この結婚、満足すればゴールインです。

cyaru

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第24話  狙ってないので乱れ打ち

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バタバタと屋敷に駆け込んできたロイスはシルフィの手を取った。

「な、なんですの?」

「来て!説明は…言葉じゃなく見れば解るから!」

直ぐにロイスが叩いた魔石の粉を集めてさらさらと井戸から汲んだ水に入れると水は1分もしないうちに湯になった。その温度は40度。

ロイスは「シルフィを呼んでくる!」と駆けだしていったのである。

「シルフィって…旦那さん、お嬢様を呼び捨てにしてたっけ?」

「願望じゃね?」

「あ~ね~」

職人たちの奇妙な納得。
その後、息を切らしてシルフィと共に工房に戻ってきたロイスに職人たちは無いはずの物が見えた気がした。

「ねっ?見て。凄いだろ?お湯になるんだ!」

シルフィに褒めて、褒めて!とロイスの尻には尻尾があってブンブン振っているかのよう。

「僕がね、ここに手を突いたらガターン!って粉を被ってさ!お湯になったんだ!」

興奮しているのでかなり省略をしているのは聞かなかった事にしてもロイスはシルフィに「ねっ?ねっ?お湯だろ?」と嬉しそうにシルフィの手を取り、桶の湯に浸ける。


「あのさ、お嬢様、困ってんだけど?」

「え?困って‥る?」

「そりゃそうだろ。寝所も共にしない仮の旦那に手を握られて頬を赤くされたら困らぁな」

「手…あっ!ご、ごめん…許可もなく握ってしまった」

ロイスは耳まで真っ赤になって、魔石の粉で水を湯にするよりも瞬時に沸騰していた。

しかし、シルフィの手が離れるとロイスの手は行き場を失う。

「そうね。温かいわね」

1人で舞い上がってしまい、不味いと思ったのか離れてしまったロイスの手をシルフィは握り返し、お湯の中に浸けた。

「湯船だったら気持ちよく入れそうよ」

「そうだね…うん」


シルフィは職人から「まだ試行錯誤は必要」と説明を受けたが少し考えて指示を出した。


「2にプラスで製品を作ってもらうわ」

「2?それにプラスで?何を作るんです?」

「1つは湯を沸かす練玉。今、この量で桶。と言う事は人が浸かる湯船になると大量投入になっちゃうわ」


そう言われればそうだ。せいぜい2リットルも入っていない桶で300グラムほどを溶かした。一般的な湯船は200リットル。つまり100倍の量が必要になる。そんな大量になると誰も買ってはくれない。置き場所もないし毎日30kgとなると運ぶのも大変である。

希望は鶏卵よりも小さく、ウズラの卵よりも大きい。そんな大きさの練玉で水が湯になる事。

「発火魔石の量を増やしてみて。どうしてもって時は…そうね。追い炊き用って事で売り出せばいいわ。それにプラスするのが香り。薔薇とかラベンダー、カモミールを試してみて」

「そうか。追い炊きにすればそんなに量も必要じゃないってことですね」

「香り付きなら女性は喜ぶかもな。子供も喜ぶように溶け方も考えないと」

「融けたらおもちゃのおまけが出て来るってのはどうだ?」

「ダメだ。小さい子は口に入れてしまう。誤飲や窒息の可能性も考えないと」

そしてシルフィはもう1つの製品を指示した。


「ベストに浴びてしまったのよね。で、ベストが温かくなった」

「そうなんですけど、どんな風に温かくなったかはロイスさん、どうだったんです?」

「え?あの…えぇっと…さっきは粉を浴びて、えぇっと」

「ロイス様、落ち着いて。さっきの事をゆっくり思い出してみてくださいませ」

シルフィはロイスの手を包むように両手で覆って優しく問いかける。
魔石の粉の影響はもうないはずなのに、ロイスは体の内側から体温が上昇していく。

「お嬢様、ロイスさんは…そろそろ沸点だと思いますよ」

「沸点?‥‥まぁ!顔が真っ赤!失礼しますわね」

シルフィの手が手から離れるとロイスの額や頬にあてられていく。

「熱いわ!熱があったの?ちゃんと寝てないと!夜にお腹を出したまま寝ちゃったのかしら」

――違うと思います――全職人心の声

シルフィの手がロイスの背中に回される。

その行動はとり入ろうとか弱っているところに付け込もうと狙っている訳ではない事が、ロイスに燃えるような熱だけでなく、全身に血液を送る心臓を連打、連打の乱れ打ちさせる。

「皆さん、魔石の粉ですが練玉とは別に包め草の花粉を多めにしたものを作ってくださる?」

「そんなものをどうするんです?」

「これも改良は必要だと思うけど、出かける前に服に振りかければ温かさが持続する製品とするか…ちょっとこの後先触れを出すけれど、糸をって布にする時に一緒に編み込んだら着るだけでほんわか温かい服とか、靴の中敷きとかに出来るかどうか。商会と話をしてみるわ」

「そうか。アッタケーナみたいに携帯するんじゃなく、身に付ける服に元々装備されてたり、その時だけ温かくするように粉を使うんですね」

「そういうこと。アッタケーナと違って肌に触れる肌着などだから製品化するのに付き合ってくれる商会を探さなきゃいけないからこっちは時間がかかりそうだけど」

「よし、任せといてくれ。お嬢様は旦那さんの看病、テ・ア・ツ・ク!してやってくださいよ。粉を被らなきゃヒラメキもなかったんだからさ」

職人たちの生暖かい目に見送られてロイスはシルフィと共に母屋に戻ったのだった。
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