4 / 26
第04話 家族が家族だから
しおりを挟む
この回はオランドの側付執事(男性・63歳)からの視点です。
★~★
若当主様はあまり女性の事が好きではないのです。
と、いって男性が好きと言う意味ではありません。
あれは何歳の時だったか。いや、年齢など関係ありません。
苦手なものは苦手、それだけなのです。
そう、私が執事養成所の食事講習の時間にホエール肉がどうしても食べられなかったように苦手なものは苦手。
少し前までの婚約者だったリゼ様の事も「扱いが難しい」とよく悩まれていたのです。
この国の貴族の子息や令嬢は15歳になると教会に行き、半年間奉仕をせねばなりません。
婚約者のリゼ様を教会まで送迎するのが役目だった時も溜息の連続でした。
「送迎する意味を見いだせない」
「御尤もですが、これもお役目で御座います」
「だがな?意味ないだろう?」
リゼ様はエント伯爵家の娘ですが、その伯爵家は国内有数の資産家でリゼ様の乗る馬車は常時30人の私兵に囲まれているし乗っている馬車は横から追突されても横転する心配もありません。
真上から岩石が落ちてきても天井が少し凹むだけの王家が所有する馬車よりも強固な造り。
リゼ様にも言われたのです。
「ねぇ。オルが一緒に居る意味ってある?」
「・・・・」
「何かあった時、足手まといなんだけど?」
「・・・・」
そう。リゼ様ご本人も剣を握らせれば剣豪と呼ばれ、剣が折れたとて柔術の方を得意としておりますので寝技に持ち込まれれば、襲ってきた賊も秒で関節をキメられてしまうでしょう。
「閨が怖い」時折そう言っていたオランド様。御労しい。
リゼ様が奉仕をしている間、ただ馬車の中で待つだけ。
朝9時から夕方16時までただ、ただ待つだけのつまらない時間です。
あまりに暇すぎて馬車を降りて、散歩などで時間を潰しておりましたがすることもない7時間。スゥズカ耐久レースより1時間短いと言っても辛いものが御座います。
暇つぶしの本の持ち込みも禁止、持ち込む菓子など昼食以外は300ルルまでで「バナナはどっちだ?」とまるで「明日はどっちだ」と遠い目をされておられた日を思い出します。
若当主様とリゼ様は若当主様が3歳、リゼ様が生後5か月からの婚約で御座います。
だからでしょうか。
一緒に居る時間は長かっただけあって、その関係は婚約者と言うよりも兄妹に近かったと思います。
言葉が話せない時期からのお付き合いだったリゼ様なのでなんとか目前に迫った結婚生活も恙なく過ごせるだろうと思っておりましたが、事件が起きたのです。
たかが一介の伯爵令嬢のしたこと。
飛び火はないと思われていましたが第3王子殿下がやらかしたのです。
女性のストライクゾーンが自身の年齢プラスマイナス50。つまり年齢が上がると同時にほぼ全員をカバーしている広大なストライクゾーンを有していた第3王子殿下が絡んでいたのです。
「関係を持ったのは両手の数に足らない!」
と自白されましたが、片手でも大変な騒ぎになるのに両手とは。
誰得の何自慢?首を傾げました。
第3王子を含め52名の男性陣を糾弾する同調圧力。
それはそれは恐ろしいもので御座いました。
第3王子の暴走を止めるためのストッパーだった公爵令嬢は防波堤になっていなかったのです。
即座に第3王子は「御病気」が発表され二度と民の前で手を振る事は無くなりました。同時に女性に腰を…この先は自主規制いたしましょう。
問題はそこからです。
隣国の王女を母に持つ公爵令嬢。公爵家の怒りは大変なもので公爵家のもつ領地を隣国に売ると言い出してしまい、そうなると国土の24%が他国の所有者となってしまうため、直ぐに議会が開かれ国内の公爵令嬢に年齢の近しい者の婚約が見直しされたのです。
王族や高位貴族となれば婚約者がいるのが普通。
トントントーンと玉突き式にこの子息にはこの令嬢、そうやって割り振った結果、若当主様にはイルサム家のご令嬢が新しく婚約者となる事に決まったのです。
