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第34話 公然猥褻罪。現行犯
分が悪いと感じたグレイスは矛先を変えて来た。
「ロイス、この女は金にさえなれば何でもするのよ!酷い女なの!そんなのを連れてたりしたらロイスの品位が下がっちゃう!」
「下がっていいよ。私はフィアとなら地獄に堕ちてもいいと思ってる。でも、してもいない事をしたと濡れ衣を着せようとするヤカラは神が許しても私は許さない」
「目を覚ましてよ!ロイスだって迷惑してるでしょう?貼り紙を張られたり、ゴミを投げ込まれたり!全部この女が元凶なのよ!私だったらロイスにそんな嫌な思いをさせる事はないわ!その女が不幸をもたらせているのよ!」
「すまないが…1つ聞いていいだろうか?」
「何?解ってくれた?」
「解らないから聞くんだ。君はさっき、貼り紙を張られたり、ゴミを投げ込まれたりと言ったね」
「そうよ。その女が元凶だと知っている正義の有志が鉄槌を下し始めているの。エスカレートしたらもっと酷い事になるわ。ロイス、今ならこっち側に来られるわ!」
「ふむ。皆さん、彼女の言葉、聞いただろうか!」
ロイスは自分たちを取り囲んでいる者たちに大きな声で問いかけた。
そして言葉を続けた。
「貼り紙が貼られていたのは事実だ。外から見える位置だからご存じの方もいるだろう!だが!ゴミが投げ込まれたことは屋敷の中にいる者しか知らない筈だ。外からは見えないのだから!!恥ずかしながら私は父から家督を継いだ際、使用人は自分で雇えと言われ、まだ雇うに至っていない!だからゴミが投げ込まれた事を知っている者は、私と!私の妻、そして投げ込んだ本人だと思うのだが!」
「そうなるよな」ロイスの言葉に同調する声が聞こえてくる。
グレイスはビシッとシルフィを指さした。
「この女!この女がしたのよ!ロイスもさっき言ったでしょう。ロイスか、この女か、犯人かって!この女が犯人なのよ!」
「だったら自分の家のゴミを自分の家に持ち込んだだけだ。外に投棄すれば軽犯罪だが、持ち帰って何の罪になると言うんだ?」
「だからっ!投げ込んだの!」
「それが何の罪に?」
「だからっ。だからっ!!ゴミの事はいいわ!それならそれでいいの!その女が粗悪品を売ってるの!」
会場にいる誰もがグレイスの支離滅裂な言葉を信じようとはしない。
信じる事に矛盾しか感じない。
グレイスは言葉にすればするほど自分がやりましたと自白にしている事にも気が付いていなかった。
ぼそっと取り囲んだ壁の中から声が聞こえた。
「もっと上手くやれよ。余興にもならないじゃないか。これだから阿婆擦れは頭も尻も軽いと言われるんだ」
「なんですってぇ!!さっき言った奴!出てきなさいよ!」
グレイスは声のした方を凄んだが、「僕でーす」と軽く手を挙げて前に出て来た男性にグレイスの頼みの綱であるガッセネータ男爵子息がバッと頭を下げた。
「まだこんなのとツルんでるなんて、あったま悪~」
「すみませんっ!先輩っ!」
「もうちょっとさ、連れる女性は選んだほうがいいよ。これじゃ場末の娼婦の方がまだ立ち回ってくれるよ?どうせ1、2回寝たらピロートークでいい気になっちゃったってとこでしょ」
「いえ、5回です」
「暴露ってんじゃないわよ!!」
「五月蝿い!この阿婆擦れ!」
「わぁっ!わぁっ!きゃぁ!!」ビリリー!!
