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第二章~王子殿下は興味「しか」ない
トゥトゥーリア、閃く
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結婚しもう2年。あと1年もしないうちにヴァレンティノの兄である王太子は国王に即位する。そうなればヴァレンティノも第2王子という呼び名から王弟(大公)となる。
ただ街に行くだけではなくあの店に連れて行った理由は他にあったと考えるべき。
トゥトゥーリアは夜、家で1人シボリーナミルクを入れたマグカップの温かさを手のひらに考えた。
★~★
「こんなに沢山・・・いいんですか?お給金から引いてもいいですけど‥」
「そんな事はしないよ」
ヴァレンティノのような身分の人間が手に持つような紙袋ではない雑な袋に入った「もしかすれば高級品」の数々。ヴァレンティノはトゥトゥーリアと大通りまで来た道を袋を抱えて並んで歩く。
「ねぇ殿下」
「なんだい」
「ここに連れて来たのって・・・」
トゥトゥーリアは自身の出自も知っている。庶子が妃なんてと何度も考えたこともある。あの時は売り言葉に買い言葉だったけれど今のままで良いとも思ってはいない。
トゥトゥーリアは隣を歩くヴァレンティノを見上げた。
「マフラー忘れたと言ってただろう?それだけだよ。ちゃんとこの時間の時給も払うよ?」
「時給はいらないです。そこまで図太くないです」
★~★
「はぁ~」トゥトゥーリアは溜息を吐く。
考えれば考えるほどにヴァレンティノには何かをしてもらってばかり。
「お返しも出来てないのよね。なにかしてあげれればいいんだけど」
とは言っても、何かを買うとなれば相手は夫とは言え王子。
トゥトゥーリアが買えるもので買えないものはない。
ふと、壁に目をやると出店で買った生誕祭用のリースが目に入った。
「そうだ!生誕祭っ!生誕祭よ!」
生誕祭はただ神を祝うだけの日ではない。
恋人たちが愛を誓いあう日でもあり、家族に感謝をする日でもある。
「生誕祭は明後日。よし!早速取り掛からないと時間がないわ」
トゥトゥーリアは寝室に駆け込むとチェストの引き出しをあけてこの2年間働いて貯めた給金の入った袋の中身を寝台の上にドバーッと巻いた。
「1まぁい~2まぁい・・・って10枚で1束は判ってるんだから」
1人でノリツッコミを繰り返し、小袋に分けると用途ごとに袋に文字を書く。
気がつけば時計の針が午前3時になっていて、トゥトゥーリアは慌てて寝台に潜り込んだ。
翌日は出勤の日ではないのでボナパルト号は宮にいる。
トゥトゥーリアは歩いてヴァレンティノの宮に出向いた。
「どうしたんだ?!何かあったのか?」
歩いてやって来たトゥトゥーリアに驚くヴァレンティノ。
しかしトゥトゥーリアには目的があった。
たすき掛けにしたポーチからカードを取り出すと「はい」ヴァレンティノに手渡す。
「カード?誕生日でもないんだが…」
「生誕祭だからです」
「生誕祭・・・あぁそう言えば明日だったな」
小さな手製の封筒からカードを抜き取ると書かれた文字に目を走らせるヴァレンティノ。
「明日、朝から家に行けばいいのか?」
「そうです。生誕祭ですから」
カードには【明日、シボリーナミルクを持って来てください】とだけ書かれていた。
トゥトゥーリアの頼みなら予定が入っていてもすべてキャンセルをして優先させるが、生誕祭の日は宮の使用人も全員に休みを与えている。
盗人にも三分の理と言うように、生誕祭の日に悪事を働くものはいるにはいるが少数。
それだけ生誕祭は特別な日でもあるので、予定もないヴァレンティノは昼頃にトゥトゥーリアの家に行き、夕食を一緒に食べて1人宮に戻るのが昨年の行動だった。
今年も同じかも知れないがと思いつつ、了承したヴァレンティノ。
昼食を一緒にと誘ったのだが、トゥトゥーリアは「この後、用がある」とまた歩いて帰るという。護衛をつけるというと「ダメですっ!」お断りをされたのだが、1人で歩いて来たというだけでこんなに動悸が激しいのにまた歩いて帰ると言われたら軽く死ねると言ったら渋々了承をしてくれたのだった。
翌日、のこのこシボリーナミルクを持ってやって来たヴァレンティノをなんとトゥトゥーリアが玄関先で待っていたのだった。
ただ街に行くだけではなくあの店に連れて行った理由は他にあったと考えるべき。
トゥトゥーリアは夜、家で1人シボリーナミルクを入れたマグカップの温かさを手のひらに考えた。
★~★
「こんなに沢山・・・いいんですか?お給金から引いてもいいですけど‥」
「そんな事はしないよ」
ヴァレンティノのような身分の人間が手に持つような紙袋ではない雑な袋に入った「もしかすれば高級品」の数々。ヴァレンティノはトゥトゥーリアと大通りまで来た道を袋を抱えて並んで歩く。
「ねぇ殿下」
「なんだい」
「ここに連れて来たのって・・・」
トゥトゥーリアは自身の出自も知っている。庶子が妃なんてと何度も考えたこともある。あの時は売り言葉に買い言葉だったけれど今のままで良いとも思ってはいない。
トゥトゥーリアは隣を歩くヴァレンティノを見上げた。
「マフラー忘れたと言ってただろう?それだけだよ。ちゃんとこの時間の時給も払うよ?」
「時給はいらないです。そこまで図太くないです」
★~★
「はぁ~」トゥトゥーリアは溜息を吐く。
考えれば考えるほどにヴァレンティノには何かをしてもらってばかり。
「お返しも出来てないのよね。なにかしてあげれればいいんだけど」
とは言っても、何かを買うとなれば相手は夫とは言え王子。
トゥトゥーリアが買えるもので買えないものはない。
ふと、壁に目をやると出店で買った生誕祭用のリースが目に入った。
「そうだ!生誕祭っ!生誕祭よ!」
生誕祭はただ神を祝うだけの日ではない。
恋人たちが愛を誓いあう日でもあり、家族に感謝をする日でもある。
「生誕祭は明後日。よし!早速取り掛からないと時間がないわ」
トゥトゥーリアは寝室に駆け込むとチェストの引き出しをあけてこの2年間働いて貯めた給金の入った袋の中身を寝台の上にドバーッと巻いた。
「1まぁい~2まぁい・・・って10枚で1束は判ってるんだから」
1人でノリツッコミを繰り返し、小袋に分けると用途ごとに袋に文字を書く。
気がつけば時計の針が午前3時になっていて、トゥトゥーリアは慌てて寝台に潜り込んだ。
翌日は出勤の日ではないのでボナパルト号は宮にいる。
トゥトゥーリアは歩いてヴァレンティノの宮に出向いた。
「どうしたんだ?!何かあったのか?」
歩いてやって来たトゥトゥーリアに驚くヴァレンティノ。
しかしトゥトゥーリアには目的があった。
たすき掛けにしたポーチからカードを取り出すと「はい」ヴァレンティノに手渡す。
「カード?誕生日でもないんだが…」
「生誕祭だからです」
「生誕祭・・・あぁそう言えば明日だったな」
小さな手製の封筒からカードを抜き取ると書かれた文字に目を走らせるヴァレンティノ。
「明日、朝から家に行けばいいのか?」
「そうです。生誕祭ですから」
カードには【明日、シボリーナミルクを持って来てください】とだけ書かれていた。
トゥトゥーリアの頼みなら予定が入っていてもすべてキャンセルをして優先させるが、生誕祭の日は宮の使用人も全員に休みを与えている。
盗人にも三分の理と言うように、生誕祭の日に悪事を働くものはいるにはいるが少数。
それだけ生誕祭は特別な日でもあるので、予定もないヴァレンティノは昼頃にトゥトゥーリアの家に行き、夕食を一緒に食べて1人宮に戻るのが昨年の行動だった。
今年も同じかも知れないがと思いつつ、了承したヴァレンティノ。
昼食を一緒にと誘ったのだが、トゥトゥーリアは「この後、用がある」とまた歩いて帰るという。護衛をつけるというと「ダメですっ!」お断りをされたのだが、1人で歩いて来たというだけでこんなに動悸が激しいのにまた歩いて帰ると言われたら軽く死ねると言ったら渋々了承をしてくれたのだった。
翌日、のこのこシボリーナミルクを持ってやって来たヴァレンティノをなんとトゥトゥーリアが玄関先で待っていたのだった。
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