リゼ様も公爵家のご子息が新たに婚約者となり、大変嬉しそうでした。
若当主様に「私、オルってタイプじゃなかったのよね」と一言。
リゼ様は良く言えば寡黙、悪く言えば引っ込み思案の若当主様には「イラついてたのよね」と容赦なく追い打ちをかけられて去って行かれました。
リゼ様でもようやくだったのに1からの構築。しかも婚約期間は短く「いきなり婚」となってしまったので若当主様の苦悩は如何ほどか。
新しく婚約となるイルサム家にはご令嬢が2人居りまして、該当するのはアーシャ様。
しかしイルサム伯爵はミーシャ様というご息女推し。
それはそれは激しく、事あるごとに推されておりまして茶会に行くとこちらが指定をしていても待っているのはミーシャ様。
ですがマナーが壊滅的で椅子がそこにあるのに若当主様の膝の上に座ろうとなさったり、双璧の先端だけを隠したようなドレスをお召しになっていたりとブンディル家には相応しくなかったのです。
アーシャ様はその点、分別はついているようですが家族が家族。
お披露目会で勝手に奥様の部屋や会場となっていない部屋に入り込み、いろいろと持ち出そうとしていたご家族ですので、若当主様が警戒されるのも仕方が御座いません。
初夜、若当主様が閨を共にされなかったのはアーシャ様がまだ海の物とも山の物とも判断が付かなかったからです。
ですが「離縁してくれ」と声が聞こえて来た時は驚きました。
若当主様はその言葉に更に警戒をされたのです。
初夜で離縁。出来ない訳ではありませんが今度は早々の離縁で慰謝料を手に入れようとしている。そう考えたからなのです。
家族に手癖の悪い者がいると、どうしてもそんな目でみてしまうもの。
いずれ離縁するのは仕方がないにしても、初日は早すぎます。
私も含め使用人一同、アーシャ様の動向を監視する日々が始まったのです。
★~★
若当主様はあまり女性の事が好きではないのです。
と、いって男性が好きと言う意味ではありません。
あれは何歳の時だったか。いや、年齢など関係ありません。
苦手なものは苦手、それだけなのです。
そう、私が執事養成所の食事講習の時間にホエール肉がどうしても食べられなかったように苦手なものは苦手。
少し前までの婚約者だったリゼ様の事も「扱いが難しい」とよく悩まれていたのです。
この国の貴族の子息や令嬢は15歳になると教会に行き、半年間奉仕をせねばなりません。
婚約者のリゼ様を教会まで送迎するのが役目だった時も溜息の連続でした。
「送迎する意味を見いだせない」
「御尤もですが、これもお役目で御座います」
「だがな?意味ないだろう?」
リゼ様はエント伯爵家の娘ですが、その伯爵家は国内有数の資産家でリゼ様の乗る馬車は常時30人の私兵に囲まれているし乗っている馬車は横から追突されても横転する心配もありません。
真上から岩石が落ちてきても天井が少し凹むだけの王家が所有する馬車よりも強固な造り。
リゼ様にも言われたのです。
「ねぇ。オルが一緒に居る意味ってある?」
「・・・・」
「何かあった時、足手まといなんだけど?」
「・・・・」
そう。リゼ様ご本人も剣を握らせれば剣豪と呼ばれ、剣が折れたとて柔術の方を得意としておりますので寝技に持ち込まれれば、襲ってきた賊も秒で関節をキメられてしまうでしょう。
「閨が怖い」時折そう言っていたオランド様。御労しい。
リゼ様が奉仕をしている間、ただ馬車の中で待つだけ。
朝9時から夕方16時までただ、ただ待つだけのつまらない時間です。
あまりに暇すぎて馬車を降りて、散歩などで時間を潰しておりましたがすることもない7時間。スゥズカ耐久レースより1時間短いと言っても辛いものが御座います。
暇つぶしの本の持ち込みも禁止、持ち込む菓子など昼食以外は300ルルまでで「バナナはどっちだ?」とまるで「明日はどっちだ」と遠い目をされておられた日を思い出します。
