夫が離縁に応じてくれません

cyaru

文字の大きさ
11 / 26

第11話  ごめん寝→うらめしニャー

しおりを挟む
オランドが意識を大きく変える領地の視察から戻って1か月後。


「ムッフッフ。良い感じに乾燥してくれちゃって」

庭にひっそりと咲くタンポポ。
春だけではなく日当たりの良い場所なら冬でも花が咲くこともあるのは流石ブンディル侯爵家の庭だわ。

花が終わったばかりのタンポポを根っこから採取し、根っこと葉っぱに分け、双方とも綺麗に、入念に洗って干す。干す時に根っこは薄くスライスをして干しておいたのです。

カラカラになったタンポポの葉は砕いて保存瓶にIN。
根っこはしっかりと色が付くまでフライパンで炒ったあと熱を取って保存瓶にIN。

「どっちにしようかな~。今日は葉っぱな気分かな」

私はタンポポ茶葉のお茶を淹れ香りも存分に楽しみます。

「んんん~いい香り。どれどれ。美味しいかな」

タンポポ茶葉のお茶を飲みながら書庫から借りて来た本を開き、午後の時間を過ごす。こんな贅沢な時間が取れるなんて最高!!


★~★

「どうしよう…今、声かけてもいいかな」

誰に問うでもなくオランドはアーシャの姿を窓越しに見て呟き、玄関をノックするべきか考えていた。

アーシャの住む家は鍵があるが、施錠はされていない。
入ろうと思えば直ぐに入れる。


領地から戻って1か月。
オランドは時間を作りアーシャに謝罪をしようと別邸を訪れていたが声が掛けられなかった。

楽しそうに庭の草などを採取して洗ったり干したり。

「咲~かせて、咲~かせて、フンフフンフフフンフン♪」
時に鼻歌もコブシを効かせて歌ったり。

かと思えば、庭石を食い入るように見て「ほっほぅ!!」と感嘆の声をあげる。

アーシャが去った後、入念に見て触っていた庭石を見てみたが、そこまで喜ぶ要素を見つけられない。

声を掛けられなかったのは声を掛けることでのアーシャが見られなくなることに躊躇してしまっていた。

――ずっと見ていたいな――

見守る。そんな感情ではなく一人で喜怒哀楽を庭の草木に向かって表現するアーシャを見るだけで胸の鼓動は激しくなるのに心は穏やかになっていく。

今日もまた茶飲みながら読書をするアーシャをこっそりと覗き見てしまっていた。


「お邪魔しては如何です?」

びくっとオランドの体が跳ねた。

「なんだ…驚かさないでくれよ」

声を掛けて来たのはオランド付きの執事。
60歳をもう超えているがオランドの事は産まれたその日から見て来た。

おむつも替えたし、夜泣きにも付き合いミルクも与えた。
離乳食も乳母が与えるとペッ!と吐き出したり、ンベェ~と出したのに執事が与えると鳥のヒナが親に餌を強請るように大きな口を開けてモグモグゴックン。

伯爵令嬢のリゼと婚約をした時も、年下のリゼに泣かされたオランドを親代わりになって面倒を見て来た。

「若奥様は本を読むのが好きなようですよ」
「見たらわかる」
「ほぅ?ではどんな本がお好きかご存じで?」
「それは…」

オランドはここ数日アーシャが本を好んで読んでいるのは知っている。
しかしどんな本を読んでいるのかまでは判らなかった。

「若当主様、ちゃんとリサーチしてあります」
「っっっ!?」
「実は若奥様、庭師とはよく話をなさるので…ジャジャン!」
「こ、これは!!」

執事が差し出したのは【猫・萌え萌え図鑑】

パラリとページを捲る執事。

「若奥様はアンモニャイトというのが一番の推しなのだそうです」
「お、推し?!」
「はい。それでですね、この本を見ておりますと…ほら!ここ!」

ぱらぱらとページを更に捲ると今のオランドには図鑑が指南書に見えて来た。

「猫には絶対服従なのか」

「らしいですね。崇める生き物のようです」

――そうだろうな。この頃 ”女神” と聞くと脳内でアーシャと読み仮名が変換されるのは神だからか!――

オランドには図鑑が神への服従指南本に見えて仕方がなかった。


「猫が前足をクルンと丸めたお休みポーズの事を香箱こうばこと言うそうですが、そこに頭を突っ込む!」

「なるほど。 ”ごめん寝” というポーズか」

「試してみる価値はあると思うんですよ」

しかし、なかなかに難易度が高い。貴族は通常頭を下げない生き物で、ましてや両膝を折って座り、額も床につけるような全面謝罪を思わせるポーズ。

今のオランドが絶対してはいけないのは「やんのかステップ」
それだけを肝に銘じ、オランドは「判った。やってみる」と玄関前に立った。

ノックしようとしたまさにその時だった。
内側では書庫に本を返す時間が迫ったアーシャが本を抱えて扉を開けた。

バーン!!

外開きの玄関扉が突然内側から勢いよく開かれ顔面直撃を受けたオランドは後ろにひっくり返った。

”ごめん寝” に備えて手を丸くしていたため ”うらめしニャー” のポーズになってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

処理中です...