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2回目の人生
第25話 けんもほろろですら嬉しい
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おかしいな?ヴァルスは花屋の店員の言葉を思い出し首を傾げた。
ヴァルス自身も薔薇の花を誰かに贈る時に本数に意味があるとは知らなかった。せいぜい知っていたのは病床にある人への見舞に鉢植えなどは禁物だと言う事や、結婚式で会場に飾られた花を墓地に手向けてはいけないと言うことくらい。
「恋人に愛の告白ですか?」
「いや…婚約っていうか…付き合いを申し込もうと思って」
「だったら‥そうですね。薔薇の花を12本で如何でしょう?」
「12本?何か意味があるのか?」
「そうですねぇ。効果的なのは12月12日に12本の薔薇を贈って求婚でしょうか。ダズンローズと言って妻になってください、恋人になってくださいっていう切実な思いを示す本数なんです」
「そうか…では12本で花束を作って貰えるかな」
「はい!畏まりました。だけど、騎士さんに花束を貰える女性って羨ましいです」
「どうして?」
「だって…お花ってあまり貰う機会ってないので、その方を思ってこうやって選んでもらえるって素敵な事だなって思うんです」
「そんな意味もあるんだな。ちなみに…あれば、で良いんだが謝罪をする時はどんな花を贈ればいいんだろうか」
「謝罪ですか‥紫のシクラメンかカモミールでしょうか。だけどどちらも仲直りしてもらえる程度の拗れ具合って言うんですかね…。生涯縁切り!なんて時は…すみません。そういうお客さんは経験がないので」
告白が上手く行きますようにと店員は祈ってくれたが、見事に粉砕してしまった。
記憶の中にあるオデットはもっと話を聞いてくれる女性だったように思うのだが、如何せん記憶の中のオデットが何かを言おうとすると今、花束を握っている手で殴りつけてしまっていた。
しかし、フロリアの行いに苦言を呈した女性でもある。
無論それも暴力で黙らせてしまったが、善悪の判断は出来る女性なのだ。
記憶にある自分と違い、フロリアを最初に見た時「変わらないな」と思ってしまった。
可愛いとか綺麗とか良い印象は全くなくて、隣でフロリアに見入る王太子ロッバルトの趣味を疑ってしまった。直ぐにロッバルトの好みのど真ん中だと思ったが、改めてこのフロリアに何故あぁまで傾倒してしまったか解らない。
辺境警備から王都に戻った時、オデットに会いに行こうと思ったが、よく考えればオデットは12歳。幼女趣味と思われるのではないかと会いに行く事は止めた。
以後も機会があればと夜会で王太子ロッバルトの警護をしながら会場を見るも、それもまたよく考えてみればデヴュタントを済ませていないのだからいる筈がなかった。
――会って…私はどうしたいんだろう――
自問自答をするが答えは出ない。
いきなり謝罪をすればオデットは何の謝罪だと困惑するだろうか。
そんな事を考える、いやオデットの事を考えるだけで毎日が楽しく思えた。
毎日そんな事を考えているヴァルスは空想の中のオデットに恋をしていた。10歳も年下の女性に恋焦がれる思いが抑えられなかった。
前回の人生も煩わしい令嬢たちを蹴散らしてきたので女の影は一切なかったが、今回は心にオデットを思うばかりに意味は違えど周囲に女の影はない。
デヴュタントの会場でロッバルトを挨拶の時間よりも先に連れ出し、廊下に出たのはヴァルスが「オデットに会えるかもしれない」と考えたからだった。
残念ながら集まって来る令嬢の中にオデットはいなかった。
――もう会場に入ってしまったのだろうか。それとも前回と同じようにもう少し後に到着するんだろうか――
姿を見るだけで良かったのだ。
偶然にも会場の中に入るとそこにオデットがいた。
「あら、失礼ね。リンボーさせたら私の右に出る者はいないのよ?」
隣にいるのはオデットの父、ダクシオンだと直ぐに解る。
ダクシオンは、思い出すのも辛いが記憶にある限りでヴァルスが息の根を止めた。報告書は自死としたが実際はヴァルスがオデットの両親と兄を葬った。
3人は最後まで「オデットは人を操ったりするような娘(妹)ではない」と言い張った。
――あの時の私は何故それを腹立たしく思ったんだろう――
その答えは出ないままだ。
オデットと楽し気に会話をしているのを見て、ヴァルスは心の底から嬉しかった。
――君はこんなに楽しそうに笑って話す子だったんだね――
胸が高鳴る。
見るだけで良かった。
声も聞けた。
笑顔が見られた。
それでいいじゃないかと思ったが、どうしても我慢が出来ずその夜のうちに両親にオデットと結婚したい事を告白した。
記憶にある自分のような邪な思いからではない。
純粋に隣で笑って、名前を呼んで欲しかった。許されるなら手を取り抱きしめたかった。
誰かの隣で笑うオデットを想像するだけで息が出来なくなった。
両親は直ぐに動いてくれた。
記憶にあるような汚い裏工作など一切していない。
しかし、使いにやった従者は「けんもほろろに断られました」と支度金として用意をした金には一切手を付けず、むしろ金を出したことで怒りを買ったと告げた。
「申し訳ございません。私の伝え方が悪かったのだと思います」
「いや。書面の手続きは問題ないとしてもあまりにも性急すぎたんだ。公爵家だから断らないだろうと傲慢な思い込みもあった。私が悪いんだ。君は何も悪くない。嫌な役をさせてしまって申し訳ない」
「そんな!!ヴァルス様、頭を上げてください!」
謝罪の意味も含めて直々に行った方がいいだろうと思ったのだが、従者の言葉の通りけんもほろろに追い返されたが、それさえ嬉しく思ってしまう。
――参ったな。重症だ――
オデットへの愛を自覚してしまったヴァルスは怒ったオデットの顔を思い出し顔が脂下がる。
好きになれば何でも許せるとはこの事だろう。
花束を抱えて騎乗しているヴァルスは異様に目を引く。
誰も彼もが振り返るがヴァルスは全く気が付いていなかった。
――明日は夜勤だったな。昼に食事に誘ってみよう――
と、頭の中は何処のレストランがいいだろうかと考えていたからである。
ヴァルス自身も薔薇の花を誰かに贈る時に本数に意味があるとは知らなかった。せいぜい知っていたのは病床にある人への見舞に鉢植えなどは禁物だと言う事や、結婚式で会場に飾られた花を墓地に手向けてはいけないと言うことくらい。
「恋人に愛の告白ですか?」
「いや…婚約っていうか…付き合いを申し込もうと思って」
「だったら‥そうですね。薔薇の花を12本で如何でしょう?」
「12本?何か意味があるのか?」
「そうですねぇ。効果的なのは12月12日に12本の薔薇を贈って求婚でしょうか。ダズンローズと言って妻になってください、恋人になってくださいっていう切実な思いを示す本数なんです」
「そうか…では12本で花束を作って貰えるかな」
「はい!畏まりました。だけど、騎士さんに花束を貰える女性って羨ましいです」
「どうして?」
「だって…お花ってあまり貰う機会ってないので、その方を思ってこうやって選んでもらえるって素敵な事だなって思うんです」
「そんな意味もあるんだな。ちなみに…あれば、で良いんだが謝罪をする時はどんな花を贈ればいいんだろうか」
「謝罪ですか‥紫のシクラメンかカモミールでしょうか。だけどどちらも仲直りしてもらえる程度の拗れ具合って言うんですかね…。生涯縁切り!なんて時は…すみません。そういうお客さんは経験がないので」
告白が上手く行きますようにと店員は祈ってくれたが、見事に粉砕してしまった。
記憶の中にあるオデットはもっと話を聞いてくれる女性だったように思うのだが、如何せん記憶の中のオデットが何かを言おうとすると今、花束を握っている手で殴りつけてしまっていた。
しかし、フロリアの行いに苦言を呈した女性でもある。
無論それも暴力で黙らせてしまったが、善悪の判断は出来る女性なのだ。
記憶にある自分と違い、フロリアを最初に見た時「変わらないな」と思ってしまった。
可愛いとか綺麗とか良い印象は全くなくて、隣でフロリアに見入る王太子ロッバルトの趣味を疑ってしまった。直ぐにロッバルトの好みのど真ん中だと思ったが、改めてこのフロリアに何故あぁまで傾倒してしまったか解らない。
辺境警備から王都に戻った時、オデットに会いに行こうと思ったが、よく考えればオデットは12歳。幼女趣味と思われるのではないかと会いに行く事は止めた。
以後も機会があればと夜会で王太子ロッバルトの警護をしながら会場を見るも、それもまたよく考えてみればデヴュタントを済ませていないのだからいる筈がなかった。
――会って…私はどうしたいんだろう――
自問自答をするが答えは出ない。
いきなり謝罪をすればオデットは何の謝罪だと困惑するだろうか。
そんな事を考える、いやオデットの事を考えるだけで毎日が楽しく思えた。
毎日そんな事を考えているヴァルスは空想の中のオデットに恋をしていた。10歳も年下の女性に恋焦がれる思いが抑えられなかった。
前回の人生も煩わしい令嬢たちを蹴散らしてきたので女の影は一切なかったが、今回は心にオデットを思うばかりに意味は違えど周囲に女の影はない。
デヴュタントの会場でロッバルトを挨拶の時間よりも先に連れ出し、廊下に出たのはヴァルスが「オデットに会えるかもしれない」と考えたからだった。
残念ながら集まって来る令嬢の中にオデットはいなかった。
――もう会場に入ってしまったのだろうか。それとも前回と同じようにもう少し後に到着するんだろうか――
姿を見るだけで良かったのだ。
偶然にも会場の中に入るとそこにオデットがいた。
「あら、失礼ね。リンボーさせたら私の右に出る者はいないのよ?」
隣にいるのはオデットの父、ダクシオンだと直ぐに解る。
ダクシオンは、思い出すのも辛いが記憶にある限りでヴァルスが息の根を止めた。報告書は自死としたが実際はヴァルスがオデットの両親と兄を葬った。
3人は最後まで「オデットは人を操ったりするような娘(妹)ではない」と言い張った。
――あの時の私は何故それを腹立たしく思ったんだろう――
その答えは出ないままだ。
オデットと楽し気に会話をしているのを見て、ヴァルスは心の底から嬉しかった。
――君はこんなに楽しそうに笑って話す子だったんだね――
胸が高鳴る。
見るだけで良かった。
声も聞けた。
笑顔が見られた。
それでいいじゃないかと思ったが、どうしても我慢が出来ずその夜のうちに両親にオデットと結婚したい事を告白した。
記憶にある自分のような邪な思いからではない。
純粋に隣で笑って、名前を呼んで欲しかった。許されるなら手を取り抱きしめたかった。
誰かの隣で笑うオデットを想像するだけで息が出来なくなった。
両親は直ぐに動いてくれた。
記憶にあるような汚い裏工作など一切していない。
しかし、使いにやった従者は「けんもほろろに断られました」と支度金として用意をした金には一切手を付けず、むしろ金を出したことで怒りを買ったと告げた。
「申し訳ございません。私の伝え方が悪かったのだと思います」
「いや。書面の手続きは問題ないとしてもあまりにも性急すぎたんだ。公爵家だから断らないだろうと傲慢な思い込みもあった。私が悪いんだ。君は何も悪くない。嫌な役をさせてしまって申し訳ない」
「そんな!!ヴァルス様、頭を上げてください!」
謝罪の意味も含めて直々に行った方がいいだろうと思ったのだが、従者の言葉の通りけんもほろろに追い返されたが、それさえ嬉しく思ってしまう。
――参ったな。重症だ――
オデットへの愛を自覚してしまったヴァルスは怒ったオデットの顔を思い出し顔が脂下がる。
好きになれば何でも許せるとはこの事だろう。
花束を抱えて騎乗しているヴァルスは異様に目を引く。
誰も彼もが振り返るがヴァルスは全く気が付いていなかった。
――明日は夜勤だったな。昼に食事に誘ってみよう――
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