若当主様とリゼ様は若当主様が3歳、リゼ様が生後5か月からの婚約で御座います。
だからでしょうか。
一緒に居る時間は長かっただけあって、その関係は婚約者と言うよりも兄妹に近かったと思います。
言葉が話せない時期からのお付き合いだったリゼ様なのでなんとか目前に迫った結婚生活も恙なく過ごせるだろうと思っておりましたが、事件が起きたのです。
たかが一介の伯爵令嬢のしたこと。
飛び火はないと思われていましたが第3王子殿下がやらかしたのです。
女性のストライクゾーンが自身の年齢プラスマイナス50。つまり年齢が上がると同時にほぼ全員をカバーしている広大なストライクゾーンを有していた第3王子殿下が絡んでいたのです。
「関係を持ったのは両手の数に足らない!」
と自白されましたが、片手でも大変な騒ぎになるのに両手とは。
誰得の何自慢?首を傾げました。
第3王子を含め52名の男性陣を糾弾する同調圧力。
それはそれは恐ろしいもので御座いました。
第3王子の暴走を止めるためのストッパーだった公爵令嬢は防波堤になっていなかったのです。
即座に第3王子は「御病気」が発表され二度と民の前で手を振る事は無くなりました。同時に女性に腰を…この先は自主規制いたしましょう。
問題はそこからです。
隣国の王女を母に持つ公爵令嬢。公爵家の怒りは大変なもので公爵家のもつ領地を隣国に売ると言い出してしまい、そうなると国土の24%が他国の所有者となってしまうため、直ぐに議会が開かれ国内の公爵令嬢に年齢の近しい者の婚約が見直しされたのです。
王族や高位貴族となれば婚約者がいるのが普通。
トントントーンと玉突き式にこの子息にはこの令嬢、そうやって割り振った結果、若当主様にはイルサム家のご令嬢が新しく婚約者となる事に決まったのです。
リゼ様も公爵家のご子息が新たに婚約者となり、大変嬉しそうでした。
若当主様に「私、オルってタイプじゃなかったのよね」と一言。
リゼ様は良く言えば寡黙、悪く言えば引っ込み思案の若当主様には「イラついてたのよね」と容赦なく追い打ちをかけられて去って行かれました。
リゼ様でもようやくだったのに1からの構築。しかも婚約期間は短く「いきなり婚」となってしまったので若当主様の苦悩は如何ほどか。
新しく婚約となるイルサム家にはご令嬢が2人居りまして、該当するのはアーシャ様。
しかしイルサム伯爵はミーシャ様というご息女推し。
それはそれは激しく、事あるごとに推されておりまして茶会に行くとこちらが指定をしていても待っているのはミーシャ様。
ですがマナーが壊滅的で椅子がそこにあるのに若当主様の膝の上に座ろうとなさったり、双璧の先端だけを隠したようなドレスをお召しになっていたりとブンディル家には相応しくなかったのです。
アーシャ様はその点、分別はついているようですが家族が家族。
お披露目会で勝手に奥様の部屋や会場となっていない部屋に入り込み、いろいろと持ち出そうとしていたご家族ですので、若当主様が警戒されるのも仕方が御座いません。
初夜、若当主様が閨を共にされなかったのはアーシャ様がまだ海の物とも山の物とも判断が付かなかったからです。
ですが「離縁してくれ」と声が聞こえて来た時は驚きました。
若当主様はその言葉に更に警戒をされたのです。
初夜で離縁。出来ない訳ではありませんが今度は早々の離縁で慰謝料を手に入れようとしている。そう考えたからなのです。
家族に手癖の悪い者がいると、どうしてもそんな目でみてしまうもの。
いずれ離縁するのは仕方がないにしても、初日は早すぎます。
私も含め使用人一同、アーシャ様の動向を監視する日々が始まったのです。
1,941
あなたにおすすめの小説
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる