13 / 41
2回目の人生
第13話 取り敢えずキャンセル
しおりを挟む
既視感しかない白いドレス。
前回でも既視感はあったのだ。
だって既製品だから。
既製品にちょっとオリジナリティを出したかったのと、少し肩口が緩かったのでお直しに出したのだ。だから前回は待ち遠しくて「汚れちゃうわよ」と言われながらも飾ったドレスは既視感しかない程見た。
夢にしてはものすごく長いストーリーに感じるし、いつも夢は見た!と部分的に覚えてはいるけれど昨夜のが夢だとすれば「私ってこんなに記憶力良かったかな?」と思えてしまう。
何より首に掛けられた縄の感触が残っていて、何度も鏡で首を確認してしまった。
全く痕跡はないけれど、痛みとも苦しみともいえる複雑な気持ちの悪い感触ははっきりと覚えている。
よく小説や銅貨青空芝居で一度死んでしまったけれど巻き戻ってもう一度人生をやり直すという話がある。
――ないない。そんなのあり得ないし――
だけどもしかして。
オデットはまだ悪い夢を見ているのか。
そうだとすれば夢の中で夢を見るという変わった体験だなと思い、食事室を見回した。
夢の中、最後はきれいさっぱりと片付いていた。
――そうそう。この棚。造り付けかと思ったら動いたのよね――
そう思って父親のカバンや花瓶、街で配られるビラなどが無造作に積まれている腰までの高さの棚を手前に引っ張ってみた。
ガタン!!
――わ、動いた?!――
動いた事に驚いたのはオデットだけではなく両親も兄も驚いていた。
勿論その驚きの中に「何やってんの?」という呆れも混じってはいるが、その場にいる家族全員。
父ダクシオンは生まれて40年以上50年未満。
母ヴィヴァーチェも嫁いでもうすぐ30年。
兄のアレグロも生まれて21年。
誰もこの棚が動くとは思っていなかった。オデットも夢の中で引っ越しのために家財道具を片付けて初めて造り付けではない事を知ったのだ。
――ってことは!!――
オデットはまた別の棚の前に行き、扉を開けて中をごそごそと探し始めた。
「何してるんだ?」
兄のアレグロはパンを口に咥えたままで近づいてきた。
「ここにお兄ちゃんが4歳?5歳の時に隠した宝物があるのよ」
「は?なんだそりゃ?」
「あ、あった!!これだわ」
手に取ったのは小さな木箱で大きさとしては10cm四方の小さな箱。
――この中にドングリとかがあれば間違いないわ――
覗き込んでくるアレグロですら、自身の宝物入れだった事はすっかり忘れてしまっている。オデットが経年劣化でギチギチになったはめ込み式の蓋を開けると…。
「うぉー!!懐かしい!これ、僕のだ。何時だったかな。そうそう!思い出した。ドングリ拾ってさ木の枝を刺して回して遊んでたんだけど、虫が出てきて母上に叱られて隠したんだよ!めっちゃ懐かしいなぁ。まだあったんだ」
そしてあの水瓶の下の穴。
あれも家族の誰もそこに穴がある事は知らなかったのだ。
金貨をどこに置いておくか。家族で話をして水瓶の後ろに隠しておこうという話になった。
しかし、水瓶の後ろは金貨の袋の幅より狭く入らなかったので水瓶を寄せた時、父が土を被せてカムフラージュした板を踏み抜いて穴がある事を見つけたのだ。
ボロボロに朽ちた木で作った髪飾りなどがあったので、祖父母かその前の代で誰かが隠したのだろうと思われた。
オデットは自分を落ち着かせようと敢えて家族に問うた。
「ねぇ。水瓶の下に穴があるでしょう?」
<< は? >>
ヴィヴァーチェは「熱でもあるの?」と言う。
アレグロは「穴があったら水瓶がめり込む」と言う。
父のダクシオンは「さっきからどうしたんだ?」と不思議そうな顔。
つまり誰も水瓶の下に穴がある事を知らないのだ。
「お婆様か、お婆様のお母様か。誰かが髪飾りを隠してるの」
「オデット。お前、デヴュタントで浮かれすぎて頭が飛んだのか?」
「失礼ね。じゃぁ賭けてもいいわ。私は穴があるに…夕食の野イチゴ」
ガタっと音がしてヴィヴァーチェが躓いた。
「どうして今日の夕食に野イチゴをデザートに出すことを知ってるの!?」
日頃は贅沢が出来ないが今日はオデットのデヴュタントの日。ヴィヴァーチェは内緒で野イチゴを摘み取ってきて隠してあるのだ。
ただ、オデットも今、どこに野イチゴを隠しているかは知らない。
知っているのはデヴュタントの日、夕食に野イチゴがデザートで出た事である。
野イチゴはアレグロも大好物。それを賭けるというのだから半信半疑でも水瓶を退けてくれた。
「ないじゃないか。賭けは僕の勝ちだな」
「そう思うでしょう?実はあるの」
オデットはしゃがみ込んで水瓶が置かれた部分の土を払った。すると木の板が出てきて外すと穴があり、朽ちた木製の髪飾りが本当に出て来たのだ。
オデットが隠したのかとなると違う。埋め戻したりするとそこだけ土がいかにも被せたようになるけれど、何十年も水瓶の重さで潰されてそこに何かがあるような状態ではなかったのだ。
――間違いないわ。私、多分時間が巻き戻ってる――
不思議過ぎてそれを言ってしまうと本当に頭の中身を疑われそうなので、家族にもオデットは言わなかったが確信が持てた。
だったら、することは1つだ。
「私、今日のデヴュタントは行かないわ」
<< ハァァーッ?! >>
家族からは当然の反応が返ってきた。
前回でも既視感はあったのだ。
だって既製品だから。
既製品にちょっとオリジナリティを出したかったのと、少し肩口が緩かったのでお直しに出したのだ。だから前回は待ち遠しくて「汚れちゃうわよ」と言われながらも飾ったドレスは既視感しかない程見た。
夢にしてはものすごく長いストーリーに感じるし、いつも夢は見た!と部分的に覚えてはいるけれど昨夜のが夢だとすれば「私ってこんなに記憶力良かったかな?」と思えてしまう。
何より首に掛けられた縄の感触が残っていて、何度も鏡で首を確認してしまった。
全く痕跡はないけれど、痛みとも苦しみともいえる複雑な気持ちの悪い感触ははっきりと覚えている。
よく小説や銅貨青空芝居で一度死んでしまったけれど巻き戻ってもう一度人生をやり直すという話がある。
――ないない。そんなのあり得ないし――
だけどもしかして。
オデットはまだ悪い夢を見ているのか。
そうだとすれば夢の中で夢を見るという変わった体験だなと思い、食事室を見回した。
夢の中、最後はきれいさっぱりと片付いていた。
――そうそう。この棚。造り付けかと思ったら動いたのよね――
そう思って父親のカバンや花瓶、街で配られるビラなどが無造作に積まれている腰までの高さの棚を手前に引っ張ってみた。
ガタン!!
