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第24話 餌付けされる妃殿下
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女装の上に虎の子のお宝まで情報料として差し出したのに得られたのは「同じことをしてみろ」
オフィーリアは無駄に顔が良い男は信用できないと心から感じた。
「そう凹むな。やってみなきゃ判らないだろう?」
「そうなんだが」
「話し方も無理するな。アンタの今の顔が第1王子だろ?って事は~差し詰め…中身はお妃様か?」
――ドキッ!!――
「あ~…いえいえいえいえいえ、違うって言うか…まぁその~」
「誤魔化さなくていい。どうせ第1王子殿下は広く面割れしてるんだ。その顔でウロウロ出来るって事はかなり近しい人間、で、話し方だ。お貴族様って感じじゃないからな。確か…妃殿下は長く領地暮らしで王都には住んでいなかったはずだ」
「知ってるの?」
「言っただろ?例えばとか、友人が、そんな言葉で切り出してくる質問はご本人様の事だって」
「なんだ。バレてたんだ。気取って損しちゃった」
「全然気取ってなかったがな」
「う…」
――きぃぃ!!ホントに嫌な奴!――
「怒らずに、まぁ食え。今日はチーズケーキの日だ」
「チーズケーキ?!」
「あぁ。この店のスフレは絶品だ」
「スフレ?!大好きよ!」
「俺は?」
「・・・・」
「黙るな」
「あのぅ…一応見た目は男なので…もしかしてソッチ系?」
領地で読んだ薄い本にもあった。レナードのようなちょっとワル目の攻め。
フェリクスは整い過ぎた顔で美少年系なので受けだ。これはもう定番の組み合わせ。
しかし!残念だがオフィーリアは結婚は男性とと考えてはいるが、男色家の男性には敵わない事を知っているので手は出さないと心に決めている。
単に寝取られたりした時に女性ならまだいいが、男性だとその時点で勝ち目は最初からなかった事になるので、分のない戦いをしない事にしているだけだが。
レナードが絶品と言うだけあって出されたチーズケーキは本当に美味しかった。
「持ち帰ってもいいかな?」
「旦那にでも食わせてやるのか?そうだったらお断りだ」
「へ?なんで?自分が食べるからに決まってるじゃない。殿下はね、私の食費なんか出してくれなかったのよ?どうしてこんな美味しいものを差し出さなきゃいけないの?バカバカしい」
食べ物の恨みは根深いのだ。使用人の賄いが残る事はほぼない。
基本的にフェリクスの食べるものを作り、時間を置いて複数人の毒味役が食べる。大鍋で作る訳でもなく、パーティーのオードブルを連想させる量でもない。使用人の賄いとなると量はそんなに残っていないのだ。肉や魚など値の張るものが残った時は力のある使用人が持ち帰る。
そもそもで残るほどの賄いの量があるならフェリクス付きの文官ですら手弁当など持ってこない。
実際樽の上に食事が置かれていたのは半年の間で両手の数で余るくらい。
しかも床に落としたりして土や埃塗れ、時にうっかり忘れて虫だらけになった廃棄食材だったのだ。
火を通せば大丈夫なんて域はとっくに超えていた。
オフィーリアは時に腹痛覚悟で腹を満たすだけを目的に庭に生えている草や、木の実を食べて飢えを凌いだ。そんな飢えを味合わせた相手にこんな美味しいチーズケーキを?ブルル!!とんでもない話だ。
「妃殿下が1人で食べるならホールで持たせてやるよ」
「ホールで?!‥‥あ、でも私、お金ないの。さっきの宝飾品でスッカラカンよ」
「奢りだ。俺は惚れた女には何でもしてやりたいタチなんだ」
「はぁ?本物の私を見た事もないのに?惚れた?嘘臭いわね」
「嘘じゃないさ。見た目なんて骸骨になったら関係ない。俺が惚れるのは中身さ」
肘をついて両手の指を組み合わせ、その上に顎をちょこんと乗せて微笑まれるとうっかり落ちそうになったオフィーリアだが「まてまて」踏み止まった。
――こういうタラシ系は気をつけないと娼館に売り飛ばされるわ――
それも領地で学んだ事だ。直ぐに好きだのなんだのと甘い言葉を吐くやつは必ず裏がある。売り飛ばされて娼婦になりたくなかったら信用しない事。通いで食事を作りに来てくれている元娼婦に教えてもらった。
2回も騙された実体験だっただけに深みと説得力抜群だった。
どうせ口だけ。そう思ったオフィーリアは適当にやり過ごそうと「へへへ」と笑う。
「じゃぁお願いがあるわ」
「なんだ?」
「もし、元の体に戻ったらまともな仕事を紹介して欲しいわ」
「まともな仕事?」
「そうよ。経理も出来るし馬や牛、鶏の世話も出来るし…魚を潜って突くのも得意よ。薬草で薬も作れるし…全部じゃないけど食べられる野草やキノコも知ってる方だと思うの」
「いいぜ。とっておきの仕事が1つある。給金はそうだな…言い値だな」
「そんな美味しい仕事があるの?どんな仕事?」
「俺の嫁さん」
「・・・・」
聞いて損した。心からオフィーリアは思った。
またうっかり話に乗りそうになったではないか。
残り1口のチーズケーキを口の中に放り込んでつかの間の幸せに浸る。
「俺は仕事があるからお先だ。帰りにケーキ、忘れるなよ?」
「え?だからお金がないってば」
「奢りと言ったろ?好きな女にはたっぷり餌付けるのが俺の流儀だ」
何処までが本当で何処からが冗談なのか解らないが、オフィーリアは思った。
ケーキは嬉しいけど、これ以上関わっちゃいけない人種だ。と。
オフィーリアは無駄に顔が良い男は信用できないと心から感じた。
「そう凹むな。やってみなきゃ判らないだろう?」
「そうなんだが」
「話し方も無理するな。アンタの今の顔が第1王子だろ?って事は~差し詰め…中身はお妃様か?」
――ドキッ!!――
「あ~…いえいえいえいえいえ、違うって言うか…まぁその~」
「誤魔化さなくていい。どうせ第1王子殿下は広く面割れしてるんだ。その顔でウロウロ出来るって事はかなり近しい人間、で、話し方だ。お貴族様って感じじゃないからな。確か…妃殿下は長く領地暮らしで王都には住んでいなかったはずだ」
「知ってるの?」
「言っただろ?例えばとか、友人が、そんな言葉で切り出してくる質問はご本人様の事だって」
「なんだ。バレてたんだ。気取って損しちゃった」
「全然気取ってなかったがな」
「う…」
――きぃぃ!!ホントに嫌な奴!――
「怒らずに、まぁ食え。今日はチーズケーキの日だ」
「チーズケーキ?!」
「あぁ。この店のスフレは絶品だ」
「スフレ?!大好きよ!」
「俺は?」
「・・・・」
「黙るな」
「あのぅ…一応見た目は男なので…もしかしてソッチ系?」
領地で読んだ薄い本にもあった。レナードのようなちょっとワル目の攻め。
フェリクスは整い過ぎた顔で美少年系なので受けだ。これはもう定番の組み合わせ。
しかし!残念だがオフィーリアは結婚は男性とと考えてはいるが、男色家の男性には敵わない事を知っているので手は出さないと心に決めている。
単に寝取られたりした時に女性ならまだいいが、男性だとその時点で勝ち目は最初からなかった事になるので、分のない戦いをしない事にしているだけだが。
レナードが絶品と言うだけあって出されたチーズケーキは本当に美味しかった。
「持ち帰ってもいいかな?」
「旦那にでも食わせてやるのか?そうだったらお断りだ」
「へ?なんで?自分が食べるからに決まってるじゃない。殿下はね、私の食費なんか出してくれなかったのよ?どうしてこんな美味しいものを差し出さなきゃいけないの?バカバカしい」
食べ物の恨みは根深いのだ。使用人の賄いが残る事はほぼない。
基本的にフェリクスの食べるものを作り、時間を置いて複数人の毒味役が食べる。大鍋で作る訳でもなく、パーティーのオードブルを連想させる量でもない。使用人の賄いとなると量はそんなに残っていないのだ。肉や魚など値の張るものが残った時は力のある使用人が持ち帰る。
そもそもで残るほどの賄いの量があるならフェリクス付きの文官ですら手弁当など持ってこない。
実際樽の上に食事が置かれていたのは半年の間で両手の数で余るくらい。
しかも床に落としたりして土や埃塗れ、時にうっかり忘れて虫だらけになった廃棄食材だったのだ。
火を通せば大丈夫なんて域はとっくに超えていた。
オフィーリアは時に腹痛覚悟で腹を満たすだけを目的に庭に生えている草や、木の実を食べて飢えを凌いだ。そんな飢えを味合わせた相手にこんな美味しいチーズケーキを?ブルル!!とんでもない話だ。
「妃殿下が1人で食べるならホールで持たせてやるよ」
「ホールで?!‥‥あ、でも私、お金ないの。さっきの宝飾品でスッカラカンよ」
「奢りだ。俺は惚れた女には何でもしてやりたいタチなんだ」
「はぁ?本物の私を見た事もないのに?惚れた?嘘臭いわね」
「嘘じゃないさ。見た目なんて骸骨になったら関係ない。俺が惚れるのは中身さ」
肘をついて両手の指を組み合わせ、その上に顎をちょこんと乗せて微笑まれるとうっかり落ちそうになったオフィーリアだが「まてまて」踏み止まった。
――こういうタラシ系は気をつけないと娼館に売り飛ばされるわ――
それも領地で学んだ事だ。直ぐに好きだのなんだのと甘い言葉を吐くやつは必ず裏がある。売り飛ばされて娼婦になりたくなかったら信用しない事。通いで食事を作りに来てくれている元娼婦に教えてもらった。
2回も騙された実体験だっただけに深みと説得力抜群だった。
どうせ口だけ。そう思ったオフィーリアは適当にやり過ごそうと「へへへ」と笑う。
「じゃぁお願いがあるわ」
「なんだ?」
「もし、元の体に戻ったらまともな仕事を紹介して欲しいわ」
「まともな仕事?」
「そうよ。経理も出来るし馬や牛、鶏の世話も出来るし…魚を潜って突くのも得意よ。薬草で薬も作れるし…全部じゃないけど食べられる野草やキノコも知ってる方だと思うの」
「いいぜ。とっておきの仕事が1つある。給金はそうだな…言い値だな」
「そんな美味しい仕事があるの?どんな仕事?」
「俺の嫁さん」
「・・・・」
聞いて損した。心からオフィーリアは思った。
またうっかり話に乗りそうになったではないか。
残り1口のチーズケーキを口の中に放り込んでつかの間の幸せに浸る。
「俺は仕事があるからお先だ。帰りにケーキ、忘れるなよ?」
「え?だからお金がないってば」
「奢りと言ったろ?好きな女にはたっぷり餌付けるのが俺の流儀だ」
何処までが本当で何処からが冗談なのか解らないが、オフィーリアは思った。
ケーキは嬉しいけど、これ以上関わっちゃいけない人種だ。と。
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