3 / 36
第03話 別れたはずなのに
しおりを挟む
シルフィが部屋から出ていくと様子を伺っていたのか、静かに廊下側の扉が開いた。
ロイスは扉を開けて先にいる人物を見て驚いた。
「グレイスっ?!どうしてここに?」
「ごめんなさい。心配だったの」
「心配って‥何が心配だったんだ?」
「意に添わない結婚でしょう?ロイスに危害を加えられるんじゃないかって。だってあの人、魔法も使うんでしょう?気持ち悪いわ」
「だからってグレイス。今日は不味いよ。何もなくても世間では今夜の事を初夜って言うんだ。ここにいる事だけでグレイス、君が糾弾されてしまう。それに彼女は魔法は使えないよ。安心してくれ」
「私は良いの。ロイスが無事だったらそれでいいの。心配で居てもたってもいられなかったのよ」
「でもどうやって屋敷の中に?」
「給仕に雇われたって言ったら入れてくれたわ」
ロイスは頭を抱えた。
これでは防犯も何もあったものじゃない。
出入りをする人間を口頭の確認だけでホイホイと招き入れていたら何があっても不思議ではない。グレイスだから良かったとかそんな問題ではないのだ。
グレイスはロイスの恋人だった。
酒場の給仕をしているグレイスをロイスが見初めたのが4年前。
ただの客と給仕の2人の思いが恋に発展するまで時間はかからなかった。
しかし、付き合ってみれば現実を思い知る。
ロイスは貴族を夢見るグレイスに愛しているからこそ事実を言えなかった。
ロイスと結婚をすれば使用人に世話をされて衣食住に困らない生活が送れ、茶会だ、夜会だと煌びやかなドレスと宝飾品に身を包み、ロイスとダンスを踊る。
いずれはロイスによく似た可愛い子供たちに囲まれて笑顔の絶えない家庭。
そんな夢を語られた時、ロイスの心はシンと冷えた。
――逆立ちしたまま食事をするより難しいよ――
借金と爵位を親同士が望み、調った結婚。
この話を父親からされた時、ロイスは安心した。
少なくともグレイスを不遇な環境に引き入れて、夢を壊すことは無くなったのだと。
体の関係があった訳でもない清い付き合いだったしお互い親が付き合う事を大反対していたこともあって、別れを切り出した時、グレイスは泣いたけれど受け入れてくれていると思っていた。
その時に「実は‥」とラーリ家の財政事情も少し教えたのだ。
借金の額にグレイスはきょとんとしていた。
『私ではグレイス、君を幸せにしてやれないんだ』
あの時、抱きしめたグレイスは小さく何度も胸の中で頷いていたはずなのに。
しかし、こんな日にこっそりと屋敷に忍び込んできているグレイスには驚くと同時に「ここまで非常識な子だったか?」との思いも芽生える。
身を案じての事なのだ、衝動的なことなのだ。と自分で自分に言い聞かせロイスはグレイスに言った。
「送ることは出来ないが、帰れるよね?」
「帰れるけど…私、心配なのよ」
「大丈夫だよ」
ロイスの心の中では「大人しく帰ってくれ」その思いでいっぱい。
なんせ屋敷の中には片付けが終われば帰っていくけれど、見栄を張りたいアシェル男爵が囁かなお披露目パーティを開いたので日頃は居ない人間が多くいる。
その中には自分の父親もいるしアシェル男爵もいれば、面倒くさい叔父や叔母もいる。
更に面倒なのはこの日の為だけに雇われている者たち。
ラーリ家の者でもアシェ家の者でもないのでここにグレイスがいる。
しかも初夜の夫婦の寝室に夫婦ではない2人が2人きりなんて不味い以外の何物でもない。
ただでさえ青色吐息、風前の灯火に近いラーリ家。
シルフィにはつい、当たってしまったけれどこれからシルフィと社交をして家の経営も立て直していかねばならないのにこんな場が誰かに見られてしまえば社交界から散々に笑い者にされた挙句に弾き出されるのは考えるまでもない。
ようようグレイスを追い出すと、ロイスは広い寝台に突っ伏した。
どっと疲れが押し寄せてきてロイスは寝落ちをしてしまった。
ロイスは扉を開けて先にいる人物を見て驚いた。
「グレイスっ?!どうしてここに?」
「ごめんなさい。心配だったの」
「心配って‥何が心配だったんだ?」
「意に添わない結婚でしょう?ロイスに危害を加えられるんじゃないかって。だってあの人、魔法も使うんでしょう?気持ち悪いわ」
「だからってグレイス。今日は不味いよ。何もなくても世間では今夜の事を初夜って言うんだ。ここにいる事だけでグレイス、君が糾弾されてしまう。それに彼女は魔法は使えないよ。安心してくれ」
「私は良いの。ロイスが無事だったらそれでいいの。心配で居てもたってもいられなかったのよ」
「でもどうやって屋敷の中に?」
「給仕に雇われたって言ったら入れてくれたわ」
ロイスは頭を抱えた。
これでは防犯も何もあったものじゃない。
出入りをする人間を口頭の確認だけでホイホイと招き入れていたら何があっても不思議ではない。グレイスだから良かったとかそんな問題ではないのだ。
グレイスはロイスの恋人だった。
酒場の給仕をしているグレイスをロイスが見初めたのが4年前。
ただの客と給仕の2人の思いが恋に発展するまで時間はかからなかった。
しかし、付き合ってみれば現実を思い知る。
