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第11話 ごめん寝→うらめしニャー
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オランドが意識を大きく変える領地の視察から戻って1か月後。
「ムッフッフ。良い感じに乾燥してくれちゃって」
庭にひっそりと咲くタンポポ。
春だけではなく日当たりの良い場所なら冬でも花が咲くこともあるのは流石ブンディル侯爵家の庭だわ。
花が終わったばかりのタンポポを根っこから採取し、根っこと葉っぱに分け、双方とも綺麗に、入念に洗って干す。干す時に根っこは薄くスライスをして干しておいたのです。
カラカラになったタンポポの葉は砕いて保存瓶にIN。
根っこはしっかりと色が付くまでフライパンで炒ったあと熱を取って保存瓶にIN。
「どっちにしようかな~。今日は葉っぱな気分かな」
私はタンポポ茶葉のお茶を淹れ香りも存分に楽しみます。
「んんん~いい香り。どれどれ。美味しいかな」
タンポポ茶葉のお茶を飲みながら書庫から借りて来た本を開き、午後の時間を過ごす。こんな贅沢な時間が取れるなんて最高!!
★~★
「どうしよう…今、声かけてもいいかな」
誰に問うでもなくオランドはアーシャの姿を窓越しに見て呟き、玄関をノックするべきか考えていた。
アーシャの住む家は鍵があるが、施錠はされていない。
入ろうと思えば直ぐに入れる。
領地から戻って1か月。
オランドは時間を作りアーシャに謝罪をしようと別邸を訪れていたが声が掛けられなかった。
楽しそうに庭の草などを採取して洗ったり干したり。
「咲~かせて、咲~かせて、フンフフンフフフンフン♪」
時に鼻歌もコブシを効かせて歌ったり。
かと思えば、庭石を食い入るように見て「ほっほぅ!!」と感嘆の声をあげる。
アーシャが去った後、入念に見て触っていた庭石を見てみたが、そこまで喜ぶ要素を見つけられない。
声を掛けられなかったのは声を掛けることで素のアーシャが見られなくなることに躊躇してしまっていた。
――ずっと見ていたいな――
見守る。そんな感情ではなく一人で喜怒哀楽を庭の草木に向かって表現するアーシャを見るだけで胸の鼓動は激しくなるのに心は穏やかになっていく。
今日もまた茶飲みながら読書をするアーシャをこっそりと覗き見てしまっていた。
「お邪魔しては如何です?」
びくっとオランドの体が跳ねた。
「なんだ…驚かさないでくれよ」
声を掛けて来たのはオランド付きの執事。
60歳をもう超えているがオランドの事は産まれたその日から見て来た。
おむつも替えたし、夜泣きにも付き合いミルクも与えた。
離乳食も乳母が与えるとペッ!と吐き出したり、ンベェ~と出したのに執事が与えると鳥のヒナが親に餌を強請るように大きな口を開けてモグモグゴックン。
伯爵令嬢のリゼと婚約をした時も、年下のリゼに泣かされたオランドを親代わりになって面倒を見て来た。
「若奥様は本を読むのが好きなようですよ」
「見たらわかる」
「ほぅ?ではどんな本がお好きかご存じで?」
「それは…」
オランドはここ数日アーシャが本を好んで読んでいるのは知っている。
しかしどんな本を読んでいるのかまでは判らなかった。
「若当主様、ちゃんとリサーチしてあります」
「っっっ!?」
「実は若奥様、庭師とはよく話をなさるので…ジャジャン!」
「こ、これは!!」
執事が差し出したのは【猫・萌え萌え図鑑】
パラリとページを捲る執事。
「若奥様はアンモニャイトというのが一番の推しなのだそうです」
「お、推し?!」
「はい。それでですね、この本を見ておりますと…ほら!ここ!」
ぱらぱらとページを更に捲ると今のオランドには図鑑が指南書に見えて来た。
「猫には絶対服従なのか」
「らしいですね。崇める生き物のようです」
――そうだろうな。この頃 ”女神” と聞くと脳内でアーシャと読み仮名が変換されるのは神だからか!――
オランドには図鑑が神への服従指南本に見えて仕方がなかった。
「猫が前足をクルンと丸めたお休みポーズの事を香箱と言うそうですが、そこに頭を突っ込む!」
「なるほど。 ”ごめん寝” というポーズか」
「試してみる価値はあると思うんですよ」
しかし、なかなかに難易度が高い。貴族は通常頭を下げない生き物で、ましてや両膝を折って座り、額も床につけるような全面謝罪を思わせるポーズ。
今のオランドが絶対してはいけないのは「やんのかステップ」
それだけを肝に銘じ、オランドは「判った。やってみる」と玄関前に立った。
ノックしようとしたまさにその時だった。
内側では書庫に本を返す時間が迫ったアーシャが本を抱えて扉を開けた。
バーン!!
外開きの玄関扉が突然内側から勢いよく開かれ顔面直撃を受けたオランドは後ろにひっくり返った。
”ごめん寝” に備えて手を丸くしていたため ”うらめしニャー” のポーズになってしまったのだった。
「ムッフッフ。良い感じに乾燥してくれちゃって」
庭にひっそりと咲くタンポポ。
春だけではなく日当たりの良い場所なら冬でも花が咲くこともあるのは流石ブンディル侯爵家の庭だわ。
花が終わったばかりのタンポポを根っこから採取し、根っこと葉っぱに分け、双方とも綺麗に、入念に洗って干す。干す時に根っこは薄くスライスをして干しておいたのです。
カラカラになったタンポポの葉は砕いて保存瓶にIN。
根っこはしっかりと色が付くまでフライパンで炒ったあと熱を取って保存瓶にIN。
「どっちにしようかな~。今日は葉っぱな気分かな」
私はタンポポ茶葉のお茶を淹れ香りも存分に楽しみます。
「んんん~いい香り。どれどれ。美味しいかな」
タンポポ茶葉のお茶を飲みながら書庫から借りて来た本を開き、午後の時間を過ごす。こんな贅沢な時間が取れるなんて最高!!
★~★
「どうしよう…今、声かけてもいいかな」
誰に問うでもなくオランドはアーシャの姿を窓越しに見て呟き、玄関をノックするべきか考えていた。
アーシャの住む家は鍵があるが、施錠はされていない。
入ろうと思えば直ぐに入れる。
領地から戻って1か月。
オランドは時間を作りアーシャに謝罪をしようと別邸を訪れていたが声が掛けられなかった。
楽しそうに庭の草などを採取して洗ったり干したり。
「咲~かせて、咲~かせて、フンフフンフフフンフン♪」
時に鼻歌もコブシを効かせて歌ったり。
かと思えば、庭石を食い入るように見て「ほっほぅ!!」と感嘆の声をあげる。
アーシャが去った後、入念に見て触っていた庭石を見てみたが、そこまで喜ぶ要素を見つけられない。
声を掛けられなかったのは声を掛けることで素のアーシャが見られなくなることに躊躇してしまっていた。
――ずっと見ていたいな――
見守る。そんな感情ではなく一人で喜怒哀楽を庭の草木に向かって表現するアーシャを見るだけで胸の鼓動は激しくなるのに心は穏やかになっていく。
今日もまた茶飲みながら読書をするアーシャをこっそりと覗き見てしまっていた。
「お邪魔しては如何です?」
びくっとオランドの体が跳ねた。
「なんだ…驚かさないでくれよ」
声を掛けて来たのはオランド付きの執事。
60歳をもう超えているがオランドの事は産まれたその日から見て来た。
おむつも替えたし、夜泣きにも付き合いミルクも与えた。
離乳食も乳母が与えるとペッ!と吐き出したり、ンベェ~と出したのに執事が与えると鳥のヒナが親に餌を強請るように大きな口を開けてモグモグゴックン。
伯爵令嬢のリゼと婚約をした時も、年下のリゼに泣かされたオランドを親代わりになって面倒を見て来た。
「若奥様は本を読むのが好きなようですよ」
「見たらわかる」
「ほぅ?ではどんな本がお好きかご存じで?」
「それは…」
オランドはここ数日アーシャが本を好んで読んでいるのは知っている。
しかしどんな本を読んでいるのかまでは判らなかった。
「若当主様、ちゃんとリサーチしてあります」
「っっっ!?」
「実は若奥様、庭師とはよく話をなさるので…ジャジャン!」
「こ、これは!!」
執事が差し出したのは【猫・萌え萌え図鑑】
パラリとページを捲る執事。
「若奥様はアンモニャイトというのが一番の推しなのだそうです」
「お、推し?!」
「はい。それでですね、この本を見ておりますと…ほら!ここ!」
ぱらぱらとページを更に捲ると今のオランドには図鑑が指南書に見えて来た。
「猫には絶対服従なのか」
「らしいですね。崇める生き物のようです」
――そうだろうな。この頃 ”女神” と聞くと脳内でアーシャと読み仮名が変換されるのは神だからか!――
オランドには図鑑が神への服従指南本に見えて仕方がなかった。
「猫が前足をクルンと丸めたお休みポーズの事を香箱と言うそうですが、そこに頭を突っ込む!」
「なるほど。 ”ごめん寝” というポーズか」
「試してみる価値はあると思うんですよ」
しかし、なかなかに難易度が高い。貴族は通常頭を下げない生き物で、ましてや両膝を折って座り、額も床につけるような全面謝罪を思わせるポーズ。
今のオランドが絶対してはいけないのは「やんのかステップ」
それだけを肝に銘じ、オランドは「判った。やってみる」と玄関前に立った。
ノックしようとしたまさにその時だった。
内側では書庫に本を返す時間が迫ったアーシャが本を抱えて扉を開けた。
バーン!!
外開きの玄関扉が突然内側から勢いよく開かれ顔面直撃を受けたオランドは後ろにひっくり返った。
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