あなたの愛は気泡より軽い

cyaru

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第09話  いつの間に?

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その日の午後になってドウェインの元にはアイリーンを知る唯一の人間がやってきた。

「どうなってるの?ねぇ。ちょっと突然過ぎてびっくりなんだけど」

やってきたのはネクス子爵夫妻とシルフィーだった。

「この度は娘を迎えてくださると。有難いお話で御座います」
「は?迎えるって…どういう?」
「またまた惚けなくても。あとは侯爵様の御署名を頂ければ直ぐにでも提出を致します」

差し出された書類は貴族が婚姻をする時の書類だった。
書かれている文字を何度読んでもシルフィーはネクス子爵家の養女になっていて、その日付は2年前だ。キツネにつままれた顔になったドウェインは何度も「どういう事だ」と問うがネクス子爵夫妻はコテンと首を傾げるだけ。

夫妻の言葉をそのままなら「2年前に婚約の話を頂き、その時に平民だったのでに養女にした」とまるでドウェイン、いやブランジネ侯爵家から頼まれたかのように言う。

「え?って事は私、本当に子爵令嬢なの?」
「全く。ずっとそう言ってる。1カ月も帰ってこないから心配したんだぞ?」
「心配したって言われても…どういう事?」

シルフィーもサッパリ理解できていなかった。

今朝、高級宿でドウェインと朝食を食べて昼に競馬でも行こうと街を歩いていると突然「ここにいた!」と警備隊に囲まれたのだ。

警備隊には1カ月前にネクス子爵家からシルフィーの失踪届が出されていて、ずっと捜索していたと言われたが、数日前にも街を警邏する警備隊とは何度もすれ違ったのに何も言われなかったし、引き留められることも無かった。

何故ネクス子爵家から自分の失踪届が出されているかも理解不能だったが「養女になってるだろう。2年前に」と言われてさらにびっくりだ。

そんな前から養女になっていたのならドウェインと出会った時はとっくに子爵令嬢だった事になる。
もっと強気でガンガン押して、なんなら「私の男よ!」とアイリーンに直談判してやれば良かったとすら思えた。

「奥さん、どうしたのよ?」

シルフィーの言葉にドウェインはやっとアイリーンの事を知っている人間に出会えた気になり、シルフィーの肩を掴んで前後に揺らした。

「だよな?俺の妻はアイリーンだよな?」
「そ、そうなんでしょ?でも、これ…婚姻届けでしょ?早く書いてよ」
「そんなものどうでもいい。アイリーンはいるんだ。俺の妻なんだ!ホスタルッ!!」

ドウェインはホスタルを怒鳴ったがホスタルはどこ吹く風。

「旦那様、恋愛には邪魔者がいるとより燃え上がると言いますが、お2人揃って架空の人物を作り出されなくても」

まるでドウェインとシルフィーがイタイ人のように架空の人物を作り上げて恋愛を楽しんでいるように言う。

「何を言ってるんだ!アイリーンの事を知ってるとこいつが言ってるじゃないか!」
「こいつって!酷いっ!そんな言い方しないでよ」

喚くシルフィーを押し退けネクス子爵は書類に署名をしろと迫って来る。

「困りますよ。頂いた持参金も返せませんし約束通り娘と結婚してください。侯爵家に嫁ぐんだって触れ回っているんですよ?今更なかった話なんて言われても困ります」


家令のホスタルはネクス子爵も背に腹は代えられない立場だが、なかなかの役者だなと少し感心した。
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