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第23話 ガッツリ凹む
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鏡の前で使用人から借りた服を着せ替え人形のように着替えるオフィーリアを寝台まだ唸っているフェリクスはぼやぁっと見ていた。
月のものの2日目、3日目はまさに地獄だった。
吐き気もするし、動いても動かなくても腹が痛くて堪らない。
薬湯をがぶ飲みすれば不浄に行きたくなるが、不浄に行くために体を起こすのも辛い。
「女性って本当に尊敬するよ。こんな痛みを毎月…」
「そう思ったら女性の使用人さんには月のもの休暇を給料減額をせずにしてあげてよ」
「勿論だ。どうせなら月の内で無条件に勤務日だが休みにしてもいい1週間を設ける事にする」
「それは良い案ね」
「昔、閨教育を習った時に女性には月のものがあると習ったが痛みまでは教えてくれなかったからな」
「教えても経験しなきゃ判らないわよ」
「確かに。これは教本に書かれていても判らないな」
月のものの痛みをフェリクスが知ることはこの先宮であったり、王籍を抜けた後に住まう家で勤める女性たちには少しは良い方向に考えてくれるようになったのなら良い事だとオフィーリアはまた着替えた。
「うーん…どうも王子様オーラが抜けないのよね」
鏡を見てオフィーリアは無駄に美丈夫なフェリクスを呪った。
――よく見れば睫毛も長いし…化粧をしたら可愛い系?ううん。これ、元が良いから女性でも行けそう?――
そう思うと一番大きなサイズのワンピースを着用し、無理やり背中のファスナーを寝台のフェリクスに手伝って貰って閉じ切ると、バシャバシャと化粧水を顔に沁み込ませ、パフパフとファンデーションを塗る。
口紅を薄く引き、マスカラで睫毛も整えると…。
――ガッツリ凹むわ。私が女に生まれた意味を神に問いたいわ――
女であることをやめたくなるくらいに美人が鏡に映っていた。
「化粧をしたのか。役者でも男は化粧をするしな。これも新たな発見だな」
――発見するのは新大陸だけにしといて――
ガッツリと凹んでしまいそうになるが、フェリクスに薬湯を持ってきたメイドがガシャーン!!薬湯の入ったカップをトレーごと落としてしまった。
「あ、あの…妃殿下の…ご友――」
「友人?違――」
メイドが言葉を終わらないうちにフェリクスが言葉を被せ、更にオフィーリアが言葉を被せた。
「はいはい!フレンドでぇーす。エリーっていいますっ」
オフィーリアは心でグッとガッツポーズ。
フェリクスを見慣れているメイドが判らなかったのだ。
――これはワンピースが功を奏した?!――
ちょっと肩口とかがキツくてパツパツになっているし、膝丈の裾も膝上10cmになってしまったが仕方がない。フェリクスの体にピッタリなワンピースなどないのだ。
しかし、灯台下暗し。オフィーリアは何故メイドが驚いていたのか。
本質を知らない。
オフィーリアは数少ない安物だが自分の宝飾品をポケットに詰め込んだ。
スキップをしながら、厩舎に行き馬に跨ると領地の頃を思い出す。
「夏が来ぅれば~走り出すぅ~ハイゃッ!」
馬に鞭を入れて走り出した。
向かうはカフェ。レナードとの待ち合わせである。
軽快に馬車を走らせるとあのカフェにレナードが既に到着し待っている姿が見えた。
「レナードさぁん!!」
男の声だが、レナードを呼ぶとレナードは椅子に腰かけたまま振り返り…。
テーブルに額をぶつける勢いでまた大笑いをし始めた。
「わ、笑うな!これでも変装するのに大変だったんだからな!」
フンフン!鼻息荒く抗議をすると…。
「変装は良いけど…頭がそのままじゃないか」
「え?頭‥‥アタマーッ!」
フェリクスは騎士団の副団長でもあるので、坊主ではないけれど短髪だ。
ワンピースを着て化粧はしたけれど、髪型をウィッグで誤魔化すのを忘れていた。
――だからメイドさん…もしかして友人の真似って言うつもりだった?――
そりゃそうだよね。殿下が変装したんだから「バレバレです」とか言うわけがない。
こんな時に限ってダメ出しを誰もしてくれない。
――あぅあぅ…恥ずかしいだけじゃないの!――
しかしレナードは化粧をした顔をまじまじと見て「結構イケるんじゃないか?」と褒めて欲しくない所を褒めて来た。
――刺す――
軽い殺意が沸き上がったが、レナードの向かいに腰かけるとポケットから宝飾品をじゃらじゃらと出した。
「レナードさん。情報代です」
「代金?へぇ…」
イヤリングを1つ抓んで直ぐに次のイヤリングを手に取る。
――お駄賃貯めて買ったんだけどなぁ。本物じゃないかも?――
オフィーリアは領地で薬草や川魚の燻製などを作っては貯めて宝飾品店でセール品となっている宝飾品を買った。公爵家は買ってくれなかったし、母親の形見はなに1つ残っていない。
最後に残っていたのは手の平サイズの母親の肖像画だったが、カイゼルが「火種で燃やすものがない」と暖炉の中に放り込んでしまった。
なので安物であっても自分で買うしかなかったのだ。
「代金には無理…そう?」
「いいや。十分だ。貰い過ぎだな」
「そ、そう?!(やった。もしかして私って目利き出来る?)」
安物だから代金には出来ないと断られるかと思ったが、オフィーリアは知らない間に真贋をみぬく力でも付いたのかな?とちょっとだけ鼻高々。
しかし直ぐに鼻はへし折られた。
「買取では値も付かない安物だが、これだけの量となると頑張って稼いだんだろ?」
「解るの?」
「解るさ。石が同じ色だし統一性がない訳じゃない。デザイン違いはドレスは1着しかないから付けていく物を変えるため。だろ?」
――うっ。当たってるわ。そうよ、その通りよ――
がっくりと肩を落としそうになったがレナードは手でクイクイと近くに寄れと示した。
オフィーリアがフェリクスの体で近寄ると…。
「とっておきの情報だ」
「何?何?」
「迷信ではあるがな?」
「うんうん」
「入れ替わった時と同じことをしてみろ」
――は?――
オフィーリアはにっこりと笑うと、レナードに思いっきり頭突きをした。
月のものの2日目、3日目はまさに地獄だった。
吐き気もするし、動いても動かなくても腹が痛くて堪らない。
薬湯をがぶ飲みすれば不浄に行きたくなるが、不浄に行くために体を起こすのも辛い。
「女性って本当に尊敬するよ。こんな痛みを毎月…」
「そう思ったら女性の使用人さんには月のもの休暇を給料減額をせずにしてあげてよ」
「勿論だ。どうせなら月の内で無条件に勤務日だが休みにしてもいい1週間を設ける事にする」
「それは良い案ね」
「昔、閨教育を習った時に女性には月のものがあると習ったが痛みまでは教えてくれなかったからな」
「教えても経験しなきゃ判らないわよ」
「確かに。これは教本に書かれていても判らないな」
月のものの痛みをフェリクスが知ることはこの先宮であったり、王籍を抜けた後に住まう家で勤める女性たちには少しは良い方向に考えてくれるようになったのなら良い事だとオフィーリアはまた着替えた。
「うーん…どうも王子様オーラが抜けないのよね」
鏡を見てオフィーリアは無駄に美丈夫なフェリクスを呪った。
――よく見れば睫毛も長いし…化粧をしたら可愛い系?ううん。これ、元が良いから女性でも行けそう?――
そう思うと一番大きなサイズのワンピースを着用し、無理やり背中のファスナーを寝台のフェリクスに手伝って貰って閉じ切ると、バシャバシャと化粧水を顔に沁み込ませ、パフパフとファンデーションを塗る。
口紅を薄く引き、マスカラで睫毛も整えると…。
――ガッツリ凹むわ。私が女に生まれた意味を神に問いたいわ――
女であることをやめたくなるくらいに美人が鏡に映っていた。
「化粧をしたのか。役者でも男は化粧をするしな。これも新たな発見だな」
――発見するのは新大陸だけにしといて――
ガッツリと凹んでしまいそうになるが、フェリクスに薬湯を持ってきたメイドがガシャーン!!薬湯の入ったカップをトレーごと落としてしまった。
「あ、あの…妃殿下の…ご友――」
「友人?違――」
メイドが言葉を終わらないうちにフェリクスが言葉を被せ、更にオフィーリアが言葉を被せた。
「はいはい!フレンドでぇーす。エリーっていいますっ」
オフィーリアは心でグッとガッツポーズ。
フェリクスを見慣れているメイドが判らなかったのだ。
――これはワンピースが功を奏した?!――
ちょっと肩口とかがキツくてパツパツになっているし、膝丈の裾も膝上10cmになってしまったが仕方がない。フェリクスの体にピッタリなワンピースなどないのだ。
しかし、灯台下暗し。オフィーリアは何故メイドが驚いていたのか。
本質を知らない。
オフィーリアは数少ない安物だが自分の宝飾品をポケットに詰め込んだ。
スキップをしながら、厩舎に行き馬に跨ると領地の頃を思い出す。
「夏が来ぅれば~走り出すぅ~ハイゃッ!」
馬に鞭を入れて走り出した。
向かうはカフェ。レナードとの待ち合わせである。
軽快に馬車を走らせるとあのカフェにレナードが既に到着し待っている姿が見えた。
「レナードさぁん!!」
男の声だが、レナードを呼ぶとレナードは椅子に腰かけたまま振り返り…。
テーブルに額をぶつける勢いでまた大笑いをし始めた。
「わ、笑うな!これでも変装するのに大変だったんだからな!」
フンフン!鼻息荒く抗議をすると…。
「変装は良いけど…頭がそのままじゃないか」
「え?頭‥‥アタマーッ!」
フェリクスは騎士団の副団長でもあるので、坊主ではないけれど短髪だ。
ワンピースを着て化粧はしたけれど、髪型をウィッグで誤魔化すのを忘れていた。
――だからメイドさん…もしかして友人の真似って言うつもりだった?――
そりゃそうだよね。殿下が変装したんだから「バレバレです」とか言うわけがない。
こんな時に限ってダメ出しを誰もしてくれない。
――あぅあぅ…恥ずかしいだけじゃないの!――
しかしレナードは化粧をした顔をまじまじと見て「結構イケるんじゃないか?」と褒めて欲しくない所を褒めて来た。
――刺す――
軽い殺意が沸き上がったが、レナードの向かいに腰かけるとポケットから宝飾品をじゃらじゃらと出した。
「レナードさん。情報代です」
「代金?へぇ…」
イヤリングを1つ抓んで直ぐに次のイヤリングを手に取る。
――お駄賃貯めて買ったんだけどなぁ。本物じゃないかも?――
オフィーリアは領地で薬草や川魚の燻製などを作っては貯めて宝飾品店でセール品となっている宝飾品を買った。公爵家は買ってくれなかったし、母親の形見はなに1つ残っていない。
最後に残っていたのは手の平サイズの母親の肖像画だったが、カイゼルが「火種で燃やすものがない」と暖炉の中に放り込んでしまった。
なので安物であっても自分で買うしかなかったのだ。
「代金には無理…そう?」
「いいや。十分だ。貰い過ぎだな」
「そ、そう?!(やった。もしかして私って目利き出来る?)」
安物だから代金には出来ないと断られるかと思ったが、オフィーリアは知らない間に真贋をみぬく力でも付いたのかな?とちょっとだけ鼻高々。
しかし直ぐに鼻はへし折られた。
「買取では値も付かない安物だが、これだけの量となると頑張って稼いだんだろ?」
「解るの?」
「解るさ。石が同じ色だし統一性がない訳じゃない。デザイン違いはドレスは1着しかないから付けていく物を変えるため。だろ?」
――うっ。当たってるわ。そうよ、その通りよ――
がっくりと肩を落としそうになったがレナードは手でクイクイと近くに寄れと示した。
オフィーリアがフェリクスの体で近寄ると…。
「とっておきの情報だ」
「何?何?」
「迷信ではあるがな?」
「うんうん」
「入れ替わった時と同じことをしてみろ」
――は?――
オフィーリアはにっこりと笑うと、レナードに思いっきり頭突きをした。
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