――わ、動いた?!――
動いた事に驚いたのはオデットだけではなく両親も兄も驚いていた。
勿論その驚きの中に「何やってんの?」という呆れも混じってはいるが、その場にいる家族全員。
父ダクシオンは生まれて40年以上50年未満。
母ヴィヴァーチェも嫁いでもうすぐ30年。
兄のアレグロも生まれて21年。
誰もこの棚が動くとは思っていなかった。オデットも夢の中で引っ越しのために家財道具を片付けて初めて造り付けではない事を知ったのだ。
――ってことは!!――
オデットはまた別の棚の前に行き、扉を開けて中をごそごそと探し始めた。
「何してるんだ?」
兄のアレグロはパンを口に咥えたままで近づいてきた。
「ここにお兄ちゃんが4歳?5歳の時に隠した宝物があるのよ」
「は?なんだそりゃ?」
「あ、あった!!これだわ」
手に取ったのは小さな木箱で大きさとしては10cm四方の小さな箱。
――この中にドングリとかがあれば間違いないわ――
覗き込んでくるアレグロですら、自身の宝物入れだった事はすっかり忘れてしまっている。オデットが経年劣化でギチギチになったはめ込み式の蓋を開けると…。
「うぉー!!懐かしい!これ、僕のだ。何時だったかな。そうそう!思い出した。ドングリ拾ってさ木の枝を刺して回して遊んでたんだけど、虫が出てきて母上に叱られて隠したんだよ!めっちゃ懐かしいなぁ。まだあったんだ」
そしてあの水瓶の下の穴。
あれも家族の誰もそこに穴がある事は知らなかったのだ。
金貨をどこに置いておくか。家族で話をして水瓶の後ろに隠しておこうという話になった。
しかし、水瓶の後ろは金貨の袋の幅より狭く入らなかったので水瓶を寄せた時、父が土を被せてカムフラージュした板を踏み抜いて穴がある事を見つけたのだ。
ボロボロに朽ちた木で作った髪飾りなどがあったので、祖父母かその前の代で誰かが隠したのだろうと思われた。
オデットは自分を落ち着かせようと敢えて家族に問うた。
「ねぇ。水瓶の下に穴があるでしょう?」
<< は? >>
ヴィヴァーチェは「熱でもあるの?」と言う。
アレグロは「穴があったら水瓶がめり込む」と言う。
父のダクシオンは「さっきからどうしたんだ?」と不思議そうな顔。
つまり誰も水瓶の下に穴がある事を知らないのだ。
「お婆様か、お婆様のお母様か。誰かが髪飾りを隠してるの」
「オデット。お前、デヴュタントで浮かれすぎて頭が飛んだのか?」
「失礼ね。じゃぁ賭けてもいいわ。私は穴があるに…夕食の野イチゴ」
ガタっと音がしてヴィヴァーチェが躓いた。
「どうして今日の夕食に野イチゴをデザートに出すことを知ってるの!?」
日頃は贅沢が出来ないが今日はオデットのデヴュタントの日。ヴィヴァーチェは内緒で野イチゴを摘み取ってきて隠してあるのだ。
ただ、オデットも今、どこに野イチゴを隠しているかは知らない。
知っているのはデヴュタントの日、夕食に野イチゴがデザートで出た事である。
野イチゴはアレグロも大好物。それを賭けるというのだから半信半疑でも水瓶を退けてくれた。
「ないじゃないか。賭けは僕の勝ちだな」
「そう思うでしょう?実はあるの」
オデットはしゃがみ込んで水瓶が置かれた部分の土を払った。すると木の板が出てきて外すと穴があり、朽ちた木製の髪飾りが本当に出て来たのだ。
オデットが隠したのかとなると違う。埋め戻したりするとそこだけ土がいかにも被せたようになるけれど、何十年も水瓶の重さで潰されてそこに何かがあるような状態ではなかったのだ。
――間違いないわ。私、多分時間が巻き戻ってる――
不思議過ぎてそれを言ってしまうと本当に頭の中身を疑われそうなので、家族にもオデットは言わなかったが確信が持てた。
だったら、することは1つだ。
「私、今日のデヴュタントは行かないわ」
<< ハァァーッ?! >>
家族からは当然の反応が返ってきた。
1,210
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした
せいめ
恋愛
美しい旦那様は結婚初夜に言いました。
「君を愛するつもりはない」と。
そんな……、私を愛してくださらないの……?
「うっ……!」
ショックを受けた私の頭に入ってきたのは、アラフォー日本人の前世の記憶だった。
ああ……、貧乏で没落寸前の伯爵様だけど、見た目だけはいいこの男に今世の私は騙されたのね。
貴方が私を妻として大切にしてくれないなら、私も好きにやらせてもらいますわ。
旦那様、短い結婚生活になりそうですが、どうぞよろしく!
誤字脱字お許しください。本当にすみません。
ご都合主義です。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる