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第03話 1カ月
ギシギシと寝台が軋む音が止み、少しの時間を置いてドウェインは汗ばんだ肌にシャツを羽織った。
後腐れのない関係を続けて半年たったがこの1か月は妙に甘えたり、泣いたりで精神的に不安定な様子を見せたシルフィーにドウェインは屋敷に戻らず、遠方で仕事だと嘘を吐いてシルフィーと過ごした。
出合った時はほんの僅かな時間「もしかしたらアイリーンとの結婚は間違いだったか」と感じた時間があったのは否めない。アイリーンの姿を初めて見た時の衝撃ほどではなかったけれど、シルフィーにも似たような感情が沸き立った。
その感情が何だったのかは直ぐに判った。
体の相性が抜群に良いのだ。
ただそれもアイリーンとシルフィーには違いがある事を回数を重ねるごとに自覚した。
アイリーンを腕の中に抱き、体を繋げた時はこの上ない多幸感に包まれる。
シルフィーを抱くと欲望が満たされるのだ。
この2つは共存しないので、分けて考える事にした。
何故かと言えばドウェインには加虐性の嗜好があった。アイリーンにとても出来ない事もシルフィーは喜んでくれる。頬や尻肉が腫れあがったり、首を絞めあげ鬱血し意識を飛ばす寸前までドウェインが快感を求めてもシルフィーは受け入れてくれるし、してくれと要求するのだ。
征服にも似た心地よさ。
ドウェインはシルフィーを手放せなかった。
「もっと一緒にいたいのに」
「1カ月も一緒にいたんだ。そろそろ屋敷に戻らないと家令が五月蝿い」
「家令だって使用人なんだから放っておけばいいのに。私が女主人になったら1番にクビにするわ」
シルフィーはシャツのボタンを留めるドウェインの胸に後ろに抱き着きながら手を這わせた。ドウェインはシルフィーの手に手を重ねて少しの間動きを止めたが、立ち上がることでその手を外した。
この頃、シルフィーはこの手の発言が多くなった。
言われる度に言葉をはぐらかし、流してきたが釘を刺しておこうとドウェインはいつもよりも低い声でシルフィーにこの関係について諭した。
「シリ―。この関係は体だけだと告げてあるだろう?私は離縁する気はない。したとしても平民のシリ―とは結婚できない。それはシリーが良く判っているだろう?」
振り向かずに背を向けたままのドウェインにシルフィーはムッとしたが…。
「結婚まで望んでいるのならこの関係は終わりだ。今まで買い与えた物は手切れ金でくれてやる」
ドウェインは本気だった。
シルフィーを失っても代わりはいるが見つかり難いだけ。
アイリーンの代わりは存在しないのだ。失えば最後、生きて行ける気がしない。
予想はしていたけれど、ハッキリと言葉にされた事にシルフィーは慌ててドウェインの尻に手を回し、頬をあて「冗談よ」と返した。
――愛してるって言った癖に。身分を言い出すなんてズルい。だけど――
シルフィーは知っていた。
平民なのでちゃんとした教えを誰かに教わった訳ではないけれど、貴族であっても離縁をしていれば再婚で平民と結婚をしても身分を失うことはない。
初婚なら例え当主であっても身分を失ってしまうけれど、再婚は別。
だからこそ、愛するドウェインの現在の妻アイリーンの父親は伯爵のままなのだ。
アイリーンの実の母親は子爵家の娘だが、あれだけ好色であれば平民だってベルル家の事は知っている。4番目以降妻はぽつぽつ男爵家出身がいるがほとんど平民なのだ。
平民の妻がいるのにベルル伯爵は爵位も失ってないし今も貴族だ。
但し、学がないシルフィーは知らない事も当然ある。
再婚であれば相手が平民でも貴族という身分を失うことはないのは本当だが、条件がある事までは知らなかった。
条件は貴族である妻との間に家督を継ぐ子供がいる事が条件になっている。
アイリーンの父、ベルル伯爵が身分を失っていないのは2番目の妻が伯爵家の娘、その夫人との間に男児が生まれているからに他ならない。法律は弱い者の味方ではなく知っている者の味方であることをシルフィーは知らない。
シルフィーにとってドウェインは最高の男。
こんなに男に溺れたことはなかった。
最初は金もあって見目麗しい見た目。身分もあるしそれなりに権力もある。
欲しいと強請れば何でも買ってくれるし、過去の男と違って全てにおいてレディファースト。
愛人で良いとシルフィーも割り切っていたけれど、体を重ね溶け合うごとにシルフィーの心はドウェインを求め、無くてはならない存在になった。
ドウェインといる間シルフィーはお姫様になれる。
着る服だって以前に何人着たか解らない古着じゃない。
全てシルフィーの体にぴったりなシルフィー用に仕立てられた新品ばかり。
行きたいと言えば連れて行ってくれるし、朝を一緒に迎えたいと言えば居てくれる。
――愛されているからこそ、だわ――
ドウェインと出会って半年。
シルフィーは愛される喜びを知った。その喜びを愛で返してきた。
段々と欲が出てしまうのは当然だった。
1カ月留め置けるかなと思ったら本当にいてくれた。
そこに妻のアイリーンの存在など全くなかった。
だから望む言葉が返って来るかと思ったのに体だけの愛人関係から脱却は出来なかった。
――手に入らないのは妻って肩書だけなのよね――
着替えが終わるドウェインを見てシルフィーは絶対に手放すものかと寝台を抜け出すとドウェインに抱き着いた。
「ねぇ。もう一回愛してるって言いながらキスして。うーんと長くて深いの」
「そんな事をしたら折角着たのにまた脱がなきゃいけなくなる」
「それでもいいわ。何度でも受け入れられるもの」
「困った子だ」
ドウェインの唇がシルフィーの唇に重なると角度を変えて何度も息をお互いが吸い上げ、結局ドウェインはもう一度服を脱ぐ羽目になり、朝をシルフィーと迎えたのだった。
後腐れのない関係を続けて半年たったがこの1か月は妙に甘えたり、泣いたりで精神的に不安定な様子を見せたシルフィーにドウェインは屋敷に戻らず、遠方で仕事だと嘘を吐いてシルフィーと過ごした。
出合った時はほんの僅かな時間「もしかしたらアイリーンとの結婚は間違いだったか」と感じた時間があったのは否めない。アイリーンの姿を初めて見た時の衝撃ほどではなかったけれど、シルフィーにも似たような感情が沸き立った。
その感情が何だったのかは直ぐに判った。
体の相性が抜群に良いのだ。
ただそれもアイリーンとシルフィーには違いがある事を回数を重ねるごとに自覚した。
アイリーンを腕の中に抱き、体を繋げた時はこの上ない多幸感に包まれる。
シルフィーを抱くと欲望が満たされるのだ。
この2つは共存しないので、分けて考える事にした。
何故かと言えばドウェインには加虐性の嗜好があった。アイリーンにとても出来ない事もシルフィーは喜んでくれる。頬や尻肉が腫れあがったり、首を絞めあげ鬱血し意識を飛ばす寸前までドウェインが快感を求めてもシルフィーは受け入れてくれるし、してくれと要求するのだ。
征服にも似た心地よさ。
ドウェインはシルフィーを手放せなかった。
「もっと一緒にいたいのに」
「1カ月も一緒にいたんだ。そろそろ屋敷に戻らないと家令が五月蝿い」
「家令だって使用人なんだから放っておけばいいのに。私が女主人になったら1番にクビにするわ」
シルフィーはシャツのボタンを留めるドウェインの胸に後ろに抱き着きながら手を這わせた。ドウェインはシルフィーの手に手を重ねて少しの間動きを止めたが、立ち上がることでその手を外した。
この頃、シルフィーはこの手の発言が多くなった。
言われる度に言葉をはぐらかし、流してきたが釘を刺しておこうとドウェインはいつもよりも低い声でシルフィーにこの関係について諭した。
「シリ―。この関係は体だけだと告げてあるだろう?私は離縁する気はない。したとしても平民のシリ―とは結婚できない。それはシリーが良く判っているだろう?」
振り向かずに背を向けたままのドウェインにシルフィーはムッとしたが…。
「結婚まで望んでいるのならこの関係は終わりだ。今まで買い与えた物は手切れ金でくれてやる」
ドウェインは本気だった。
シルフィーを失っても代わりはいるが見つかり難いだけ。
アイリーンの代わりは存在しないのだ。失えば最後、生きて行ける気がしない。
予想はしていたけれど、ハッキリと言葉にされた事にシルフィーは慌ててドウェインの尻に手を回し、頬をあて「冗談よ」と返した。
――愛してるって言った癖に。身分を言い出すなんてズルい。だけど――
シルフィーは知っていた。
平民なのでちゃんとした教えを誰かに教わった訳ではないけれど、貴族であっても離縁をしていれば再婚で平民と結婚をしても身分を失うことはない。
初婚なら例え当主であっても身分を失ってしまうけれど、再婚は別。
だからこそ、愛するドウェインの現在の妻アイリーンの父親は伯爵のままなのだ。
アイリーンの実の母親は子爵家の娘だが、あれだけ好色であれば平民だってベルル家の事は知っている。4番目以降妻はぽつぽつ男爵家出身がいるがほとんど平民なのだ。
平民の妻がいるのにベルル伯爵は爵位も失ってないし今も貴族だ。
但し、学がないシルフィーは知らない事も当然ある。
再婚であれば相手が平民でも貴族という身分を失うことはないのは本当だが、条件がある事までは知らなかった。
条件は貴族である妻との間に家督を継ぐ子供がいる事が条件になっている。
アイリーンの父、ベルル伯爵が身分を失っていないのは2番目の妻が伯爵家の娘、その夫人との間に男児が生まれているからに他ならない。法律は弱い者の味方ではなく知っている者の味方であることをシルフィーは知らない。
シルフィーにとってドウェインは最高の男。
こんなに男に溺れたことはなかった。
最初は金もあって見目麗しい見た目。身分もあるしそれなりに権力もある。
欲しいと強請れば何でも買ってくれるし、過去の男と違って全てにおいてレディファースト。
愛人で良いとシルフィーも割り切っていたけれど、体を重ね溶け合うごとにシルフィーの心はドウェインを求め、無くてはならない存在になった。
ドウェインといる間シルフィーはお姫様になれる。
着る服だって以前に何人着たか解らない古着じゃない。
全てシルフィーの体にぴったりなシルフィー用に仕立てられた新品ばかり。
行きたいと言えば連れて行ってくれるし、朝を一緒に迎えたいと言えば居てくれる。
――愛されているからこそ、だわ――
ドウェインと出会って半年。
シルフィーは愛される喜びを知った。その喜びを愛で返してきた。
段々と欲が出てしまうのは当然だった。
1カ月留め置けるかなと思ったら本当にいてくれた。
そこに妻のアイリーンの存在など全くなかった。
だから望む言葉が返って来るかと思ったのに体だけの愛人関係から脱却は出来なかった。
――手に入らないのは妻って肩書だけなのよね――
着替えが終わるドウェインを見てシルフィーは絶対に手放すものかと寝台を抜け出すとドウェインに抱き着いた。
「ねぇ。もう一回愛してるって言いながらキスして。うーんと長くて深いの」
「そんな事をしたら折角着たのにまた脱がなきゃいけなくなる」
「それでもいいわ。何度でも受け入れられるもの」
「困った子だ」
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