくありません。我慢は良くないですもの」
「なら、我慢しません。聞いてください。いや願いを叶えてください」
「わたくし、神様じゃないので叶えられないかも知れませんわ」
「貴女じゃないと叶えられない!愛しています。結婚してください」
「え・・・あの…一応まだ結婚はしているので‥それはちょっと」
「痛っ‥‥痛タタタ…」
「大丈夫?何処が痛いのです?傷口??うわっ!!」
ちゅっ♡
心配して覗き込んだシルヴェーヌを抱き寄せてクロヴィスはキスをした。
クロヴィスは目を閉じているが、シルヴェーヌはぱちくりとしていた。
●〇●〇●
3カ月後、正式に離縁が整うとシルヴェーヌは王妃に手紙を送り公爵領に出立した。
その数日前、王都では側妃だったダリアの弔いの鐘が響いた。
国王が性格を読めず側妃にしてしまった責任の一端を担い表向き病死の毒杯を賜る事になった。
ディオンは離縁と同時に教会預かりとなり、見習い神官と同様に夜が明ける前から礼拝堂の清掃から始まり、日々の業務を終えた後、月が真上になる頃まで聖書を書き写した。
書き写した本はシルヴェーヌが立ち上げた事業の平民が無償で学問が学べる場に寄付されていく。自身が写本した本を子供たちが音読し、また紙に何度も失敗しながら書き写す姿を見てディオンは男泣きに泣いた。
生涯を独身で過ごし、教会預かりのままだったが街の美観についての事業を始めディオンが62歳で亡くなる頃には汚物や残飯がどこかしこに捨てられる事も無くなった。
セレスタンとリーネは王宮の一画にある塔に幽閉をされた。
リーネが甲斐甲斐しく世話をする間だけ【人】でいられたセレスタンは「死んで神の御許に逝く時に自分が神ならどこに逝くのか」と自分の出した問いに【行き場所がない】と錯乱を起こしてしまった。
マクスウェルは過去の過ちを犯さぬよう、厳しいだけの教育ではなく物心ついた時期からは市井の子供たちと無償の学び舎で机を並べ、同じ物を食べて選民感情もなく情緒豊かに成長した。
18歳で即位した後、24歳で平民の女性を妃に迎えた。シルヴェーヌが提案した医療学院で学び、心に傷を負った者に深く長く寄り添う事業を立ち上げた女性だった。
マクスウェルの即位を見届けた国王、王妃、そしてベラは毒杯を賜った。
奇しくもその翌朝、セレスタンの心臓も拍動を止めていた。リーネはその亡骸を抱いて数日後儚くなっていた。
そしてシルヴェーヌは小さな馬車でクロヴィスと2人ゆっくりと公爵領に戻った。
屋敷とは呼べない小さな家だったが、クロヴィスはそれまでの稼ぎで購入をした。
「小さい家になっちゃったけど…いいかな」
「どこが小さいんです?部屋は居間と食事室と寝室ともう1つありますし十分では?」
「そうなんだけど、ほら…今まではお屋敷だったし」
「何の事です?」
「えっ?いや、ほら王子妃だった時は王妃様の宮とか離宮とかだったし」
「何を言ってますの。記憶が一度飛んでしまったのです。王子妃だった記憶はもう消えました。そんな記憶は持ち合わせておりませんわ」
「え?じゃぁ出会いも忘れちゃった?」
「覚えていますよ?だって王子妃じゃなかった頃でしょう?」
「ファァァ♡もう何様だよぅ!!」
「勿論、貴方の奥様ですわ♡」
ちゅっ♡
お幸せに~(^_^)/~
☆★☆秘密の話☆★☆
深夜、シルヴェーヌが寝静まったのを見計らって庭に穴を掘るクロヴィス。
「アブねぇ…こんなもの持ってたのバレたら離縁されちゃうよ」
ポンと穴に投げ込んだブローチ。
「よし!これで俺も記憶から抹消だ!」
Fin
☆彡☆彡☆彡
長い話にお付き合い頂きありがとうございました。<(_ _)>
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このストーリーの主演者達は子供世代に重きを置いていますけど、親世代の尻拭いを演じている気がしました(*´-`)
クズ王子はダメ親父譲りなんですよ。王妃と側妃(ディオンの実母)そうですよね‼️
コメントありがとうございます<(_ _)>
モヤっとしましたか(*^-^*)
兄弟で出来はいいけども歪んでしまったセレスタン。どこかで矯正が出来れば良かったんですが変に成功体験もあるので周りが認めちゃってるところもあるんですよねぇ。
変に知恵が回ってそこそこに賢い分、最後は自己崩壊。これが多分モヤっとの原因だと思うんですよ。
断罪しろ!ってお声は多かったので(笑)
まぁ首を刎ねるだけで終わるとセレスタンはダメだろうなと。常に崩壊している訳じゃなくまともになる時間も少しはあるので、そのわずかな時間に自分が出した問いに自分で答えられないという「自称天才」が藻掻いて藻掻いてさらに崩壊していく感じです。
国王が側妃まで娶っているのは女好きというのもあるかな(嫌いだと無理ですしね。笑)
立場故にスペアは必要と言えば説き伏せる事も出来ますしね。
親世代の尻拭い‥確かにそうですね。悪しき慣習はどこかで断ち切らないといけないので転機になったかも??
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
読み応えあったーラストが軽ぅてワロタけど
コメントありがとうございます。<(_ _)>
危険なブローチは埋めるに限ります(笑)もう廃棄されているはずの隊服にあったものなので、ポイっと(笑)
「ここに花でも植えようかしら?」って言いださない事を願っているでしょう( ̄ー ̄)ウーン
その前に、イノシシとかに掘り起こされたりして(笑)
こちらの話も読んで頂きありがとうございます(*^-^*)
短編なのですけども10万字超えが多くて…まぁ、短期間で終わるんで、時間的な短編?と思って頂ければ。
読書の秋と申しますが、秋の夜長に選んで頂いて本当に感謝です\(^▽^)/
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
わあ偶然ですね!絵描きですか!
画材はどんな画材を使ってたんですか?
メーカーはどこがお気に入りだったか理由も教えてください!
人物画ですか?風景画ですか?
コメントありがとうございます。<(_ _)>
恐らく、想像されている絵描きさんとは別物かと‥‥(;^_^A
学生時代、きっちり授業を休まず出席し、教壇の真ん前に陣取ったからか通知表は毎回5段階の【2】を意気込みだけで頂いておりました(笑)1は唯一の二色になるんですが、赤い1は回避できた程度の芸術センスでございます(笑)
美術、音楽、書道、家庭科は無茶苦茶苦手でございます(笑)
期待に添えず申し訳ないっ<(_ _)>