爵位としてはないのだが、王妹の孫にあたる男性は言ってみれば王族。
黒い噂もちらほらと聞こえては来るが、同時に王家の闇の部分を背負っているとも言われている。
ガッセネータ男爵子息も逆らえる相手ではないので、グレイスと距離を取るために突き飛ばしたのだがまさか突き飛ばされると思わなかったグレイスは受け身も取れず、踏ん張った先に自分のドレスの裾。
いい加減背中の大きくあいたドレスは背中側から裂けて1枚の布になり、うつ伏せから起き上がれない全裸と言っていい状態で転んでしまった。
――うわ‥引くわぁ。下着付けてないってどうよ。度胸あるぅ――
王妹の孫はグレイスの頭の側にしゃがみこんだ。
「公然猥褻罪。現行犯だね。あと、さっき論破されたに等しいけど詳しい事は憲兵に言いな?服も囚人服があるからさ」
語り掛ける王妹の孫には目もくれず、グレイスは頭を持ち上げるとロイスに向かって叫んだ。
「違うの!ロイス、判って!私は貴方のためにしてあげたの!私がどうなってもいいの?なんで黙ってみてるの!私が違うって言ってるんだから違うのよ!全部その女が悪いの!ロイス、騙されてるのよ!」
グレイスの言葉にロイスは返事もせず、視線すら向けなかった。
グレイスは人の輪を掻き分けてやってきた兵士に連行されて行く。
ただの布になったドレスは途中に置き去りになり、会場から出る時は本物の全裸状態。両腕を掴まれているので隠すことも出来ず、その状態で後ろ手に縛られて荷馬車の荷台で憲兵の隊舎まで運ばれて行く。
羞恥なんて言葉では表せられない恥辱になるだろう。
「ごめんね。言いたい放題だったねぇ。大丈夫?」
「はい。夫が‥庇ってくれましたので」
「そっか。聞くところによると不仲説もあったんだけど噂は噂って事かな?不仲なら誘っちゃおうかと思ったんだけどなぁ」
――遠慮しときます。チャラ男は嫌いなので――
シルフィに微笑む王妹の孫。
ロイスはシルフィの前に出てシルフィを背中に隠した。
「殿下、お戯れが過ぎます。妻が怯えていますので!」
「怯えてる??あ~はいはい。そうしとこうか。あれ?ガッセネータ。いつまでそこにいんの?お前も行くんだよ。親父さんが見捨てずにいてくれる事を祈るんだな」
「あ…あぁっ!!嫌だ。殿下!騙されたんです!儲かるからって言わ――アガッ!!」
「黙ろうか?世の中、儲かりますよ?なんて話、他人にするわけねぇだろがッ」
ガッセネータ男爵子息の口の中に靴の先を突っ込んだ王妹の孫は語尾を荒げた。ガッセネータ男爵子息が連行されて行くと王妹の孫の隣にはトイプドール商会の会頭がいて「靴は買わないぞ」と軽く王妹の孫に拳骨を落とす真似をしていた。
「え?あの、どういう…ご関係?」
「言ってませんでした?この子は私の孫なので」
「孫って言っても外孫でーす!ついでに爺ちゃん、ひ孫も3人目でーす」
――聞いてないぃぃ!そんな事、想像すらしなかったぁ!――
「爺ちゃん、頑張ったからお駄賃くれよ」
「いい年をして!駄賃?その前に子供の世話をしろ!」
「してますー。これでもイクメンなんだからな?」
王妹の孫。その母親はトイプドール商会の会頭の娘。世間は広いようで狭かった。
「ロイス、この女は金にさえなれば何でもするのよ!酷い女なの!そんなのを連れてたりしたらロイスの品位が下がっちゃう!」
「下がっていいよ。私はフィアとなら地獄に堕ちてもいいと思ってる。でも、してもいない事をしたと濡れ衣を着せようとするヤカラは神が許しても私は許さない」
「目を覚ましてよ!ロイスだって迷惑してるでしょう?貼り紙を張られたり、ゴミを投げ込まれたり!全部この女が元凶なのよ!私だったらロイスにそんな嫌な思いをさせる事はないわ!その女が不幸をもたらせているのよ!」
「すまないが…1つ聞いていいだろうか?」
「何?解ってくれた?」
「解らないから聞くんだ。君はさっき、貼り紙を張られたり、ゴミを投げ込まれたりと言ったね」
「そうよ。その女が元凶だと知っている正義の有志が鉄槌を下し始めているの。エスカレートしたらもっと酷い事になるわ。ロイス、今ならこっち側に来られるわ!」
「ふむ。皆さん、彼女の言葉、聞いただろうか!」
ロイスは自分たちを取り囲んでいる者たちに大きな声で問いかけた。
そして言葉を続けた。
