夫が離縁に応じてくれません

cyaru

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第04話  家族が家族だから

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この回はオランドの側付執事(男性・63歳)からの視点です。

★~★

若当主様はあまり女性の事が好きではないのです。
と、いって男性が好きと言う意味ではありません。

あれは何歳の時だったか。いや、年齢など関係ありません。
苦手なものは苦手、それだけなのです。

そう、私が執事養成所の食事講習の時間にホエール肉がどうしても食べられなかったように苦手なものは苦手。

少し前までの婚約者だったリゼ様の事も「扱いが難しい」とよく悩まれていたのです。

この国の貴族の子息や令嬢は15歳になると教会に行き、半年間奉仕をせねばなりません。
婚約者のリゼ様を教会まで送迎するのが役目だった時も溜息の連続でした。

「送迎する意味を見いだせない」
「御尤もですが、これもお役目で御座います」
「だがな?意味ないだろう?」

リゼ様はエント伯爵家の娘ですが、その伯爵家は国内有数の資産家でリゼ様の乗る馬車は常時30人の私兵に囲まれているし乗っている馬車は横から追突されても横転する心配もありません。

真上から岩石が落ちてきても天井が少し凹むだけの王家が所有する馬車よりも強固な造り。

リゼ様にも言われたのです。

「ねぇ。オルが一緒に居る意味ってある?」
「・・・・」
「何かあった時、足手まといなんだけど?」
「・・・・」

そう。リゼ様ご本人も剣を握らせれば剣豪と呼ばれ、剣が折れたとて柔術の方を得意としておりますので寝技に持ち込まれれば、襲ってきた賊も秒で関節をキメられてしまうでしょう。

「閨が怖い」時折そう言っていたオランド様。御労しい。



リゼ様が奉仕をしている間、ただ馬車の中で待つだけ。
朝9時から夕方16時までただ、ただ待つだけのつまらない時間です。

あまりに暇すぎて馬車を降りて、散歩などで時間を潰しておりましたがすることもない7時間。スゥズカ耐久レースより1時間短いと言っても辛いものが御座います。

暇つぶしの本の持ち込みも禁止、持ち込む菓子など昼食以外は300ルルまでで「バナナはどっちだ?」とまるで「明日はどっちだ」と遠い目をされておられた日を思い出します。



若当主様とリゼ様は若当主様が3歳、リゼ様が生後5か月からの婚約で御座います。

だからでしょうか。
一緒に居る時間は長かっただけあって、その関係は婚約者と言うよりも兄妹に近かったと思います。

言葉が話せない時期からのお付き合いだったリゼ様なのでなんとか目前に迫った結婚生活もつつがなく過ごせるだろうと思っておりましたが、事件が起きたのです。


たかが一介の伯爵令嬢のしたこと。
飛び火はないと思われていましたが第3王子殿下がやらかしたのです。

女性のストライクゾーンが自身の年齢プラスマイナス50。つまり年齢が上がると同時にほぼ全員をカバーしている広大なストライクゾーンを有していた第3王子殿下が絡んでいたのです。

「関係を持ったのは両手の数に足らない!」

と自白されましたが、片手でも大変な騒ぎになるのに両手とは。
誰得の何自慢?首を傾げました。

第3王子を含め52名の男性陣を糾弾する同調圧力。
それはそれは恐ろしいもので御座いました。

第3王子の暴走を止めるためのストッパーだった公爵令嬢は防波堤になっていなかったのです。

即座に第3王子は「御病気」が発表され二度と民の前で手を振る事は無くなりました。同時に女性に腰を…この先は自主規制いたしましょう。

問題はそこからです。

隣国の王女を母に持つ公爵令嬢。公爵家の怒りは大変なもので公爵家のもつ領地を隣国に売ると言い出してしまい、そうなると国土の24%が他国の所有者となってしまうため、直ぐに議会が開かれ国内の公爵令嬢に年齢の近しい者の婚約が見直しされたのです。

王族や高位貴族となれば婚約者がいるのが普通。

トントントーンと玉突き式にこの子息にはこの令嬢、そうやって割り振った結果、若当主様にはイルサム家のご令嬢が新しく婚約者となる事に決まったのです。

リゼ様も公爵家のご子息が新たに婚約者となり、大変嬉しそうでした。
若当主様に「私、オルってタイプじゃなかったのよね」と一言。

リゼ様は良く言えば寡黙、悪く言えば引っ込み思案の若当主様には「イラついてたのよね」と容赦なく追い打ちをかけられて去って行かれました。

リゼ様でもようやくだったのに1からの構築。しかも婚約期間は短く「いきなり婚」となってしまったので若当主様の苦悩は如何ほどか。


新しく婚約となるイルサム家にはご令嬢が2人居りまして、該当するのはアーシャ様。

しかしイルサム伯爵はミーシャ様というご息女推し。
それはそれは激しく、事あるごとに推されておりまして茶会に行くとこちらが指定をしていても待っているのはミーシャ様。

ですがマナーが壊滅的で椅子がそこにあるのに若当主様の膝の上に座ろうとなさったり、双璧の先端だけを隠したようなドレスをお召しになっていたりとブンディル家には相応しくなかったのです。

アーシャ様はその点、分別はついているようですが家族が家族。
お披露目会で勝手に奥様の部屋や会場となっていない部屋に入り込み、いろいろと持ち出そうとしていたご家族ですので、若当主様が警戒されるのも仕方が御座いません。

初夜、若当主様が閨を共にされなかったのはアーシャ様がまだ海の物とも山の物とも判断が付かなかったからです。

ですが「離縁してくれ」と声が聞こえて来た時は驚きました。
若当主様はその言葉に更に警戒をされたのです。

初夜で離縁。出来ない訳ではありませんが今度は早々の離縁で慰謝料を手に入れようとしている。そう考えたからなのです。

家族に手癖の悪い者がいると、どうしてもそんな目でみてしまうもの。

いずれ離縁するのは仕方がないにしても、初日は早すぎます。
私も含め使用人一同、アーシャ様の動向を監視する日々が始まったのです。
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