王太子殿下の願いを叶えましょう

cyaru

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第28話  招待状が届く

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カタタン領で石灰の切り出しが始まった。

切り出しを作業するのは殆どが貧民窟でその日をようよう生きてきた者達。
試験的に切り出した石灰はアリステラの兄と父が直接、若しくは信頼できる伝手を使ってアリステラがカタタン領に来た時には既に隣国に持ち込まれて評価を待ちの状態。

一番先に切り出しを始めたのは、品質としてはBランク石灰だが、大昔に大陸を形成した時にせり上がった岩盤。1枚岩のようなモノなので切り崩しても付近が崩落をする事はない。

難点と言えば冬場には作業が出来なくなる。
西辺境と違って雪は降るには降るが比較的暖かい。暖かいと言っても寒い事に変わりはなく西辺境と比べれば暖かいだけ。

その為、深夜から早朝にかけて氷点下となった時に走った亀裂に入り込んだ僅かな水が凍結して膨張する事で崩落する危険性がある。
冬が来る前に道を作るように切り出す。

そうすれば輸送が楽になる。



カタタン領にやって来て直ぐの事だ。

隣国へ通じる山を選んだのは大型船が停泊する港を同時に隣国が整備すると言う確約が取れたからである。アリステラの父ゴードマン公爵は、アリステラに「30%で最終的に手を打たせること」と言われ、最初は定価より5%安く提示。

何度かの話し合いで12%まで下げた所でそこからは強気に出た。

「港を整備してくださるのなら23、いや25%まで譲歩します」
「25%・・・だが外海にも面していて・・・あと10%何とかならないか」
「35%も割り引けばこちらも商売が成り立ちませんよ」

隣国としても港湾の使用料だけでも莫大な金が入って来る事は判っていた。

「判った。だが35%はこちらとしても工事費の負担がある故に譲れない」
「そうですか‥‥こちらとしては搬出に貴国の港だけをと考えていましたか…商売とはとどのつまり追い求めるのは利益。そちらで35%なら別の国にも搬出経路を計画せねばなりませんな」
「待て、わが国のみの搬出とはまことか!1日だけ!1日だけ待ってくれ!陛下に許可を貰ってくる」
「急がすとも結構。こちらは35%で‥」
「すまない!その数値も見直しをさせてもらう!」

港湾整備には総額で国家予算並みの金額が必要となる。
再度の交渉で隣国は値引きを27%で手を打ち、港湾整備を約束したが、アリステラの言葉通りゴードマン公爵はそこに3%の値引きを加え、30%で手を打った。

その3%が後押しとなって隣国は港湾整備に着手した。
元々大型船が2隻は停泊できた事もあり、隣国に恩を売ったアリステラは更に恩を売るために切り出しを始めた。



隣国の帰りに

「人間はどうする」
「貧民窟にいるではありませんか。王家に炊き出しと言う箸にも棒にも掛からない施しをされ、尊厳を奪われた彼らを使います。肉体労働なんですもの。報酬はそれなりに支払い、当面住まう家屋は廃屋を改修、同時に新しく共同住宅を建設。それで凌げます」

「だが、材料がない。家屋を作るにはそれなりに資材も必要なんだぞ?」

「だからです。無いから諦める?お父様、泣き言はやる前にいうものでは御座いません。あら?お父様に言われた言葉かしら?お母様だった?」

「私です」ゴードマン公爵は身を小さくして呟いた。


実物大の試作品になると資材は煉瓦、そして切り出す際に出る削りクズとなった石灰。
水に石灰を混ぜ、小石と砂も混ぜてレンガを積み上げる際の接着剤代わりに使う。


「煉瓦の壁は隙間を拳一つ分開けて2重にして頂戴」
「どうしてそんな事を?1枚の壁でいいじゃないか」
「夏は暑く、冬は寒い。この隙間はその熱をわざと籠らせるためです。暑い外気が外のレンガを熱する。そのまま内側まで伝われば部屋の中は熱気に包まれます。死にますわよ?」


壁を2重にしてその先端は敢えて塞がない。風の通り道にする為である。
熱は暖かければ冷たい空気に押し出される。

暖かい空気は上に、冷たい空気は下に流れる。その時に対流が起き風になる。
隙間に籠った熱は解放された部分から押し出される。
冬場は雪も降るには降るのだから塞げばいいだけ。

冬場は外の冷気が外側の壁を伝っても空洞の部分で室内側の温かさが伝わった壁に触れて空洞の空気は温度が上がる。内部からすれば冷たいだろうがそのまま外の外気に触れるより部屋の温度は逃げにくい。

工夫を凝らし、木材ではなく煉瓦造りとしたのは火災の発生で隣家に燃え移るのも防ぐ意味合いがある。
田舎では消火作業するにも一苦労だからだ。


そうやって集まってきた貧民窟で住んでいた者達は、高水準の生活を送るようになる。
人が集まり、賃金も破格。そうなれば商人が商売をする為にやって来る。

本格的に切り出しを始めた頃には村と言うよりも町が出来ていた。



そんなアリステラの元に王都から早馬が便りを持ってやってきた。

下準備に時間を費やして、名前が表に出ないようにしてきたがいずれは知られる時期が来る。
アリステラの予想よりも少し早かったが受け取った手紙に目を通すとアリステラは「雑」と書かれた箱に手紙を放り込んだ。


「誰からだったんです?」

コンフィーが茶を淹れながらアリステラに問う。

「王妃殿下よ。謁見してやるから来いって。ほんと、立場がある人間は上からモノを言うわね」

その会話をガスパルは聞く気はなかったけれど、掃除の範囲を広げた屋根裏で聞いてしまった。
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