「貼り紙が貼られていたのは事実だ。外から見える位置だからご存じの方もいるだろう!だが!ゴミが投げ込まれたことは屋敷の中にいる者しか知らない筈だ。外からは見えないのだから!!恥ずかしながら私は父から家督を継いだ際、使用人は自分で雇えと言われ、まだ雇うに至っていない!だからゴミが投げ込まれた事を知っている者は、私と!私の妻、そして投げ込んだ本人だと思うのだが!」
「そうなるよな」ロイスの言葉に同調する声が聞こえてくる。
グレイスはビシッとシルフィを指さした。
「この女!この女がしたのよ!ロイスもさっき言ったでしょう。ロイスか、この女か、犯人かって!この女が犯人なのよ!」
「だったら自分の家のゴミを自分の家に持ち込んだだけだ。外に投棄すれば軽犯罪だが、持ち帰って何の罪になると言うんだ?」
「だからっ!投げ込んだの!」
「それが何の罪に?」
「だからっ。だからっ!!ゴミの事はいいわ!それならそれでいいの!その女が粗悪品を売ってるの!」
会場にいる誰もがグレイスの支離滅裂な言葉を信じようとはしない。
信じる事に矛盾しか感じない。
グレイスは言葉にすればするほど自分がやりましたと自白にしている事にも気が付いていなかった。
ぼそっと取り囲んだ壁の中から声が聞こえた。
「もっと上手くやれよ。余興にもならないじゃないか。これだから阿婆擦れは頭も尻も軽いと言われるんだ」
「なんですってぇ!!さっき言った奴!出てきなさいよ!」
グレイスは声のした方を凄んだが、「僕でーす」と軽く手を挙げて前に出て来た男性にグレイスの頼みの綱であるガッセネータ男爵子息がバッと頭を下げた。
「まだこんなのとツルんでるなんて、あったま悪~」
「すみませんっ!先輩っ!」
「もうちょっとさ、連れる女性は選んだほうがいいよ。これじゃ場末の娼婦の方がまだ立ち回ってくれるよ?どうせ1、2回寝たらピロートークでいい気になっちゃったってとこでしょ」
「いえ、5回です」
「暴露ってんじゃないわよ!!」
「五月蝿い!この阿婆擦れ!」
「わぁっ!わぁっ!きゃぁ!!」ビリリー!!
爵位としてはないのだが、王妹の孫にあたる男性は言ってみれば王族。
黒い噂もちらほらと聞こえては来るが、同時に王家の闇の部分を背負っているとも言われている。
ガッセネータ男爵子息も逆らえる相手ではないので、グレイスと距離を取るために突き飛ばしたのだがまさか突き飛ばされると思わなかったグレイスは受け身も取れず、踏ん張った先に自分のドレスの裾。
いい加減背中の大きくあいたドレスは背中側から裂けて1枚の布になり、うつ伏せから起き上がれない全裸と言っていい状態で転んでしまった。
――うわ‥引くわぁ。下着付けてないってどうよ。度胸あるぅ――
王妹の孫はグレイスの頭の側にしゃがみこんだ。
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語り掛ける王妹の孫には目もくれず、グレイスは頭を持ち上げるとロイスに向かって叫んだ。
「違うの!ロイス、判って!私は貴方のためにしてあげたの!私がどうなってもいいの?なんで黙ってみてるの!私が違うって言ってるんだから違うのよ!全部その女が悪いの!ロイス、騙されてるのよ!」
グレイスの言葉にロイスは返事もせず、視線すら向けなかった。
グレイスは人の輪を掻き分けてやってきた兵士に連行されて行く。
ただの布になったドレスは途中に置き去りになり、会場から出る時は本物の全裸状態。両腕を掴まれているので隠すことも出来ず、その状態で後ろ手に縛られて荷馬車の荷台で憲兵の隊舎まで運ばれて行く。
羞恥なんて言葉では表せられない恥辱になるだろう。
「ごめんね。言いたい放題だったねぇ。大丈夫?」
「はい。夫が‥庇ってくれましたので」
「そっか。聞くところによると不仲説もあったんだけど噂は噂って事かな?不仲なら誘っちゃおうかと思ったんだけどなぁ」
――遠慮しときます。チャラ男は嫌いなので――
シルフィに微笑む王妹の孫。
ロイスはシルフィの前に出てシルフィを背中に隠した。
「殿下、お戯れが過ぎます。妻が怯えていますので!」
「怯えてる??あ~はいはい。そうしとこうか。あれ?ガッセネータ。いつまでそこにいんの?お前も行くんだよ。親父さんが見捨てずにいてくれる事を祈るんだな」
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