この結婚、満足すればゴールインです。

cyaru

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第23話  偶然は新製品を生み出す

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魔石の粉だらけになったロイスは「職人たちがちゃんと休んでくれない」と悩みを抱えたシルフィの為に工房に来たのだが、最後の最後で大失敗。

パンパンと魔石を払うのではなく、出来るだけ再利用出来るように体に付いた魔石の粉を優しく落としながら職人に言った。

「職場を変えるのは誰でも冒険だよ。単身者ならまだしも家族があるなら向こうの給金は差し引かれる分もあるし、休みがないというのは別に26万バウ。ここより11万バウも多いんだ。それぞれの家庭の事情もあるから急いで話をつけようとしたりしてはいけないんだ」

「そうだなぁ。病気なんかで休まなきゃとか、その時にならないと給料は家計を直撃するって判らないからな」

「それもあるし、今、働いている者には ”ここで働いている” 程度の話にしておいて自主的に辞めてくれるのを待つしかない。引き抜きだと騒がれればシルフィさんが困ると思うよ?」

「あの旦那様ならやりかねないな。難癖付ける事については長けてるからさ」


職人たちも納得をしてくれたのだが、ロイスの体に異変が起きた。

「暑っ…暑いな」

「暑いですか?ここは暖房もかなり緩いと思いますけど」

「暑いよ…汗かいちゃって。ほら・・」

ロイスは上着は来ておらず、シャツの上にベストだったのだがそのベストをあまりの暑さに脱いでしまった。

「‥‥寒い」

「ですよね~。だからここは暖房らしい暖房はいれてないんですって」

「でも…」

ロイスはちらりとベストを見た。そして寒いので着るしかないと手に取った。

「あったかい…なんでだ?」

「さっきまで着てたからじゃないですか?」

「それもあるだろうけど、そんな温度じゃないよ。触ってみてくれ」

熱くて触れない程ではないが、脱いだ服の温度としては異常。
湯気は出ていないけれど、職人の1人がベストを手に取ると‥。

「熱っ!なんでこんなに熱いんだ?誰か。温度計持ってきてくれ」

急いで持ってきた温度計をベストで包むと、温度計の表示は勢いよく上がっていく。示した数字は…。

「46度?!旦那さん、体温ヤバくないですか?!」

「ば、バカな!僕の平均体温は36度3分だ!46度なんて高熱の時でも出ないよ!」

それはそうだろう。人間の体は42度を超えると死の危険性がある。
脱いだベストが46度。ロイスの体温は50度を超えていないといけない計算である。

が、職人たちはハッと気が付いた。

「魔石だ。おい!この魔石の粉末。何と何を混合したんだ?」

「えぇっと…発火の赤魔石と、包めそうの花粉と、ジャコウジカの体毛です」

「ジャコウジカ…お前何を作ろうとしたんだ?」

「冬場の寝具って寒いじゃないですか。掛布に潜り込んでも足の先とか寒いんで僕、丸くなっちゃうんスよ。だからお湯の中に溶かして体が色んな意味で火照っていれば温かく寝られるかな~と。練玉にして入浴剤なんてどうかと思ったんですよ」

「そう言えばお前、夏場もそんな事を言ってなかったか?」

「あぁ、ミントとか涼しいじゃないですか。あの時は教会に世話になってたし‥試作品も作れてませんけど」


ロイスには職人たちがどんな談義をしているのか理解は出来なかったが、ふと思った。

「なら、そのベスト。湯に浸けてみたらどうだろう」

「え?こんな上等のベストを?これ、手洗いが基本ですよ?ヤワラカそうの花びらと洗わないとパチパチしますよ?」

「洗うんじゃなく、浸けてみるんだよ。もしかしたらさっき、魔石の粉をはたくときに僕の汗と反応したのかも知れないし。べちゃっと浸ければもしかしたら入浴剤じゃなく、水を湯に出来るくらいになるんじゃないか?」


職人たちはロイスの言う通り、湯はなかったが水を入れた桶にベストを沈めた。

ジュッ!!ジュジュッ!!

あり得ない音がして全員が顔を見合わせた。

ビグールが桶の中に手を入れてみる。

「あったかいんだからぁ~」

体をくねらせるビグールに「寒っ」その場の全員が細い目になりビグールを見た。


しかし湯は本当に温かくなっていて、温度計を入れると26度だった。
井戸からくみ上げた水は15度前後。

「これってイケるんじゃねぇの?」

画期的だ。冬場に薪を割って火を起こさなくても湯船に水を張り、練玉を放り込んだら湯になる。家事の手間が1つ省けるではないか。

湯の温度が冷めれば練玉を少量放り込んで温度の調節も出来る。

更に驚く事があった。
桶に浸けたベストは何処も焦げておらず、ただビショビショになっているだけだったのだ。

大ヒット間違いなしで、その後も冬場には、いや年中欠かせない定番商品になる!
その場にいる者は全員がそう思った。

ロイスだけは雰囲気に飲み込まれて「おぉー!」と思っただけだが。
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