元伯爵令嬢の嫁ぎ先は醜男と名高い辺境伯様です

cyaru

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最終話の前に●彼らの行く末●王妃編

●ヤムズ公爵家(元王妃とその実家)

元王妃は廃妃となる事に声を荒げて反対をしたが、一旦逃げ出した事でその言葉を聞く者はいなかった。

金もなく、側妃に施されている状態に癇癪を起こした王妃は国王の部屋に押しかけたのだ。そして国庫からの融資を実家に行うのではなく、王妃用の経費にその融資を上乗せしろとごねた。
部屋の中で手当たり次第に物を投げつけた王妃に国王はいつも以上の魔力を流し込んだ。
その結果、供給が多すぎて酩酊状態になった王妃は数日後、目が覚めると全身が萎びた果実のようになっている事に驚愕したのだった。

――殺されてしまうんじゃないか――

そう思った王妃は宝飾品やドレスなどトランクに詰め込めるだけ詰め込んで逃げ出したのだ。
行き先が直ぐにわかったのは従者を使ったからだった。要求が通らないと暴力に訴える王妃に怯えていた従者が厩舎に行き、馬車を出せという声を上階の部屋から聞きつけた第一王子とエキドゥナは変化のない毎日に辟易していてこれ幸いと便乗する事にしたのだ。
元王妃はヴィルトとの縁を結んでやったのだから面倒をみてくれるだろうと辺境に向かったが直ぐに連れ戻された。

国王に睨まれただけで酩酊状態になってしまう恐怖はあった。それでも貧乏な生活はもっと嫌だった。なのにどんなに足掻いても、離縁は決定事項で廃妃となってしまった。


実家に元王妃の居場所はなかった。
顔を見れば嫌味ばかりの兄嫁。しかし兄が公爵家を継いでいるとはいえ実権を握っているのは兄嫁である。口答えをすればどうなるのかは火を見るよりも明らか。
元王妃は静かに1人、遠く離れた領地に引きこもった。


そこで問題が起きた。
一緒に実家のヤムズ公爵家に廃嫡となり戻った第一王子とエキドゥナは公爵家の宝飾品などを持って逃げてしまったのだ。しかも子供を置いて。


『子供をどうするんだ?』

『あの女の子供でしょう?面倒なんか見られないわよ』

置いていかれた子供を巡ってヤムズ公爵では揉めに揉めた。ペデベストの子であればまだ仕方ないと思えたかも知れないが色味も違えば顔立ちも違う。明らかに不貞の子だった。

『孤児院に預けなさいよ。うちじゃ無理よ』

元王妃の兄嫁は面倒をみると言うのであれば、唯一残っている収入の手段である石灰の出る山を慰謝料としてもらい離縁すると言い出してしまった。
兄嫁の実家である伯爵家にも支援をしてもらっていたヤムズ公爵家は離縁をされればたちまち立ち行かなくなる。一度廃家の届けは出したものの返事はなく途方に暮れた。

孤児院に預けないのも理由があった。定期的に寄付をしなければならなくなるからだ。ヤムズ公爵家には寄付をするような余裕すらなかったのだ。

『あの‥‥旦那様さえ良ければ俺たち夫婦の子供として育てます』

ヤムズ公爵家の馬丁は長年子が出来ずにいたが、引き取り手がないならと申し出た。
馬丁も子供を引き取れば職を失う事もなく公爵家で働き続ける事が出来ると考えたのだ。しかし、ヤムズ公爵は下心が出てしまった。

『ならば、給金の3年分でこの子を売ってやろう』

金を出してまで欲しいわけではない馬丁はならばと断ってしまったのである。この一言がヤムズ公爵家取り潰しの引導を渡す結果になってしまった。

子供をどうするかで困ったヤムズ公爵は真夜中、教会の前にその子供を捨ててしまった。カヌレ国では中絶もだが、自身で立って生きていく事が出来ない子供を捨てるのも重罪である。
そして、その子供は暫くの間王妃がペデベストが自分の子だと言い張るため宮で一緒に住んでいたし、連れて辺境まで逃げた事もあって騎士団では覚えのある子供だった。

廃家となれば通知があるまでに領などの財産を売りある程度の資金を持って平民となる事が出来るが、取り潰しとなれば財産は全て没収される。
子供を捨てたヤムズ公爵は貴族の犯罪者となりかつてのブルース同様記憶を消され刻印持ちとなった。

すんでで離縁をした王妃の兄嫁は犯罪者とは認定されなかったが捨て子の原因となった言動があったと出戻ったまでは良かったが厳しい戒律のある修道院に入る事になった。

領に引きこもった元王妃はある日、住んでいた家を追い出された。
ヤムズ公爵家が取り潰しになったからである。給金ももらえないと知った使用人達はあっという間に金になりそうな物を持って逃げ出し、元王妃は残った私物をトランクに詰めて王都に向かった。
国王に慈悲を願い、愛妾で良いから王宮に置いてくれと頼むためである。

しかし今の今まで誰かに何かをしてもらってきた生き方しか知らない王妃は王都行きの馬車に乗るという事も判らない。今までは従者に何処どこに行くと告げれば従者が御者に伝えて移動をしてきたのだ。腹が減っても減らなくても食事は用意をされていたし領地に引きこもってからも全てを使用人がしてきた生活しかしていない。
勿論、金を払うという概念すらない。

『王都に行きなさい』

『何言ってんだ?』

馬車に乗せてもらえず、腹が減って入ったのは他人の家。たまたま玄関が開いていたという住民の家である。食事中だった住民に元王妃は激昂した。

『わたくしが何も食べていないのに勝手に食べているとは何事なの?!それにこれは何?牛や馬の方がもっと良いものを食べているわ!直ぐに用意なさい!』

テーブルに並べられている料理をひっくり返し、子供を突き飛ばして母親と思われる女性の頬を張った。直ぐに領の警護団に取り押さえられたが、収監された先の牢獄でも同房の囚人に悪態を吐いた。

『汚いわね。早くここから出しなさい』

『そんな事は牢番に言いな』

『なんですって?!その口の利き方はなに?』

その日の夜にはもう悪態を吐くどころか、房の隅で小さくなり数日後釈放をされたが王都で元王妃を見たと言う者は一人もいなかった。



『この子に神のご加護がありますように』

結果的に孤児院しか行き場がなくなった子供は、あの馬丁夫婦が孤児院から引き取った。
働き口は無くなった夫婦だったが、子供を引き取る事でその孤児院を経営する子爵家に住み込みで働けることになり、子供は夫婦の子として育ち働けるようになってからは年老いた庭師に弟子入りしたという。
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