ロイスは貴族を夢見るグレイスに愛しているからこそ事実を言えなかった。
ロイスと結婚をすれば使用人に世話をされて衣食住に困らない生活が送れ、茶会だ、夜会だと煌びやかなドレスと宝飾品に身を包み、ロイスとダンスを踊る。
いずれはロイスによく似た可愛い子供たちに囲まれて笑顔の絶えない家庭。
そんな夢を語られた時、ロイスの心はシンと冷えた。
――逆立ちしたまま食事をするより難しいよ――
借金と爵位を親同士が望み、調った結婚。
この話を父親からされた時、ロイスは安心した。
少なくともグレイスを不遇な環境に引き入れて、夢を壊すことは無くなったのだと。
体の関係があった訳でもない清い付き合いだったしお互い親が付き合う事を大反対していたこともあって、別れを切り出した時、グレイスは泣いたけれど受け入れてくれていると思っていた。
その時に「実は‥」とラーリ家の財政事情も少し教えたのだ。
借金の額にグレイスはきょとんとしていた。
『私ではグレイス、君を幸せにしてやれないんだ』
あの時、抱きしめたグレイスは小さく何度も胸の中で頷いていたはずなのに。
しかし、こんな日にこっそりと屋敷に忍び込んできているグレイスには驚くと同時に「ここまで非常識な子だったか?」との思いも芽生える。
身を案じての事なのだ、衝動的なことなのだ。と自分で自分に言い聞かせロイスはグレイスに言った。
「送ることは出来ないが、帰れるよね?」
「帰れるけど…私、心配なのよ」
「大丈夫だよ」
ロイスの心の中では「大人しく帰ってくれ」その思いでいっぱい。
なんせ屋敷の中には片付けが終われば帰っていくけれど、見栄を張りたいアシェル男爵が囁かなお披露目パーティを開いたので日頃は居ない人間が多くいる。
その中には自分の父親もいるしアシェル男爵もいれば、面倒くさい叔父や叔母もいる。
更に面倒なのはこの日の為だけに雇われている者たち。
ラーリ家の者でもアシェ家の者でもないのでここにグレイスがいる。
しかも初夜の夫婦の寝室に夫婦ではない2人が2人きりなんて不味い以外の何物でもない。
ただでさえ青色吐息、風前の灯火に近いラーリ家。
シルフィにはつい、当たってしまったけれどこれからシルフィと社交をして家の経営も立て直していかねばならないのにこんな場が誰かに見られてしまえば社交界から散々に笑い者にされた挙句に弾き出されるのは考えるまでもない。
ようようグレイスを追い出すと、ロイスは広い寝台に突っ伏した。
どっと疲れが押し寄せてきてロイスは寝落ちをしてしまった。
739
あなたにおすすめの小説
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
運命の恋は一度だけ
豆狸
恋愛
王宮から招かれているのです。
マルクス殿下の十歳の誕生パーティへ行かないわけにはいきません。
けれど行きたいとは思えませんでした。行ったら、なにか恐ろしいことが起こりそうな気がするのです。今すぐにではなく、もっと未来、時間を経た後に……
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
働きませんわ。それでも王妃になります
鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」
そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。
社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。
“怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。
――だが彼は知らなかった。
彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。
エルフィーナは何もしない。
ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。
その結果――
王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。
やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。
支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。
「君と並びたい」
差し出されたのは、甘い救済ではない。
対等という選択。
それでも彼女の答えは変わらない。
「私は働きませんわ」
働かない。
支配しない。
けれど、逃げもしない。
これは――
働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。
優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。
“何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる